ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐

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45.そんなことをしている間にも

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 話している間にも触れられてるし、領主様は僕を離してくれる気配がない。

 どうしようって思っていたら、倉庫の扉が開いて、ベリレフェク様が入ってきた。

「なんだ、ここにいたのか」

 言いながら入ってきた彼は、扉を閉めて魔法で鍵をかける。

 そして、僕らに振り向いた。

「少しの間、ここにいる……俺には構わず続けてくれていいぞ」

 続けていいって、何!!??

 僕、まだ倉庫の整理の途中なのに……これじゃ終わらないよ!!

 戸惑う僕の背後で、領主様は手を止めて、ベリレフェク様に向き直った。

「出て行け。俺以外の奴が、キャトラズイルの喘ぎ声を聞くのは、我慢ならない」
「そんなもの聞いていない。だったらそんなところで襲うな」
「襲う? 俺はキャトラズイルから離れたくないだけだ。そっちこそ、わざわざここに来て、何の用だ?」
「…………オフィガタスがうるさい」
「オフィガタスが? あいつ……またか……」

 領主様がひどく嫌そうな顔をする。

 あのことがあって、懲りるかと思いきや、オフィガタス様は、この城を訪れる回数が増えた。領主様も、今はこうして嫌そうにしているが、オフィガタス様のことは頼りにしているらしい。
 ただ、ここに来てずっとベリレフェク様の後を追いかけるのは困ったものだけど。

 今も、倉庫の扉が突然開いたかと思えば、オフィガタス様が部屋に入ってくる。

「ここにいたか! ベリレフェク!!」
「オフィガタス……帰れ」

 疲れたようにベリレフェク様に言われても、オフィガタス様はまるで気にしていないみたい。
 あの日、ベリレフェク様に本気で命を狙われたのに、俺はそれでも好きだ! と言ってはベリレフェク様を追い、ひどく冷たいことを言われて落ち込んで、すぐに気を取り直してまたベリレフェク様を追う。今だって、帰れと言われたのに、落ち込んだ様子すらない。

 そしてそれは領主様に対しても同じ。ひどく嫌そうな顔をされているのに気にせず、領主様に向き直る。

「ロウィトレリト! 魔物の状況を報告する書類だ!」
「……早かったな……」
「早い方がいいだろう?」

 倉庫に入ってきたオフィガタス様は、領主様に書類を渡している。なんだかすっかり領主様に懐いてしまっているようだ。

「俺は感動したぞ。ロウィトレリト」
「……何にだ…………」

 冷たい目で領主様に睨まれても、オフィガタス様はまるで気にせずに、涙すら流しそうな勢いで続ける。

「もちろん、あの日お前が俺を助けてくれたことにだ!! 普段は冷たいお前だが、いざとなれば俺を助けてくれただろう!!」
「……助けたんじゃない。俺はキャトラズイルが泣いて頼むから気絶したお前に回復の魔法をかけて、しばらくベッドに放って置いただけだ」
「それなら、俺は二人に礼を言おう!! おかげで助かった! ありがとう!!」

 オフィガタス様は目をキラキラさせてそう言うけど、領主様は呆れ顔。

 それでも、オフィガタス様は本当に感謝しているようで、最近は協力して魔物退治に行くことも増えて、魔物の数は劇的に減った。

 それでも、まだこの領地がとられてしまったり、断罪される危機がなくなった訳じゃない。気を引き締めてかからないといけないのに、領主様にこんなにしょっちゅう触れられていたら、全然集中なんてできない!!

 今だって、領主様は僕を抱き寄せたまま離してくれないし、体のいろんなところに触られて、ずっとドキドキしてる。しかも、下手に逃げようとしたらまた触られてしまうから、大人しくしているしかないんだ。

 だけど……オフィガタス様と話しているのに、そんなにあちこち触らなくてもいいじゃないか!

「あ、あのっ……領主様っ……」
「なんだ?」
「な、なんだって……あのっ…………あ、あんまり触らないでっ……!」
「なぜだ?」
「んっ……!」

 触るなって言ってるのにっ……なんでますます触れるんだよっ……!!

 助けてほしいのに、ベリレフェク様はオフィガタス様を追い出すことに夢中だし、オフィガタス様は出て行かないと言って揉み合いになっている。

 領主様も、もう二人のことは気にしないことにしたようで、僕を抱きしめたまま。

「触っていてやるから、整理を続けろ」
「そんなっ……!!」

 慌てる僕だけど、領主様はそんな姿を見ても楽しそう。早く終わらせないとますます触れられる。
 これが終わったら、僕も領主様に振り向くことができる。そう思ったら、やっぱり嬉しい。また触れてくる手に震えながら、僕は、棚に向き直った。


*ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!*完
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