玩具にされたぼくと、彼女の丸メガネ

清白 芹

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11.妖精たちの戯れ(前編)

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わたしの学校では6月下旬に開校記念日がある。その日は休校日で、祝日のない6月で貴重な平日休みとなる。今日はわたしの部屋に祐佳ゆうかあずさ優里奈ゆりなが集まり、期末テストに向けた勉強会をしていた。まあ勉強会と言っても、たいていはおしゃべり会みたいになっちゃうんだけど。
ちなみに、わたしの部屋はライトブルーのカーペットの敷かれた和室の六畳間。部屋には押入れが備え付けられていて、押入れの正面の壁際にベッドや学習机などの家具を並べている。真ん中の広いスペースには来客用に四角いガラステーブルがあって、その各辺にモスグリーンのクッションを一つずつ並べている。そこに祐佳ゆうかあずさ優里奈ゆりな、わたしがそれぞれ座り、みんなで勉強会をしているのだ。

「テスト勉強ってかったるいよねー」
「まあ学生の本分は勉強だからねー。仕方ないよー」
あずさはペンをクルクルっと回し、つまんなそうにあくびをする。数学の問題集を解いていた優里奈が手を止めて、肩を手で揉みほぐしている。
「そんなこと言ってないで頑張ろうよ。わたし、数学苦手だから頑張らなくちゃ。あずさもこのままじゃ高校に行けなくなっちゃうよ」
わたしはいつもの調子で脱線しそうになる二人をたしなめた。
「あっ、そろそろ来る頃かな」
ケータイの時計を見ながら祐佳ゆうかがポツリと言う。
「祐佳、来るって何のこと?」
「今日は美咲のために特別ゲストを呼んでるんだよね」
「え、誰?」
「それは、美咲の大好きな日向ひなた翔流かけるくんでーす」
わたしと祐佳の会話に割り込んでくるあずさ
「え、なんで翔流かけるくんを?」
「表向きは数学が得意な彼に勉強を教えてもらうため。でも本当は日向ひなた君の気持ちを確かめるためだよ。それに美咲の気持ちもね」
「翔流くんとわたしの、気持ち?」
祐佳は反応を確かめるかのようにわたしの目を覗き込む。
「美咲ちゃんは自分の気持ちに気づこうとしてないんじゃない?」
「私たち、美咲は日向ひなた君を好きだって確信してる。それに彼も美咲に特別な感情を抱いてる気がするんだ」
「だからみんなで日向ひなたくんの気持ちを確かめるために呼んだんだよね。あたしたち、二人の恋を応援したいから」
優里奈、祐佳、あずさがわたしに詰め寄る。
「そ、そんな……わたし、そんなこと……」
「じゃあ、あんまり時間がないから計画を説明するね」
祐佳が戸惑うわたしを無視して話を進める。祐佳の性格はわかってる。こうなるともう止めるのは無理だ。わたしはいやいやながらも計画に乗るしかなかったんだ。


計画の説明が終わると、3人は文句を言いたげなわたしを押入れに押し込んだ。
「うあっ、待ってよ……」
押入れが閉まる。みんな強引過ぎるよ。わたしは暗い押入れの中で、3人との打ち合わせを思い出す。
祐佳の話では、当事者のわたしがいると不都合ということで、わたしは3人によって実行される計画を押入れの隙間から見守るだけってことなんだけど……まさかあんな計画だとは思ってもいなかった。それにみんなの態度が気になって仕方なかった……。
「これから私たち日向ひなた君と話すけど、何が起こっても絶対に出てきちゃダメだよ」
わたしをじっと見つめて念を押す祐佳。空気がはりつめる。その瞳からは強い決意が感じられた。
「今日の祐佳、なんだか怖いよ。それにわたし、この計画に賛成してない」
「うん、わかってる。でも私たちは美咲に本当の自分を取り戻してほしいんだよ。だから我慢して」
祐佳は真剣な視線でわたしを射抜くように見つめる。わたしは口をつぐむしかなかった。
「美咲ならあたしたちの気持ち、わかってくれると思ってるよっ」
わたしの肩をポンと叩くあずさ
「美咲ちゃんは私たちの大切な友達だから、信じてほしいな」
いつものふんわりした笑顔だけど優里奈にしては早口になっている。みんな普段通りをよそおってるけどどこか緊張しているみたいだったんだ……。

