ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
32 / 45

32.今になって

しおりを挟む
 僕が否定したって、オフィガタス様は、よほど自信があるのか、胸を張っていた。

「そんなはずがない。魔物の状況の報告など、ずっとそばにいなくてもできるだろう」
「それはっ…………そ、そうかも知れませんが……」
「お前にも、覚えがあるんじゃないか? あの二人を見ていれば、分かるはずだ!!」
「………………」

 見ていればって言われても、見てるから言ってるんだ!

 だいたい、倉庫でめちゃくちゃ険悪に喧嘩してたじゃないか!

 …………でも……

 よく考えてみたら、二人ともやけに距離が近かったような気がする……

 しかも、ベリレフェク様は敬語もなく話しているから、やけに親しげに見えた。

 一度領主様の命を狙ったベリレフェク様だけど、別に鎖で繋がれて自由を制限されているわけでもないし、強制的に重労働をさせられているわけでもない。計画がバレて、領主様と僕とベリレフェク様の三人でいる時は、敬語も使わないし、平気で領主様に剣を向けたりして、僕はハラハラするくらいだ。

 あれだけ近い距離で喧嘩までできるのは、もしかして……それだけ仲がいいから!?

 …………そういえば領主様、命を狙われたのに、まるで気にしてない。剣を向けられることもだ。

 もしかして…………

 領主様は、ベリレフェク様のことを愛しているから、そんな態度も暗殺も許すのか!!??

 だとしたら、まさか……本当にっ…………領主様が、ベリレフェク様をっ……!?

 どうしよう……突然すぎて、頭がまるで追いついていかない。

 だって領主様が、ベリレフェク様を好きだなんて……そんなの、考えたことなかった。

 ……落ち着け、僕。まだそうと決まったわけじゃない!

 冷静になれ!!

 全部、オフィガタス様が勝手に言っていることじゃないか!!

「あ、あのっ…………そんな不確かなことを言うのはやめてくださいっっ……!! 領主様がベリレフェク様を好きだなんてっ……!!」
「いいや。絶対にそうだ。だからあの男は常にベリレフェクを付き従えさせているんだ。他にベリレフェクがあの男の後ろに控えている理由などないだろう! そうでないのなら、他の側近を連れて行けばいい!!」
「それはっ…………!」

 そんなことを言われたら……

 ますます二人の距離が近かったような気がしてきた……

 今日も倉庫に二人で来ていたし……

 ……あれ?

 じゃあ、もしかして、あの倉庫で三人でいる時、僕……二人の邪魔になってた?

 これまで、この城にベリレフェク様が来ている時には、いつも隣に領主様がいた。二人きりで話をしていることもあった。

 だけど、最近領主様は、よく僕といてくれている。魔法の道具のことも教えてくれるし、さっきだって、僕を連れて行ってくれた。

 僕のことを…………側近、とも呼んでくれたし…………

 代わりに、ベリレフェク様が領主様のそばにいることは、ほとんどなくなった。王家からの使者でなくなり、回復の魔法使いとして仕えるようになって、そんな必要もなくなっただけだって思ってたけど……

 はたから見たら、領主様の隣にいたベリレフェク様を押し退けて、僕がそこにいるように見えるんじゃないのか? これまで、ベリレフェク様がずっと領主様の隣にいて、親しげに話していたのに……あれ? 僕、当て馬キャラになってる??
 領主様がベリレフェク様のことを思っているとしたら、僕は明らかに邪魔なんじゃないのか……
 あれ?? 僕……もしかして、気づかないうちに領主様の恋愛を……二人の仲を邪魔しているのか?
 それだけじゃない。さっきは無理を言って領主様にくっついていって、領主様に迷惑をかけたりして…………

 そういえば領主様、怒っていた気がする!!!!

 ……僕…………領主様にとって、邪魔になってる……? もしかして…………あ……悪役に……なってる??

 僕、気づかないうちに、勝手に新しい悪役ルートを作ってる!?? そんなまさかっっ!!

 そもそも悪役を回避するために頑張ってるのに……

 領主様が…………ベリレフェク様のことを……?

 落ち着け! もしかしたら考えすぎかもしれない!!

 そもそも、領主様がベリレフェク様を好きだなんて、オフィガタス様が勝手に言ってるだけだ!! もしかしたら、そうじゃないかもしれないじゃないか……っ!!

 だけど、考えれば考えるほどそんな気がしてくるっ……!!

 だって、自分の命を狙ったベリレフェク様を城に置いているし、これまでずっと、ベリレフェク様が隣にいて…………

 そんなはずない。だって、倉庫でだって険悪にしていたしっ…………!! だけど、今になって考えてみたらもう痴話喧嘩しるようにしか見えなくなってきた!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

「呪いを解くには毎日可愛いと言ってください」と嘘をついたら、氷の聖騎士様が本気で口説きにかかってきました

たら昆布
BL
間違って呪われた青年と呪いを解除したい騎士の話 番外編はその友達たちの話

薄幸な子爵は捻くれて傲慢な公爵に溺愛されて逃げられない

くまだった
BL
アーノルド公爵公子に気に入られようと常に周囲に人がいたが、没落しかけているレイモンドは興味がないようだった。アーノルドはそのことが、面白くなかった。ついにレイモンドが学校を辞めてしまって・・・ 捻くれ傲慢公爵→→→→→貧困薄幸没落子爵 最後のほうに主人公では、ないですが人が亡くなるシーンがあります。 地雷の方はお気をつけください。 ムーンライトさんで、先行投稿しています。 感想いただけたら嬉しいです。

王子様との婚約回避のために友達と形だけの結婚をしたつもりが溺愛されました

竜鳴躍
BL
アレックス=コンフォートはコンフォート公爵の長男でオメガである! これは、見た目は磨けば美人で優秀だが中身は残念な主人公が大嫌いな王子との婚約を回避するため、友達と形だけの結婚をしたつもりが、あれよあれよと溺愛されて満更ではなくなる話である。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 1/10から5日くらいBL1位、ありがとうございました。 番外編が2つあるのですが、Rな閑話の番外編と子どもの話の番外編が章分けされています。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※僕はわがまま 時系列修正 ※ヤード×サンドル終わったのでラブラブ番外編を末尾に移動 2023.1.20

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

【朗報】無能と蔑まれ追放された俺、実は「聖獣に愛されすぎる体質」でした ~最強の騎士団長が毎日モフモフを口実に抱きついてくるんだが?~

たら昆布
BL
鉄血の重執着ストーカー騎士団長×無自覚もふもふ(聖獣使い)な元雑用係

政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話

BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。 ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!

処理中です...