冷遇された僕、思いが募るばかりなので遠ざかったら嫉妬心を見せつけた隊長が襲いかかってくる。僕じゃなくても良い、邪魔するなって言ってたのに……

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
80 / 85

80.僕だけが

しおりを挟む
 城を出て、深い森の中に最近できた街道を歩いていく。この辺りは魔物もだいぶ減って、最近は静かだ。
 たまに冒険者の人なんかも歩いていて、魔物や素材を探している。森や街の周辺の見回りの時に、そういった人たちに会うこともあって、よく挨拶をする。

 魔物たちを一掃した侯爵様とクレズログ王子殿下の実力は、この辺りの冒険者にも知れ渡っていて、みんなが侯爵様のことを尊敬するような目で見る。僕にはそれが誇らしくて嬉しい。

 だけど……

 ヴァンフィルイト様が注目されること、まだ慣れない……

 ……僕の婚約者なのに…………僕以外の人が、ヴァンフィルイト様のことを考えて、それに夢中だなんて……

 だめだ……また勝手な嫉妬をしてしまいそうになってる。

 侯爵様が素晴らしい人だって知っているのが、僕だけだったらいいのに……

 だけどこんなの、僕のわがままなんだ。

 僕らは街に入り、冒険者ギルドについた。ギルドの中は人で賑わっていて、その光景を見ると、この辺りも発展してきたような気がして、僕も嬉しかった。

 受付にいた人に挨拶をして必要なものを渡すと、彼は微笑んでお礼を言ってくれる。

「ありがとうございます、デフィトリュウィク様。まさか、侯爵様がお力を貸してくださるなんて思っていなかったので……本当に、助かります」
「いえ……力になれて、よかったです……」
「こちらこそ! この街も、この辺りに魔物が多かった時には、ずっと魔物の脅威に怯えていたので……侯爵様と王子殿下には感謝しているんです!」
「侯爵様も、皆さんが魔物退治に協力してくださっていることに感謝しています…………ですから、また何か足りないものがあれば、いつでもおっしゃってください!!」

 僕がそう言うと、受付の人は、もう一度お礼を言ってくれる。

「ありがとうございます……ここを新しくヴァンフィルイト様が治めると聞いた時は、どんな人かと思っていましたが……ヴァンフィルイト様に来ていただいて、本当に、よかったです」
「魔法の道具には魔力を込めておいたので、すぐに使えると思います。では、僕はこれで……失礼します」
「あ! 街を歩く際には、気を付けてください。最近は侯爵様のお陰で、この辺りも落ち着いていますが、まだ夜は物騒で……貴族の使いの方も歩いていたりして、街のみんなも少し緊張しているみたいで……警備もかなり厳重になりましたが、気をつけて帰ってください……」
「はい。何かお困りのことがあれば、おっしゃってください」
「…………ありがとうございます…………」

 ギルドの人は、僕らに微笑んだ。

 だけど……なんだか、いつもより元気がないように見える。

 ……気のせいかな…………?

 殿下が微笑んで僕に振り向く。

「任務も終わりだねー!」
「はい……」

 これで、今日の仕事は終わりだ。これから隊長に会うんだと思うと……急に緊張してきた!!

 そう思っていたら、受付の人に呼び止められた。

「あ、あの……!!」
「……? どうかしましたか?」
「……あの……最近、冒険者に侯爵家のことを調べさせようとする貴族が増えているみたいなんです……」
「え……こ、ここでもですか?」

 この前、一度そういうことがあって、侯爵様がそんなことをした貴族に、強く注意したばかりなのに。どうせまた、侯爵家のことを聞き出したい貴族の仕業だろう。

 この地に来たばかりの侯爵様の城を訪れる貴族は多い。
 侯爵様の功績が認められるのは嬉しいけど、ここぞとばかりに取り入ろうとする奴らがいるのは困る。伯爵様の残党側には恨まれているし、まだまだ油断できない状態だ。

 侯爵家に取り入ろうとする貴族たちは、日を追うごとに増えていて、僕らが街中で声をかけられることも多い。侯爵様の部隊の人を捕まえて、侯爵家の内情を聞き出したり、街の中の状況を聞き出して、取り入る隙を探すのが目的らしい。そういう人たちも侯爵家と喧嘩はしたくないみたいで、強要されることはあまりないけど、身分の高い貴族たちが差し向けた使者に捕まって話を聞かれるのは、結構面倒だ。

 ……だけど今日はそんなものに一度も会わなかったな……
 もしかして、王子殿下がいたからかもしれない。さすがに王子殿下がそばにいる時に声をかけることはできないだろう。

 殿下……もしかして、僕らを心配してついてきてくれたのかな……

 だけど、冒険者にまで声をかける人がいるのは困る。
 そういうことをする人が増えると、侯爵家だって、街の人たちだって迷惑だ。私欲のために侯爵様に取り入ろうとしている奴に限って、そういうことをするんだ。

「分かりました。警戒を強めておきます……街の見回りを増やすようにしますね」
「ありがとうございます……そういう人に会った冒険者が、今日ここに来るはずなんですけど、まだ来なくて…………少し心配で…………多分、もうすぐ来ると思うんですけど……」

 受付の人はかなり心配そう。冒険者は危険な目に遭うことが多いし、魔物に襲われたり、冒険者同士や依頼人とトラブルになったり、街で事件に巻き込まれ、大怪我をすることもある。きっと、気が気じゃないんだろう。

「あの……警備隊に相談することもできますし、よかったら、僕らの方でも探してみましょうか?」
「いえ……多分、もうすぐ来ると思うので…………見かけたら、僕が待ってるって伝えていただけると助かります……」

 その人のことを受付の人に聞いた僕らは、彼にお礼を言って、ギルドを後にした。

 貴族にしつこく声をかけられたら街の人だって困るだろうし、侯爵様だって迷惑なはずだ。

 侯爵様のことを一方的に敵視していた貴族も多かったのに、げんきんなものだな……この辺りが急速に発展してきて、今更侯爵家を無視できなくなったんだろうけど。
 侯爵様の城に来たはいいが、あまりに私欲のことばかりで、すぐに追い返される人も多い。そういう人が、使者を送っているのかもしれない。侯爵様に報告して、早く拘束しないと……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された

あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると… 「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」 気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 初めましてです。お手柔らかにお願いします。

完結·囚われた騎士隊長と訳あり部下の執愛と復讐の物語

BL
「月が綺麗ですね。あぁ、失礼。オレが目を潰したから見えませんね」  から始まる、国に利用され続ける隊長を自分のものだけにしようとした男の欲望と復讐の話  という不穏なあらすじですが最後はハッピーエンドの、隊長×部下の年下敬語攻めBL  ※完結まで予約投稿済・☆は濡れ場描写あり  ※Nolaノベル・ムーンライトノベルにも投稿中

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

処理中です...