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番外編5.花嫁修業してドジを直します!
97.お客さんをもてなします!
しおりを挟む僕は、フィッイルさんとキュウテさんを連れて、このお城で一番気持ちいいところへ来た。この時間、一番太陽の光が入って来る、南側の部屋だ。この部屋のいいところは、もともとお客さんが泊まるための部屋だから、大きなふっかふかのベッドがあること。
僕は早速ベッドに飛び乗った。
「ほら! ここならあったかいし、休めますよ!!」
すぐにキュウテさんもベッドに飛び乗ってくる。
「うわあああ。ふかふかあああ。本当に気持ちいいね」
よかった! キュウテさん、喜んでくれたみたい。
フィッイルさんも、ベッドにごろんと横になる。
「ああー!! 疲れたーー! やっと羽が伸ばせる……毎日肩が凝って……」
よかったあ。二人とも喜んでくれたみたい。
オーフィザン様! ちゃんと僕、お客さんを喜ばせましたよ!! あとで褒めてください!!
二人とも気持ちよさそう。フィッイルさんは毛布にくるまって眠そうにしているし、キュウテさんはあったかい太陽の光にあたりながら丸くなっている。
「……ねえ、クラジュ。おやつない? お腹すいた」
キュウテさんに言われて気がついた。
大変だ! この部屋にはおやつがない!!
「えーっと……そうだ! オーフィザン様の部屋にクッキーがあるんです!」
早速取りに行こうとしたけど、それより先に、ドアがコンコンとノックされた。誰だろう?
急いでドアを開ける。
するとそこには、兄ちゃんが立っていた。
「クラジュ、紅茶とクッキーを持ってきたぞ」
「な、なんで兄ちゃんが……」
びっくりする僕を尻目に、兄ちゃんは美味しそうなクッキーが乗ったお皿と、湯気をあげるティーポットを乗せたワゴンを押して、部屋の中に入ってくる。
「今はセリュー様もダンドさんも忙しいんだ。それに、お前が物を壊さないように見張るのは俺の役目だからな。壊してないか?」
「う、うん……」
「こら! ティーカップに触るんじゃない! ガラスと陶器に触れちゃダメだと言っているだろう!!」
「はい!!」
びっくりして、僕はティーカップから手を離した。
兄ちゃんは僕が触れたティーカップを丁寧に拭きながら、壊れたところがないかチェックしてる。
「そうだ。クラジュ、お前、オーフィザン様と婚約したというのは本当か?」
「え? う、うん……」
「そうか……」
「……兄ちゃん?」
感極まったのか、兄ちゃんは目頭を拭っている。
「……よかったな……あの方がお前を選んでくださるなんて…………じゃあ、頑張ってドジを直さないとな……」
「う、うん……」
「ウェディングドレスを破らないようにならないとな……」
「僕、ドレスなんて破ったことないもん……」
「だが着れば必ず破るだろう! ダメだぞ。弁償できないんだからな!」
「は、はい……」
うう……絶対ドジ、直そう……
俯いていたら、ワゴンの端から、ぴょこんと猫の耳が出てきた。キュウテさんだ。彼は、ワゴンのそばに座って、その上のクッキーを指差している。
「あの!! これ、おやつですか!?」
キュウテさん、嬉しそう。キュウテさんにも、この美味しそうな匂い、分かるんだ!!
「これがダンドのクッキーです!! すっごくおいしいんです!!」
僕は嬉しくて答えるけど、兄ちゃんに頭をこんって小突かれちゃう。
「こら、クラジュ。お客さんに失礼だろ」
「ご、ごめんなさい……」
ううう……怒られた。
シュンとなっちゃう僕の肩に、キュウテさんがぽんって両手を置く。
「僕とクラジュ、もう友達だから、失礼じゃないです! クッキー、食べていいですか!?」
キラキラした目で聞くキュウテさんに、兄ちゃんも笑顔で答える。
「もちろんです。クラジュと仲良くしてやってください……」
「はい! クッキー!!」
パタパタ尻尾を振りながら、キュウテさんは両手にクッキーを持って、またベッドに飛び乗った。
キュウテさんばっかりずるい!
