【本編完結】ネコの慰み者が恋に悩んで昼寝する話

迷路を跳ぶ狐

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番外編7.最終決戦

122.幸せにする!

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 泣きながらペロケが差し出した花を、オーフィザン様は笑顔で受け取り、彼の頭を撫でた。

「ありがとう。ペロケ……」
「……ぅっ……こっ、この馬鹿猫が嫌になったらいつでも僕に言ってください!! 僕が殺しますから!!」

 ……怖いことを言われている……しかも絶対に本気だ。

 周りの人も、みんな泣いてる。

「お、オーフィザン様!! その馬鹿に嫌気がさしたら、いつでも俺におっしゃってくださいっ!! 俺が肥料にします!!」
「あ、あなたがそこまでおっしゃるなら……何かあった時は私がその猫を実験材料にします!!」

 え、えーっと……け、結婚に反対されてるんじゃないんだから、よかったんだよね……? みんな賛成してくれたんだよね!! うん! そういうことにしておこう!!

 勝手に納得していたら、後ろからシーニュにトントン肩を叩かれた。

「おい、クラジュ。いいのか?」
「え? なにが?」
「なにがってお前……オーフィザン様と喧嘩するようなことがあったら、全員が殺しに来るかもしれないんだぞ!!」
「大丈夫!! 僕とオーフィザン様は幸せになるから!!」
「……マジでお前が羨ましいよ……」
「え? え……な、なんで? やっぱりシーニュも、オーフィザン様のお嫁さんになりたいの!?」
「そうじゃねーって……まあ、よかったな。ちゃんとドジを直す努力もしろよ」
「うん!!」

 よかったあ……これでオーフィザン様と結婚できる……

「待ってください。オーフィザン様」

 朗々と上がった声に、僕はびっくりした。いつもの彼とは、雰囲気が違っていたから。

 みんなが道を開ける。そこを歩いて来たのはダンドだ。

 そうだ……さっき待ってって言われたのに、僕、待たないでいっちゃったんだ。

 普段の彼にはない、近寄りがたい雰囲気があったけど、それでも彼に駆け寄ろうとしたら、オーフィザン様に止められて後ろにさげられちゃう。

 オーフィザン様? なんでちょっと怖い顔してるの?

「ダンド、どうした?」
「俺も、二人の結婚には反対なんです」
「……なに?」
「あなたはクラジュにふさわしくありません」

 ……なんで? ダンドも僕らの結婚に反対なの? それに、オーフィザン様がふさわしくないって……

 オーフィザン様は、目を細めてダンドと向き合う。

「俺がふさわしくないだと?」
「はい。クラジュをいじめるあなたに、クラジュは渡せません」
「俺がいつこいつをいじめた?」

 わわわ!!

 いきなり引き寄せられ、キスされちゃう。うう……

「今です! 今! こんな人前でクラジュを辱めないでくださいっ!!」

 ダンドに怒鳴られても、オーフィザン様は素知らぬ顔だ。

「これはもう俺の嫁だ。口を出すな」
「出します。クラジュは俺の弟みたいな子なんです。オーフィザン様みたいに、吊るして拷問する人に渡せません」
「人聞きの悪いことを言うな。あれは仕置きだ」
「そんなの、納得できません。クラジュが欲しいなら……」

 ダンドが短剣を抜く。

「俺を納得させてからにしてください」
「本気か?」
「はい」
「……勝機があると思うのか?」
「ありますよ……」

 ダンドの髪の毛が、ふわりと逆立つ。なに……?

 風が吹いて、彼の髪をなびかせる。その頭には、ピンと立った狼の耳。彼は狐妖狼の力を封じていたはずなのに、自分で封印を解いたんだ。キラキラ光る美しい毛並みの尻尾もある。前に彼があの耳と尻尾をつけていた時はずっと震えていたのに、今はそんな様子微塵もなくて、獲物を狙うような目でオーフィザン様を睨みつけている。

「……克服したのか?」
「俺はずっと、オーフィザン様に勝ちたかったんです」
「……いいだろう……」

 オーフィザン様が杖を構え、それを合図にするかのように、ダンドが地を蹴った。一気に間合いを詰めた彼が振り上げた短剣は、正確にオーフィザン様の首を狙う。オーフィザン様は後ろに下がって避けるけど、その前髪が切れて舞った。

 バランスを崩したオーフィザン様を、ダンドの剣が猛追する。耳と尻尾が戻って、彼のスピードは目では追えないほどだ。

 攻められてばかりだったオーフィザン様が、今度は彼の足元から杖を振り上げる。不可避であろうと思われたその一撃を、ダンドは横に飛んで避けた。彼は自分を追うオーフィザン様から退くどころか地を蹴り飛びかかる。懐に入れば、リーチの短い彼の方が有利。その刃が、オーフィザン様の首元を狙う。

 その場にいた誰もが息を飲んだ。

 地に倒されたのは、ダンドの方。オーフィザン様に左手で襟元を掴まれて、力づくで地面に倒されていた。背中を打ち付け、息ができないはずなのに、彼は悔しそうにオーフィザン様を睨みつける。

 封じられた力をフルに使ったダンドに対して、オーフィザン様は一度も魔法を使っていない。もしも本気でやっていれば、確実にダンドが負けた。

 苦しそうな顔をしながらも、彼はオーフィザン様が差し出した手を振り払い、一人で立ち上がる。

「くっそ……ちょっとくらい、勝てると思ったのに……」
「誰が来ても、クラジュは俺のものだ。お前が何度来ても、クラジュは渡さん」
「……いいですよ。今回は見逃してあげます。だけど、クラジュをいじめたら許さないし、俺、オーフィザン様に勝つことも諦めません」

 宣言したダンドの頭を、オーフィザン様は嬉しそうに撫でる。

「いつでも来い」
「馬鹿にしないでくださいっ!!」

 う、う……ダンド、僕らの結婚に反対なのかな……?

 不安になって、僕はダンドに駆け寄った。

「だ、ダンド……」
「クラジュ、幸せになるんだよ?」
「う、うんっ!!」

 彼が優しく頭を撫でてくれることがすごく嬉しい。僕、やっぱり幸せだ!!

「ありがとう! ダンド!! 僕、オーフィザン様を幸せにするよっ!!」

 口に出したら、一層自覚できた。僕は絶対にオーフィザン様を幸せにするんだ!!


*番外編7.最終決戦*完
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