暗い押入れの中であれこれ考えていると、突然、「ピンポーン」とチャイムの音した。襖を開ける音がして一筋の光が差し込んでくる。
「じゃ、私、日向ひなた君をここに連れてくるからね。合図したら襖を細く開けて見てるんだよ」
祐佳はそう言うと襖を閉め、部屋を出ていったようだった。
翔流かけるくんの家はわたしの家の近所にあるけど、ときどき道で顔を合わせる程度だ。家を行き来したこともない。そんな翔流かけるくんがわたしの部屋にくる。自分の部屋に初めて男の子を入れると思うとちょっとドキドキしてしまう。

真っ暗な押入れの中で耳を澄ませていると、入り口の引き戸を開ける音がした。
「いらっしゃい」
部屋にいた二人が翔流かけるくんをもてなす。
「えーと。長谷川はせがわさん、中島なかしまさん、小湊こみなとさん……の3人だけ?」
驚いたような翔流かけるくんの声。
「まあまあ、立ち話もなんだからとりあえず座ったら。そこ空いてるし」
祐佳が促すと押入れの前で衣擦れきぬずの音がする。
ほどなくしてズボンのポケットに入れたケータイが振動し、すぐに止まる。襖を開ける合図だ。
わたしは音がしないように細心の注意を払いなが襖を細く開ける。光が差し込んできて翔流くんが襖に背を向けるようにして座っているのが見えた。隙間をもう少しだけ開け、目を近づけて覗くと、部屋の中央を見渡すことができた。襖を背にした翔流くん、その向かいに祐佳、左右にあずさと優里奈。押入れのほぼ正面にテーブルがあるので、4人のようすがはっきりと確認できる。会話も鮮明に聞こえてきた。

「えーと。美咲ちゃんはどこに行ったの?」
翔流くんは部屋の主であるわたしがいないのが気になって仕方ないようだ。
「ああ、美咲はね。さっき彼氏から電話がかかってきて出ていっちゃったんだ」
祐佳はあらかじめ決めておいたであろう台詞で応じたけど、それを聞いて翔流君は息を呑んだような気がした。でもすぐにいつも通りの声音で
「えっ、美咲ちゃんって彼氏がいるの?」
と質問する。彼はなんとなく前方の何もない空間を見つめるようにしていた。
「知らなかったの?日向ひなたくんって美咲ちゃんと結構仲のいい友達だと思ってたのにー」
「美咲って高校生の彼氏がいるんだよ。あの子、ああ見えて年上好きだから」
「美咲のカレって、でもちょっとワガママじゃない?セックスしたくなるとコッチの都合も考えずに呼び出すなんてね」
「まあ美咲ちゃんもあれで幸せなんだからいいと思うよー。あの子って純情そうに見えるけどセックス好きだしねー」
3人はアハハハと笑い合う。祐佳たちが考えた架空のわたしを想像して恥ずかしくなる……。翔流かけるくんは今どう思っているのかな。

「それよりさ。日向ひなた君って童貞でしょ。私たちとセックスしてみない?美咲だって今頃彼氏と楽しんでるんだし、私たちだけで勉強してるのも不公平だからさ」
「あたしたちのトシなら誰でもやってるよっ。まあお子ちゃまの日向ひなたくんには無理かー。キャハハ」
「……」
翔流かけるくんを誘惑しだす祐佳とあずさ
日向ひなた君がいいなら私たちが優しく教えてあげるよ。美咲ちゃんも今頃……フフフ」
優里奈らしいおっとりした口調なんだけど、やっぱり翔流くんを誘ってる。
その勢いに気圧されたようにうつむいていた翔流くんだったけど、ちょっと怒ったようにバッと顔を上げ、3人を見回す。
「ぼくはそんなんじゃない……君たちの思っているような……」
悔しそうに歯噛みしているようだったけど、翔流くんはそれ以上言葉を継げずに固まってしまった。

