10 / 25
第10話:芦田幸太は再び挨拶する
しおりを挟む
「いらっしゃいませぃ!」
『あで~じょ』に入ると、小料理屋に似つかわしくない、そんな声が聞こえてきた。
声のした方をみると、和服を着た女性がカウンターの中から僕らを出迎えてくれていた。
「藍流(あいる)、あんたそのノリはやめなさいって言っていつも言ってるでしょ?」
「あっ、来華さん!ようこそおいでくださいました」
藍流と呼ばれた女性が、取り繕うようにそう言っていた。
「今さら遅いっての。それに、ここでは『女将さん』でしょ!」
女将さん。なんだろう、津屋さんにもの凄く似合ってる気がする。
僕はそう思いながら店内を見渡した。
小さなカウンターには席が4つ。
カウンターの向かいにお座敷が1つ。
奥にはお手洗いと、カウンターから直接行けるようになっている部屋があるみたい。
うん。あれだね。
警視庁の特命の人達が行きつけにするところに似てる。
こういう所を行きつけにするの、カッコいいよね。
そうこうしているうちに、みんながお座敷へと入っていったから、僕もそれについて行った。
「あら、今日は新顔がいるんですね」
「あぁ。前に話した幸太だよ」
「あ、芦田 幸太です。よろしくお願いします」
「アタシ、春日部 藍流。よろしくね。元々居酒屋で働いてたからこんなノリだけど、気にしないでね」
「いやだから、そのノリを直しなさいって言ってるでしょ!」
春日部さんの挨拶に津屋さんが怒っていると、春日部さんはそのまま逃げるようにカウンターへと引き下がってしまった。
注文も何も取らないままに。
「ちょっと藍流~!とりあえずビール6つねー!」
「はいただいま~」
春日部さん、まだ思いっきり居酒屋のノリです。
でもみんな気にせずにワイワイ騒いでます。
そんな皆さんこそ、居酒屋に居るかのごとく騒いでますけど。
ここ、小料理屋ですよね?
特命の人達、もっと静かにカッコよく飲んでますよ!?
呆れながら騒いでいる皆さんを見てると、それもどうでも良くなってきているあたり、僕も毒されてきたのかな?
そんなことを考えていると、春日部さんがビールを運んできた。
「さぁて。改めて、幸太の入居を祝して、乾杯っ!」
「「「「乾杯!!」」」」
「か、乾杯」
「おっ、幸太、いい飲みっぷりじゃねーか!」
酒谷さんが早速そう言ってやって来た。
いつの間にか手にした一升瓶を引っさげて。
いや、本当にいつから!?
「あー、朝美。あんまり幸太に飲ませるんじゃないよ」
「なんだよ来華。いいじゃんかよ。いくら幸太に優しくしても、幸太はババァにはなびかねーよ」
「そんなんじゃないさ。幸太は、少し酔ったくらいが面白かったじゃないか。だから、いい感じで止めてやった方が盛り上がるだろ?」
「うふふ。確かに、来華の言うとおりね」
津屋さんの言葉に、静海さんが笑って同意している。
いや、なんなんですかそれ。
僕をなんだと思ってるんですか!
でも皆、そんな僕の気持ちなどお構いなしに、量を減らしてガンガンお酌してくる。
僕がお返しにたっぷり注ぎ返しても、全員ダメージを受けた気配なし。
よし、僕が皆に勝てないのはこれでハッキリしたな。
あとは、いい感じに酔ったフリして自分を保つしかない。
そんな決意の元、僕は少しずつ、本当に少しずつ飲み進めていた。
すると。
「よし。ここで幸太からそれぞれに、挨拶してもらおうかね!」
津屋さんが訳のわからないことを言い出した。
いや、この場で挨拶っていうのは理解できるよ。でも、それぞれにってどゆこと?
