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3.お腹すいた
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こうして僕は、手足に枷をされて、王都から離れた山の中にある砦に連れて行かれることになった。
檻とほとんど変わらない馬車に乗せられた僕を、数人の兵士と魔法使いたちが護送していく。
誰かに見送られることはなく、僕が城から出たことに気づかない人も多かったはずだ。
僕は、殿下と宰相様に感謝した。あの廊下で幽閉を告げてくれたおかげで、僕は、ひっそりと王城から出発することができたんだ。広間に呼び出されて派手に発表でもされたらたまらない。
もう罵倒されたり、陰口を叩かれなくて済む。もしかしたら、あれが僕に対する最後の気遣いだったのかもしれない。
馬車に乗せられ、数日かけて寒い砦に連れてこられた僕は、着くなり中にゴミみたいに放り込まれた。
ここ、砦とはほとんど名ばかりだ。あちこちにヒビが入り、中も荒れ果てている。ずいぶん古い砦のようだ。
確か、この周辺を守るために新しく別の砦が設けられたはずだ。だから、ここはすでに捨てられた砦なんだろう。
そんなところの冷たい床に、手にも足にも枷をされたまま放り投げられ、床に強く体を打った。
もう動けない……
何しろ、ここへ来るまでに数日かかったのに、食事はほとんど与えられず、目の前に捨てられた水だけをすすっていた。
持っていたものを奪われそうになって、その度に抵抗して、殴られた。
別に僕は、何か貴重なものを持っていたわけではない。あえて言うなら、道中魔物から身を守るための魔法の道具をほんの少し身につけていたくらい。もちろん、安全を確保するために正式に認められたものだけだ。
彼らにも、特に僕の持っているものを奪わなくてはならない理由があったわけではないんだろう。
恐らく、ちょっとした金目当てと、あとは、僕に制裁を与えたかったんだと思う。この極悪人めと言って、僕を殴っていたから。
すでに夕暮れ間近。薄暗い砦の中は、窓が古くなっているのか、気味の悪い音を立てて揺れていて、冷たい隙間風が入ってくる。夕日が窓から入ってきて、気持ち悪いくらい眩しかった。
まるで廃墟だ。ここに……これから住まなきゃならないのか……?
立てずに、横たわったままでいると、腹を強く蹴られた。
「うっ…………」
ごほごほと数回血と一緒に息を吐き出すと、今度は胸の辺りが痛んだ。頬も痛い。涙が流れて、それが肌に触れると、顔にできた傷口に痛みが滲んでいくようだった。
動かない僕を、護送した兵士たちが見下ろしている。そして、冷たい嘲りの表情を浮かべながら、彼らのリーダーである騎士、ラグトジャス様が近づいてきた。高貴そうな格好はしているが、終始嘲笑するような目で僕を見ては、部下の僕に対する暴力を笑って褒めるような奴だ。
「じゃあな……二度と、その面を見せるな。王都が汚れるっ……」
「ま、待って!」
僕は、ラグトジャス様の足にしがみついた。そいつらは、僕が持っていたものを、ほとんど持っていってしまった。それはもう、僕が持っていても仕方がないものなんだけど、彼らが今持っている杖まで持って行かれては困る。
だって、僕にはもう魔力なんて全く残っていない。ここでは、僕が逃げないように見張る人はいるけど、それは僕を守ってくれるわけじゃない。魔物が来たら、自分で自分を守らなきゃならない。だから、魔法の杖まで持って行かれては困るんだ。それがあれば、魔力の回復を早めることができる。
そう思った僕は、必死にラグトジャス様の足にしがみついた。
「お、お願いですっ……!! 他のものは全部あげます!! 杖だけはっ……それだけは、返してくださいっっ……!! それまでなくなったら、僕はっ……! ま、魔物とも戦えなくなるっ…………死ぬしかなくなるんです! どうかっ……!」
「お前……自分が何をしたのか、分かっていないのか?」
「え……?」
そいつを見上げようとしたら、頭を強く踏みつけられた。
顔が痛い。鼻や頬、口のあたりから血が出ていた。
昔はよく、家族に引っ叩かれた。「この無能め!」って、よくそんなことを言われていた。
それが変わったのは、僕が、ロステウィス様の伴侶に選ばれた時からだ。「やっとお前でも一族の役に立てる日が来たぞ」と、誰もが涙を流して喜んでいた。
だけど、僕はもう、公爵家の伴侶にはなれない。
