冷遇された僕、思いが募るばかりなので遠ざかったら嫉妬心を見せつけた隊長が襲いかかってくる。僕じゃなくても良い、邪魔するなって言ってたのに……

迷路を跳ぶ狐

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54.そんなことない

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 僕が飛びかかった男は、真っ青になって僕の下で暴れていた。

「おいっ……! 何をするんだっ……!! 離せっ……!! 離してくれ!!」

 僕の体を押し返そうとする手が震えている。

 だけど、そんなことで話せるはずがない。許せない。僕の大事な隊長に手を出すなんて。

「お前……隊長に何をしたの?」
「な、何もっ……! 何もしていないっ……! お、俺は何もっ……!!」
「…………何も…………?」

 そんなはずがない。もう少し、こいつには話を聞いた方がいい。

 僕の怒りと共に、僕の周りには無数の魔法の弾が現れる。握った短剣もそいつの首に強く押し当てて、あと少し動かせば、こんな首、ぐちゃぐちゃにちぎれそうだ。
 その男は真っ青になり、歯の根も合わない様子だった。

「た、頼む! しっ……信じてくれ! お、俺は何もっ……ほ、本当だ!! 本当に、侯爵様には手を出してないっっ!! たっ……頼まれたっ……頼まれただけなんだ!!」
「…………頼まれ……た…………?」
「そ、そうだ!! 俺は、頼まれたんだ!! お前を足止めしろって……こ、侯爵はめる用意をするように、伯爵からっ……!!」
「侯爵様を嵌める? テトルマズ様がそう言ったのか?」
「そ、そうだ!! そうだっっ……!! だけど、それにはお前がっ……! こ、侯爵と殿下の周りにいつもいるお前が邪魔だからって……お、お前が邪魔だからっ…………!! 足止めしろって言われたんだっっ……!」

 僕を足止めしてまで、侯爵様を?

 ……なんで、伯爵がそんなことを……

 やっぱり、伯爵家は今回の王家派とそれに反対した貴族たちの融和には反対なんだ。だから侯爵様を狙ったのか……?

 そんなことのために、侯爵様にとって大事な時を台無しにしてやろうって言うのか? そんなこと……僕がさせると思うのか?

「知ってるなら、吐いてもらう。一体、どういうつもりなのか」







 その男は、思っていたより簡単に吐いた。計画の詳細は知らないようだったけど、今、王家と多くの貴族たちで構成された部隊が到着したばかりのこの城で問題を起こすことで、侯爵家の面子を潰す作戦らしい。

 王家とずっと懇意にしてきた伯爵家からしたら、他の貴族との融和なんて、要職を他の貴族に取られる可能性が高くなるだけ。これまで王家派の中では一番の発言力を持った有力貴族だったのに、ラーフィガテス公爵家と王家の接近なんて、さぞ気に入らないんだろう。

 だからって、やっと城についたヴァンフィルイト様たちを狙ってくるなんて……そんなこと、僕が絶対に許さない。

 僕は、その部屋を飛び出した。ヴァンフィルイト様のいる部屋を探さなきゃっ……!

 魔法で飛んで、すぐにヴァンフィルイト様がいるはずの部屋についたけど、そこにヴァンフィルイト様はもういない。どこに行ったんだ??

「ヴァンフィルイト様っ……! 隊長っっ!! 隊長!! どこですか!?」

 叫んでも、隊長からの返事は全くない。

 隊長……どこに行ってしまったんだ? 早く見つけなきゃっ……!

 とにかく、まずは侯爵家の方に報告……そうでなければ、今回の計画を成功させたい殿下か、公爵家から派遣されたブレロブル様なら、力になってくれるはずだ!!

 もう夜。彼らがいそうなところは、おそらく客間か自分の部屋。そこを探しながら、ヴァンフィルイト様のことを探そうっ……!!

 早くっ……早く、ヴァンフィルイト様を探さなきゃっ……!!

 焦るばかりの頭を冷静に落ち着けようとしながら廊下を走っていたら、廊下の角から王子殿下が飛んできた。

「うわっっ……!!」
「わ!!」

 び、びっくりした……ぶつかりそうになった。王子殿下に怪我をさせてしまうところだった。
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