あーもーいいや。とりあえず挨拶だ。
そこで僕は立ち上がって津屋さんに目を向ける。
「津屋さん。まずはお礼を言わせてください。こんな安いアパート、他にはありません。しかも、少し構造は変わってるとはいえすごく綺麗なアパートに住めるなんて、ありがたいと思っています。
しかし津屋さん!雑用の範囲が広すぎます!しかも時間も関係なしに!せめて、時間はどうにかしてほしいですっ!!」
「静海さん。いつも仕事の話を聞かせていただいてありがとうございます。本当に勉強になります。
しかし静海さん!もう少し自分で買ったブルーレイレコーダーの使い方くらい勉強してくださいっ!!」
「酒谷さん。いつも煙草のお誘いありがとうございます。タバコミュニケーション、仕事で役立てたいです。
しかし酒谷さん!僕今まで煙草吸ったことないんです!まだ喉がイガイガします!もう少しペース遅くしてください!」
「愛島さん。あなたに至っては、現時点でお礼するところが見当たりません!朝っぱらから添い寝のお誘い、マジで勘弁して欲しいです!」
「そして最後に吉良さん!いつも余所余所しいですけど、僕何か悪いことしましたか!?どうせだったら僕は、吉良さんとも仲良くなりたいです!」
「とにかく皆さん!まだまだ言いたいことはありますが、これからよろしくおねがいします!!」
そう僕は、一気に言って頭を下げた。
言ってしまった。
今になって、飲むのをセーブしていたのを後悔しています。
あー!どうしよう!何人かコンドこそ怒ってるかもしれない!!
僕が頭を下げたまま顔を上げられないでいると、大きな声笑い声が重なった。
「ほら!幸太はこのくらいが面白いだろう!?」
津屋さん。今回は言い返せません。
「あら。まさか仕事の後輩になる子からお説教されるとは思わなかったわ。でもこれはこれで・・・」
あ、静海さんの変な扉開いた?
「なんだよ幸太!そうならそうと言ってくれよ!まぁ、言ったからって改めるとは限らないけど。」
酒谷さん、それ言う意味あります?
「あらあら~、そんなに添い寝のお願いが嫌だったなんて・・・じゃぁこれからは、添い寝以上の事をお願いしようかしら。」
愛島さん、もう分かって言ってますよね。
「そ、そんな。幸太さんは何も悪くないんです。私、男の人が苦手なだけで・・・」
あ、吉良さん、僕を嫌ってたわけじゃないんだ。よかった。
でも、うん。確かに、このくらいの酔い、悪くはないかも。
「改めまして!母さんよりも年上の皆さん!これからよろしくお願いします!」
「「「「「んだとコラ~~~っ!!!」」」」」
その後僕は、皆んなに揉みくちゃにされながらたっぷりと飲まされて、また、記憶を無くした。
『あで~じょ』に入ると、小料理屋に似つかわしくない、そんな声が聞こえてきた。
声のした方をみると、和服を着た女性がカウンターの中から僕らを出迎えてくれていた。
「藍流(あいる)、あんたそのノリはやめなさいって言っていつも言ってるでしょ?」
「あっ、来華さん!ようこそおいでくださいました」
藍流と呼ばれた女性が、取り繕うようにそう言っていた。
「今さら遅いっての。それに、ここでは『女将さん』でしょ!」
女将さん。なんだろう、津屋さんにもの凄く似合ってる気がする。
僕はそう思いながら店内を見渡した。
小さなカウンターには席が4つ。
カウンターの向かいにお座敷が1つ。
奥にはお手洗いと、カウンターから直接行けるようになっている部屋があるみたい。
うん。あれだね。
警視庁の特命の人達が行きつけにするところに似てる。
こういう所を行きつけにするの、カッコいいよね。
そうこうしているうちに、みんながお座敷へと入っていったから、僕もそれについて行った。
「あら、今日は新顔がいるんですね」
「あぁ。前に話した幸太だよ」
「あ、芦田 幸太です。よろしくお願いします」
「アタシ、春日部 藍流。よろしくね。元々居酒屋で働いてたからこんなノリだけど、気にしないでね」
「いやだから、そのノリを直しなさいって言ってるでしょ!」
春日部さんの挨拶に津屋さんが怒っていると、春日部さんはそのまま逃げるようにカウンターへと引き下がってしまった。
注文も何も取らないままに。
「ちょっと藍流~!とりあえずビール6つねー!」
「はいただいま~」
春日部さん、まだ思いっきり居酒屋のノリです。
でもみんな気にせずにワイワイ騒いでます。
そんな皆さんこそ、居酒屋に居るかのごとく騒いでますけど。
ここ、小料理屋ですよね?
特命の人達、もっと静かにカッコよく飲んでますよ!?
呆れながら騒いでいる皆さんを見てると、それもどうでも良くなってきているあたり、僕も毒されてきたのかな?
