誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

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17.無神経だ!


 またうまくいかなかった。

 これもいつものことだけど、最近、すぐに恋心が消えることが多い気がする。

 愛がなくなったら、残るのは憎悪だけ。なんで僕、あんなやつにお金渡して殴られても許してご飯作って尽くしていたんだ。時間も金も、すり減った心も返してほしい。

 あの男に仕返しをしてやりくて、フュイアルさんに「あいつを出せ」って言ったら、鎖でぐるぐる巻きにされ、車に押し込められて、職場のオフィスまで連れて行かれた。

 なんでフュイアルさんは、毎回毎回毎回毎回、こうやって僕の邪魔をするんだ。

 僕に恋人ができるたびに、フュイアルさんが出て来て、僕に別れろって迫る。この人は一体、なんなんだ。

 こんなふうに別れることを繰り返したから、僕も恋人に集中できなくなっちゃったんだ。
 最近、すぐ別れちゃうのも、うまく恋人とつきあえなくなったのも、すぐに冷めちゃうのも、全部フュイアルさんのせいだ。

 ムカつくけど、今は失恋で心はぐちゃぐちゃ。このままフュイアルさんに挑んだって、また軽くあしらわれて、いつもみたいに魔法の鎖で吊される。

 仕方なく、僕は職場のオフィスで怒りを晴らすことにした。

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね……」

 呟きながら、職場のデスクに置いてあった二人の思い出を、全部ドラム缶に入れる。あんな男との思い出なんか、すぐに捨てないと気持ち悪い。写真も人形も、もういらない。

 二人の写真とかあいつの服とかあいつのものとかを、ドラム缶に放り込む。そのドラム缶は、もう何回も使ったせいで黒焦げになっていた。

 持っていた二人のもの、全部突っ込んで魔法で火をつける。

 ドラム缶の中のものがパチパチ音を立てながら燃えていく。何かしてないとイライラが増していきそうで、デスクに置いてあったティッシュをくるくる丸めて、ドラム缶の中に投げ込んだ。

 最近、失恋するたびに、僕は職場の隅でこれをしている。

 ドラム缶の前にしゃがみ込んで、ずっと丸めたティッシュを投げ込んでいたら、呆れたようにため息をつく男が近づいてきた。

「またやっているのか……肉を持ってきたぞ」
「ヴァルアテア……」

 黒い長髪を頭の上で一つに括って、黒いスーツを着た背の高いそいつは、職場の同僚の魔族で、フュイアルさんの部下。
 大量の肉を盛った大皿と焼き網と炭を入れたバケツを持って近づいて来たかと思えば、炎を上げるドラム缶に、大量に炭を放り込んで焼き網を置く。

「新鮮な肉が大量に手に入ったんだ。夕飯がまだだろう。食え」
「……」

 ヴァルアテアは、かなり無神経。

 僕がフラれて、こうしてドラム缶でそれまでの思い出を焼いていると、毎回焼き網と肉を持ってきて、ちょうどいいから肉を焼こうと、信じられないくらい無神経なことを言い出す。

 ダストと別れて、しばらくして、職場には魔族が増えた。最近、魔物が増えているからって、フュイアルさんが呼び寄せたらしい。街にも魔族が増えた気がする。

 おかげで、フュイアルさんの仲間に常に囲まれているみたいで嫌だ。

 今だって、ヴァルアテアが肉なんか焼き始めるから、他の奴らまで寄ってきた。

 今度は最近入った同僚の一人、僕と同じくらいの背で、眩い金髪のショートカットの男、オーイレールが、とうもろこしが詰まった段ボールを持ってきた。

「見ろよー。田舎からとうもろこし大量に送ってきたんだー。トラシュも食えよ!! 一人じゃ食べきれないんだ!」
「……田舎って、魔界だろ……? いらない……」

 オーイレールは魔族と人族のハーフで、フュイアルさんに、仕事を手伝ってくれって言われてここに来るまでは、ずっと魔界に住んでいたらしい。

 そして、なぜか僕にやけに馴れ馴れしく話しかけてくる。

 僕は、人と話すのは苦手。

 だからいつも軽くあしらっているつもりなのに、それでもオーイレールは、なぜか僕に声をかけに来る。

 かなりの剣の使い手って聞いているけど、腰に下げた剣で、今は器用にとうもろこしを刻んで醤油を垂らしている。
 この辺りのとうもろこしとは違うらしく、やけに大きい。オーイレールの背丈と同じくらいある。
 そして、魔界で魔族たちが普段口にするものは、人族の僕には刺激が強すぎる。

 それを知っているのか知らないのか、オーイレールは、僕にしつこくとうもろこしを勧めてくる。

「なんでいらないんだよ! うまいぞ!! こうして焼いて食うと最高なんだ。トラシュの分も焼く!! 絶対食え!! 人族でも食えるようにする調味料かけてやる!! 必ず食え!!」
「食わない……」
「そうだ! 都で見つけた調味料もあるんだぞ!! トラシュ、昔は都に住んでたんだろ!?」
「そうだけど……いらない……」
「なんでだよ!!」

 僕が泣いているのに、なにがとうもろこしだ。他の奴らまで寄ってきて、オフィスの一角でバーベキューが始まってしまう。

 なんだこいつら。揃いも揃って心遣いとかないのか。

 僕は失恋して、ショックで思い出を燃やしているのに。

 こいつら、いつもこうなんだ。

 フュイアルさんはと言えば、鼻歌を歌いながら、デスクで仕事をしていた。

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