嫌われ続け虐げられた僕、敵対する人達と仲間になって反撃する! 人は苦手だけど……仲間なんてできるのか!? 溺愛も怖いし逃してくださいー……

迷路を跳ぶ狐

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18.穏便に!

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 もう泣きそうになっていたら、ヴァルファトフィヴィス様が彼を止めてくれた。

「やめろ。キャラトイッジ。ディストリウフィスが怯えている」
「ヴァルファトフィヴィス様……」
「副隊長を名乗るなら、そのすぐに掴みかかるところは直せ」
「……はい……」

 大人しく言って僕を離して座るキャラトイッジ。

 テンダクトウェズさんも、呆れたように言った。

「ディストリウフィスさん……気にしない方がいいですよー。キャラトイッジさんは、人に掴みかかってないと話せないタイプなんです」
「どんなタイプだよっ……それ!!」

 苦々しく言いながら、彼はエビをたくさん詰めたサンドイッチにかぶりつく。他の二人も食事を始めて、僕も、次のサンドイッチを手に取った。

 すごく豪華……これ、僕が食べていいのか? 後で殴られたり、しないよな?
 不安だし怖いけど、今にも倒れそうなくらい眩暈がする空腹には勝てない。気づけば噛み付いていて、さっきと同じように平らげていた。

 すごく美味しい…………こんなの、食べたことない……

 味わっていたら、目の前にフライドポテトがたくさん詰まった袋が突き出された。キャラトイッジだ。

「ほら」
「……え?」
「え? じゃねーよ。取れよ。嫌いなのか?」
「い、いいえっ……いたっ……いただきます!!」

 ガタガタ震えながら、細長く切られたフライドポテトを摘む。だけどまだ熱い。揚げたてらしい。

「あつっ……」
「だろー? ここ、いつも揚げたてをくれるんだ!! うまいか!?」
「……は、はいっっ!!」
「いちいち声でけーんだよ。気に入ったんなら、今度店、つれて行ってやる!」

 そう言って笑う彼に勧められて、僕はもう一本、フライドポテトを咥えた。

 みんな、楽しそうに食事を続けている。なんだか僕、場違いじゃないかな……

 だけど食事はすごく美味しい。

 いつか夢見た、平穏な食事…………そんなものを体験できる日が来るなんて。

 嬉しくて、これまで食べた何より美味しい。

 すると、ヴァルファトフィヴィス様は、僕に振り向いて言った。

「もう少し休んだら、裏口から外に出て城に向かう」
「城……ヴァルファトフィヴィス様のですか?」
「もちろんだ。これでお前も、俺の城の一員だな」
「はっ……はいっ……!! あ、ありがとうございますっ……!」

 お礼を言う僕に、ヴァルファトフィヴィス様は不敵に笑う。

「一緒にあの腹立たしい王族に喧嘩を売る仲間ができて、俺は嬉しい。これからよろしくな」
「………………え?」
「言ったじゃないか。俺と城に来て、王家に抵抗したいと。共に貴族どもを殴り飛ばすぞ」
「え……えっと……」

 殴り飛ばすって…………また怖いことを言い出した……あんまりやりすぎたら、僕ら反乱したことになっちゃうよ!??

 僕は、王族の使いが僕らを討伐に来たら追い返すつもりではいるけれど、反乱はしたくない。

「…………あの……ぼ、僕は反乱を起こしたいのではなく……彼らが僕らを討伐に来たら追い返したいだけで……」

 恐る恐る言うけど、ヴァルファトフィヴィス様は、ちょっと恐怖を感じるような顔で笑う。

「何を言ってるんだ。あの腹立たしい連中に一泡吹かせるいい機会だ」
「え、えっと………………」

 ……えっと……本気なのかな……?

 チラッとキャラトイッジに振り向くと、彼まで「やりましょう!! 隊長ーー!!」と叫び出す。

「貴族の連中なんて、俺が討伐してやりますよ!!」

 ……なんだかすごくやる気みたいだ……

 テンダクトウェズさんも、止めてくれるかと思いきや、サンドイッチを咥えて、「討伐するなら領主様だけにしてください」って言い出す。

 僕は、領主を討伐するなんて、そんなのは絶対に無理!! 向かってくる敵だけ追い返していれば、十分じゃない!?

 けれどヴァルファトフィヴィス様は、僕に振り向いて言った。

「やるぞ。ディストリウフィス。俺たちで、リークディーズト派を捻り潰す」
「…………あ……えっと…………で、できるだけ、穏便に…………やりましょう……」

 消えそうな声で言う僕の隣では、キャラトイッジが「ぶっ潰しましょうーー!!」なんて言って、拳を振り上げていた。
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