何でも押し付けられて拘束されてた役立たずのコミュ障だけど雑用やって脱出したので奪い取られるだけの毎日はやめて目立たずのんびり毎日を満喫する!

迷路を跳ぶ狐

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8.これからよろしく!

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 きれいになった街道を馬車は進んで、夕暮れが来る頃には、兄様の屋敷についた。

 屋敷の前には一人のメイド姿の女性が立っていて、僕らを迎えてくれる。長い赤髪をリボンと宝石でできた髪飾りで一つに結んだ、背の高い女性だ。目鼻立ちが大人びていて、腰に短剣をさしていた。

 彼女は兄様が馬車から降りてくるのを見て、美しく頭を下げる。

「お帰りなさいませ。レリオシロット様」
「や、やあっ……た、ただいまっ……アリシディニアさん…………る、留守中は……何もなかったか?」
「港町の魔法使いから、素材が届いています。それ以外はございません」
「そ、そうかっ……よ、よかったよ……君が無事でっ……あ、いやっ…………その……や、屋敷を長くあけるのは久しぶりだからな! だから、その……い、色々不安だったんだよ! ははははは……」

 ………………どうしたんだろう……兄様……

 さっきから、なんだか様子がおかしい。いつもなら、無表情すぎて何を考えている分からないなんて言われてしまうこともあるのに。アリシディニアさんの前では、ずっと真っ赤だ。しかも出迎えてくれた彼女に、ずっと笑顔で話している。こんな兄様の顔、初めて見た……

 だけどアリシディニアさんは、僕らの背後の方が気になっているみたいだ。そして、後続の馬車が屋敷について、その扉が開くのを見て、そっちの方に駆け寄っていく。

「お嬢様っ……!!」

 彼女はそう叫んで、リイファルラレフィスさんの方に駆け寄っていく。
 どうやら、よほど心配していたらしい。彼女に駆け寄ると、「ご無事でよかった……安心しました」と話していた。

 残された兄様は、すっかり肩を落としてしまっている。

 それを見たニアトイラスさんが、呆れたように小声で言った。

「あー…………またやってるな……」
「え……? どういうことですか? 兄様、いつもああなんですか?」
「そうだよ。見りゃ分かるだろ……アリシディニアに気があるんだよ」
「ええっっ!!?? 兄様がっっ!??」
「……あんまり大きな声出すな。聞こえるだろ」
「す、すみません……」
「アリシディニアは、もともとフルリステ家の侍女なんだ。気をつけろよ。彼女の頭の中は、お嬢様のことでいっぱいなんだから」
「は、はい!!」

 そうなんだ……兄様……あの、魔法にしか興味のなかった兄様が…………

 だったら僕は、兄様を応援します!! 頑張ってください!! 兄様!!

 リイファルラレフィスさんは、アリシディニアさんに、「私は大丈夫だ」って答えていて、アリシディニアさんも、それを聞いて安心したみたい。僕らの方に振り向いた。

 それに気づいた兄様が、僕のことを紹介してくれた。

「あっ……そうだ! お、弟の……ヴァンデトフィレルだ!! あっ……そのっ……! 俺の弟だ!!」

 兄様……それ、さっきも言ったよ?

 アリシディニアさんも、首を傾げている。それにアリシディニアさん、兄様の前でさっきからずっと顔が変わらない。まるで、王城にきた時の兄様みたい。

 ここは僕が頑張って、アリシディニアさんの兄様に対する好感度を上げなくては!

 兄様っっ……!! 僕に任せてください!!

「え、えっと…………あの……」

 挨拶しようとしたら、アリシディニアさんが、僕をじっと見ている。

 な、なんだろう……ふ、普段、兄様以外、誰とも話さないのに、いきなりそんなに見つめられると……

「あっ……あのっ……ヴァンデトフィレルです!! よ、よろしくっ……」

 すると、アリシディニアさんは僕に礼をして言った。

「アリシディニア・イスベリルグです。これから、どうぞよろしくお願いいたします」
「は、はいっっ……あっ……イスベリルグ子爵の……」
「………………はい。次女でございます。一応」

 イスベリルグ家といえば、長く続く騎士の家系だ。

 それでかな……腰の剣も使い込まれているみたい。魔力が込めやすいように、独自の加工もしてあるし…………それ以外にも、メイド服の上から巻いた腰のベルトは、銃を収納するためのものだ。腕のブレスレットは、おそらく魔法の杖の代わり。かなり武装しているように見えるけど、どちらかと言うと、素材回収用だろう。

 だけど、彼女の装備ばかりじーっと見ていたからか、アリシディニアさんは、首を傾げた。

「……あの、ヴァンデトフィレル様?」
「……あ! いえっ……す、すみませんっ……アリシディニアさんっ!! よ、よろしくっ……ヴァンデトフィレルです!! 兄様の弟です!! よ、よろしく……」

 ダメだ……何度も同じことを言ってしまっている……
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