【本編完結】ネコの慰み者が恋に悩んで昼寝する話

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
136 / 174
番外編12.俺に懐かない猫に好かれる方法を教えてくれ

136.応援する!

しおりを挟む

 フィッイルのお気に入りの木のそばまで来ると、その木の上で、いつもどおりお昼寝してるフィッイルを見つけた。

「じゃあ、ロウアルさん!」

 僕は彼に振り向いたけど、彼は首を横に振る。

「……やっぱりやめる」
「なんで!?」
「………………お前一人で行けよ……」
「僕だけ行っても意味ないよ!! ロウアルさん……フィッイルとお話したくないの?」
「話したいけど話すと逃げられるんだ!!」
「安心して! 僕がいるから!!」
「……なぜかわからねえが不安が増す…………なんでだ?」
「大丈夫だよ! 僕がフィッイルに大丈夫って言うから!!」
「……」
「早くっ!」
「お、おい!! 離せよっ!!」
「離さないもん!! フィッイル誘うんだもん!!」

 ぎゅうって手を握って、ためらっているロウアルさんを連れて行く。

「お、おい! 離せよっ!!」
「離さないもん!! ここまで来たんだからフィッイルに会いに行くもん!! フィッイルーー!!」

 声を上げて呼んだら、木の上のフィッイルに聞こえたみたいで、彼は木から体を起こして、僕らの方に振り向く。

「フィッイルーー!! 僕だよーー!! 一緒に……」

 あ! 僕が言ったらダメなんだ!!

 慌てて手を握って連れてきたロウアルさんに振り返る。だけど彼はまだためらっていて、首を横に振るばかりだ。

「ロウアルさん! せっかくここまで来たのに!」
「また泣かれたらどうするんだよ!!」
「泣かれないもん!」
「なんだよその自信!! なんで断言できるんだ!?」
「だってそうなんだもん!! だからフィッイル誘おう!」
「フィッイルは俺が近づくと怯えるんだよ!! お前が言えばいいだろ!!」
「ロウアルさんが誘わなきゃ意味ないもん! 僕、絶対言わないから!!」
「なんだよお前! なんでいきなりそんなに意地悪なんだよ!! お前に分かるか!? 一人だけ懐かれない俺の気持ちが!! 群れの他の奴らには結構懐いてたんだぞ! 俺だけ嫌うし、群れの奴らには俺のそばにいるせいでフィッイルがやつれるって言われるし、お、俺が何したんだよ!!」
「う、うーん……」
「俺だけめちゃくちゃフィッイルに嫌われてんの! お前が行けっっ!!」
「で、でも、ロウアルさん、怖くないし、フィッイルだって嫌ってないもん! 二人に仲良くなってほしいもん!! おーーーい!! フィッイルーーー!! ロウアルさんだよーー!!」
「てめえ!!」

 ロウアルさんは怒っちゃったのか、僕に掴みかかってくる。だけど遠くでフィッイルも気付いたみたい。木から降りてきてくれた。やったあ! 話、聞いてくれるんだ!

「よかったね! ロウアルさん!」
「よくねえ! どうするんだよ!! フィッイル気づいちゃっただろ!!」
「い、いいじゃん……フィッイルに会いにきたんだから……」
「俺はなあ! 怯えさせないようにこっそり後ろから近づいて突然声かけるようにしてるんだ!! 俺の努力を無駄にしやがって、切り刻むぞ!!」
「うわああああん! 離してーー!! 多分それがダメなんだよーー!!」
「なんでダメなんだよ!!」
「だってそんなのびっくりするし、後ろからこっそり近づかれたら襲われそうじゃん!! ダメ!! 後ろからダメ!」
「だったらどうしろっていうんだよ!! どうするんだよフィッイルくるぞなんとかしろ!!」
「ロウアルさんがフィッイルに声かけるんだよ! 懐かせるんじゃなかったの!?」
「無理だろ絶対無理だろ今まで一回も懐かれなかったのに懐くわけない!!!!」

 困った……僕らの前ではいつものロウアルさんなのに、フィッイルの前に行くと、おろおろしちゃうみたい。

 フィッイルはどんどん近づいてきて、そのたびにロウアルさんは焦っちゃう。もう真っ青だ。

「ロウアル? クラジュ? 何してんの……」

 ちょっと呆れたようなフィッイル。お昼寝の邪魔されて機嫌悪そうだけど、そんなに怯えてるようには見えない。きっと大丈夫だ!!

 このままクッキーの話すれば、フィッイルだって喜んでくれるはずって思ったのに、僕の隣にいたロウアルさんの体がいきなり膨らんだ。服は裂けて、さっきまで人の肌だったところは竜のそれに変わり、巨大な鋭い爪が生える。割れた頭から竜の顔が飛び出し、牙が生えた。

 あっという間にロウアルさんは大きな銀竜の姿になって、その場に鎮座しフィッイルに向き直る。

 突然ロウアルさんが大きな竜になっちゃって、僕だって尻餅つくほどびっくりしたけど、それはフィッイルも同じみたい。ガタガタ震えながらその場に座り込んじゃう。だけど、ロウアルさんの方も緊張しすぎて、フィッイルの様子に気づいていないみたい。彼に顔を近づけていく。

