悪役令息に転生したが、全てが裏目に出るところは前世と変わらない!? 小心者な俺は、今日も悪役たちから逃げ回る

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
21 / 96

21.やめてくれないか?

しおりを挟む

 ビクビクしながら、なんとか畑の近くまで来ると、そこは背の高い草木が生い茂っていた。ゲームの通りだ。
 足元に気をつけながら、俺は、ティウルに振り向いた。

「あの……ティウル」
「……? どうしたの?」
「お、俺はっ……その……あの……き、君のことがすきだ」
「…………は?」
「あっ……! ち、違う!! す、好きって、あの……友人として慕ってるって意味だ!!」
「ああ……うん……紛らわしいな……」
「ごめん……その……た、ただ、分かってほしいんだ! 俺には、君に対する敵意はまるでないことを……」
「うん……昨日からずっとそんなこと言ってたけど、分かってるよ? 君が僕に、危害を加える気がないことくらい」
「本当か!? そ、それはありがたい……」
「君みたいに、ビクビクおどおどしてる人が、危害を加えてくるとは思えない」
「そ、そうか……」

 それはそれで、ちょっと情けない気もする。
 だけど、敵意がないことを分かってくれているならありがたい。何よりもまず、俺はそれを伝えたかったんだ。

 俺には、彼に話さなくてはならないことがある。

 ティウルと対峙する俺だが、怖いせいで、少し前屈みになったままだった。

「は、初めて会ったのに……俺みたいな奴と優しく話してくれただろ? そんな奴、あんまりいないんだ。本当に……それは、感謝している…………本当に、嬉しいんだ!!」
「……どうしたの? 僕も嬉しいよ? 公爵家の御令息様が、僕みたいな奴隷と手を繋いでくれるなんて」
「……そんなことはない。ティウルは、俺が知っている中では、最高の魔力の持ち主だ」
「……なんで会ったばかりなのに、僕の魔力のことなんて知ってるの?」
「そ、それは……そんな気がしただけだ!! その、本当に嬉しい!! だから、その……勘違いしないでほしい!! 君とは、仲良くしたいし、き、傷つけようとは決して考えてない!! 本当だ!!!! 約束する! 俺は絶対に君を傷つけたりしない!」
「……どうしたの? 急に……そんなに熱烈に告白されると、僕は困るんだけど……」
「あっ……! 違います違います違います! 決してあなたを傷つけたくはありませんって言いたいだけなんです!!」
「……えっと……フィーディ?」
「だからその……これから話すことは、決して、ティウルを傷つけたいわけじゃない。それを分かってほしい……」
「なに? 言いたいことがあるなら早く言ってほしいな」
「……だ、だったら話す……待たせてすまない。あのさ……ち、ちょっとだけ聞きたいんだけど……あの……き、昨日、俺の部屋……なんで、あそこが俺の部屋ってわかったんだ?」
「…………え?」
「……ティウルは、俺の部屋は俺の部屋って分かるのに、なんで……自分の部屋は分からなかったんだ?」

 ……これは、昨日のヴァグデッドの受け売りなんだけど……

 こんなの問い詰めているみたいで、し、心臓の調子がおかしくなりそう……心臓どころか喉までドキドキいっているみたいで、今にも吐きそうだ。

 ほ、本当に、こんなことして、いいのかなぁ……?
 できることならしたくない! 俺にちょっかい出すくらいなら、我慢できる。だけど、今だけはどうしても言わなきゃならないんだーーーー!

 頑張れ俺! 怖くないって、心の中で唱えながら続けるんだっ……!

