何でも押し付けられて拘束されてた役立たずのコミュ障だけど雑用やって脱出したので奪い取られるだけの毎日はやめて目立たずのんびり毎日を満喫する!

迷路を跳ぶ狐

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16.俺も行く!

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 兄様……かなり焦っているみたい。使い魔からは、切羽詰まった兄様の声が聞こえてくる。

『アリシディニアさんはどこだ!! 俺も今すぐ、アリシディニアさんを助けに行く!!』
「に、兄様……落ち着いてください。明日までに用意しないといけない魔法の道具があるって言ってませんでしたか? それだって、貴族からの依頼なんじゃないんですか?」
『そんなものっ……どうでもいい!! 貴族も道具も知ったことかっっ……!! 俺は、アリシディニアさんを助けに行くっっ!!』
「兄様……」

 ……すっかり冷静さを失ってしまってる……

「お、落ち着いてください……まだ、アリシディニアさんが無理矢理連れていかれたと決まったわけではありません……」
『そうに決まっている!! ヴァンデ! そこで待っていろ!! 今すぐに行く!!』
「に、兄様っ……! ほ、本当に、落ち着いてください!!」
『だがっ…………』

 言い返そうとした兄様だけど、少し落ち着いてくれたのか、言葉を切った。

 そして、少し息を整えて、まだやっぱり少し焦った様子で言う。

『だが、アリシディニアさんに、何かあったのかもしれないんだろう?』
「はい……」
『だったらやはり俺が行く! アリシディニアさんに何かあったらどうする!! 魔物なんか、勝手に増えていればいい!!』
「兄様……何言ってるんですか…………今日用意してる魔法の道具って、もしかして、魔物対策のための道具なんですか?」
『ああ…………確かにそうだが…………くそっ……なんでこんな時にっ……』
「まだ、彼女たちが拘束されたと決まったわけではありません。もしかしたら、御令息に会いに行っただけかもしれないし……僕の方で、もう一回調べてみます」
『だがっ…………』
「それより、兄様にはお願いしたいことがあるんです!! 彼女たちが会いに行ったと言う、領主様の御令息にも、使い魔を送れませんか? 僕が飛ばすより、兄様が飛ばした方が、答えてくれると思うんです」
『……それはもうしている。お前が恐ろしい早さで飛ぶ使い魔を寄越してくれたからな……』
「じゃあっ……」
『一向に、返事がないんだ』
「え…………」
『おそらく、破壊されている。すでに使い魔の魔力は切れた』
「そんなっ…………」

 それって、こっちとは話す気がないってことか?

 兄様も、苛立ったように言った。

『……見知らぬ使い魔が飛んできたから撃ち落とした可能性もあるが、恐らく分かっていて落としている。あのっ……クソ息子めっっ!! アリシディニアさんに何かしてみろ! 俺が殺してやる!!』
「…………お、落ち着いて……それなら、領主様のところに使い魔は飛ばせないのですか?」
『それもやってみた…………だが、それもたどり着かずに途中で落ちたようだ』
「それも撃ち落とされたんですか?」
『いや……魔法ではなく、魔物だろう。どこか魔物の多い地域に行っているのかもしれない』
「……魔物が……魔物退治中でしょうか……」

 僕らが話していると、トルデュガレトさんが口を挟んだ。

「領主様なら、今日は魔物退治に行ってるよ?」
「え? 知ってるんですか?」
「うん。この近くに、最近魔物が急増しているところがあるんだ。ギルドでも噂になってる。そこで魔物退治をしているはずだよ」
「魔物退治を…………」
「この辺り、突然魔物増えたりするから。領主様から、魔物討伐の依頼がギルドに来るくらいだよ」

 それなら、領主様の方は、この近くにいるってことか??

 ………………だったらっ……!

「…………領主様に、会いに行きます」
「え?」

 不思議そうな顔をするトルデュガレトさん。

 僕だって、無謀なことを言っているのは分かってる。
 だけど、御令息の方はこっちと話すつもりがないし、魔物退治中の領主様の方が、退治に力を貸せば、話をしてくれるかもしれない。

 可能性は薄いけど…………だけど、このまま何もせずにいられるもんか!

「あ、あのっ……度々ですみませんがっ……案内していただけますか?」
「任せてーー」

 彼が微笑んで答えてくれると、使い魔からも兄様の声がする。

『だったら俺も行くっっ!! アリシディニアさんを助けにっっ…………!!』
「に、兄様…………でも……まだ、魔物と戦えるくらい魔力回復してないですよね? ずっと魔法の道具の準備していたんだし……」
『だがっ……彼女に何かあったら…………』
「兄様はこのまま、使い魔でのサポートをお願いします! それと、この街にも、兄様のお弟子さんがいらっしゃいませんか?」
『確かにいるが、今はほとんど、こっちに来ているんだ……会議の用意で呼び寄せたところだった』
「だったら、できるだけで構いません! 今動ける人に、連絡をとっていただけませんか?」
『連絡を? 確かに、できないことはないが……』
「もしも、何か誤解があって、アリシディニアさんたちが囚われてしまったのなら、解放のためには、誤解を解く必要があります。きっと、人手が必要になると思うんです」
『そうか……そうだなっ…………!』
「それから、彼女の一族にもっ……お願いします!」
『分かった…………ヴァンデ……』
「はいっ……!」
『アリシディニアさんも、リイファルラレフィスさんも、ずっと俺を助けてくれていたんだ…………それなのに……何かあったら……』
「兄様……」

 兄様、ひどく苦しそうだ。

 本当は、自分ですぐに飛んで行きたいんだろうな……

『頼むっ……アリシディニアさんたちをっ…………助け出してくれっ……!』
「…………任せてください!! 必ずっ……やり遂げて見せます!」
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