誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
25 / 106

25.暗殺計画を実行に移す時

しおりを挟む

 散々弄ばれた僕は、怒りを胸に、なんとか連れ出したフュイアルさんと車に乗り、助手席で怒りを燃やしていた。

 ぶち殺す!! こいつを殺す。散々凌辱された恨みを晴らす。今日こそ。必ず。

 僕が怒りと殺意に燃えた顔をしていても、フュイアルさんは、全く気にしてない。「朝から可愛い顔してくれたからドライブしながら行こう」なんて、キモさしか感じないことを言って、僕を助手席に押し込み、鼻歌を歌いながらハンドルを握っている。

 こいつの神経はどうなっているんだ。朝っぱらから僕を辱めて、なんでこんなに楽しそうなんだ。

 もう刺してやりたい。今すぐにでも、後ろから刺したい。

 だけど、ここは我慢だ。チャンスが来るまで待つんだ。機会さえくれば、僕があいつをぶち殺せるんだ。

「トラシュー、喉乾かない? 何か飲み物買おうか」
「いりません」

 こんな時に何が飲み物だ。

 フュイアルさんはいつもこうだ。僕が腹を立てていたって、こいつが心配するのは喉のことくらいなんだ。

 舐めやがって……見てろよ……

 怒りに燃える僕に、フュイアルさんは笑顔で振り向く。

「ちょうどそこに自販機あるから、コーヒー買ってきてあげる」
「……」

 僕の話、聞いてたのかな? 僕、怒ってるんだけど。

 フュイアルさんは、ご機嫌な様子で車から降りていく。

 チャンスが来るまで、後少しの我慢だ。

 僕はぐっと堪えて、その場でフュイアルさんを待った。

 このあたりが、盗賊たちが潜んでいるって噂になっている所だ。
 古いビルが立ち並び、殆どがシャッターを閉めていて、人通りは全くない。砂嵐が起こりやすいせいで、この辺りに住もうって人はほとんどいないんだ。今も、少し砂が混じった強い風が吹いている。

 フュイアルさんだって、盗賊たちが潜んでいるっていう噂は知っているはず。むしろ僕よりそれについては詳しいはずなのに、全く怯える様子がない。あれだけここに来るのを渋っていたくせに。一体、何を企んでいるんだ。

 不気味な男は、自販機の前で本当にコーヒーを買っている。

 くっそ……なんとかして勝つ方法はなのか。フュイアルさんって、弱点とかないのかな。

 じーっと見ていたら、その後ろ姿に、誰かが近づいていく。

 誰だ……??

 こんなところをフラフラしているやつ、僕ら以外にいるんだ。

 そいつは、ゆっくりとフュイアルさんに近づいて行き、いきなり鉄パイプのようなものを振り上げ、その後頭部目掛け殴りかかった。

 けれど、あの性悪魔族が鉄パイプ程度でどうにかなるはずない。それなら、もうすでに僕がやった。
 あのときは、笑いながらフュイアルさんに鉄パイプを避けられて、その後、背後から狙ったくらいでトラシュが俺に勝てるはずないだろ、と思いっきり馬鹿にしたことを言われた。そしてその後は、魔法の鎖で吊るされた。

 今、フュイアルさんを殴った男も、振り返ったフュイアルさんに、あっさり殴り倒されている。

 弱い……あれでフュイアルさんに勝つつもりだったのか。それで勝てるなら、僕がとっくに勝ってるよ。

 殴り倒された男の仲間なのか、次々男たちが現れ、フュイアルさんに殴りかかっては、あっさり倒されている。

 もしかして、あれが盗賊たちか? ちゃんと出てきたのか。

 思っていたより弱い。フュイアルさん一人相手に、十人ほどでかかって、全く相手になっていない。
 フュイアルさんはまだ魔法も使っていない。完全に遊ばれているじゃないか。ダメだな。あれ。

 盗賊に襲わせて、フュイアルさんが魔法の鎖を出したらチャンスだと思ったのに。
 あれだけ弱くちゃ、フュイアルさんだって魔法を使わない。笑いながら向かってきた奴を蹴り飛ばしてる。

 苦労してフュイアルさんを連れ出したのに、これじゃフュイアルさんに弄ばれ損だ。

 この辺りに出る盗賊たちは、職場の奴らに手を出しているようだから、よほどやる奴らだと思ったのに。

 あれじゃ、すぐにフュイアルさんがこっちに戻ってきてしまう。

 さすがに頭を抱えてしまう。

 あーあ。失敗か……戻ってきたフュイアルさんに、またなんか言われそう。

 顔を上げると、さっきまでフュイアルさんが戦っていたところには、誰もいない。

 あれ? フュイアルさんは?

 キョロキョロあたりを見渡しても、やっぱり誰もいない。フュイアルさんも、それに殴りかかっていた奴らも、どこにもいない。

 自販機と、その近くにフュイアルさんが買った二つのコーヒーが転がっているだけだ。

 どこへ行ったんだ?

 僕は、周りを警戒しながら車から降りた。

 車の周りを探してみても、どこにもフュイアルさんはいない。

 もうすぐ砂嵐が来るのか、風が僕の方に吹いてきた。

 なんで誰もいないんだ? ちょっと目を離した隙に、どこいったんだ? フュイアルさん。

 あの気持ち悪い人が、いきなり僕を置いて消えたことは、今まで一度もない。

 むしろ、いつもならすぐに戻ってきて、助けもせずに一人で車の中にいた僕に、いろいろ嫌味を言ってくるところだ。

 それがいなくなるなんて……まさか、油断した隙に、盗賊たちに誘拐された、とか??

 フュイアルさんを連れて行ける奴なんかいるのかな?

 信じられないけど、さっきのフュイアルさんは油断してたみたいだし、僕のマンションに出た、あの魔族もいれば、不可能じゃない……かも?

 いや、もしかして捕まったんじゃなくて、盗賊たちが敵わないとみて逃げ出したから、それを追って行ったのかもしれない。

 とりあえず、僕も追うか。

 もしも、フュイアルさんが誘拐されたのなら、フュイアルさんが動けないくらいに拘束されたところで、盗賊たちを倒して、その後これまでの恨みを晴らす。
 もしも、フュイアルさんが追っていった方なら、隙を見て後ろから殴る。この作戦で行こう。

 僕は小さな鍵を取り出した。フュイアルさんの服には、居場所を示す魔法をかけた、小さな鍵を忍ばせてあるんだ。

 フュイアルさんの居場所なんて、全く知りたくないけど、これをしておかないと、フュイアルさんの接近を知ることができずに、僕が危険にさらされる。

 運転席にのりこみ、ハンドルを握る。今度こそ、うまくいくかもしれない。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 【花言葉】 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです! 【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。 ◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した

あと
BL
「また物が置かれてる!」 最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…? ⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。 攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。 ちょっと怖い場面が含まれています。 ミステリー要素があります。 一応ハピエンです。 主人公:七瀬明 幼馴染:月城颯 ストーカー:不明 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

処理中です...