「あ、あの……怖くない……」
「は?」
「違う! 今のは心の声だっ……聞こえなかったことにしてくれ…………あの……お、俺の部屋が分かるのに、な、なんで自分の部屋は分からなかったのかなぁって……思って……」
「君に会うことに夢中で、忘れちゃってた」
「……自分の部屋の場所って忘れますか……? 俺の部屋の場所は分かるのに…………」
「分かるよ」
「分かりますよね。すみません」
「……たまたま辿り着いた部屋が、魔物に襲われてるみたいだったから入ってみたら、そこがフィーディの部屋だっただけ」
「……でも、俺の部屋に来た時、ノックしたって言ってませんでしたか? 俺の部屋だって分かってたからノックしたんじゃ……」
「は?」
「たまたま見つけたんですよね! すみません……」
「さっきからなんなの? なにが言いたいの?」
「ひぃっ……! お、俺だってこんなこと言いたくないんだ!! 問い詰めるようなことしてごめんっ……揚げ足取りたいんじゃない……」
「……言いたくないなら、言うのやめれば?」
「……でも、あの……これだけは、き、聞いてほしいっ……!」

 決意して顔を上げたら、声が裏返っていた。ティウルは、少し驚いていたようだったけど、構わず続けた。

「ご、ごめんっ……あのっ……その……さっき……お、俺の部屋で、ヴァグデッド……起きなかったんだ!! 多分……眠りの魔法にかかってる……」
「……なんで、そんなこと分かるの?」
「俺も……眠りの魔法をよく使う。ティウルみたいにうまくなくて、しょっちゅう失敗するけど……」
「僕がやったって言いたいの?」
「それはっ…………ぁのっ……すみません……やっぱり、そうです……ね、眠りの魔法を使えるから、分かるんだ!! 魔法で眠らされているのか、そうでないのか……」
「…………」
「俺が気に入らないなら好きしていい! いやよくないっ……怖いことはダメだし断罪もダメだし白い目で見られるのも嫌だー……」
「は?」
「あぁっ……すみませんすみませんすみません……なに言ってるか分からないと思います……」
「自覚はあるんだ」
「だ、だからっ……俺のこと連れ出したり俺に関わって来たり……あ、自意識過剰だったらすみません……お、俺の方に用があるんですよねっ……ヴァグデッドを眠らせていたし……俺のこと、呼び出すのに、ヴァグデッドが邪魔だったから……そ、そういうのだけ、やめてほしい!!!!」
「え?」
「俺を呼び出したいなら、俺に言ってくれっ……そしたら来るから……俺に用があるなら、俺だけ狙ってほしい! ヴァグデッドのことは……なんとか撒くから……ま、撒けるか分からないけど、こ、今回は上手くいっただろ!?? だ、だから……その、ヴァグデッドに……魔法をかけるのは……やめてくれないか?」
「……」

 ティウルが俺を睨んでいる。

 本当に怖い……だけど、俺を呼び出すためだけにヴァグデッドに魔法をかけるのはやめてほしい。あいつ、ああ見えて多分昨日は魔物が来ないように見張っていてくれたんだ。勘違いかもしれないけど、俺は感謝しているんだ。

 部屋を出る時に、ヴァグデッドには目が覚める魔法をかけた。眠りの魔法は相手を傷つけるものじゃないし、ヴァグデッドも、すぐに目を覚ますだろう。

 だけど、こんなことが繰り返されるのは困る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

推しのために、モブの俺は悪役令息に成り代わることに決めました!

華抹茶
BL
ある日突然、超強火のオタクだった前世の記憶が蘇った伯爵令息のエルバート。しかも今の自分は大好きだったBLゲームのモブだと気が付いた彼は、このままだと最推しの悪役令息が不幸な未来を迎えることも思い出す。そこで最推しに代わって自分が悪役令息になるためエルバートは猛勉強してゲームの舞台となる学園に入学し、悪役令息として振舞い始める。その結果、主人公やメインキャラクター達には目の敵にされ嫌われ生活を送る彼だけど、何故か最推しだけはエルバートに接近してきて――クールビューティ公爵令息と猪突猛進モブのハイテンションコミカルBLファンタジー!

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。 この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。 ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...