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24.僕が葬ります
しおりを挟む着替え終わった頃、突然、バスルームのドアが開いた。
「ディトルスティ」
「わあああっ……!」
び、びっくりした。びっくりしたー……つい、大きな声を上げちゃった。
だけど会長は、僕の大声に驚くかと思いきや、少し笑って言った。
「すごい声……そんなにびっくりした?」
「だ、だって…………」
会長に振り向いたところで、気づいた。会長は、すでにリボンで髪を結っている。昨日のリボンは切れてしまったから、僕が知らないリボンだ。僕が贈ったものは、セルラテオが後ろから切ったから。
僕の会長を背後から魔法で撃つなんて……悪ふざけで済むと思うなよ……
僕がじーっと見ていたら、会長も、僕の視線に気づいたみたいだ。
「あ……これ? ごめん……せっかく贈ってくれたのに」
「えっ……!? あ、あれ、僕が贈ったって、気づいていたんですか?」
「……うん……大事にしてたんだけど、昨日切れちゃったんだ。今は、魔法で修復してしまってあるから」
「……嬉しいです。大事にしてくれて……それより、あのリボン、昨日、後ろからセルラテオが魔法で切ったんです。背後から魔法をかけるなんて、許されることではありません! すぐに風紀委員会に報告するべきです!」
「……それだけど、今回は俺に任せてほしい」
「え……?」
「それに関しては、俺に任せて欲しい。ディトルスティは、セルラテオに近づいちゃダメだよ?」
「でも!!」
「……俺に任せて。相手は、公爵令息だ」
「そ、それはっ……」
それは分かっている。僕が公爵令息に手を出して、会長に迷惑をかけていることも。だけど、セルラテオは会長を傷つけようとしたんだ。任せてって言われたって、会長のことが心配だ。
「せ、せめてっ……これからどうするのかだけでも教えていただけませんか……? セルラテオは、会長を恨んでいます! 会長が陛下に選ばれたから……あんな男より会長が選ばれるのは当然なのに……きっと、身の程知らずに会長の座を狙っているんです!」
「身の程知らず、なんて言わない。公爵令息だよ?」
「でもっ……!」
相手がなんだろうが、会長を傷つける奴は滅ぼさないと……会長のそばにそんな奴がいるだけで嫌なんだから。
それに、あいつの狙いは会長。会長が危ない時に、何もできないなんて、辛いよ。
僕が必死の思いで見上げると、会長は僕の頭を撫でて言った。
「今日、俺たちの一限の演習、変更になったんだ」
「え!?」
「使い魔を作る演習になる。そこには、貴族たちも来るらしい」
「それっ……」
「うん。多分、学生の実力を見に来るんだ。どこの貴族も、力のある魔法使いが欲しいからね……その演習の手伝い、多分ディトルスティたちがすることになるはずだ」
「えっ……」
「内緒だよ? マモネークに言って、調べさせたんだから」
「はい……」
「多分、公爵家の差金だ。ディトルスティ、君の魔法が見たいんだよ」
「な、なんで、僕を……?」
「君は、試験の時から貴族たちに一目置かれてる。禁書の魔法も披露しただろ? その時、公爵家もいたはずだ」
「……いましたか?」
貴族たちの試験官がいたことは覚えているけど、それが公爵家の人かどうかは分からない。全然覚えてない。会長以外、どうでもいいからな……
「もちろん、その演習には、セルラテオもいる。きっと何か仕掛けてくるはずだ」
「だったらっ……」
「大人しくしててって言っても、無理か……セルラテオが何か仕掛けてきたら、できるだけ目立たないように、俺に知らせてほしい。できる?」
「もっ……もちろんですっっっ!!! させてくださいっっ!!!」
「すごい気合いだねー……だけど、セルラテオに近づかないように。それと、有力貴族たちも来るから、彼等には砂粒一つ飛ばさないように」
「任せてください!!」
会長の役に立てるっ……!! 会長と戦うことができるなんて。こんなに嬉しいことはない。
あの憎い男も、これで黙らせることができる……会長のリボンを切った報いを受けてもらう……
そして会長には、僕が新しいリボンをお渡しするんだ!
そう思って顔を上げたら、会長の後ろにあった窓の外に何か見えた。
あれって……
不審に思って、僕は窓に駆け寄る。会長のベッドのすぐそばにある窓だ。そこに、何かが飛んでいるように見えた。
窓を開くけど、そこには何もいない。
逃がしたか……咄嗟のことで、追跡の魔法を使えなかった。使い魔だってことくらいしか、分からなかった。学内での授業以外での使い魔の作成は禁じられているのに。
きっと、会長を狙ってきたものだ。くそ……そんなものを逃すなんて。
窓のそばで歯噛みする僕に、会長がきいてきた。
「ディトルスティ、気づいたの?」
「か、会長もですか!?」
「もちろん。だけどそんなに怖い顔しなくて大丈夫。ただの悪戯かもしれない」
「でも……あれ、きっと使い魔です! 会長を狙っていたんです!!」
「使い魔は、授業以外では禁止なのになー」
会長も外を見下ろしてキョロキョロしていた。だけど、そこにあるのは庭の芝生と、花をつけ始めたばかりの魔法の植物だけ。
会長が窓から、魔法の光を放つ。感知の魔法だ。敵の魔法を感知するためのもので、異常があれば、そこが激しく光って教えてくれる。けれど光は、寮の外壁と芝生まで広がりすぐに消えた。
「いないな……逃げたか……」
「……」
ここに使い魔を送ったってことは、会長の覗き見をしていたに違いない。
そんなの許さない。
せっかく会長が僕といてくれるのに。
今、この場所にいる会長は、僕だけのものであるはずなのに。
それなのに、そんな会長を遠くから盗み見るなんて。
「確かに使い魔でした。会長を見てたんです……会長のこと……絶対セルラテオです!」
けれど会長は、いつもみたいに柔和な笑みを浮かべていた。
「そんなに深刻に考えなくていい。セルラテオの仕業とも言い切れない。会長決める時も、よくそんなものを送られたし」
「よく!!?? よくって……しょっちゅう!?」
「落ち着いて。会長が決まってからは、だいぶ減った。俺のスキャンダルが欲しいんだろ。会長の座があれば、そこから風紀委員や王城とも繋がりができる。それが目当てか……そうでなかったら、俺を引き摺り下ろして、俺を指名した陛下の評判を落としたいのかもしれない」
「そ、そんなことのために会長を傷つけるなんて……!! ゆ、許せないっ……」
「本当に、落ち着いて? 俺は大丈夫だから。慣れてるし、俺に絡む変な奴なんて、すぐに黙らせてきた。だからディトルスティは、もっと自分のことを気をつけて。昨日だって、絡まれたの、もう忘れた?」
「忘れてなんかいません……」
あんな連中、何でもない。
それより、あの時絡んできたヴィユザたちだって、絶対セルラテオの差金だ。
セルラテオ……まだしつこく会長を狙っているのか。あのゲス貴族……僕の会長に付き纏って……今からでも殺しに生きたい。
「ディトルスティ、朝食、行こう? 今日の演習は大変だよ?」
「あ……は、はい!」
僕は、慌てて顔を洗い始めた。
会長……永遠に届かないはずの身分違いの恋が実ったんです。
今更、誰にも邪魔なんてさせない。
あなたに近づく目障りな蝿は、僕が残らず葬ります。
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