「役立たずの分際で、杖を返せ? よくそんなことが言えたな」
それだけ、最後に聞こえた。あとは、多分罵詈雑言を浴びせられていたんだと思う。だけどそんなの聞いてる余裕がない。吊るされて、背中も腹も、何度も棒で打たれて、何度か咳き込んだ。
「……やめ…………て…………くだっ……さい! ゆ、るして………………ぐっ……! ごほっ…………」
許してって何度も言って、吐いて、あとは何をしたんだか覚えてない。
気づいた時には、僕は血まみれで床に倒れていて、持っていた全て奪われていた。装備も武器も、着ていたものさえ。最後には、破れた下着だけをほんの少し身につけているだけになっていた。
「これは全て、王国のために使わせてもらう。お前はその姿で反省しろ! そうすれば、お前の醜い心も少しは綺麗になるんじゃないか?」
そう言って、僕を散々嬲った奴らは、笑いながら、僕に「反省しろ!」と、叫んで出ていった。
後に残った僕は、そのままずっと倒れていた。
息をするために胸が動くだけで体が痛んで、血が流れていくような気がした。床が冷たい。起き上がって、せめて暖をとりたい。だけど痛くて動けない。
倒れた僕には構わず、僕を見張る役目を負った人たちは、連れたって近くの街へ行ってしまった。多分、砦とその周囲に結界が張られているんだろう。僕が逃げないようにするために見張るためのものだ。それがあれば僕の監視はできるし、僕の死に様を眺めることもできるから、こんな寒いところにいる必要はないんだろう。
これで……僕は終わるのか…………
頑張ったつもりだった。ロステウィス様と一緒に、王国を守ることが、僕の役目だと思った。国を守る使命を与えられたんだと思って、嬉しかった。ずっと、ロステウィス様と国を守っていくんだと、そう信じていた。
だから、精一杯頑張ってやって来たつもりだった。だけど、僕では力不足だと思った時もあった。使命が辛いと思う時も。
もっと早く気づけばよかったのかな……
そんなことだけ考えていたら体から力が抜けて涙が落ちていく。自分のしていたことが全部無駄になったようで虚しい。
僕……これからどうなるんだろう…………
動くのも嫌で、そんな気力も湧かない。
一つ分かるのは、気絶するわけでもなく、死ぬわけでもない僕は、このまま苦痛を感じながら、ここに横たわっているしかないってこと。
ドアはすでに閉められて、周りは暗い。日が暮れたらしい。
外には月が出たようで、窓からその光が入って来ているから、真っ暗ではない。とはいえ、周りの状況が分からないくらいに暗い。分かっているのは、真っ暗な廃墟寸前の砦に、たった一人で取り残されていることだけ。
ずっと泣いていたけど、だんだん泣くための体力もなくなった。
床が冷たい。体も痛い。息をすることが苦しくて、服か、そうでなければ布団が欲しい。
それに……お腹も空いた…………
これだけ全部奪われて、ボコボコに蹴られて、こんなところに閉じ込められて、よく腹が減るな。
絶望して、さっきまで何かを食べるなんて考えられなかったのに、ちょっと時間が経っただけで何か腹に入れたくなる。
僕、こんなに図太かった?
腹は減るし、死ぬこともできないし、寒いし、体だって痛くて辛い。こんな暗いところに一人で転がっているのも怖い。魔物が襲って来たらどうすればいいんだ。
少しは魔力が回復して、足枷だけ破壊した僕は、なんとか這って動いた。手枷も破壊したいが、僕を護送した奴らに枷を外してもらえなかったのに、自分で破壊したりすると、今度は逃亡を疑われる。
明かり……ないかな? これじゃ暗くて何にも見えない。
魔法の道具くらいあるはず……それがあれば、辺りを照らせる。
ここだって、誰かが住むために作られたのなら、部屋を温めるための魔法の道具くらい、あるんじゃないのかな……
こんなことになって、もうこのままずーっと倒れていたいのに、それもできない。それどころか、腹が減ったって…………
誰もいなくなって、安心したからかな……
ここ、一応幽閉のための塔なんだし、なんでもいいから、食べられるものを探そう。
きっとこのまま、無様に醜く情けなく生きてるんだろーなー……王国から捨てられて辛いし、涙が出そうなのに。
砦を歩き回り、古ぼけた燭台みたいな形の魔法の道具を見つけた。ほんの少しだけ魔力を感じる……だけどこれ、使ったことない。なんとかして火がつけばいい。
いじり回していたら、なんとか明かりがついた。炎みたいだけど、普通の炎じゃない。魔法の火だ。
これならあったかい!
