不自由で自由な僕たちの世界。

広崎之斗

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二章:共助/共犯

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「俺は組織の中でばかり仕事してるから、ここから先はお前に任せるよ」
 ベッドに座って顎をさすっていたハチは顔を上げた。
「そう? まぁ俺を雇うんだしそうなるか」
 ハチもあった時とは少し異なる服を身に纏っていた。Tシャツに柄物のシャツを羽織にジーパンという、ユーマの姿に合わせたようなラフなコーディネートになっている。似合っているのを見る限り、おそらく彼はなんでも着こなせるタイプなんだろうと思った。それにおそらく、彼はそういったファッションを楽しむタイプでもあるとユーマは感じていた。

 様々な手段、伝手は確かにある。だがどれも組織の息がかかったものだ。仕事を始めたときからずっと組織の中にいたから、今さらそれ意外の手段を得るには時間が掛る。だったら最初から伝手のあるハチに全て任せた方が賢明だと判断した。
 ふと脱ぎ散らかした服の近くに置いたままの銃が目にはいる。
「銃も、新しいのほしいんだけど。手に入る場所ある?」
「あるよ。全部新調する?」
 ハチの問いにユーマは頷いて答えた。そのつもりだ。スマートフォンを破棄すると同時に全部捨てる。それでもタイムリミットは近づいてくるだろうが、少しぐらいは延ばす事が出来るはずと踏んでいる。
 立ち上がってハチはユーマのスマートフォンを手に取ると行こうと言った。あとの服などはオーナーに処理を頼めば良いという。そこまでしてもらっていいのだろうかと不安になった。それにもしオーナーが組織との繋がりが少しでもあった場合、ここからバレる可能性だってある。もしくは、匿ったとして危険が及ぶのではないか。
 先に部屋を出ようとしたハチを呼び止めて、ユーマは考えたことを口にした。
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫だよ。俺の仕事相手は基本組織ってもんが大嫌いだから。今回のユーマを連れてこいって仕事は、超久しぶりの組織案件ってとこ。俺は個人間の仕事がメインだからね」
「納得はできる気はするけど……、まぁいいや。今は納得しとく」
「そうしといて」
 ハチは手にしたスマートフォンをヒラヒラさせながら歩きだした。その後ろをついてユーマも部屋を後にした。

 外に出るとすぐにハチはスマートフォンをコンクリートの上に落とした。派手な音を立てて落ちた端末をそのまま踏み抜き破壊する。ガラス部分が粉々になってコンクリートの上にキラキラと光る。そんなたった一つの破壊で全てが切れるわけではないが、なんだか少しだけスッとする気分でユーマは残骸を見つめていた。
 道のど真ん中にあるのは邪魔だと言わんばかりに、ハチは端末を蹴り飛ばして建物の壁に激突させる。それでまた破壊音と共に端末は分解されていく。
「さて、先に銃かな」
「あ……うん。その後、俺の知り合いのところに行って、組織のデータ見られるようにアタリをつけたい」
「その知り合いのところ行って大丈夫なの? さっきのと矛盾しない?」
 その指摘にユーマは笑った。
「確かに矛盾する。でもアイツは大丈夫。ただそこには俺だけで行かないといけないから。先に武器と足と。あとは今日の宿というか……当面の活動拠点があれば嬉しい」
「拠点といっても、使い捨てても良い場所って感じの場所はいくつかあてはある」
「じゃ、それで大丈夫ならお願いしたい」
 歩き始めたハチに着いて行く。裏から表通りへと向かうと、人通りはぐんと増えた。

 ホテルの近くは飲食店が多かったため、どこも昼の営業に向けてオープンしながらも仕込みの準備を続けているようだった。少し遅い朝食を楽しむ者もいて、どこもかしこも賑やかになりつつある。
 この街が静かな時間は殆どない。夜は夜で朝方まで活動する者も多いので、二十四時間殆どの時間に人は働き、遊び、活動している。
「コーヒーぐらい飲む?」
 ハチが言った言葉にユーマは首を横に振った。だがそれは飲みたくないというわけではない。
「俺、コーヒー苦手なんだよね」
「そうなの?」
「そうなの。まぁラテとかならいけるけど」
「じゃあソレ」
 と、ハチはユーマの手を取ると一軒のカフェへと向かう。
「あそこ使った日は、ここのコーヒーが俺の好きな組み合わせ。目覚めるんだよねぇ。それに、ラテとかもおいしいから」
 そう言って連れてこられたカフェに入ると、手は離された。店員は軽くハチに挨拶してすぐにオーダーを取ってテキパキと用意して行く。エプロンを着けた女性が独りで全てをこなし、無駄なく二人分の注文を出すとレジも済ませる。滞在時間はほんの数分で二人は紙カップを手に店を出ていた。
「んで、こっち」
 そう言ってハチはまた自由な方の手でユーマの手を取ると歩き出した。
 手をいちいち繋ぐな、と言いたかった。だが彼の行動する範囲、方向は自分の範囲外である。それにいつも活動する時にはナビがあったし、決められた範囲内での行動が殆どだった。
 大人になってから自由に街を歩いたことはない。だからある意味、ハチが手を取り歩くというのはナビシステムと同じだと思えば仕方がないと思えた。
 文句を飲み込むためにカフェラテの飲み口に口をつけて、少しだけ啜ってみた。ミルクフォームの生ぬるさが丁度よく液体を冷やしてくれていた。
「飲める?」
「うん」
 ミルクの甘さが、苦手なコーヒーやエスプレッソ特有の苦さを上書きしてくれている。案外美味いと思いながらもう一口飲みながら、二人は程よく混んでいる街の中を歩いて行った。
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