ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐

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13.なんとなくだ

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 領主様は、ベリレフェク様に振り向いた。

「それで? 貴様はなぜ俺を狙った? 王家の命令か?」
「…………」

 ベリレフェク様はしばらく黙っていたけど、やがて口を開いた。

「そうだな……そんなところだ」

 開き直ったのかな……もう敬語ですらない。

 彼は、領主様を睨んで言った。

「向こうからは、お前か、この近くの森で魔物退治をする部隊の隊長、どちらかを消してこいと言われている」
「なんだと……?」
「どちらかに消えてもらい、ここの魔物に対する戦力を削いで、ここを手に入れたいらしい」
「それで、俺を狙ったのか?」
「ああ」

 あっさり答えたな……

 そんな雑な理由で、領主の命を狙ったの?? どっちか殺してこいなんて言う王家も王家だが、この人もこの人だ。

 ベリレフェク様はまるで悪びれた様子もなく続けた。

「俺も、王家の思惑については詳しく知らない。ただ、どちらかの首を取れば、使者としての任を解き、城に戻してやると言われただけだ」
「…………そうまでして、城に戻りたいのか?」

 首を傾げる領主様の前で、ベリレフェク様はニヤリと笑う。

「……俺の本当の標的は、そこにいるからな…………」
「……王族か…………」
「さあな」

 言って、肩をすくめるベリレフェク様。

 狙いは王家だ。

 だから今は従順なふりをして、王城に戻してもらえるように領主様を狙ったんだ。

 ゲームでも王家を裏切ってたし……よほど王族が気に入らないらしい。

「そっ……そんな理由で領主様を狙われたら困ります!!」

 つい、そう声をあげてしまった。

 領主様が死んだら困る。

 領主様もベリレフェク様も、僕に振り向いた。

 ベリレフェク様は驚いたように言う。

「……お前が身を挺して領主を守るとは思わなかった」
「だ、だって……領主様を殺されたら、困るから……」

 言うと、ベリレフェク様はそれが不思議なんだと言って、肩をすくめた。そして、領主様に向き直る。

「それで? 俺のことはどうする?」
「……ずいぶん簡単に吐いたじゃないか。それで全てか?」
「まだ何か、話していないことがあると思っているのか? 残念だが、ない。ただ、俺は痛い目に遭うのが嫌なだけだ」

 ……ベリレフェク様の言うこと、分かる気がする。

 ……だって、領主様の拷問は怖い……

「全て話したんだ。殺すなら一思いに殺してくれ。苦しむのは嫌だ」

 言って、ベリレフェク様は首を見せる。切るなら切れって感じだ。

 領主の命を狙ったからには、ある程度の覚悟はできているのだろう。

 だけど……

 ベリレフェク様がいなくなるのも困る!!

 彼は、ゲームの終盤、王都で惨事が起こった時に、強力な回復魔法を使い王都の民たちを救うという、重要な役割を担っている。それに、この領地で魔物が増えた時も、この城のみんなを助けてくれるんだ。

 何しろ彼は回復の魔法で右に出るものがいないほどの腕を持っている。回復の魔法なら、恐らく王族であっても彼には敵わない。彼がいなくなったら、この城や王都で多くの人が命を落とすかもしれない。

 僕は、慌てて領主様の前で平伏した。

「ど、どうかお願いです!! 領主様!! ベリレフェク様を殺さないでください!!」

 いきなりそんなことを言った僕に、領主様も驚いていた。

「……どうした? その男は、貴様に罪をなすりつけようとしたんだぞ」
「そ、それは分かっています! だけど……か、彼を殺されると困るんです……領主様も、きっと後悔します!」
「またそれか……」

 呆れたように言う領主様。

 そして、ベリレフェク様まで困ったように言った。

「……おい…………なんの真似だ…………俺はお前に庇われるいわれはないぞ」
「そんなのなくたって庇います! ベリレフェク様もっ……早く命乞いしてください!!」
「…………俺は、バレたら殺されても構わないと覚悟していた」
「覚悟しないでください!! あ、あなたはいずれ、勇者と共に多くの人を救うんです!! も、もっと助かろうとしていただかないと、困ります!」
「……気が触れたか?」

 呆れたような様子のベリレフェク様。僕は必死に命乞いしてるのに!!

「どうか…………領主様っ! あ、あのっ……」
「なぜ俺の従者である貴様が、そいつを庇うんだ?」
「かっ……彼の魔法は、いずれ領地のためになります! どうかっ……」
「…………」
「気に入らないなら僕をっ……僕を拷問してください!!」

 すると今度は、ベリレフェク様が僕を止めにかかる。

「おい、やめろ…………なんの真似だ。なぜお前がそんなことを…………」
「ベリレフェク様の魔法は、この領地のためになります!! どうかっ……王家なんかじゃなくて、僕らに力を貸してください!!」

 すると領主様まで、僕を見下ろして言う。

「なぜそうまでして…………」
「だ、だって……僕では……役に立てないので…………」

 これも、本当のことだ。

 ゲーム終盤、領主様は幽閉先から魔物の侵攻を抑えることに協力してくれる。ベリレフェク様だって、領地や王都が危機に陥った時に、民を守るために動くのに。

 その場に、僕はいない。

 主人公に一人背を向けた僕は、一人で惨めに魔物に襲われ、命からがら逃げたところを主人公に救われ、投獄される。そして、牢の中から汚らしい言葉で命の恩人であるはずの主人公を罵倒して、断罪される。最後の最後までクズ。いなくてもいいのは僕だ。

「そんなことは、最初から知っている」

 そう言って、領主様は僕を立たせた。

「俺は、貴様が役に立たないと困るような情けない領主になった覚えはない」
「え…………?」
「そんなことより…………貴様がそいつを庇う理由は、それだけか?」
「……い、いけませんか?」
「……いいや…………ただ、なんとなく気に入らない。それだけだ」

 …………??

 なんとなく気に入らない? よく分からないけど……

 首を傾げる僕。
 領主様は、僕から顔を背けて言った。

「…………なんとなくだ……」
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