やっと体が温まってきた。こんな時でも、寒いものは寒い。
それで暖まりながら、辺りを照らす。
床は石のようなものでできていて、絨毯なんかはない。窓はあるけど、カーテンはなくて、部屋の隅には家具や武器が壊れたようなものが積んであった。
部屋もいくつかあるみたいだけど、今は全部見て回る気にはならないな。
体が温まって動けるようになったら、何か食べられるものがないか、探しに行こう。
ゴロンと床に寝転がる。
やっぱり床が冷たい。
僕……ここで何してればいいんだろう。
幽閉とは言うが、僕は一つ、役目を与えられている。それが、この地を守ること。そのために、近くの街の警備隊から依頼された調査をこなせと言われている。
だけど、そんなことより今は着る物が欲しいし、腹が減った。
すごいなーー…………追放されて、酷い目にあって、惨たらしく痛めつけられて、真っ暗な牢獄みたいな所に閉じ込められて、僕が考えるのは服と布団と飯だぞ。他にあるだろ!
なんとか立てるようになって、少し砦の中を歩く。すると、一応台所は見つけることができた。
壊れかけのフライパンや、古い鍋くらいしかないな……
だけど、何かを焼いて食べることできそう!
砦の周りには結界が張られていて、言い付けられた範囲から出ない以上、出歩くことは自由。だけど、僕のための牢獄として与えられた範囲を出れば、即座に捕らえられて死刑だ。
だけど……それ以外は自由。いや……自由ではないか。することはあるし。
ここでとりあえず、一人で暮らさなきゃならないんだ。それでも、これまでよりマシかもしれない。そう思ったら、少し元気が出た。
頑張って暮らすかーー…………
檻とほとんど変わらない馬車に乗せられた僕を、数人の兵士と魔法使いたちが護送していく。
誰かに見送られることはなく、僕が城から出たことに気づかない人も多かったはずだ。
僕は、殿下と宰相様に感謝した。あの廊下で幽閉を告げてくれたおかげで、僕は、ひっそりと王城から出発することができたんだ。広間に呼び出されて派手に発表でもされたらたまらない。
もう罵倒されたり、陰口を叩かれなくて済む。もしかしたら、あれが僕に対する最後の気遣いだったのかもしれない。
馬車に乗せられ、数日かけて寒い砦に連れてこられた僕は、着くなり中にゴミみたいに放り込まれた。
ここ、砦とはほとんど名ばかりだ。あちこちにヒビが入り、中も荒れ果てている。ずいぶん古い砦のようだ。
確か、この周辺を守るために新しく別の砦が設けられたはずだ。だから、ここはすでに捨てられた砦なんだろう。
そんなところの冷たい床に、手にも足にも枷をされたまま放り投げられ、床に強く体を打った。
もう動けない……
何しろ、ここへ来るまでに数日かかったのに、食事はほとんど与えられず、目の前に捨てられた水だけをすすっていた。
持っていたものを奪われそうになって、その度に抵抗して、殴られた。
別に僕は、何か貴重なものを持っていたわけではない。あえて言うなら、道中魔物から身を守るための魔法の道具をほんの少し身につけていたくらい。もちろん、安全を確保するために正式に認められたものだけだ。
彼らにも、特に僕の持っているものを奪わなくてはならない理由があったわけではないんだろう。
恐らく、ちょっとした金目当てと、あとは、僕に制裁を与えたかったんだと思う。この極悪人めと言って、僕を殴っていたから。
すでに夕暮れ間近。薄暗い砦の中は、窓が古くなっているのか、気味の悪い音を立てて揺れていて、冷たい隙間風が入ってくる。夕日が窓から入ってきて、気持ち悪いくらい眩しかった。
まるで廃墟だ。ここに……これから住まなきゃならないのか……?
