冷遇された僕、思いが募るばかりなので遠ざかったら嫉妬心を見せつけた隊長が襲いかかってくる。僕じゃなくても良い、邪魔するなって言ってたのに……

迷路を跳ぶ狐

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46.そんな覚えありません!

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 嘘だろっ……! なんで、こんなことするんだっ……!

 いきなりキスされて、呆然と見上げる僕を、ヴァンフィルイト様がじっと見下ろしている。いつも冷たかった彼の目が、まるで別人のようだ。

 キス…………された……のか? 僕が……??

 え……え!?? う、嘘だろ……今度は、唇にされた!?

 僕、部隊の下っ端だぞっ……それなのに……ヴァンフィルイト様は一体、どうしちゃったんだっ……!

 僕の唇が、少し冷たい。ひやっとして、キスされたんだって、思い知る。

 ひどく心臓が高鳴って、体まで熱くなって、そのこと以外、考えられなくなりそう。

 ……なんで…………僕がキスされるんだ?

 呆然と見上げる僕を、じっと見下ろしたヴァンフィルイト様は、どこか嬉しそうに、僕の目の前でゆっくりと口の端を上げていく。

「やっと…………」
「え……? んっ……!」

 まだ話している途中なのに、強く抱き寄せられて、押さえつけるように手首を掴まれて、痛みと共に体が動かせなくなる。

「いっ…………」

 隊長……どうしたんだろう……

 ただ見上げるだけの僕に、彼はひどく嬉しそうな顔をして言った。

「…………やっと……デフィトリュウィクを手に入れられる…………」
「え…………?」

 僕を手に入れるって、何のことだ?

 まだ何が起こったのか、頭の中で整理できていない。

 なんでヴァンフィルイト様が僕の手を取って、僕のことを抱き寄せて、こんな風に廊下の壁際で僕に迫ってキスするんだ?

 だけど、そんなことを考えている時間なんて、僕には与えてもらえないらしい。 

 戸惑う僕の頭を掴んで、無防備だった唇に、また彼の唇が重なった。

「んっ…………!!」

 訳が分からなくて、戸惑い震えている僕の唇を無理に開くようにして、ヴァンフィルイト様の舌が潜り込んでくる。

 さっきキスされたばかりで、せめてもう少しだけ休ませてほしいのに、彼は、僕を離すどころか、さっきよりも深い口づけを繰り返す。

 僕の唇を吸う音がした。強く求められて、だんだん僕の手首を捕まえるヴァンフィルイト様の手の力が増していく。まるでそれが僕を求めている力のようだ。その力を感じるだけで、だんだん気持ちよくなってきた……

 ……隊長…………僕のことが必要って、そう思ってくれるんですか……?

 こんなに奥まで舌を深く突き刺されて、苦しくて堪らない。口の中までその舌で弄られて、息を自由にすることもできない。このままじゃ、立っていることもできなくなりそう。

 それなのに、体が震える。

 体の奥まで熱くなって、キスの感覚が全身にじわじわ広がっていくみたい。

 僕がどれだけ喘いでも、彼は一切、僕を捕まえる力を緩めてくれない。

 強く求められて……嬉しい。僕を欲しがってくれるなんて、信じられない。

 だけど……

「…………っっ……! んっ……!」

 こんなに強く腕を掴まれるなんてっ…………!! 僕、逃げないのに……

 動けないくらいに抱き寄せられて、唇はずっと貪られて、その腕の中で窒息しそう。

 さすがに苦しさに耐えきれずに、相手の体を振り払おうとする。だけど、それでますます彼を怒らせたらしい。

「…………っ!!」

 口の奥まで蹂躙されて、すでに頭がぼんやりしてきた。苦しいのに、もう抵抗する気にならない。それどころか、そうされることも快感になっていく。

 今、僕……ヴァンフィルイト様に触れてもらえているんだ…………

 喘ぎながら、力が抜けていく。

 ……だって、隊長が僕に……触れてくれているんだ……僕だって、ずっと触れたかった。ずっとこうしてそばにいて、彼の隣に行きたかった。その彼が…………今、僕の目の前にいてくれているんだ。

 息すらできないのに、だんだん僕は、抵抗する力を消していく。

 すると彼は、僕の唇から舌を引き抜いてくれた。解放されたって、ますます体が熱くなって、すでに口の周りはドロドロに濡れている。そんな姿で、何度も咳き込んでしまう。

「……ぅあ…………ごほっ…………はっ……あぁっ……!」

 こんな顔、彼に見られたくない……せっかく、隊長がそばにいてくれたのに……

 それなのに、捕まったまま顎をあげられて、彼の目に晒される。まるで鑑賞するような彼の目の前で、僕は不様な姿を晒して喘ぐしかない。

 もう僕は、汗だくだった。彼の腕の中で、苦しくて暴れたせいだろう。

「……ぁ……ごほっ……ぅあ…………」

 ……こんなの……恥ずかしい…………目を合わせていることすらできそうになくて、顔をそむけたいのに、彼はそれすら許してくれそうにない。

 咳き込みながら喘ぐ僕を、ヴァンフィルイト様はじっと見下ろしていた。その目が、どこか加虐的に見える。

 ……ここに来るまで、ずっと隊長は優しかったのに…………こんなに強く僕を捕まえることなんか……なかったのに……

 ……隊長が……僕の手を……こ……こんなに……強く捕まえてくれるなんて…………

「ぁっ……あの…………ヴァンフィルイト様……ぼ、僕っ……!」
「…………苦しいか?」
「え……?」
「これで終わると思うな…………どれだけ、我慢したと思っている……」

 が、我慢……? なんのことだ? 僕、また何かしでかした?? 覚えがないぞっ……!!
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