好きな人の「好き」を信じられない僕には、会長の束縛じゃ物足りません

迷路を跳ぶ狐

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34.どう思っている?

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 ヴィユザと別れた僕は、パンを持って寮の部屋に急いだ。

 会長……もう帰っているかな。

 そしたら部屋のドアの近くに、男が立っていた。

 会長だったらどれだけ嬉しいか……

 だけど廊下の壁に寄りかかって腕を組んでいたのはセルラテオ。そばにはフォーラウセもいる。

 こっちの方がもう付き纏ってるだろ……なんで部屋の前にいるんだよ。気持ち悪い。
 どうせ僕らが会長を狙った魔法の主を探しているのが気に入らないんだろう。

 Uターンしようとしたら、やっぱり呼び止められた。

「待てよ」

 うざ……もう、魔法で動けないようにしてやろうか……

 無視して歩いているのに、セルラテオは僕の隣に並んでくる。

「さっきの演習、見ていたか?」
「……」
「俺の使い魔だ」
「……」
「聞いているのか?」
「……聞いてます。あなたの使い魔も見ました。さっきの演習の時と、朝に」
「そうか!! 見たか!!」

 セルラテオは、やけに嬉しそうに言う。

 あっさり自白するのか? 演習の時はともかく、朝の使い魔は校則違反だ。しかも、生徒会長の部屋に公爵令息がそんなものを飛ばしたら、色々問題になる。

 それくらい、分かるだろ?

「校則違反ですよ?」

 僕がセルラテオに振り向いて言うと、フォーラウセが僕を睨んで言った。

「お、お前たちが……セルラテオ様に余計な手出しをするからっ……! セルラテオ様は先に手を打たれただけだ! ふ、二人でまた……セルラテオ様を陥れる相談をしていたんだろう!」
「……そんな言いがかりをつけに、わざわざ僕のところに来たんですか? 忙しいですね」

 嫌味を込めて言うけど、セルラテオは聞いているのかいないのか分からない様子で、ニヤニヤ笑いながら僕に近づいてくる。

「やっと俺の方を向いたな」
「は?」
「そんなに俺が憎いのか? 四六時中、俺のことを考えるほどに」
「四六時中? なんのこと……」

 言いかけて、言葉が続かなくなる。そう言えばそうだ……僕、朝からずーーっと、こいつのことばっかり考えてる……

 僕は一体何をしているんだ。頭の中が嫌いな男で支配されている。僕の頭は会長のことを考えるために存在しているはずなのに!!

「…………あ、あなたのことなんて、考えたくありません……」

 これは本音。こいつが会長を狙うせいで、僕はずーーーーっと、こいつのことを考えている。なんだか気分が悪くなりそうだ。

 それなのに、セルラテオはなぜか得意げ。

「なぜそんなに俺を嫌う? お前の盗み聞きも、寛容に許してやった俺を。少しくらいは感謝したらどうだ?」

 するわけないだろ失せろ下衆が………………って、今すぐ言いたい。ここが学園じゃなかったら刺したかも。

 だけど、僕は一度こいつに手を出して問題になっている。二度も同じことをすれば、退学の可能性もある。僕の処分を買って出てくれた会長も、責任を問われることになる。

「感謝なんて、しません。そもそも、あなたが先に会長を傷つけたんです」
「生徒会長の座なら譲ってやっただろう!!
何が不満だ!!」
「……それじゃなくて、リボンです。会長の髪を結っていたリボン。切りましたよね? 昨日……後ろから、魔法を使って」
「またその話か……切ったぞ。だからなんだ?」

 これもあっさり認めるんだ……なんなんだこいつ。

 会長から生徒会長の座を奪いたいなら、スキャンダルくらい避けろよ。
 それがあっても会長になれるくらいのものが、こいつにあるのか? 公爵家の力で、貴族たちには話をつけた、とか? そんな動きがあれば、会長が気付きそうだけどな……

「そんなに見つめるな。俺を見ていたいのは分かるが」
「……」

 ニヤニヤ笑いながら何言ってるんだこいつ。何か企んでるのかと思って見ていただけで、決して見つめてはいないのに。

「……僕、これから約束があるので。失礼します」

 適当に理由をつけて、さっさと立ち去ろうとしたけど、今度は背後から強く手首を掴まれた。

 一体なんなんだこいつ!! しつこすぎる!

 しかも、なにやら機嫌を損ねたらしく、僕の手首を強く握り、僕に近づいてくる。

「確かに切った……あの男のリボン……あいつは、自慢してたんだ」
「会長は自慢なんかしません」
「してたんだよっっ!! あいつは!! お前からもらったリボンだって言ってな!!」
「え…………ぼ、僕から……?」
「可愛い恋人がくれたって……片思いが実ったって言ってな!! お前からもらったリボンを、俺の前で自慢しやがったんだ!!」
「か、かたっ……片思い!!??」

 か、かかか会長が……片思いが実ったって!?? そう言ってたのか!? 会長……僕と同じように片思いをしてたのか?

 僕は、もう一回セルラテオに振り向いた。初めてセルラテオの話を聞く気になれた。

「か、会長が……僕のリボンを大事にしてたって、ほ、本当ですか?」
「ああ……そうだよ。お前からもらったって……ニヤニヤニヤニヤ笑いながらっっ! 嬉しそうに……だから切ったんだ!!」

 会長……そんなことしてたんですか……?? 僕からもらったリボンって気づいてくれただけでなく、そんなふうに自慢まで……しかも、か、片思いなんて!!

 そうかー。僕からもらったリボン、そんなに大事にしてくれてたんだ……僕の……

 うわあ……だ、だめだ。会長がそんなの自慢してるところを思い浮かべたら、顔がニヤニヤしちゃう……

 会長……僕、嬉しいです。そんなに大事にしてくれていたのなら、また贈ります。どんなのがいいかな……

 そんなことを考え始めてしまったから、完全にもう、会長のことしか考えられなくなっていた。

 セルラテオが、僕を睨んで言った。

「そんなに…………あいつが好きなのか?」
「へ!?? すっ……好きって……はい……大好きです」

 こんな奴の前でも、会長への思いを告白すると、うれしくなる。僕……幸せだ。

「……じゃあ、失礼します! 僕、用事ができちゃいました!」
「おい! 待て!!」

 叫んで、セルラテオが僕を呼び止める。

「俺は? 俺のことは、どう思っている?」
「なんとも。あ、でも……公爵令息じゃなかったら」

 殺したのに。

 っていう本音だけは言わずに、僕はその場を後にした。
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