ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
31 / 45

31.なんでこんなにむきになるんだ

しおりを挟む
 一体、何を言っているんだろう……領主様が、ベリレフェク様に気がある……??

「そ、そんなっ……! そんなはず、ありませんっ……!」

 気づいたら言い返していた。だって、そんなはずない。

「絶対に違います!! 違うと言ったら、違うんです!! そんなはずがありません!!」

 強く言い返すけど、オフィガタス様は冷静に聞いてくる。

「なぜ、そんな事が言えるんだ?」
「へ??」
「そっちこそ、何か絶対に違うと断言できる理由でもあるのか?」
「……そ、それは…………」
「ほら見ろ。そっちこそ、理由なんかないんじゃないか」
「そ、そんなこと、ありません!!」

 ほとんど怒鳴っていた。相手は公爵家の方なのに。
 それをこんな風に怒鳴るなんて、なんでこんなにむきになってるんだ……

「そ、そんなはずがありませんっ……り、理由ならありますっ……あ、あのっ……! だ、だって…………!」

 落ち着け、僕。カッとなりすぎだ。

 落ち着いて考えれば、ちゃんと理由ならあるじゃないか。

 だって、ベリレフェク様は領主様を殺すつもりだったんだ。僕の目の前で、剣を振り上げて。だけど失敗して、今はここで働いている。

 王家の方には、言い争いの末に領主様に魔法を放って、ここでしばらく処罰として働かせると話してある。王家の企みで命じられて本気で暗殺しようとしたという話は、僕らと、領主様に近い側近の間でだけ共有されている秘密だ。暗殺に失敗なんて、そんな話を王家が知れば、必ずベリレフェク様を消しに来る。だからこれは、ベリレフェク様を守るための策だった。もちろん、王家は疑っているだろうけど……今のところ、動きはない。

 ベリレフェク様は王城に戻ることをまだ諦めていないみたいだし、たまに冗談みたいに領主様に喧嘩を売ったりしてる。

 そんなベリレフェク様に、領主様が思いを寄せているって…………?

 そんな、まさか………

 オフィガタス様にも、暗殺の話はしていない。だから彼は、表向きの経緯しか知らないはず。
 けれどそれでも、ベリレフェク様が領主様を攻撃しようとしたことは伝わっているはずだ。それなのに、なんで領主様がベリレフェク様を好きだなんていう話になるんだ。

「ベリレフェク様は、よく領主様と言い合いだってしてるしっ……そっ……それでここでしばらく働くことになってて…………それなのに、領主様がベリレフェク様に思いを寄せているはずがありません! そっちだって!! な、何か、根拠でもあるんですか!?」

 僕は、そんなの、絶対に信じないぞ!!

 だって、そんなはずないんだから!

 根拠だって絶対にないはずなのに、オフィガタス様は、自信満々といった様子で頷いた。

「もちろんだ」
「え……あるんですか? 根拠……」
「俺だって、根拠もなくこんなことは言わない。むしろ、今こうして口に出していることすら、腹立たしいくらいだ!!」
「……腹立たしいって…………そっちが勝手に言ってるのに……」
「まず、一つ目の根拠だ。あの男は、いつも自分の隣にベリレフェクを置いていただろう?」
「え!?」

 そう言われてみれば…………ベリレフェク様は王家からの使者だけど、この領地にいる事が多かった。
 そして、少し前まで、領主様はベリレフェク様と一緒にいることが多かった。いつも護衛ですら連れて歩かないのに、ずっと領主様の隣にいるのは、ベリレフェク様…………だったよな……

 え……う、嘘!!

 そ、そ、そんなはずない!!

「べ、ベリレフェク様が領主様のそばにいたのは、王家からの使者だからで……だ、だから、こ、ここの魔物の状況を知るために……そばにいるだけです! そ、それだけなんです! だから、領主様がベリレフェク様を好きだなんて…………それは、オフィガタス様の誤解です!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

推し変したら婚約者の様子がおかしくなりました。ついでに周りの様子もおかしくなりました。

オルロ
BL
ゲームの世界に転生したコルシャ。 ある日、推しを見て前世の記憶を取り戻したコルシャは、すっかり推しを追うのに夢中になってしまう。すると、ずっと冷たかった婚約者の様子が可笑しくなってきて、そして何故か周りの様子も?! 主人公総愛されで進んでいきます。それでも大丈夫という方はお読みください。

婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。

零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。 鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。 ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。 「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、 「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。 互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。 他にも幼馴染み達の一抹の寂寥を切り取った短篇や、 両想いなのに攻めの鈍感さで拗れる二人の恋を含む全四篇。 フッと笑えて、ギュッと胸が詰まる。 丁寧に読みたい、大人のためのファンタジーBL。 他サイトでも公開しております。 表紙ロゴは零壱の著作物です。

「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された

あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると… 「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」 気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 初めましてです。お手柔らかにお願いします。

【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)

てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。 言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち――― 大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡) 20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!

冷徹茨の騎士団長は心に乙女を飼っているが僕たちだけの秘密である

竜鳴躍
BL
第二王子のジニアル=カイン=グレイシャスと騎士団長のフォート=ソルジャーは同級生の23歳だ。 みんなが狙ってる金髪碧眼で笑顔がさわやかなスラリとした好青年の第二王子は、幼い頃から女の子に狙われすぎて辟易している。のらりくらりと縁談を躱し、同い年ながら類まれなる剣才で父を継いで騎士団長を拝命した公爵家で幼馴染のフォート=ソルジャーには、劣等感を感じていた。完ぺき超人。僕はあんな風にはなれない…。 しかし、クールで茨と歌われる銀髪にアイスブルーの瞳の麗人の素顔を、ある日知ってしまうことになるのだった。 「私が……可愛いものを好きなのは…おかしいですか…?」 かわいい!かわいい!かわいい!!!

学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました

こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。

佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。

処理中です...