立てずに、横たわったままでいると、腹を強く蹴られた。
「うっ…………」
ごほごほと数回血と一緒に息を吐き出すと、今度は胸の辺りが痛んだ。頬も痛い。涙が流れて、それが肌に触れると、顔にできた傷口に痛みが滲んでいくようだった。
動かない僕を、護送した兵士たちが見下ろしている。そして、冷たい嘲りの表情を浮かべながら、彼らのリーダーである騎士、ラグトジャス様が近づいてきた。高貴そうな格好はしているが、終始嘲笑するような目で僕を見ては、部下の僕に対する暴力を笑って褒めるような奴だ。
「じゃあな……二度と、その面を見せるな。王都が汚れるっ……」
「ま、待って!」
僕は、ラグトジャス様の足にしがみついた。そいつらは、僕が持っていたものを、ほとんど持っていってしまった。それはもう、僕が持っていても仕方がないものなんだけど、彼らが今持っている杖まで持って行かれては困る。
だって、僕にはもう魔力なんて全く残っていない。ここでは、僕が逃げないように見張る人はいるけど、それは僕を守ってくれるわけじゃない。魔物が来たら、自分で自分を守らなきゃならない。だから、魔法の杖まで持って行かれては困るんだ。それがあれば、魔力の回復を早めることができる。
そう思った僕は、必死にラグトジャス様の足にしがみついた。
「お、お願いですっ……!! 他のものは全部あげます!! 杖だけはっ……それだけは、返してくださいっっ……!! それまでなくなったら、僕はっ……! ま、魔物とも戦えなくなるっ…………死ぬしかなくなるんです! どうかっ……!」
「お前……自分が何をしたのか、分かっていないのか?」
「え……?」
そいつを見上げようとしたら、頭を強く踏みつけられた。
顔が痛い。鼻や頬、口のあたりから血が出ていた。
昔はよく、家族に引っ叩かれた。「この無能め!」って、よくそんなことを言われていた。
それが変わったのは、僕が、ロステウィス様の伴侶に選ばれた時からだ。「やっとお前でも一族の役に立てる日が来たぞ」と、誰もが涙を流して喜んでいた。
だけど、僕はもう、公爵家の伴侶にはなれない。
「役立たずの分際で、杖を返せ? よくそんなことが言えたな」
それだけ、最後に聞こえた。あとは、多分罵詈雑言を浴びせられていたんだと思う。だけどそんなの聞いてる余裕がない。吊るされて、背中も腹も、何度も棒で打たれて、何度か咳き込んだ。
「……やめ…………て…………くだっ……さい! ゆ、るして………………ぐっ……! ごほっ…………」
許してって何度も言って、吐いて、あとは何をしたんだか覚えてない。
気づいた時には、僕は血まみれで床に倒れていて、持っていた全て奪われていた。装備も武器も、着ていたものさえ。最後には、破れた下着だけをほんの少し身につけているだけになっていた。
「これは全て、王国のために使わせてもらう。お前はその姿で反省しろ! そうすれば、お前の醜い心も少しは綺麗になるんじゃないか?」
そう言って、僕を散々嬲った奴らは、笑いながら、僕に「反省しろ!」と、叫んで出ていった。
後に残った僕は、そのままずっと倒れていた。
息をするために胸が動くだけで体が痛んで、血が流れていくような気がした。床が冷たい。起き上がって、せめて暖をとりたい。だけど痛くて動けない。
倒れた僕には構わず、僕を見張る役目を負った人たちは、連れたって近くの街へ行ってしまった。多分、砦とその周囲に結界が張られているんだろう。僕が逃げないようにするために見張るためのものだ。それがあれば僕の監視はできるし、僕の死に様を眺めることもできるから、こんな寒いところにいる必要はないんだろう。
これで……僕は終わるのか…………
頑張ったつもりだった。ロステウィス様と一緒に、王国を守ることが、僕の役目だと思った。国を守る使命を与えられたんだと思って、嬉しかった。ずっと、ロステウィス様と国を守っていくんだと、そう信じていた。
だから、精一杯頑張ってやって来たつもりだった。だけど、僕では力不足だと思った時もあった。使命が辛いと思う時も。
もっと早く気づけばよかったのかな……
そんなことだけ考えていたら体から力が抜けて涙が落ちていく。自分のしていたことが全部無駄になったようで虚しい。
僕……これからどうなるんだろう…………
動くのも嫌で、そんな気力も湧かない。
一つ分かるのは、気絶するわけでもなく、死ぬわけでもない僕は、このまま苦痛を感じながら、ここに横たわっているしかないってこと。
ドアはすでに閉められて、周りは暗い。日が暮れたらしい。
外には月が出たようで、窓からその光が入って来ているから、真っ暗ではない。とはいえ、周りの状況が分からないくらいに暗い。分かっているのは、真っ暗な廃墟寸前の砦に、たった一人で取り残されていることだけ。
ずっと泣いていたけど、だんだん泣くための体力もなくなった。
床が冷たい。体も痛い。息をすることが苦しくて、服か、そうでなければ布団が欲しい。
それに……お腹も空いた…………
これだけ全部奪われて、ボコボコに蹴られて、こんなところに閉じ込められて、よく腹が減るな。
絶望して、さっきまで何かを食べるなんて考えられなかったのに、ちょっと時間が経っただけで何か腹に入れたくなる。
僕、こんなに図太かった?
