【本編完結】ネコの慰み者が恋に悩んで昼寝する話

迷路を跳ぶ狐

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番外編5.花嫁修業してドジを直します!

98.クッキーをもらいに行く!

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 城の中を歩いて調理場に向かう僕らだけど、そうする間も、キュウテはすごく寒そうに両腕をさすっている。

「このお城、森の中にあるからかな……寒いよ。クラジュは寒くないの?」
「僕、あんまり部屋から出ないんだ。昼はオーフィザン様のお部屋でお昼寝してて、寒いなんて感じたことないよ」
「いいなー。じゃあ、ずーっとオーフィザンと一緒にいるんだ……」
「……ずっとじゃないよ。昼の間は会えないもん」
「でも、夜は会えるんだよね?」
「うん!」
「……いいな……」
「キュウテはお城では王様といるんじゃないの?」
「……いないよ。僕、陛下のペットって言われてて、普段は後宮にいるんだけど……陛下はちっとも会いにきてくれないし、今日だって、せっかく来たんだからもっと遊んで欲しいのに……」
「キュウテ……」

 キュウテ、すごく寂しそう……本当はもっと王様と一緒にいたいんだよね……僕だって、オーフィザン様のそばにいられなかったら、すごくさみしいもん。

「あ……もうすぐ厨房だよ! クッキー、いっぱい食べよう!」
「うん!!」

 クッキー食べて、キュウテが少しでも元気になるといいなあ。

 あ! 厨房の扉が見えてきた!!

 キュウテも嬉しそうに扉を指している。

「ねえ、あそこが厨房!?」
「うん……」
「……どうしたの? クラジュ。急に元気ない」
「それが……えっと……どうやってダンドを呼ぼうかなって……」
「え? 呼べばきてくれるんじゃないの?」
「ダンドはそうなんだけど……その……他の人に見つかるとまずいんだ。僕、すごく厨房で嫌われてて……」
「そうなの? なんで……?」
「……僕が、その……す、スルメとか盗んでたから……」

 ダンドに「これから俺があげるから盗んじゃダメ」って言われてから、僕もダンドに申し訳なかったと思って、もう盗まないようにしてる。だけど、やっぱり僕が厨房へ行くと、みんなに警戒されちゃう。

 キュウテも、さすがに苦い顔をする。

「えー……盗むなんてダメだよ。僕も山から城に連れてこられた時、それはダメって教えられたよ?」
「ぼ、僕も分かってるけど……さ、最近はしてないよ……? だけど、その……」
「ちょうだいって言えばいいんだよ!! 言いにくいなら、僕が頼んであげる!!」

 キュウテは先に厨房へ走って行ってしまう。ほ、本当に大丈夫かな?

 彼がコンコンって、厨房のドアを叩く。

 すると、しばらくして、これから休憩なのか、私服姿の人が出てきた。

「なんだ? お前。この城のやつか?」
「僕、キュウテって言います。あの、ダンドって人にクッキー焼いてもらいたいんです」
「ダンド? あいつ、いたかな……? 少し待ってろ。呼んで来てやるから………………って、クラジュじゃねえか……」

 うわあああ! 見つかった!! 柱の後ろに隠れてたのに!!

 びっくりして柱に顔を隠しちゃうから、ますます疑われちゃったみたい。

 その人は、僕に近づいてくる。

「お前……それで隠れたつもりかよ……またスルメ盗みにきたのか?」
「ち、違います! 僕、もう盗んだりしません……」
「本当かよ……?」
「本当です! ダンドにも言われました!」
「どうだか……あ、お前、盗む代わりにダンドにたかりに来たんだろ? やめろよ、そういうこと。ダンドだって、お前がああいうことするたびに、代わりに怒られてるんだぞ」
「ううう……ご、ごめんなさい……もうしません……でも、本当にスルメのために来たんじゃなくて……その……僕、クッキーがほしくて来ただけです……」
「やっぱりたかりに来たんじゃないか」
「う……」

 そう言われちゃうと……そんな気がしてきた。もしかして、僕がくると、ダンドに迷惑なの?

 悲しくて僕は俯いちゃう。ついでに耳も尻尾もぺたんで垂れちゃう。

「お、おい……そんなにへこむんじゃねーよ……俺がいじめた感じになるだろ……」
「だって……」
「あー、もう仕方ねーな! 少し待ってろ!」

 彼は出て来たばっかりの厨房へ戻って行く。え? 呼びに行ってくれるの?

「優しい人だねー」
「え?」

 キュウテはニコニコしながら僕を見ている。

「う、うん……」

 確かにありがたい。後でお礼言おう。

 三人でちょっと待つと、中からさっきの人が出て来た。

「悪い。ダンドは倉庫だ。ワインを取りに行っているらしい」
「ありがとうございます! じゃあ、僕、倉庫に行って見ます!」

 早速倉庫に向かおうとするけど、すぐに腕をつかまれて止められちゃう。

「待て待て待て待て待て!! お前が行ったら何が起こるかわからないだろうが!! どうせワインの瓶、全部割るんだろ?」
「そこまでひどいドジはしないです……僕、昔は倉庫で寝てたから、倉庫には慣れてるし……」
「信用できねーよ。ワインだけですんだらいい方だ。お前を倉庫にはやれない」

 そんなあ……それじゃダンドに会えない。

 落ち込む僕の肩に、後ろからキュウテが手を置いて、元気に言った。

「大丈夫です! 僕らがいるから!!」
「……そうか? 悪いな。俺がついていってやれればいいんだけど、今から仕込みなんだ」
「気にしないでください!!」
「……お前、かわいいやつだなー。どこから来たんだ?」
「お城です」

 その人は、キュウテの頭をなでなでしてる。

 うー……僕の相手をする時と、態度が違わない?

「気をつけろよ。クラジュといると、とんでもないドジに巻き込まれるからな……」
「大丈夫です! 行こう! クラジュ!!」
「うん……」
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