【完結】極悪と罵られた令嬢は、今日も気高く嫌われ続けることに決めました。憎まれるのは歓迎しますが、溺愛されても気づけません

迷路を跳ぶ狐

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28.賛成です


 私が何を言っても、イールヴィルイ様は頷いてくれない。よほど心配させてしまっているようだ。

「リリヴァリルフィラン……あなたに、そんなことをさせられない。万が一のことがあったらどうする」
「閣下……」
「だいたい、懲罰と言うが、それはなんだ? 何をされる?」
「それは……閣下が気にされるようなことではございません」
「……何をされるかも分からないようなところに、あなたを一人で行かせることはできない。あなたの勇気は認めるが………………俺が嫌だ。牢獄へあなたを行かせるなんて。別の作戦を考えよう」

 閣下がそうおっしゃったところで、バタンと音を立てて、部屋のドアが開いた。そして二人の使者の方が部屋に入ってくる。一人は、背中に大きな竜の羽がある、金色の長髪の方。確か、エウィトモート様とおっしゃったはず。もう一人は、空のような色をした髪の精霊族の方で、トルティールス様。
 どちらもイールヴィルイ様と同じく、陛下に遣わされた使者の方だ。

 部屋に入って来るなり、エウィトモート様が私に近づいてくる。

「俺はリリヴァリルフィランの案、いいと思うけどなー」
「エウィトモート様……」

 まさか、イールヴィルイ様以外の使者の方が、私の意見に賛成してくれるとは思わなかった。彼らも、私のことを今回の事件の元凶と疑っているのではないのかしら。

 エウィトモート様は、首を傾げて言った。

「俺の名前、知ってるの?」
「はい……使者の方々のお名前は存じております」
「……嬉しいなー……リリヴァリルフィランに名前覚えてもらってるなんて」
「私に? …………きゃっ……!」

 話している途中で、イールヴィルイ様が私とエウィトモート様の間に入ってくる。

 背中に私を隠すようにされて、私は、私の前に立ったイールヴィルイ様の背中を見上げた。けれど、背後からでは、彼がどのような表情をしているのか分からない。

 イールヴィルイ様に見下ろされて、エウィトモート様は真っ青になってしまっている。それもそのはず、イールヴィルイ様はエウィトモート様の胸ぐらをつかみ上げてしまっていた。

「リリヴァリルフィランから離れろ……エウィトモート」
「や、やだなぁ……イールヴィルイ……お、落ち着けよ…………リリヴァリルフィラン! イールヴィルイを止めて!!」

 エウィトモート様に言われて、私は慌てた。だって、先ほどまであんなに優しく微笑んでいたのに、今のイールヴィルイ様はまるで別人。

「か、閣下……あ、あの……」

 恐る恐る声をかけると、イールヴィルイ様はすぐにエウィトモート様を離して、振り向いてくれた。

「リリヴァリルフィラン……どうした?」
「い、いえ…………あの……わ、私、何か不快なことをしてしまったでしょうか……使者の方に声をかけるなど……」
「……そんなことはない。気にしないでくれ……」

 イールヴィルイ様がそう言ってくださると、私は少し安心した。彼の声は、先ほど私にローブを渡してくださった時と同じくらい、優しいものだった。

 そして、彼の手から逃れたエウィトモート様が、私の後ろに走ってくる。

「リリヴァリルフィランもびっくりしてるみたいだし、落ち着けって!! 俺はただ、リリヴァリルフィランの提案なら、簡単に地下に入れると思っただけだよ! 鍵さえ開けてもらえれば、こっちのものだろ!? 竜が早く見つかった方が、イールヴィルイだって、助かるんじゃないのか!??」

 そこに、トルティールス様が口を挟む。

「…………僕も、エウィトモートに賛成です」
「貴様までどうした?」

 少し苛立った様子で振り向くイールヴィルイ様に、トルティールス様は真剣な顔で答える。

「落ち着いてください。デシリーが、王城の方に手を回そうとしています。ジレスフォーズの領地であなたが横暴な真似をしていると言って、正式に抗議する気です。そうなる前に、早く竜を探してしまいましょう。デシリーがいない、今がチャンスです」
「……しかし……」
「もちろん、リリヴァリルフィランのことは、あなたが必ず守ればいい。それとも、自信がないのですか?」
「……」

 イールヴィルイ様は、しばらく悩んでいるようだった。そして、しばらくして頷いてくださる。

「分かった……リリヴァリルフィラン」
「は、はい!!」
「あなたのことは、俺が必ず守る。俺から……離れないでくれ」

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