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17.本当に
しおりを挟むベルブラテスに、会議への出席を認められた俺は、彼とガレイウディスに連れられて、城の中を歩いていた。
デトリットや他の仲間たちがいる部屋には、ベルブラテスの部下だという魔法使いが結界を張っている。ベルブラテスが一番信頼できる奴だって言ってたし、大丈夫だろう。
……本当にあいつらのこと守って、俺との約束も守ってくれてたんだ……
ちらっと、隣を歩くベルブラテスを見上げる。そいつは、俺には気づいていないのか、前を向いたまま。横顔を見ているのも、なんとなく落ち着かなくて、すぐに前を向く。
城をしばらく歩くと、広い廊下の向こうに、数人の貴族の魔法使いが立っていた。その中に、見覚えのある奴がいる。深い緑色の長い髪の、ひどく冷たい目をした男だ。確か……昨日、地下牢で俺を睨んでいたブローデスだ。
その男の顔を見て、ガレイウディスが少し動揺するのが分かった。
「……なぜ……あいつがここにいるんだ……」
ぼそっと言ったガレイウディスは、じっと、ブローデスを睨んでいるようだった。
昨日、ガレイウディスがガキの頃の話を延々語っていた時、ブローデスの名前はよく出てきた。
ガレイウディスはブローデスをムカつく奴って言ってたけど、あの話を聞いていたらそんなふうに思っているとは思えない。
ガキだったガレイウディスが貴族たちに嫌味言われた時に、ブローデスが彼を庇って、貴族たちを手酷く言い負かしたって話、本当なのか……?
気になることは他にもある。ガキの頃は四人で仲が良かったようなのに、今は、ブローデスはキユルトを擁護していて、ベルブラテスとガレイウディスとは対立しているらしい。
ブローデスは、こちらに振り向いた。そしてガレイウディスがいることにすぐに気づいたようだけど、彼はそれを無視して、ベルブラテスに振り向いた。
「遅いですよ。ベルブラテス様……キユルト様がお待ちです。ここからは、お一人で会議室へ向かってください」
答えるブローデスは、まるで感情がないかのように、無表情だった。声も淡々としていて、冷たさすら感じるほどだ。
ベルブラテス以外は帰れってことか……だったら絶対に帰ってやらん!
ガレイウディスも同じ気持ちらしく、彼は、ブローデスを睨みつけて言った。
「俺たちも行く。そこを通せ。ブローデス」
「……ガレイウディス……あなたまで、どういうつもりですか……? 今日の会議に、護衛は必要ありません……強固な結界を何重にも張っています。あなたの後ろの不審者のようなものは、二度と入れません。キユルト様を危険に晒すわけにはいきませんから」
それを聞いて、ブローデスの周りにいた貴族の連中は、俺たちを嘲るように笑い出す。笑ってる連中には馬鹿にされてるみたいだが、そんな奴らより、俺は、ブローデスの方から目を離せなかった。
……ひどい敵意を感じる……
だって、さっきからずっと睨まれてる。昨日の魔法の道具のこと、怒ってるのか……? それとも、単に俺が気に入らないのか?
あの牢でも、俺を婚約者にすると言ったベルブラテスに、ブローデスは冷静に、だけど強く反対していた。もう今すぐにでも殺しにきそうだ。
ガレイウディスは、ブローデスに向かって言った。
「俺たちは、ベルブラテス様から離れるつもりはない。そこを通せ。ブローデス……」
「この先は、会議への出席を許可されたもの以外は立ち入り禁止です。あなたが通ることはできません」
「通せと言っているだろう……お前にも分かるはずだ……このままお一人でベルブラテス様が会議に出るなど、あまりに危険すぎる」
「会議室の周りには、今は結界を張って、不審な者は誰も入れないようにしてあります。それに、中で何かあったら、すぐに使い魔を飛ばせるようにしてあります。その時には、あなたたちにも、一応報告してあげますから、さっさと帰りなさい。昨日城に突っ込んできて、魔法の道具を破壊したそこにいる男の方が危険です」
……それって、俺のことだよな……
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