そんなことを考えていると、春日部さんがビールを運んできた。
「さぁて。改めて、幸太の入居を祝して、乾杯っ!」
「「「「乾杯!!」」」」
「か、乾杯」
「おっ、幸太、いい飲みっぷりじゃねーか!」
酒谷さんが早速そう言ってやって来た。
いつの間にか手にした一升瓶を引っさげて。
いや、本当にいつから!?
「あー、朝美。あんまり幸太に飲ませるんじゃないよ」
「なんだよ来華。いいじゃんかよ。いくら幸太に優しくしても、幸太はババァにはなびかねーよ」
「そんなんじゃないさ。幸太は、少し酔ったくらいが面白かったじゃないか。だから、いい感じで止めてやった方が盛り上がるだろ?」
「うふふ。確かに、来華の言うとおりね」
津屋さんの言葉に、静海さんが笑って同意している。
いや、なんなんですかそれ。
僕をなんだと思ってるんですか!
でも皆、そんな僕の気持ちなどお構いなしに、量を減らしてガンガンお酌してくる。
僕がお返しにたっぷり注ぎ返しても、全員ダメージを受けた気配なし。
よし、僕が皆に勝てないのはこれでハッキリしたな。
あとは、いい感じに酔ったフリして自分を保つしかない。
そんな決意の元、僕は少しずつ、本当に少しずつ飲み進めていた。
すると。
「よし。ここで幸太からそれぞれに、挨拶してもらおうかね!」
津屋さんが訳のわからないことを言い出した。
いや、この場で挨拶っていうのは理解できるよ。でも、それぞれにってどゆこと?
あーもーいいや。とりあえず挨拶だ。
そこで僕は立ち上がって津屋さんに目を向ける。
「津屋さん。まずはお礼を言わせてください。こんな安いアパート、他にはありません。しかも、少し構造は変わってるとはいえすごく綺麗なアパートに住めるなんて、ありがたいと思っています。
しかし津屋さん!雑用の範囲が広すぎます!しかも時間も関係なしに!せめて、時間はどうにかしてほしいですっ!!」
「静海さん。いつも仕事の話を聞かせていただいてありがとうございます。本当に勉強になります。
しかし静海さん!もう少し自分で買ったブルーレイレコーダーの使い方くらい勉強してくださいっ!!」
「酒谷さん。いつも煙草のお誘いありがとうございます。タバコミュニケーション、仕事で役立てたいです。
しかし酒谷さん!僕今まで煙草吸ったことないんです!まだ喉がイガイガします!もう少しペース遅くしてください!」
「愛島さん。あなたに至っては、現時点でお礼するところが見当たりません!朝っぱらから添い寝のお誘い、マジで勘弁して欲しいです!」
「そして最後に吉良さん!いつも余所余所しいですけど、僕何か悪いことしましたか!?どうせだったら僕は、吉良さんとも仲良くなりたいです!」
「とにかく皆さん!まだまだ言いたいことはありますが、これからよろしくおねがいします!!」
そう僕は、一気に言って頭を下げた。
言ってしまった。
今になって、飲むのをセーブしていたのを後悔しています。
あー!どうしよう!何人かコンドこそ怒ってるかもしれない!!
僕が頭を下げたまま顔を上げられないでいると、大きな声笑い声が重なった。
「ほら!幸太はこのくらいが面白いだろう!?」
津屋さん。今回は言い返せません。
「あら。まさか仕事の後輩になる子からお説教されるとは思わなかったわ。でもこれはこれで・・・」
あ、静海さんの変な扉開いた?
「なんだよ幸太!そうならそうと言ってくれよ!まぁ、言ったからって改めるとは限らないけど。」
酒谷さん、それ言う意味あります?
「あらあら~、そんなに添い寝のお願いが嫌だったなんて・・・じゃぁこれからは、添い寝以上の事をお願いしようかしら。」
愛島さん、もう分かって言ってますよね。
「そ、そんな。幸太さんは何も悪くないんです。私、男の人が苦手なだけで・・・」
あ、吉良さん、僕を嫌ってたわけじゃないんだ。よかった。
でも、うん。確かに、このくらいの酔い、悪くはないかも。
「改めまして!母さんよりも年上の皆さん!これからよろしくお願いします!」
「「「「「んだとコラ~~~っ!!!」」」」」
その後僕は、皆んなに揉みくちゃにされながらたっぷりと飲まされて、また、記憶を無くした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる