21 / 80
21.いいんですか?
しおりを挟むそれからしばらくの間、僕は素材をいつもより多く集めて、使いの方に渡し続けた。僕にできることは、なんでもしたかった。
そして、公爵様が僕に会いに来なくなってしばらく経った頃、僕のところには、ウェタフィル様じゃない魔法使いが来るようになった。監視のウィクフィトレット様も違う人と交代したらしく、最近はずっと会っていない。
何でも、彼らは公爵様が信頼する魔法使いらしく、最近では公爵様の魔物退治に同行しているようだ。
新しく監視に来た人たちも、最近の公爵様は城にいないことが多く、側近たちでしかお会いすることはできず、伝言も緊急のものしかできないと言っていた。強力な魔物が群れで現れたらしい。
そんな時に、僕がわがままを言うことなんてできるはずもなくて、僕は、強化した武器や道具、魔法の素材なんかを、できる限り渡した。
僕に集められるものは全部集めて、武器の強化も引き受けるようになった。道具の改良もつづけている。僕の集めた素材で新しい道具が用意できて、それが魔物を倒す大きな助けになったと言われた時は嬉しかった。
そして、またしばらく経ったある日の朝、僕は、いつも素材を公爵様のお城まで運んでくれる魔法使いが来てくれるのを待っていた。いつもは夜に来るんだけど、昨日の晩、次は明日の朝来ると言っていたからだ。
素材の準備をして、玄関の近くでずっと待っていたら、回収に来てくれたのは、他に数人の魔法使いたちを連れたウェタフィル様だった。
「ウェタフィル様っ……!? ど、どうしたんですか!?」
「素材を受け取りに来ました」
「そ、それはもちろん用意してありますが……ま、魔物退治はどうしたんですか!?」
「完了しました。周辺の安全も確認し終わり、公爵閣下も数日前に城に戻っています」
「ほ、本当に!? 公爵様はっ……公爵様はご無事ですか!?」
「はい。もちろん」
それ聞いた僕は、ひどくホッとして、足の力が抜けてしまいそうだった。
「……よ、よかったぁ…………本当に…………」
「……閣下はご無事です。どうか、ご安心ください」
「は、はい!! あ、あのっ……! お会いすることはできませんかっっ!??」
「閣下に……ですか?」
「はい……だ、ダメですか?」
「……それは……かなり難しいです」
難色を示されて、落胆してしまう。
だけど……そうだよな……魔物退治が終わったばかりなんだし……
「……や、やっぱりですか……」
「はい…………申し訳ございませんが、あなたは、公爵家を騙し素材を渡さなかった領主の城から、素材の代わりに売り渡されて来たと、城では言われていますから…………今、公爵様のお城に招くことは……難しいです」
「…………」
そうだよな……確かに、領主様が渡せなかった素材の責任を取るため、僕はここに来た。そして、使えなかったら捨てると言われているんだ。素材の代わり、みたいなものか?
だけど……公爵様にはそう言われたけれど、ここでの扱いは、そんなに悪くない。
素材は回収しているけど、やけに急かされたり、無茶な量を言い付けられたことはない。公爵様の城から要望を言われることもあるけど、一方的なものではなくて、監視の人に僕からの返事も伝えてもらって、話し合いで決めている。食事も屋敷も用意してもらって、必要なものも全部渡してもらって、報酬までもらった。
連れて来られる時は、素材を集める道具扱いされるんだろうと思っていたのに…………ここでの扱いと比べたら、領主様の城での扱いの方が、ずっと悪かった。ぶっ壊れなかったのが不思議なくらいだ。
それでも、一度公爵家を騙した領主の城から来た奴が、いきなり公爵様の城に行きたいです! なんて言って、簡単に招き入れてもらえるはずがない。だったら、せめて……
「あ、あの……それなら、また武器の強化に使えそうな素材とか、回復に使えそうなものを集めたので、渡して貰えませんか?」
「構いませんよ」
「ありがとうございます……」
僕がお礼を言うと、彼は、閣下には必ず伝えますと言って、他の魔法使いたちを連れて去っていった。
今日はこれで終わりか……もう少し、公爵様の話を聞きたかったけど……仕方ないよな。
そう思い直して、僕は、今日も素材の回収に出る準備を始めた。
屋敷に入って、装備を確認したり、武器の整備をしていると、玄関のドアが激しく叩かれた。びっくりして、魔物かと思ったくらいだ。
慌てて玄関に出ると、そこに立っていたのは、公爵様のお城に帰ったはずのウェタフィル様だ。よほど焦って飛んで来たらしく、彼は肩で息をしていて、全身に汗をかいて、ローブが濡れるほどだった。
「ど、どうしたんですか!? ウェタフィル様っ……わ、忘れ物ですか?」
「違います…………い、急いでっ……」
「えっ……?」
「公爵閣下がお会いになるそうですっ!! すぐに準備をしてください!!」
「え? こ、公爵様がっ……!?? い、いいんですか?」
「早くっっ!!!! すぐに連れてこいとのご命令です!!」
「は、はいっっ!! すぐに準備しますっ!!」
364
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話
あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」
トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。
お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。
攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。
兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。
攻め:水瀬真広
受け:神崎彼方
⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。
途中でモブおじが出てきます。
義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。
初投稿です。
初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。
オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる