ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐

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20.俺からは受け取れないのか?

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 庭を歩いていくと、いくつか素材も集まっていく。どれも強力な魔力を持った、魔法の素材ばかりだ。僕もそれらのことはよく知っているつもりでいたけど、領主様の方が、圧倒的に詳しい。集めた素材で小さな魔法の瓶を作り、別の素材と合わせて魔法をかけて、強い魔力を注ぐ。するとそれは周りにある草木まで巻き込んで小さな丸い玉になる。

「杖につけて使うなら、このくらいでいいか……後々、もう少し強化してやる」
「え…………い、いいんですか?」
「あいつは、回復の魔法を強化すると言ったのだろう? それは、防御の魔法を強化してくれる。回復が必要ないくらいにな」
「…………」

 そ、そんなに?? 領主様、なんだか張り切っているみたいだ。

 ……魔物に対する闘志を燃やしているのかな……

 これから、領地には多くの魔物が現れるかもしれないんだ。

 僕も頑張らなきゃっ……!!

「あ、ありがとう……ございます…………でも、それは受け取れません」
「なに?」
「…………それは領主様が使ってください。僕も、自分で用意してみます…………」
「…………」

 そんな貴重なもの、理由もなく受け取れない。領主様は簡単にやってのけたけど、あんなことができる魔法使いは、なかなかいない。

 ……僕もやってみたいな…………後でやり方を教えてくれないかな……

 けれど、領主様はひどく恐ろしい顔をして言った。

「…………おい……」
「え……?」
「…………俺からは受け取れないと言うのか……?」
「へ!!??」

 な、なんのことだ?!

 よく分からないけど領主様、すごく怖い顔してる!!

 なんで!??

 僕、そんなに変なこと言ったか!? むしろ、当たり前だと思うんだが……強力な魔法の道具は貴重なんだ。そんな大事なもの、おいそれと受け取れない。

 なのに、何でそんなに怖い顔してるの!? 今にも僕を絞め殺してしまいそうなんだけど!!??

「あ、あの……だ、だって…………僕……い、いただく理由がありません……」
「……理由?」
「だって、貴重なものですよね? ……僕がいただくべきではないと思います……」
「………………今日、俺を守っただろう。その褒美だ」
「…………」

 い、いいのかな…………??

 だけど、領主様もこう言ってくれているし……

 僕は、恐る恐るそれを受け取った。

 防御の魔法の強化……やってみたかったんだ。

「ありがとうございます……領主様…………」
「……大事にしろ。そんなもの、二度と手に入らないぞ」
「はい……」

 領主様は、腕を組んで微笑んでいた。なんだか嬉しそう……

「そんなに防御の魔法を強化したかったのか?」
「は、はい…………だって……」

 あ、まずい。これは言わない方がいい。

 だけど、そんなことに気づくのが遅かった。

 領主様が僕に一歩近づいてくる。

「どうなんだ?」
「……あ、その…………」
「…………隠し事をすると、ためにならないぞ…………」
「ひっ……!!」

 あまりにも怖すぎて、震え上がる僕。

「だ、だって…………その、ぼ、防御の魔法があれば、領主様に痛めつけられても痛くないかなって思って…………」
「………………俺がそんなことをすると思っていたのか?」
「へ!? だ、だって……そのために呼んだんじゃないんですか? 僕、反逆を疑われてるんですよね?」
「そんな疑いなど、もう晴れた!!」
「ほ、本当ですかっっ!!!? ありがとうございます!!」

 じゃあ僕、拷問されないんだーー!!

 痛い思いしなくていいんだ!! よかったーー!!

 ホッとして嬉しい僕だけど、領主様はひどく僕を睨んでいた。

「なんなんだ……貴様は…………」
「え? 何か変でしたか?」
「……ベリレフェクは、貴様のことを殺そうとしたんだぞ…………」
「だ、大丈夫です!! ベリレフェク様は、最後には優しいので!!」
「…………あいつのことはそう言って、仲良く部屋にいるくせに、俺のことはなぜ怯えるんだ?」
「へ!?? えっ……と…………だ、だって…………領主様には吊るされたし…………い、痛いのは嫌です…………」
「…………っっ!!」

 ……あ……余計なこと言っちゃったかな…………領主様の目が怖い。
 しかも立ち止まってしまうから、僕もつられて立ち止まった。

「領主様…………?」
「…………」

 領主様って、こんなふうに言い淀んだりする人だったんだ…………なんだか、意外だ。ほとんど会ったことのない領主様だけど、そんな風に、言葉に詰まったりするんだ…………

「…………反逆は、もう疑っていない…………だから安心しろ」
「へ?」
「…………悪かったな……」
「…………」

 やっぱり、今日の領主様……いつもと違う……

 キョトンとしていると、領主様は、城の方に戻っていく。

「あ……ま、待って…………領主様!」
「戻るぞ……次の夜会のことも、決めなくてはならないからな」
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