腹は減るし、死ぬこともできないし、寒いし、体だって痛くて辛い。こんな暗いところに一人で転がっているのも怖い。魔物が襲って来たらどうすればいいんだ。
少しは魔力が回復して、足枷だけ破壊した僕は、なんとか這って動いた。手枷も破壊したいが、僕を護送した奴らに枷を外してもらえなかったのに、自分で破壊したりすると、今度は逃亡を疑われる。
明かり……ないかな? これじゃ暗くて何にも見えない。
魔法の道具くらいあるはず……それがあれば、辺りを照らせる。
ここだって、誰かが住むために作られたのなら、部屋を温めるための魔法の道具くらい、あるんじゃないのかな……
こんなことになって、もうこのままずーっと倒れていたいのに、それもできない。それどころか、腹が減ったって…………
誰もいなくなって、安心したからかな……
ここ、一応幽閉のための塔なんだし、なんでもいいから、食べられるものを探そう。
きっとこのまま、無様に醜く情けなく生きてるんだろーなー……王国から捨てられて辛いし、涙が出そうなのに。
砦を歩き回り、古ぼけた燭台みたいな形の魔法の道具を見つけた。ほんの少しだけ魔力を感じる……だけどこれ、使ったことない。なんとかして火がつけばいい。
いじり回していたら、なんとか明かりがついた。炎みたいだけど、普通の炎じゃない。魔法の火だ。
これならあったかい!
やっと体が温まってきた。こんな時でも、寒いものは寒い。
それで暖まりながら、辺りを照らす。
床は石のようなものでできていて、絨毯なんかはない。窓はあるけど、カーテンはなくて、部屋の隅には家具や武器が壊れたようなものが積んであった。
部屋もいくつかあるみたいだけど、今は全部見て回る気にはならないな。
体が温まって動けるようになったら、何か食べられるものがないか、探しに行こう。
ゴロンと床に寝転がる。
やっぱり床が冷たい。
僕……ここで何してればいいんだろう。
幽閉とは言うが、僕は一つ、役目を与えられている。それが、この地を守ること。そのために、近くの街の警備隊から依頼された調査をこなせと言われている。
だけど、そんなことより今は着る物が欲しいし、腹が減った。
すごいなーー…………追放されて、酷い目にあって、惨たらしく痛めつけられて、真っ暗な牢獄みたいな所に閉じ込められて、僕が考えるのは服と布団と飯だぞ。他にあるだろ!
なんとか立てるようになって、少し砦の中を歩く。すると、一応台所は見つけることができた。
壊れかけのフライパンや、古い鍋くらいしかないな……
だけど、何かを焼いて食べることできそう!
砦の周りには結界が張られていて、言い付けられた範囲から出ない以上、出歩くことは自由。だけど、僕のための牢獄として与えられた範囲を出れば、即座に捕らえられて死刑だ。
だけど……それ以外は自由。いや……自由ではないか。することはあるし。
ここでとりあえず、一人で暮らさなきゃならないんだ。それでも、これまでよりマシかもしれない。そう思ったら、少し元気が出た。
頑張って暮らすかーー…………
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