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番外編12.俺に懐かない猫に好かれる方法を教えてくれ
136.応援する!
しおりを挟むフィッイルのお気に入りの木のそばまで来ると、その木の上で、いつもどおりお昼寝してるフィッイルを見つけた。
「じゃあ、ロウアルさん!」
僕は彼に振り向いたけど、彼は首を横に振る。
「……やっぱりやめる」
「なんで!?」
「………………お前一人で行けよ……」
「僕だけ行っても意味ないよ!! ロウアルさん……フィッイルとお話したくないの?」
「話したいけど話すと逃げられるんだ!!」
「安心して! 僕がいるから!!」
「……なぜかわからねえが不安が増す…………なんでだ?」
「大丈夫だよ! 僕がフィッイルに大丈夫って言うから!!」
「……」
「早くっ!」
「お、おい!! 離せよっ!!」
「離さないもん!! フィッイル誘うんだもん!!」
ぎゅうって手を握って、ためらっているロウアルさんを連れて行く。
「お、おい! 離せよっ!!」
「離さないもん!! ここまで来たんだからフィッイルに会いに行くもん!! フィッイルーー!!」
声を上げて呼んだら、木の上のフィッイルに聞こえたみたいで、彼は木から体を起こして、僕らの方に振り向く。
「フィッイルーー!! 僕だよーー!! 一緒に……」
あ! 僕が言ったらダメなんだ!!
慌てて手を握って連れてきたロウアルさんに振り返る。だけど彼はまだためらっていて、首を横に振るばかりだ。
「ロウアルさん! せっかくここまで来たのに!」
「また泣かれたらどうするんだよ!!」
「泣かれないもん!」
「なんだよその自信!! なんで断言できるんだ!?」
「だってそうなんだもん!! だからフィッイル誘おう!」
「フィッイルは俺が近づくと怯えるんだよ!! お前が言えばいいだろ!!」
「ロウアルさんが誘わなきゃ意味ないもん! 僕、絶対言わないから!!」
「なんだよお前! なんでいきなりそんなに意地悪なんだよ!! お前に分かるか!? 一人だけ懐かれない俺の気持ちが!! 群れの他の奴らには結構懐いてたんだぞ! 俺だけ嫌うし、群れの奴らには俺のそばにいるせいでフィッイルがやつれるって言われるし、お、俺が何したんだよ!!」
「う、うーん……」
「俺だけめちゃくちゃフィッイルに嫌われてんの! お前が行けっっ!!」
「で、でも、ロウアルさん、怖くないし、フィッイルだって嫌ってないもん! 二人に仲良くなってほしいもん!! おーーーい!! フィッイルーーー!! ロウアルさんだよーー!!」
「てめえ!!」
ロウアルさんは怒っちゃったのか、僕に掴みかかってくる。だけど遠くでフィッイルも気付いたみたい。木から降りてきてくれた。やったあ! 話、聞いてくれるんだ!
「よかったね! ロウアルさん!」
「よくねえ! どうするんだよ!! フィッイル気づいちゃっただろ!!」
「い、いいじゃん……フィッイルに会いにきたんだから……」
「俺はなあ! 怯えさせないようにこっそり後ろから近づいて突然声かけるようにしてるんだ!! 俺の努力を無駄にしやがって、切り刻むぞ!!」
「うわああああん! 離してーー!! 多分それがダメなんだよーー!!」
「なんでダメなんだよ!!」
「だってそんなのびっくりするし、後ろからこっそり近づかれたら襲われそうじゃん!! ダメ!! 後ろからダメ!」
「だったらどうしろっていうんだよ!! どうするんだよフィッイルくるぞなんとかしろ!!」
「ロウアルさんがフィッイルに声かけるんだよ! 懐かせるんじゃなかったの!?」
「無理だろ絶対無理だろ今まで一回も懐かれなかったのに懐くわけない!!!!」
困った……僕らの前ではいつものロウアルさんなのに、フィッイルの前に行くと、おろおろしちゃうみたい。
フィッイルはどんどん近づいてきて、そのたびにロウアルさんは焦っちゃう。もう真っ青だ。
「ロウアル? クラジュ? 何してんの……」
ちょっと呆れたようなフィッイル。お昼寝の邪魔されて機嫌悪そうだけど、そんなに怯えてるようには見えない。きっと大丈夫だ!!