「な、なあ……フィッイル……一緒に飯食わねえか……?」
「…………嫌」

 一言だけ言って、フィッイルは踵を返して走って行っちゃう。

 それを見て、ロウアルさんはますますオロオロしちゃう。

「な、なんで……なんでだ!?」
「ろ、ロウアルさん!! なんでいきなり大きくなったの!?」

 僕が聞くと、彼は、竜の顔をちょっと赤らめていた。

「……だって、緊張して……フィッイルの前に行くんだぞ。竜の姿の俺の方が……強そうだし……かっこいいだろ? こっちの方がいいだろ?」
「僕にはどっちがかっこいいってわかんないけど、いきなり大きくなったらダメだよ!! びっくりするもん!」
「は!? び、びっくり? ふ、フィッイル……また逃げられた……」
「うわあああ! フィッイル行っちゃう!! フィッイルーー!! 待ってフィッイルーー!!」

 僕が追いかけて呼ぶと、フィッイルは嫌そうにしながらも振り向いてくれた。

「……なに?」
「脅かしたくてきたんじゃないよ!! ……えっと…………ロウアルさん!」

 振り向くと、ロウアルさん、今にも気絶しちゃいそうなくらい汗が出てる。もしかして、なに言うのか忘れちゃった?

 僕は、ロウアルさんの足元で、手を振りながら言った。

「ロウアルさん!! お昼寝しながらクッキー食べよう、だよ!」
「は!? あ、ああ……そうだったな……」
「頑張って! はい! これ!!」

 持っていたはずのクッキーの包みを差し出そうとした。

 だけど、ない。

「あ、あれ?! あれ!? く、クッキー、どこ!?」

 うわあああん!! どっかで落とした!!

 人の姿に戻ったロウアルさんも首を傾げている。

「クラジュ? どうした? まさかお前、食ったんじゃないだろうな!!」
「さすがに僕でも、他人へのプレゼントは食べないよ!! お、落としたみたい……」
「はあーーー!? なんで落とすんだよ!! さ、探しに行くぞ!!」
「うん!!」

 僕らはすぐに踵を返して、もと来た道を走り出した。

「ち、ちょっと! クラジュ!? ロウアル!? 一体なんなの!?」

 後ろで叫ぶフィッイルに、少し待っててと叫んで、僕はロウアルさんと走り出す。

 二人で歩いて来た方へ戻って一生懸命探すけど、やっぱりクッキー、ない!! うわあああん!! 見つからないいい!!

「なんでないんだよーー!! あれで最後なのか!?」
「他のは全部僕が食べちゃったから……」

 ロウアルさんと二人で庭を走る。そしたら、花壇を抜けた先で、お菓子の袋を持って立っているペロケを見つけた。

「ペロケ!! それ返して!!」

 僕が彼を指して言うと、彼は鬱陶しそうに振り向く。

「なに? せっかく拾ってあげたのに。これ、バカ猫のなの?」
「そうだよ! だ、大事なものなんだ!! お願い!! 返して!」
「……まさか……恐れ多くもオーフィザン様にお渡しする気じゃないだろうな!?」
「そ、それはロウアルさんがフィッイルにっ……って、ペロケ!?」

 彼はクッキーの袋を持って、庭を飛んで行っちゃう。

「ふーんだ!! バカ猫になんか返さないもん!!」
「ペロケ!! それは僕のものじゃないーーー!!」

 叫んでもペロケは全然聞いてない!!

 うううーー!! あれ!! ロウアルさんが渡すものなのに!!

「おいこら!! 返せよ!! 俺のクッキー!!!」

 ロウアルさんも走りながら怒鳴るけど、ペロケは返すどころかますます飛ぶスピードを上げて庭の中を飛んでいく。

「なに!? 今日はオーフィザン様の邪魔する竜も一緒!? 返すわけないじゃん!! ここまでおいでー!」

 広い庭で羽を広げた彼は、飛ぶスピードだってお城で一番。彼に本気で逃げられたら、捕まえられないよ!!

 だけどペロケが持って行ったのはロウアルさんがフィッイルのために一生懸命包んだものなんだ。絶対取り返すもん!!

「ペロケーー!! 返してーー!!」

 ロウアルさんと連れ立って、逃げていくペロケを追う。だけど追いかけることに夢中で、僕は足元の石に足を取られて転んじゃう。

「わっ……! い、いた…………」

 僕が転んでる間に、ペロケは飛んで行っちゃって、ロウアルさんもそれを追って走っていっちゃった。

 うわあああっっ!! 急いで追わなきゃ!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

オメガ転生。

BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。 そして………… 気がつけば、男児の姿に… 双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね! 破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!

竜人息子の溺愛!

神谷レイン
BL
コールソン書店の店主レイ(三十七歳)は、十八歳になったばかりの育て子である超美形の竜人騎士であるルークに結婚を迫られていた。 勿論レイは必死に断るがルークは全然諦めてくれず……。 だが、そんな中で竜国から使者がやってくる。 そしてルークはある事実を知らされ、レイはそれに巻き込まれてしまうのだが……。 超美形竜人息子×自称おじさん

うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】

まつも☆きらら
BL
ある日、弟の海斗とマンションの前にダンボールに入れられ放置されていた傷だらけの美少年『瑞希』を拾った優斗。『1ヵ月だけ置いて』と言われ一緒に暮らし始めるが、どこか危うい雰囲気を漂わせた瑞希に翻弄される海斗と優斗。自分のことは何も聞かないでと言われるが、瑞希のことが気になって仕方ない2人は休みの日に瑞希の後を尾けることに。そこで見たのは、中年の男から金を受け取る瑞希の姿だった・・・・。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

処理中です...