不自由で自由な僕たちの世界。

広崎之斗

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一章:終わりの始まり

7(※)

 ズボンの中に手が滑り込み、ユーマは期待するように喉を鳴らした。
 ハチの首筋を舐めて、彼の身体に触れる。
 傷跡はほとんど無かった。
 破れたシャツの下を這わせる手は、ざらついた肌を楽しむ。
 溶けた理性の片隅でユーマは囁いた。
「シャワー、浴びた方が」
「ん? そうだね。浴びる?」
 ハチの問いかけにユーマは頷いて答えた。
 背を撫でていた手がふと離れると、カランへと手が伸びる。
「服、脱いで」
 ハチはそう言ってカランを捻り湯を出す。ざーっと水音が響き始めると、一気に浴室は湯気が立ちこめ始めた。
 言われた通りユーマは身体を離して服を脱いでいく。同じようにハチもシャツを、立ち上がりながら脱いで、ユーマが脱いだシャツも奪うと、浴室のドアを開けて外に放り出す。
 ぼんやりとその様子を眺めながら、ユーマは残っていたズボンを自ら下着ごと脱いだ。

「寒くない?」
 ハチの声にユーマは首を横に振った。
 手にしていた最後の衣服もハチの手で外に投げ出される。
 今度は何も遮るものの無い状態で抱きしめ、そして口づけられて肌と肌が触れあう。
 さっきまでの怪我の所為で血と埃が付いた身体が密着する。
「お前こそ……大丈夫、なの」
 ユーマは呟いて、少しだけ身長の高いハチを見上げた。
「大丈夫」
 そう言うとハチはユーマの手を引いてシャワーの湯の元へ近づいた。
 濡れた床をぴちゃぴちゃと音を立てて、程よい温水が肌を打つ。
 シャワーヘッドを手に取ったハチが先にユーマの方へと湯を向けた。
 視線と片手が下腹部に触れ、ゆるりと滑り茂みに触れる。
「俺より……お前の方が汚れてる」
 それに怪我を負っているのはハチだ。先に流した方がいい。
 そう言ってシャワーを奪おうと手を伸したが、先にハチの手が形を変えたユーマの雄へと触れた。

「っぁ……ぁ」
「それより先に、触ってもらいたいんじゃなくて?」
「ちが、ああ……ん」
 指先がぬるりと先端を擦った。咥内を味わい、肌に触れられただけだ。だがすでに先端には蜜が溢れている。
 ぬるりと指先は滑る。途端に走る強い刺激に甘い声を漏らしてユーマはハチに垂れ掛るように抱きついた。
「は、あ……ぁあ」
「すぐイキそうじゃん」
 小さく笑った声が耳朶に注ぎ込まれてユーマは身震いした。
 根元から括れまでゆっくりと扱かれる。時々先端の膨らみまで指先が到達すると、指の腹でぐりぐりと割れ目を刺激された。
 断続的に漏らす声は言葉を成さず、腰を揺らしてはハチの肌に唇を押し当て声を押し殺しながら快感に耐える。
 どくりと脈打つ竿を少し肉厚な指が扱くのは気持ち良かった。
「いいよ、出して?」
 ハチが低く甘く囁いた。
 身体を震わせてユーマは荒くなる呼吸を必死に抑えようとした。だが無駄な抵抗だ。
 最後の留めを刺すように、ハチは耳の輪郭を舐めて耳に舌をねじ込んだ。
 ぐちゅり、くちゃりと水音が響く。
「ああ……は、ぁ……あ」
 喉を逸らし、ユーマは身体が強く硬直した。次の瞬間には抑え切れない熱がこみ上げてくる。
「もっと気持ち良くしてあげるから」
 そう囁かれると同時に強く早く扱かれて、ユーマは白濁の熱を吐き出した。

「はあ……あ、はッ、ぁ」
「こんなんじゃ足りないでしょ?」
 ハチの声にユーマは顔を覗き込むように少しだけ身体を離した。
 まだ力を入れると、それだけで身体は敏感に感じてしまう。びくりと震わせた身体をハチは抱きしめると、白濁にまみれた手を降りしきる湯へと差し出して流す。
「時間はあるんだし、お互い気持ち良くなるのは悪くない」
 流れていく水から吐き出した熱をぼんやりとユーマは見つめた。
 その顔を覆うように、また口づけられる。唇が触れるだけで離れていくと、ハチはシャワーヘッドを手にしてユーマの身体を流しはじめた。
「座る?」
 ハチはバスタブの縁にユーマをゆっくりと座らせた。正直、座ってしまえば立ち上がれるだろうかと思ったが、口にするのは億劫でユーマはされるがままだった。
 汚れた肌を湯が洗い流していく。ユーマはもとより、ハチも自身の血を流す。排水溝には薄く伸びた赤が流れていく。
「そう……いえば、傷は?」
「治ってるでしょ?」
 そう言われてユーマはまた手を肌にのばした。
 ハチの身体は自分の身体よりも分厚く大きく筋肉質だった。先ほどまで怪我をしていたはずの、大量に血を流していた筈の肌は確かにもう綺麗になっている。まるで最初から怪我などしていないように。
 傷があった場所は痕さえなかった。その肌を指で触れながらユーマはハチを見上げた。
 濡れた髪と緑の瞳がユーマを見下ろす。
 ぞくりとした熱がまた下腹部に灯され、指先を滑らせる。肌を這う指はハチの鍛えられた腹筋を通り、濡れた茂みを通り、屹立した雄へと触れる。
 形を変え、脈うつ肉棒を前にユーマは唾を飲み込む。ざーっと湯が降る音を聞きながら、舌を覗かせて首を伸した。
 