このままクッキーの話すれば、フィッイルだって喜んでくれるはずって思ったのに、僕の隣にいたロウアルさんの体がいきなり膨らんだ。服は裂けて、さっきまで人の肌だったところは竜のそれに変わり、巨大な鋭い爪が生える。割れた頭から竜の顔が飛び出し、牙が生えた。
あっという間にロウアルさんは大きな銀竜の姿になって、その場に鎮座しフィッイルに向き直る。
突然ロウアルさんが大きな竜になっちゃって、僕だって尻餅つくほどびっくりしたけど、それはフィッイルも同じみたい。ガタガタ震えながらその場に座り込んじゃう。だけど、ロウアルさんの方も緊張しすぎて、フィッイルの様子に気づいていないみたい。彼に顔を近づけていく。
「な、なあ……フィッイル……一緒に飯食わねえか……?」
「…………嫌」
一言だけ言って、フィッイルは踵を返して走って行っちゃう。
それを見て、ロウアルさんはますますオロオロしちゃう。
「な、なんで……なんでだ!?」
「ろ、ロウアルさん!! なんでいきなり大きくなったの!?」
僕が聞くと、彼は、竜の顔をちょっと赤らめていた。
「……だって、緊張して……フィッイルの前に行くんだぞ。竜の姿の俺の方が……強そうだし……かっこいいだろ? こっちの方がいいだろ?」
「僕にはどっちがかっこいいってわかんないけど、いきなり大きくなったらダメだよ!! びっくりするもん!」
「は!? び、びっくり? ふ、フィッイル……また逃げられた……」
「うわあああ! フィッイル行っちゃう!! フィッイルーー!! 待ってフィッイルーー!!」
僕が追いかけて呼ぶと、フィッイルは嫌そうにしながらも振り向いてくれた。
「……なに?」
「脅かしたくてきたんじゃないよ!! ……えっと…………ロウアルさん!」
振り向くと、ロウアルさん、今にも気絶しちゃいそうなくらい汗が出てる。もしかして、なに言うのか忘れちゃった?
僕は、ロウアルさんの足元で、手を振りながら言った。
「ロウアルさん!! お昼寝しながらクッキー食べよう、だよ!」
「は!? あ、ああ……そうだったな……」
「頑張って! はい! これ!!」
持っていたはずのクッキーの包みを差し出そうとした。
だけど、ない。
「あ、あれ?! あれ!? く、クッキー、どこ!?」
うわあああん!! どっかで落とした!!
人の姿に戻ったロウアルさんも首を傾げている。
「クラジュ? どうした? まさかお前、食ったんじゃないだろうな!!」
「さすがに僕でも、他人へのプレゼントは食べないよ!! お、落としたみたい……」
「はあーーー!? なんで落とすんだよ!! さ、探しに行くぞ!!」
「うん!!」
僕らはすぐに踵を返して、もと来た道を走り出した。
「ち、ちょっと! クラジュ!? ロウアル!? 一体なんなの!?」
後ろで叫ぶフィッイルに、少し待っててと叫んで、僕はロウアルさんと走り出す。
二人で歩いて来た方へ戻って一生懸命探すけど、やっぱりクッキー、ない!! うわあああん!! 見つからないいい!!
「なんでないんだよーー!! あれで最後なのか!?」
「他のは全部僕が食べちゃったから……」
ロウアルさんと二人で庭を走る。そしたら、花壇を抜けた先で、お菓子の袋を持って立っているペロケを見つけた。
「ペロケ!! それ返して!!」
僕が彼を指して言うと、彼は鬱陶しそうに振り向く。
「なに? せっかく拾ってあげたのに。これ、バカ猫のなの?」
「そうだよ! だ、大事なものなんだ!! お願い!! 返して!」
「……まさか……恐れ多くもオーフィザン様にお渡しする気じゃないだろうな!?」
「そ、それはロウアルさんがフィッイルにっ……って、ペロケ!?」
彼はクッキーの袋を持って、庭を飛んで行っちゃう。
「ふーんだ!! バカ猫になんか返さないもん!!」
「ペロケ!! それは僕のものじゃないーーー!!」
叫んでもペロケは全然聞いてない!!
うううーー!! あれ!! ロウアルさんが渡すものなのに!!
「おいこら!! 返せよ!! 俺のクッキー!!!」
ロウアルさんも走りながら怒鳴るけど、ペロケは返すどころかますます飛ぶスピードを上げて庭の中を飛んでいく。
「なに!? 今日はオーフィザン様の邪魔する竜も一緒!? 返すわけないじゃん!! ここまでおいでー!」
広い庭で羽を広げた彼は、飛ぶスピードだってお城で一番。彼に本気で逃げられたら、捕まえられないよ!!
だけどペロケが持って行ったのはロウアルさんがフィッイルのために一生懸命包んだものなんだ。絶対取り返すもん!!
「ペロケーー!! 返してーー!!」
ロウアルさんと連れ立って、逃げていくペロケを追う。だけど追いかけることに夢中で、僕は足元の石に足を取られて転んじゃう。
「わっ……! い、いた…………」
僕が転んでる間に、ペロケは飛んで行っちゃって、ロウアルさんもそれを追って走っていっちゃった。
うわあああっっ!! 急いで追わなきゃ!!
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