不自由で自由な僕たちの世界。

広崎之斗

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二章:共助/共犯

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「お互いのこともう少し知った方がよくない?」
 最初にそう提案したのはハチだった。
 武器を手に入れ、車を手に入れた。どちらもハチの知っているところからの繋がりであり、そして誰もがハチに仕事を依頼したことのある人間だった。
 だからそんなハチが誰かを連れて歩いている、というのは彼らにとっても少し驚く出来事だったらしく、どちらの店先でも目を丸くしてユーマは頭のてっぺんから爪先までじろじろと見られることになった。
 イヤ、というわけではないが気分が良いものでもない。だが普段のそういった視線に比べれば変な意味はないのは分かるので適当に笑みを浮かべてあとはハチに任せた。そうしながら、カフェの店員ももしかしておなじように見ていたのだろうか、と思う。だが彼女の視線はさほど感じなかった。いや、彼女はあまりこちらを見ていなかったという記憶だけが残っている。
 ハチは素直にユーマは今回の顧客であると言った。詳細はそれで省けるし視線に晒される数秒からすぐに解き放たれて、必要なモノの交渉へと話は変わった。
 そうして車を手に入れて、次は拠点とする場所を探そうとしたとき、運転席に座ったハチが言った言葉だった。

「それはいいけど……どんなことを?」
「そうだなぁ。なんで組織にいるのか。そんで今なんで逃げようとしてるのか」
「逃げてるわけじゃない。勝手に中断されそうな仕事をこなそうとしてるだけだ」
「それはこっちから見ればそうかもしれないけど、相手からみたらどう見ても逃げてるでしょ?」
 そう言ってハチは笑うとエンジンをかけた。その言葉に反論するのは面倒だったし、あまりいい言葉が浮かばなかったので視線を助手席の窓から外に向けて中断した。
「それに、その話をちょっと掘り下げたら今回の目的の答えになるかもしれないし」
 サイドブレーキを解除して車を走らせながらハチは言った。このまま取りあえず街を出て西へ向かうという。
「西へ? そっちって廃墟地域じゃ」
「そうだよ。だから丁度良い。モーテルとかはあるし、他の街へ向かう車通りもある程度あるから燃料の心配もないし、食料の心配もないし。それにそっちに一戸だけセーフハウスあるから」
 その言葉にユーマは驚いてハチの方を見た。
「セーフハウスに連れていくのか? 俺を? 俺はただのお前の依頼人だぜ? そんな簡単に重要な拠点をバラしていいのかよ」
「んー、まぁいいんじゃない? 別にそこだけじゃないし」
 唇を尖らせてハチは運転しながら言った。全く気に留めていない様子でユーマの方が少し申し訳なく感じて焦り始める。
 見合うものを払えるか、と少し不安になりながら再び外を見て気分を紛らわせることにした。

 フリーランスの殺し屋、というのはその名の通り後ろ盾の組織がいない。故に敵も味方もどこにいるか分からないし、報復があったとしてもそれは自分で対処しなくてはいけないリスクの一つだ。それらの始末も殺し屋の風評に付随するものであり、腕の見せ所でもある。
 名を知られればいいというものではないが、知られなければ仕事はない。故に人から人への評価によって仕事は巡ってくる。

 組織とは裏社会を取り仕切る者達の『組織』の事を指す。そして彼らは表立って活動し、小さくは街を、大きくは国を牛耳るフロント企業を持っている。
 フロント企業の敵、邪魔者を排除するために、組織に所属する殺し屋は暗躍することになる。どの組織もその道のエリートを育てており、彼らが裏で人の命も情報としてやりとりすることにより、組織はフロント企業を有利に動かし、他の組織の企業を潰していく。
 時には組織間で協定を組み立ち回ることもある。そうして大きくなり、今や国の背後にいると言っても過言では無いのが、ユーマの所属する組織・ハデウスである。

「それに、組織を抜けようとする殺し屋なんて、簡単に抜けられるわけないでしょ?」
 柔らかく緊張の解けた声色でハチが言って、ユーマははっと我に返った。運転席を見ると、片手でハンドルを握り、まっすぐ前を見つめて居るハチがいた。サイドウインドウに肘を突いていて、運転は殆ど直線だからか自動運転機能を使っていた。
「それはまぁ……そうだけど。でもそもそも今回の仕事は約束だったんだ。終われば俺は出て行っていいっていう」
「でも失敗したわけじゃん? ある意味では。その約束は有効?」
「アイツは……ボスは、それを有効とした上で、更に逃げ道を塞ぐのが好きなタイプだよ。だから逃げるんだ」
「じゃあ逃がしきるまで一緒にいてあげようか?」
 前を見つめて居た瞳がユーマの方を見る。太陽の光に当たる瞳は緑色だった。
「俺はお前にいくら払えばいいんだ、それは」
「さぁ。実費でいいんじゃない? 面白そうだし」
 そう言って緑色の瞳は面白そうに笑みを浮かべた。
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