嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐

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27.これからたっぷり分からせてあげる

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 殿下は、僕が昨日渡した物を見せてくる。それは僕が、コレリイジャイン様が魔法の道具を隠していた部屋の扉を開ける時に渡した、あの部屋の鍵だ。

「これに昨日、君が魔法をかけてくれただろ?」
「……あ、ああ…………確かに……」
「鍵の魔法を解くための魔法だけじゃない。結界を破壊する魔法もかかっている」
「……気づいたのか?」
「うん。だって、昨日城の魔法使いを集めて一晩中、これにかかった魔法を調べていたから」
「………………」

 あんなことがあった日に何をしているんだ……コレリイジャイン様たちが隠したものを探すことの方が先だろう。

 それなのに、一晩中、人を集めて僕の魔法を調べていたのか……? なんだか怖いぞ。

 かなり引く僕だけど、そんなことを気にしてくれるような殿下じゃない。まるで恋人でも眺めるように、掲げたそれを見上げていた。

「すごいよ、これは……君は何でもない物みたいに渡していたけど、長い間破れなかった、あの部屋の扉を開いただけある」
「そっ……そんなことは今は関係ないだろう! 返せ!!」

 奪い取ろうとするが、あっさり避けられた。

 くそっ……! なんでこう、いつも敵わないんだ!!

「おいっ……! 返せと言って…………」

 まだ、返せって言ってる途中だ。それなのに、彼はそれを遠ざけて、魔法で宙に浮かせると、代わりに、それを奪おうとした僕の手首を握った。

「…………君は、本当に……自分の力に無頓着すぎる……」
「そっ……それはお前も同じだろう!! 僕は、お前にこの国を率いる王族でいてほしくっ……!」

 しまった……余計なことを言った。こんなことを言われたって、殿下は困るだろう。

「俺は、兄上たちとこの国を動かすって、決めている。もちろん、ダスフィレトも一緒に」
「は!??」

 こいつは急に、何を言いだすんだ。そんなの、聞いてないぞっ!!

 だいたい、僕は国の端で結界の魔法の道具をいじっているだけの嫌われ魔法使いだ。そんな奴がなんで、王子殿下と一緒になんていられるんだっ……!

「ふ、ふざけるなっ……! そんなことを言って……な、なんで僕なんだよっ!! ……っ!!」

 握られた手首が、ずきっと痛んだ。少し強くされたらしい。まるで逃がさないとでも言うように手首を握られて、強く引きよせられて、微かに恐怖が湧いた。
 殿下の僕を引き寄せる力に勝てず、僕の体が彼の胸にまでぶつかってしまう。

 見上げたら、殿下は、優しそうなのに、少しだけ怖い顔をして、僕を見下ろしていた。

「あ…………」
「……やっぱりダスフィレトは、自分の力を見くびっている。俺がどれだけ君を欲しいと思っているかも、分かってないんだろ?」
「…………」

 怪しげで切なげに、微笑む殿下を見上げていたら、言葉が出てこなくなる。こんなことは初めてだ。

 僕が、僕を見くびってる? なんのことだ。
 僕はただ、ここにはいられないと言っているだけだ。
 だって、そうだろう! 殿下には、この国を安寧に導く王族であって欲しい。そうなるために、王城で貴族たちに蔑まれ、城を追われた僕なんて、邪魔なんだ。

「……はっ…………離せ……な、なんの話だ……」
「なんの? 決まってるだろ?」

 そう言って殿下は、恐ろしい顔をして笑う。

「これから、ダスフィレトにはたっぷり分からせてあげる。何度も言うけど、俺は、俺と一緒に来てほしくて、ダスフィレトを迎えに行ったんだ。そして、ダスフィレトが俺の元に来ることは、すでに決まったことなんだよ?」
「ふ、ふざけるなっ……! そんなの、僕は聞いてないっ……!!」
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