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5.こいつは一体なんなんだ!
しおりを挟むタバコの火を消して、店内に戻ると、ハントは今度は、新聞をそばに置いていた。それにあった記事が目に止まる。例の連続殺人犯の記事のようだ。
「……なあ、それ、ちょっと見せてもらってもいいか?」
「デジュウさん……もちろんです」
ハントから新聞を受け取る。そこにあったのは、やっぱりここ最近続いている殺人事件の記事。
これの犯人、まだ捕まっていないのか。昨日の夜、居酒屋のテレビで、指名手配になったとニュースで話していたのに。
新聞にも、指名手配の記事がある。記事の写真に犯人として写っているのは、髭面の五十代ほどの白髪混じりの髪の男性。近所の防犯カメラの映像らしい。カメラに気づいていないのか、こっちを見てはいない。もう一枚、知り合いから提供されたらしい写真があって、それでは犯人はこっちを向いていて無表情だった。
当然だが、見たことない奴だ。写真を見ているだけで、睨まれているような気になる。
「デジュウさん?」
「あ、ああ、悪い……返すよ。これ」
新聞をハントに返して、ついでに名残惜しいが、さっきの財布も返す。
しかしハントは、首を横に振った。
「財布は差し上げます」
「…………は?」
こいつ、今なんて言った? 差し上げる? 頭おかしいのか?? 何でくれるんだよ。二十万(レジで数えた)入ってるんだぞ!
「な、何言ってんだよ……からかうな……」
「僕は本気です。それはあなたに差し上げます。僕を気遣ってくれたお礼です」
「……なんでそんなに気前がいいんだよ??」
「僕はあなたに感謝していますから」
「なにをだよ……?」
「親切にしてくれたことを、です。昨日もバス停まで送ってもらいましたし」
親切? 俺が?
こいつ、絶対おかしい。
どれだけ俺に感謝しているか知らないが、財布ごと大金をプレゼントはないだろ。それに、この財布、随分古い。ハントのものには見えない。
こいつ、一体何者なんだ?
関わらない方がいい。全部返して逃げるか?
しかし……せっかくの目の前の金を、ここで捨てたくはない。この際、謝礼は諦めて、財布の金だけで大人しく引き下がるか? だが、謝礼は惜しい。
悩んで、俺は、先に進むことにした。さっさと送って逃げればいいんだ。
財布はポケットにしまって、ハントの手を引いて歩き出す。
けれど、コンビニを出ようとしたら、レジにいた店員の体がぐらりと揺れるのが見えた。そしてそのまま、床に倒れてしまう。
「おいっ……! 大丈夫か!?」
駆け寄ってカウンターを飛び越え、倒れた男の体を揺り動かす。すると、奥からもう一人の店員が出てきた。
「大丈夫ですか!? うわっ……!」
そいつも、倒れているもう一人の店員に気づいたらしい。
「お、おいっ……! どうしたんだ!? 何がっ……!」
慌てる店員が、倒れた男を揺り動かしている隙に、ハントが俺の手を引く。
「ここは任せて、行きましょう。デジュウさん!」
「は!?」
「彼に任せておけば、大丈夫です。僕たちは、今のうちに帰るんです!」
「お、おいっ……!!」
戸惑いながらも、俺の足は、そいつと一緒に走り出す。
背後から、店員が呼び止める声がしたが、俺たちは、そのまま外に出て行った。
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