18 / 80
18.過保護では?
しおりを挟む散らばったお金は、公爵様も拾うのを手伝ってくれて、すぐに集めることができた。
途中で、俺の方が多く集められるって公爵様が言い出して、しかも、そうなったらなぶりものになれと訳の分からない脅迫を始めた。売り言葉に買い言葉。僕は、「だったら僕が集めたら僕が閣下を鞭で打ちます!」と、とんでもないことを口走ってしまい、魔法で硬貨を取り合うことになった。よく考えたら、僕が公爵様を鞭で打つなんて、できるわけないのに……
それでも、素材を集める時に何かを回収する魔法はいつも使っているし、絶対勝てる自信があった。
だけど、あっさりボロ負け。
だって魔法の技術では公爵様が圧倒していたんだ。勝てるはずないだろ!
しかも、ニヤニヤニヤニヤ笑いながら、後で楽しみにしてろよ、と聞いただけで夢に出て来そうなことを言われた。
その日は、怖くて眠れないような気がした。
だけどあっさりぐっすり眠った僕。
朝起きたら、隣のベッドで公爵様が寝ていて、変な気分だった。夢なのかと思っちゃいそうだったけど、それは現実で、公爵様もぐっすり寝ていた。
よく寝てるなー…………昨日、あんなに怖いことを言ったのに。
それに、公爵様は寝ていても美しいな……寝息を立てているところ見ていたら、ドキッとしてしまいそう。
どうしよう……起こした方がいいのかな?
だけど、まだ魔物退治に出かけるには早すぎる時間だ。公爵様も疲れているだろう。昨日は、僕が呼びつけたから、夜遅くに訪ねて来てくれたんだ。
もう少し、眠らせておいた方がいいかな……
僕は、公爵様を起こさないようにこっそり起きて、そっとドアを開けて部屋を出た。
*
公爵様から貸していただいている屋敷は、たまに庭や屋敷を整備する人が来てくれるけど、屋敷の中にいるのは、いつも僕一人。だから、屋敷の中は好きに使わせてもらっている。
屋敷にはいくつも部屋があって、僕が生活するために使っているのはさっきの部屋だけ。
あとは、集めた素材を保管したり、公爵様のお城に送る前に素材を整理したり、素材から魔力が溢れ出たり、運搬の時に危険がないように魔力で抑えるための部屋に使っている。
朝から部屋を回って素材の様子を確認したり、部屋をきれいにしたり、公爵様からお借りした装備や魔法の道具の調整をしたりするのが、僕の日課。
その前に台所でお茶を淹れて、一度玄関から外に出る。
そして、玄関を見下ろすようにして立っている木の上で、あくびをしながら座っている魔法使いさんに、頭を下げて挨拶をした。
「おはようございます。お疲れ様です」
言って、持ってきたお茶を差し出す。
すると、魔法使いさんは、僕にすぐに気づいて、木から降りてきてくれた。
「おはよー。昨日は大変だったね」
「え……?」
「急に公爵閣下が来たんだろ?」
「は、はい……」
答えながら、お茶を差し出す。
彼は、僕を監視するためにいる魔法使いのウィクフィトレット様。
僕を監視している魔法使いさんは数人いて、一日に何度か入れ替わる。彼はそのうちの一人だ。
毎朝こうして挨拶をする僕を、最初はなんだこいつ、みたいな顔で見ていたけど、最近は、こうして普通に話せるようになった。
「何か必要なもの、ある?」
「い、いえ……大丈夫です」
「そっか。あ…………」
彼は、持っていたマグカップを魔法で浮かせると、その場で頭を下げた。
「おはようございます。公爵閣下」
え……?
公爵様??
振り向けば、玄関に公爵様が立っていた。寝巻きにマントだけ羽織った姿で。
僕も慌てて頭を下げる。
「お、おはようございます。公爵様!」
「…………」
彼は、無言で近づいてきて、僕を引き寄せる。強くそんなことをされて、驚いていたら、頭上で「ここにいたのか……」と、ぼそっと呟く声が聞こえた。
「……あ、あのっ……公爵様??」
驚く僕を、公爵様はちょっとムッとした顔で見下ろしている。
「朝起きたら貴様がいない。どこへいっていた?」
「え…………」
もしかして、逃げたんじゃないかと不安にさせてしまったのかな? 僕、一応ここに幽閉されているんだし。
「あ、あの……僕、逃げたりしてません!」
「……逃亡を疑っているんじゃない」
え……? 違うの?
公爵様は、僕を離してくれた。
どうしたんだろう……よく分からないけど……
「あの、僕……ウィクフィトレット様に挨拶をしにきただけです」
「そうか……」
公爵様は、ウィクフィトレット様に振り向いた。
ウィクフィトレット様が、公爵様ににっこり微笑む。
「おはようございます。閣下」
「…………おはよう。ウィクフィトレット……明日からは、昼に監視につけ」
「昼に……ですか?」
「素材探しに同行して、回復の魔法が必要な時は、助けてやるんだ」
「……回復は、こちらからお渡しした回復の魔法の薬で事足りていそうですが……」
「魔法の薬だけでは間に合わないこともあるだろう。監視と同時に回復もしてやれ」
「……閣下………………普段昼に彼の素材集めに同行している者に聞きましたが、彼は一人でも十分素材を集められています。だんだん過保護になっていませんか?」
「…………」
公爵様はしばらく黙ってしまう。
そして、そっぽを向いて言い返した。
「そんなことはない……これが集めるものが欲しいだけだ……」
364
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。
オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話
あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」
トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。
お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。
攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。
兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。
攻め:水瀬真広
受け:神崎彼方
⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。
途中でモブおじが出てきます。
義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。
初投稿です。
初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる