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80.僕だけが
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城を出て、深い森の中に最近できた街道を歩いていく。この辺りは魔物もだいぶ減って、最近は静かだ。
たまに冒険者の人なんかも歩いていて、魔物や素材を探している。森や街の周辺の見回りの時に、そういった人たちに会うこともあって、よく挨拶をする。
魔物たちを一掃した侯爵様とクレズログ王子殿下の実力は、この辺りの冒険者にも知れ渡っていて、みんなが侯爵様のことを尊敬するような目で見る。僕にはそれが誇らしくて嬉しい。
だけど……
ヴァンフィルイト様が注目されること、まだ慣れない……
……僕の婚約者なのに…………僕以外の人が、ヴァンフィルイト様のことを考えて、それに夢中だなんて……
だめだ……また勝手な嫉妬をしてしまいそうになってる。
侯爵様が素晴らしい人だって知っているのが、僕だけだったらいいのに……
だけどこんなの、僕のわがままなんだ。
僕らは街に入り、冒険者ギルドについた。ギルドの中は人で賑わっていて、その光景を見ると、この辺りも発展してきたような気がして、僕も嬉しかった。
受付にいた人に挨拶をして必要なものを渡すと、彼は微笑んでお礼を言ってくれる。
「ありがとうございます、デフィトリュウィク様。まさか、侯爵様がお力を貸してくださるなんて思っていなかったので……本当に、助かります」
「いえ……力になれて、よかったです……」
「こちらこそ! この街も、この辺りに魔物が多かった時には、ずっと魔物の脅威に怯えていたので……侯爵様と王子殿下には感謝しているんです!」
「侯爵様も、皆さんが魔物退治に協力してくださっていることに感謝しています…………ですから、また何か足りないものがあれば、いつでもおっしゃってください!!」
僕がそう言うと、受付の人は、もう一度お礼を言ってくれる。
「ありがとうございます……ここを新しくヴァンフィルイト様が治めると聞いた時は、どんな人かと思っていましたが……ヴァンフィルイト様に来ていただいて、本当に、よかったです」
「魔法の道具には魔力を込めておいたので、すぐに使えると思います。では、僕はこれで……失礼します」
「あ! 街を歩く際には、気を付けてください。最近は侯爵様のお陰で、この辺りも落ち着いていますが、まだ夜は物騒で……貴族の使いの方も歩いていたりして、街のみんなも少し緊張しているみたいで……警備もかなり厳重になりましたが、気をつけて帰ってください……」
「はい。何かお困りのことがあれば、おっしゃってください」
「…………ありがとうございます…………」
ギルドの人は、僕らに微笑んだ。
だけど……なんだか、いつもより元気がないように見える。
……気のせいかな…………?
殿下が微笑んで僕に振り向く。
「任務も終わりだねー!」
「はい……」
これで、今日の仕事は終わりだ。これから隊長に会うんだと思うと……急に緊張してきた!!
そう思っていたら、受付の人に呼び止められた。
「あ、あの……!!」
「……? どうかしましたか?」
「……あの……最近、冒険者に侯爵家のことを調べさせようとする貴族が増えているみたいなんです……」
「え……こ、ここでもですか?」
この前、一度そういうことがあって、侯爵様がそんなことをした貴族に、強く注意したばかりなのに。どうせまた、侯爵家のことを聞き出したい貴族の仕業だろう。
この地に来たばかりの侯爵様の城を訪れる貴族は多い。
侯爵様の功績が認められるのは嬉しいけど、ここぞとばかりに取り入ろうとする奴らがいるのは困る。伯爵様の残党側には恨まれているし、まだまだ油断できない状態だ。
侯爵家に取り入ろうとする貴族たちは、日を追うごとに増えていて、僕らが街中で声をかけられることも多い。侯爵様の部隊の人を捕まえて、侯爵家の内情を聞き出したり、街の中の状況を聞き出して、取り入る隙を探すのが目的らしい。そういう人たちも侯爵家と喧嘩はしたくないみたいで、強要されることはあまりないけど、身分の高い貴族たちが差し向けた使者に捕まって話を聞かれるのは、結構面倒だ。
……だけど今日はそんなものに一度も会わなかったな……
もしかして、王子殿下がいたからかもしれない。さすがに王子殿下がそばにいる時に声をかけることはできないだろう。
殿下……もしかして、僕らを心配してついてきてくれたのかな……
だけど、冒険者にまで声をかける人がいるのは困る。
そういうことをする人が増えると、侯爵家だって、街の人たちだって迷惑だ。私欲のために侯爵様に取り入ろうとしている奴に限って、そういうことをするんだ。
「分かりました。警戒を強めておきます……街の見回りを増やすようにしますね」
「ありがとうございます……そういう人に会った冒険者が、今日ここに来るはずなんですけど、まだ来なくて…………少し心配で…………多分、もうすぐ来ると思うんですけど……」
受付の人はかなり心配そう。冒険者は危険な目に遭うことが多いし、魔物に襲われたり、冒険者同士や依頼人とトラブルになったり、街で事件に巻き込まれ、大怪我をすることもある。きっと、気が気じゃないんだろう。
「あの……警備隊に相談することもできますし、よかったら、僕らの方でも探してみましょうか?」
「いえ……多分、もうすぐ来ると思うので…………見かけたら、僕が待ってるって伝えていただけると助かります……」
その人のことを受付の人に聞いた僕らは、彼にお礼を言って、ギルドを後にした。
貴族にしつこく声をかけられたら街の人だって困るだろうし、侯爵様だって迷惑なはずだ。
侯爵様のことを一方的に敵視していた貴族も多かったのに、げんきんなものだな……この辺りが急速に発展してきて、今更侯爵家を無視できなくなったんだろうけど。
侯爵様の城に来たはいいが、あまりに私欲のことばかりで、すぐに追い返される人も多い。そういう人が、使者を送っているのかもしれない。侯爵様に報告して、早く拘束しないと……
たまに冒険者の人なんかも歩いていて、魔物や素材を探している。森や街の周辺の見回りの時に、そういった人たちに会うこともあって、よく挨拶をする。
魔物たちを一掃した侯爵様とクレズログ王子殿下の実力は、この辺りの冒険者にも知れ渡っていて、みんなが侯爵様のことを尊敬するような目で見る。僕にはそれが誇らしくて嬉しい。
だけど……
ヴァンフィルイト様が注目されること、まだ慣れない……
……僕の婚約者なのに…………僕以外の人が、ヴァンフィルイト様のことを考えて、それに夢中だなんて……
だめだ……また勝手な嫉妬をしてしまいそうになってる。
侯爵様が素晴らしい人だって知っているのが、僕だけだったらいいのに……
だけどこんなの、僕のわがままなんだ。
僕らは街に入り、冒険者ギルドについた。ギルドの中は人で賑わっていて、その光景を見ると、この辺りも発展してきたような気がして、僕も嬉しかった。
受付にいた人に挨拶をして必要なものを渡すと、彼は微笑んでお礼を言ってくれる。
「ありがとうございます、デフィトリュウィク様。まさか、侯爵様がお力を貸してくださるなんて思っていなかったので……本当に、助かります」
「いえ……力になれて、よかったです……」
「こちらこそ! この街も、この辺りに魔物が多かった時には、ずっと魔物の脅威に怯えていたので……侯爵様と王子殿下には感謝しているんです!」
「侯爵様も、皆さんが魔物退治に協力してくださっていることに感謝しています…………ですから、また何か足りないものがあれば、いつでもおっしゃってください!!」
僕がそう言うと、受付の人は、もう一度お礼を言ってくれる。
「ありがとうございます……ここを新しくヴァンフィルイト様が治めると聞いた時は、どんな人かと思っていましたが……ヴァンフィルイト様に来ていただいて、本当に、よかったです」
「魔法の道具には魔力を込めておいたので、すぐに使えると思います。では、僕はこれで……失礼します」
「あ! 街を歩く際には、気を付けてください。最近は侯爵様のお陰で、この辺りも落ち着いていますが、まだ夜は物騒で……貴族の使いの方も歩いていたりして、街のみんなも少し緊張しているみたいで……警備もかなり厳重になりましたが、気をつけて帰ってください……」
「はい。何かお困りのことがあれば、おっしゃってください」
「…………ありがとうございます…………」
ギルドの人は、僕らに微笑んだ。
だけど……なんだか、いつもより元気がないように見える。
……気のせいかな…………?
殿下が微笑んで僕に振り向く。
「任務も終わりだねー!」
「はい……」
これで、今日の仕事は終わりだ。これから隊長に会うんだと思うと……急に緊張してきた!!
そう思っていたら、受付の人に呼び止められた。
「あ、あの……!!」
「……? どうかしましたか?」
「……あの……最近、冒険者に侯爵家のことを調べさせようとする貴族が増えているみたいなんです……」
「え……こ、ここでもですか?」
この前、一度そういうことがあって、侯爵様がそんなことをした貴族に、強く注意したばかりなのに。どうせまた、侯爵家のことを聞き出したい貴族の仕業だろう。
この地に来たばかりの侯爵様の城を訪れる貴族は多い。
侯爵様の功績が認められるのは嬉しいけど、ここぞとばかりに取り入ろうとする奴らがいるのは困る。伯爵様の残党側には恨まれているし、まだまだ油断できない状態だ。
侯爵家に取り入ろうとする貴族たちは、日を追うごとに増えていて、僕らが街中で声をかけられることも多い。侯爵様の部隊の人を捕まえて、侯爵家の内情を聞き出したり、街の中の状況を聞き出して、取り入る隙を探すのが目的らしい。そういう人たちも侯爵家と喧嘩はしたくないみたいで、強要されることはあまりないけど、身分の高い貴族たちが差し向けた使者に捕まって話を聞かれるのは、結構面倒だ。
……だけど今日はそんなものに一度も会わなかったな……
もしかして、王子殿下がいたからかもしれない。さすがに王子殿下がそばにいる時に声をかけることはできないだろう。
殿下……もしかして、僕らを心配してついてきてくれたのかな……
だけど、冒険者にまで声をかける人がいるのは困る。
そういうことをする人が増えると、侯爵家だって、街の人たちだって迷惑だ。私欲のために侯爵様に取り入ろうとしている奴に限って、そういうことをするんだ。
「分かりました。警戒を強めておきます……街の見回りを増やすようにしますね」
「ありがとうございます……そういう人に会った冒険者が、今日ここに来るはずなんですけど、まだ来なくて…………少し心配で…………多分、もうすぐ来ると思うんですけど……」
受付の人はかなり心配そう。冒険者は危険な目に遭うことが多いし、魔物に襲われたり、冒険者同士や依頼人とトラブルになったり、街で事件に巻き込まれ、大怪我をすることもある。きっと、気が気じゃないんだろう。
「あの……警備隊に相談することもできますし、よかったら、僕らの方でも探してみましょうか?」
「いえ……多分、もうすぐ来ると思うので…………見かけたら、僕が待ってるって伝えていただけると助かります……」
その人のことを受付の人に聞いた僕らは、彼にお礼を言って、ギルドを後にした。
貴族にしつこく声をかけられたら街の人だって困るだろうし、侯爵様だって迷惑なはずだ。
侯爵様のことを一方的に敵視していた貴族も多かったのに、げんきんなものだな……この辺りが急速に発展してきて、今更侯爵家を無視できなくなったんだろうけど。
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