【完結】極悪と罵られた令嬢は、今日も気高く嫌われ続けることに決めました。憎まれるのは歓迎しますが、溺愛されても気づけません

迷路を跳ぶ狐

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27.作戦です


 閣下に連れられて先ほどの部屋に戻った私は、早速着替えを済ませた。

 そのローブには、数多の魔法を絡め取り無効化する魔力の刺繍がなされていて、ろくに魔法も使えない私がいただいてしまうのは申し訳ないくらい。

 着替えを済ませて、外で待っていた閣下を呼ぶ。
 すると、閣下は何度か私に「もう入って大丈夫か?」とたずねてから、中に入ってきた。

 部屋の中に入ってきた閣下の前に立つと、急に恥ずかしくなってくる。ローブに私が見合っていないことは分かっていますもの。

「か、閣下……本当に、このようなものをいただいてよろしいのでしょうか?」
「……もちろんだ。よく似合っている」
「……っ!!」

 閣下が微笑んでそう言ってくださると、もうまっすぐにその顔を見ていられなくなってしまった。

 そうだ。これは、閣下がせっかく渡してくださったもの。それなら私は、それに見合うようになりたい。

「あ……ありがとうございます! このようなものをいただけるなんて……私、本当に嬉しいですわ! さあ!! 竜を探しに参りましょう! 見当はついているのです! 地下にある牢獄ですわ。誰かを閉じ込めるなら、多分そこです!」
「……陛下も地下を疑っていらっしゃる」
「陛下も? ……お見通しですのね。けれど……そこの鍵を管理しているのはフィレスレア様で、鍵を使うには、デシリー様の許可が必要なのです」
「またデシリーか………………」
「……」

 先ほどまであんなに優しく微笑んでいた閣下なのに、今はひどく恐ろしい顔をしている。行方不明の竜のことを案じているのでしょうが、先ほどまでとは別人のよう。

「……あの……閣下?」
「……デシリーなら、今朝から出かけている。鍵のことなら、俺に任せておけ。魔法を使えば鍵を奪い取ることなど、造作ない」
「お、お待ちください! 閣下!! そんな乱暴な真似をしてしまえば、あなたや、あなたを遣わされた陛下への不信感につながってしまいます」
「陛下はわかってくださる。俺にここへの潜入を命じたのは陛下だ」
「陛下はそうおっしゃったとしても、誰もがそれで納得なんかしません。それこそ、陛下を陥れようとする方々の思う壺です」
「……できるだけ早く、竜を見つけたい」
「閣下……」

 やはり、閣下はとてもお優しい方です……優秀な魔法使いで残酷と聞いていましたが、前者しかあっていなかったみたい。

 でも、どうすれば早く竜を見つけられるのか……

 少し考えて、私は結論を出した。

 行方不明の竜がいると聞いた時から考えていた作戦だけど、これは、私だけではなし得なかったものだ。

 それに、今はデシリー様がいない。それなら、鍵を使う許可を出すのはトレイトライル様。だったら、この作戦の成功率もぐっと上がるはず。

「……閣下。いい作戦があるのです」
「……作戦?」
「私、懲罰を受けることにします! 私の塔に戻りますわ!」
「……一人でか?」
「もちろんです!!」

 本当はぜっったいに行きたくないのですが……しかし、これしか思いつかない。どうせこのままでいれば、私はこの事件の幕を引くために、デシリー様に殺されてしまう。

「今はデシリー様がいらっしゃらないのでしょう? でしたら、鍵を使う許可を出すのは、トレイトライル様です。きっと今、城の中で問題を起こせば、トレイトライル様は腹を立てて私を糾弾し、懲罰のために地下に連れて行くはずです!」
「……だからなんだ。そんなことを俺に傍観していろというのか?」
「はい!」
「……」
「地下へ向かう鍵さえ開けていただければ、竜を探し出すことができます!」
「……地下に竜を閉じ込めているなら、そこに人を連れて行くことはしないんじゃないか?」
「ですから、私が今から一人で、私の塔に向かうのです!! 竜がいるところに閣下を入れることはしないでしょうが、私だけなら別です。きっと問題を起こした私は、地下に連れて行かれます。何しろ私にあるのは、トレイトライル様を苛つかせる、この大きな態度だけですもの!」
「…………それで? その、大きな態度しかないあなたを、たった一人で囮にしろと、そう言うのか?」
「はい!!」
「だめだ」
「……あら。なぜですか?」
「なぜ? どう考えても危険だからだ。あなたが一人で連れて行かれるのだろう?」
「一人で行くなんて言っていません。そんなことをすれば、なぶり殺しにされることは分かっています。だからこれまでこの作戦を実行に移すことは出来なかったのです。けれど、今は閣下がいらっしゃいます。どうか護衛に……小さな使い魔をつけていただけませんか?」
「………………」

 閣下は黙り込んでしまう。

 ひどいことを言っているのは分かっている。閣下は、ずっと蔑まれてきた私にも親切にしてくださるような方だ。
 そんな方に、私はトレイトライル様をわざと怒らせて、地下に連れて行かせようと提案している。それはつまり、トレイトライル様を騙すことだし、必要のない揉め事を起こすこと。誰かを騙すなんて、閣下はしたくないでしょうし、争いが起こることも好まないのでしょう。私のことも、ひどく心配してくださっているようですし……

 そんな彼に、私はきっと、とてもひどい作戦を提案している。けれど、私が思いついた作戦はこれだけで……閣下に、トレイトライル様に無理を迫るような真似もさせたくない。

 閣下は首を横に振る。

「ダメだ。あなたがそんなところに連れて行かれるなんて」
「……閣下……けれど、早く竜を探さなくてはならないのでしょう?」
「鍵くらい、どうにでもなる。強引な真似をせずともだ」
「……閣下……」

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