僕もクッキーを持って、布団にゴロンって横になる。
うわあ……寝ながらクッキー、最高。
だけど、兄ちゃんには注意されちゃう。
「クラジュ、寝ながらクッキーを食べるんじゃない。キュウテさんも、紅茶をここに置いておきますから、飲みに来てくださいね」
「はーい」
「はーい」
せっかく気持ちよかったのに……
名残惜しいけど、僕はキュウテさんと二人でベッドから降りてソファについた。
兄ちゃんが二つのティーカップと、「クラジュ用」って描かれた割れない木のカップに紅茶を注いでくれて、ふわふわあったかそうな湯気が浮かんだ。
「じゃあ、俺はこれで。何かあれば呼んでください。クラジュ、壊すなよ」
兄ちゃんは、ワゴンを押して出て行き、部屋の中は僕ら三人だけになる。
「ねえねえ、クラジュ。お皿、ベッドに持っていかない?」
「え?」
キュウテさんに言われて、ちょっとびっくりしたけど、本当は僕も、それしたい。
「じゃあ、ベッドで食べよう!!」
僕はお皿を持って、ベッドに飛び乗った。キュウテさんとフィッイルさんもベッドに上がって来て、三人でクッキーをつまむ。
キュウテさんは、すごく嬉しそうに笑ってくれた。
「ありがとうー。すっごく美味しい!」
「僕もこれすごく好きなんです!」
「あ、もう敬語なしにしよう? その方がのんびりできるよ!」
「え? そ、そうですね! そうしよう!」
キュウテさん、優しい人でよかった。
フィッイルさんも横になりながらクッキーを食べてくれる。
「うまいじゃん、このクッキー。僕、これ好き」
「よかったあ……」
甘いクッキーを食べてふかふかの布団に包まるとすごく落ち着く。
ホッとしたし、あったかいし、クッキーおいしいし、なんだか眠くなってきたあ……
クッキーを食べながらウトウトしていると、フィッイルにどこか冷たい感じで言われた。
「お前は幸せそうだね……」
「え?」
「オーフィザンといて、幸せなの?」
「それはもちろん! 僕、オーフィザン様が大好きだから!」
「ふーん……まあ、いいや。クッキーちょうだい」
「う、うん!!」
フィッイルも美味しそうにクッキー食べてるし、喜んでくれてるんだ。よかったあ。
一緒にいたキュウテも、お腹が空いていたのか、クッキーを次々食べている。
「これすっごく好きー! 城に帰ったら陛下に頼んでいっぱい買ってきてもらうー!」
「あ、これ、ダンドが作ってくれるんだ」
「ダンド?」
「この城のシェフで、美味しいものいっぱい作ってくれるの!」
「へえ……いいなあ。陛下のお城に来てくれないかな?」
「だ、だめ! ダンドは僕の友達なんだから!」
「そうなんだ……じゃあ、連れて行っちゃダメだよね……分かった。じゃあ今のうちにいっぱい食べておく!! あれ……もうない……」
あ、本当だ。もうない。だけどお腹すいた……三人で食べるにはあの量じゃ足りない。
「そうだ、ダンドなら調理場にいるから、クッキー、焼いてくれるように頼みに行こう!」
「行く!! いっぱいクッキー食べたい!!」
「フィッイルも行こう!」
すぐにキュウテが賛成してくれて、僕はフィッイルに振り向くけど、フィッイルはだいぶ嫌そう。
「二人でもらってきてよ。僕、あいつには会いたくない」
「え? ダンドのことも知ってるの?」
「……うん……まあね……」
そうなんだ……ちょっとびっくりした。
ダンドは、昔は狐妖狼が嫌いだったはずだ。今はオーフィザン様が狐妖狼の力を完全に封じてくれたからいいけど、前はあんなに怯えていたのに。
「とにかく、僕はここで待ってるから。二人でもらってきてー」
フィッイルはごろんと横になってしまう。それを見て、キュウテが彼を怒鳴りつけた。
「そんなのずるいよ!! フィッイルも行かないとダメ!」
「はあ……? うるさい。なんなのお前」
「行かない人はクッキーないよ」
「うー……」
フィッイルは面倒臭そうに立ち上がる。
「仕方ないなー……行くか……」
「うん! 行こうー!!」
キュウテは楽しそうだなー。
あれ? フィッイル、オーフィザン様の使い魔の犬を見てる。可愛いから気に入ったのかな?
「クラジュー、フィッイルー、早く行こうよ」
ドアのところで、キュウテが僕らを呼んでる。僕は急いで彼についていった。
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