嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐

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26.何をしている!

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 あの屋敷でヴェイロクッド殿下に会っていた時から、分かっていた。あの時の殿下はずっと俯いていて、少し恐いような顔をしていて、僕を睨むようなその仕草を、恐ろしいとも思ったりもした。

 だけど、殿下は人一倍、国のことを思っている。

 あんな国のすみにある僕の屋敷を訪れていたのだって、閑職に追いやられていたからじゃない。国を魔物から守る結界を、より強固なものにしたいと、そう願っていたからだ。

 だから、僕の屋敷までわざわざ来て、より強固な結界を張れる手段はないか、ずっと探していたんだ。

 僕のところに来たのは、素晴らしい選択だったな!! 僕の結界に敵うやつは、この国にはいないからな!!

 ベッドに座り腕を強く組んで、胸を張ってみる。

 だけどここには、今そうだと同意して頷くべき男がいない。

 僕は今日、屋敷に戻ることになっている。

 ヴェイロクッド殿下から言われたのは、「ありがとう。助かったよ」……そんな短い言葉だけ。

 なんだそれ……

 それだけかよ。

 求婚の件はどうした。

 まだ僕に言うべき言葉がたくさんあるだろう。それなのに……

 それだけで、全部誤魔化すつもりか?

 …………とは言え、僕だってまだ求婚の返事なんて、考えられていないんだけど……

 むしろ求婚なんかより、僕は殿下が、国の結界を危ういものにした不届き者を断罪するために、僕の屋敷を訪れてくれたことが嬉しかった。

「はぁ…………」

 くだらないため息をついて、ベッドに仰向けに倒れ込む。
 それからぼんやり天井を見上げる。

 悔しさが湧き起こってきた。

 ああして僕の屋敷を訪れてくれて、それが、王子殿下と国に無礼な真似をした奴らを捕縛するためだと知って、ヴェイロクッド殿下が、そんな時に僕を連れて行ってくれるんだと思って、嬉しかった。

 殿下が大切にしていたこの国を守るために、僕を迎えに来てくれたような気がした。殿下に頼りにされたような気になっていたのかもしれない。

 だから、失われた結界の魔法の道具は全部回収して、殿下に渡したかった。
 短い間だったけど、僕は殿下に再会できて、彼の隣で戦える気になっていたんだ……

 それが……

「結局…………僕は、踊らされていただけか…………」

 つい口に出してしまった独り言が耳に響く。それが脳まで揺さぶって、頭の中まで侵食していくかのようだ。

 頼りにされているなんて勘違いしたのは僕だけ。
 殿下は、僕の証言が欲しかったんだ。それだけだ……

 求婚の件は…………よくわからないけど……

 僕はただ、殿下にもう一度会って、彼の力になりたかったのに。

 ……何してるんだ。僕は…………

 呆れる。馬鹿らしすぎて。

 殿下が他の王子殿下たちと共に、立派に国を守っていることは知っていたじゃないか。
 もう僕の屋敷で下手くそな嘘をついて、僕らなんかに渡すには豪華すぎるような、不器用な贈り物をしていた殿下じゃない。国を守る王族だ。

 そんな人に、今さら再会できて、手を握られて、賊の捕縛という目的を話してもらえて、共に奪われた物を回収しに行けることになって……

 情けなく、勘違いして。

 王子殿下には、信頼できる王族がいて、従者がいるのに。

「…………今さら……僕の力なんか…………必要ないか…………」

 分かりきったことだったのに、口に出したのは、自分に言い聞かせるためだったような気がする。

 早く屋敷に帰ろう。こんなところにいたら、ますます誤解する。

 僕、馬鹿だからなーー…………

「ダスフィレト?」
「うわっっっっ…………!!!!」

 びっくりして、飛び退いた。

 いつのまにか、僕の正面に、ヴェイロクッド殿下が立っている。

 相変わらずの呑気な顔で、僕を見下ろしていた。

 何してんだこいつっっ!!

「な、なぜっ…………なぜ入ってきた!? お、お前っっ……け、結界!! 結界はどうした!! この部屋には僕以外入れないように結界を張ったのに!」
「魔法で入った。本当に入れるなんて思わなかったけど……」
「ふざけるな! 勝手に入るな!! 僕の結界を破るなんてっ……!」
「俺が破ったんじゃないよ。君が昨日、コレリイジャインが閉ざした部屋を開けた魔法を利用したんだ」
「は…………?」
「そんなに驚かないでよ。相変わらず君は、君の力を全く理解していないなーー」
「なんの話だ! 早く出て行け!!」
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