 太く固くなった雄の先端へと舌を伸ばし舐める。何度も何度も舌で掬い舐める様子は、アイスや飴を舐めるようにも思えた。
 口を大きく開けて、舌で先端を舐めながら口の中へと招き入れる。
「ん……」
 ずるりと咥内を満たした雄は上顎を擦って、ユーマはそれだけで感じていた。
 先端の丸い部分だけを口に含んで、舌で割れ目を舐めながら吸い上げると竿の浮き上がった筋がぴくりと脈打つ。
「ふ……ッ、無理は、しなくていいよ」
 ハチがそう言ってユーマの髪に手を伸した。その時にはシャワーの音が止んでいて、どうやら自動で止まったらしいと気づいたが、すぐにどうでもよくなって口の中の雄を味わうことに専念する。
 ぴちゃりと音を立てて咥内から雄を引き出して、また舐めて、咥え込む。焦らすように先端だけを愛撫していると、ハチは時々息を詰まらせ、小さな吐息を漏らした。
 上目で見上げて、ユーマは少しだけ今の主導権が自分にある事を見て口角を上げた。
 再び咥内から離して、ハチを見上げて目を合わせたまま顔を更に近づけた。根元からゆっくりと舌を伸ばして舐め上げる。
 括れた部分では先端を少し尖らせて、舌でその輪郭をなぞった。
「ッ……、すごい、エロイ」
 笑いながらハチの言葉が降ってくる。少しだけ愉しくなって笑うと、ユーマは見せつけるように唇を開き、ゆっくりと先端から飲み込んでいく。今度は先端の膨らみだけでなく、竿の部分も口の中へと招き入れる。
 両手で根元を掴み、喉に当たりそうになるまで咥えていく。
 苦しいと思ったが、それでも動きは止まらなかった。止めたくなかった。
 舌を差し出し、引っ込めて、竿を舐めながら咥え込めない部分を指で扱く。ずるりと先端まで唇の柔らかい部分で扱いては、また飲み込み舌で筋を舐める。その度にびくりと筋が脈打ち固くなるのが愉しくて堪らない。
 先端からは少しだけ甘い蜜が溢れてきた。それを舌で掬い舐めて飲み込みながら、また奥まで飲み込む。
 今度は手で扱いていた部分まで唇で扱くように、喉仏に先端が当たりそうなほどまで咥え込んだ。
「ッ――く」
 髪を梳いていた手が少しだけ強く頭を押さえた。口の中で大きく脈打ち固くなる。
 ユーマは頭を少し早く動かして唇で竿を扱き吸い上げた。ぐちゅぐちゅと唾液が音を立てる中、更に固くなった竿がひくひくと震えて先端から苦い液体が吐き出された。
「は……ぁッ」
 ハチの少しだけ余裕のなさげな声にユーマはどこか満足していた。口の中に広がる苦い熱も、甘ったるく感じて口の端から溢れる前に飲み込んだ。
 こくこくと喉を鳴らし、身体が再び熱に溶かされていくのを感じた。口の中で柔らかくなった雄を離して、先端に残っていた蜜を舌で舐めとった。
 達したばかりのハチを見上げると、熱に濡れた緑の双眸がユーマを見下ろしていた。先ほどよりも情欲に濡れた瞳には、軽口を叩いていた余裕は少しだけ鳴りを潜めている。
 雄の眼だ。ぞくりと身体が震える。少しでも肌に触れられただけで感じてしまいそうだと思った。

「飲んだんだ」
 ユーマの頭に触れていた手が耳を滑り頬に触れる。それだけでやはり感じてしまい、声を漏らしてユーマは乞う。
「もっとほしい」
 今度は飲むのではない。中に出してほしい。中を抉り、突き上げ、犯してほしい。
 今は何も考えなくてイイ。今だけは快楽に身を委ねればイイ。それがよかった。それに溺れたかった。
 ハチはユーマの内心の全てを理解しているのかは分からない。だがユーマの言葉はしっかりと理解している。だから熱に濡れた瞳を細めて、情欲に濡れた声で囁いた。
「もちろん、いくらでもあげるよ?」
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