顔を見合わせる3人。アイコンタクトをしたあと、それぞれ小さくうなずく。
「じゃあ決まりね。さっそく始めようか」
祐佳の言葉を合図にして3人はおもむろに服を脱ぎだす。うわ、本当に脱ぐんだ……。困惑するわたしの目の前でどんどん服を脱いでいく祐佳たち。そしてあっという間に下着姿になった。ブラとショーツ。ライトパープル、ピンク、レモンイエロー。みんないつもよりかわいい下着。
「……」
翔流くんはなんだかボンヤリとそのようすを眺めていたけど、Tシャツを少し乱暴に脱いで叩きつけるように投げ捨てた。わたしは心臓が跳ね上がる。
「へー。びっくり。見かけによらずいい体してるね。私、細マッチョ好きだよ」
「ほえー。陸上部の男子よりも腹筋あるんじゃないの。すっごいね」
「かっこいいね。腹筋が6つに割れてる人、私、初めてみたよー」
口々に驚きの声を漏らす3人。本当だ……。
わたしのほうからは背中しか見えなかったけど、後ろから見ても逆三角形のスタイルがはっきりわかる。背中には無駄な脂肪が全然ついてない。肩甲骨のあたりが盛り上がっていてキレイな形をしているのが印象的だった。やっぱりボクシングしてるからかな。
「このテーブル邪魔かなっと。優里奈、手伝ってよ」
梓と優里奈が下着姿のまま、テーブルの両端を持って部屋の隅に移動させ、その間、祐佳が空いたスペースにクッションを並べていく。
「これで、よし」とポンポンとクッションを叩く祐佳。クッションは押入れの方向へ一列に並んでいて、人が一人横たわれる感じになっている。
クッションの位置は、押し入れの襖の隙間から覗いているわたしが、はっきりと見えるように調節しているようだった。3人が準備している間、翔流くんはボーッと立ちつくしている。
「じゃあ、ズボンを脱いでコッチに来て」
クッションの脇に座り、翔流くんを手招きする祐佳。彼はその声にハッとしたようにそちらを向く。そしてベルトのあたりをカチャカチャと触ったあと、ズボンをスッと下ろした。グレーのパンツ。半ズボンみたいな形。確かボクサーパンツっていうんだっけ。

祐佳、梓、優里奈は翔流くんがズボンを脱いでいる間にクッションの周りに集まっていた。そして3人は顔を見合わせてうなずくと、それぞれ背中に手を回してブラのホックを外し始めた。
優里奈は何回か試したけどなかなか外せなくて、梓に外してもらう。3人ともホックを外すとゆったりとした動作でブラをとった。全員ショーツだけになり、おっぱいが丸出しになってる。やっぱり祐佳はキレイな形をしてる。優里奈は大っきくて柔らかそう。梓は小ぶりだけど乳首がキレイなピンク色でかわいい。
わたしは目の前で起こっている状況がイマイチ理解できず、親友たちのおっぱいをボーッと見てたけど、パンツ一枚の翔流くんが目の前を横切るのを見て我に返る。
あれ……計画ってここで終わりじゃなかった?翔流くんがズボンを脱いで3人とエッチしようとしたら、やめるって言ってたよね。テレビのドッキリ番組みたいな感じ。そのあと負い目を感じた翔流くんにいろいろ聞き出すって説明されたけど……。えっ、もしかしてわたしはみんなに騙されたの?

クッションに座り、おっぱい丸出しの女の子たちに囲まれた翔流くんは、ちょっと戸惑っているみたい。それを悟ったのか祐佳と梓はちょっと緊張している彼の腕にしがみつくようにして左右から体を寄せ、耳元でささやく。
「大丈夫だよ。そんなに緊張しなくても」
「あたしたち、優しいからねっ」
そんな声がかすかに聞こえてくる。彼の腕にぴったりと密着する2人のおっぱいは、押しつぶされて形を変えていた。優里奈は翔流くんの背後から腕を回し、大きなおっぱいを彼の背中に押し付けているようだった。
「わたしたちが優しくリードしてあげるからね。日向ひなた君は安心して身を任せていいよー」
それは優里奈らしい包容力を感じさせる優しい口調で、翔流かけるくんはその声を聞いてふぅーと息を吐いて少しリラックスしたようだった。うわぁ……みんな大胆。でもこれからどうなっちゃうんだろう……。
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