不自由で自由な僕たちの世界。

広崎之斗

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二章:共助/共犯

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『それ大丈夫なん?』
 通話先の声を聞いて、ユーマは唸って腕を組んだ。カメラはどちらもオフにしてあるため、アイコンが表示されている。
「正直、今の俺じゃ判断できないよ。とりあえず、コレからの事も相談したいのもあるから。ちょっとロスの所行っても良い?」
『まぁいいよ。偶には直接会いたかったし』
 その言葉にユーマは少しだけ口元に笑みを浮かべる。

 通話の相手であるロスは組織の仕事をしながら出会った数少ない組織外の男である。彼もまたフリーランスであり、情報を扱う中ではかなり上級の腕を持っている。だが名前はやはりその時々で変えているし、簡単に見つからないように何重ものセキュリティの壁と共に仕事をしている。
 そんな彼とユーマが出会ったのは仕事のない日に珍しく街に出ていた時だった。休みとあればある程度の自由はもちろんあった。だが遠くに行くことは不可能である。基本的には組織の人間が働き、住まう場所は広大な敷地の中に一括で管理されていた。表向きにはそこは就職するならばかなりの競争倍率であり、優良企業である。実際に裏の顔を知らないで就職しているものだって数多くいるほどであり、組織は裏社会以上に表社会でも名を轟かせていた。フロント企業に就職した者はもちろん裏を知らぬまま退職して去ることもできる。だが知っているものはそう簡単にはいかない。
 ユーマは特に行動を制限されていた。ボスに近い人間なのだから当り前といえば当り前だった。
 それでも時々は一人で街に出る事を許可される。端末によるトラッキングは行われているし、街の外に出ることは出来ない。それでも組織外の空気を吸うというのはユーマにとって大切な気分転換だった。
 偶然出会ったのは、休日も終わる頃。戻るのが億劫で、もう少しと先延ばしにしながら酒を飲んでいた時だった。
 カウンターで飲んでいたユーマの隣りにやってきたロスはユーマに話かけた。普段ならば相手にもしないだろうが、その日はとにかく時間を忘れていたかったので話に乗った。
 ロスはその時エンジニアだと言った。ユーマは適当にこういうときは運び屋だと答える。適当に事実にフェイクを差し込んで会話ができるから、相手をはぐらかすにも十分信憑性を持って語れるからだ。
 そうして話している内に意気投合した。ロスはエンジニアでありながら何かと懐古主義的なところがあり、様々な古いものが好きだった。それは銃のタイプであったり、乗り物の類いであったり、映画であったり、コミックであったり。知識が豊富で話す内容も面白かったため、別れる頃にはまた会おうと約束していた。
 だがユーマは連絡先は教えられないと告げた。それは仕事の都合上であると伝えた。この言い訳は苦しかったと思うが、それでもロスは自分の連絡先だけを伝えた。
 いつでも連絡してくれていい、と言ったロスと別れて帰宅したユーマは、もらった連絡先を登録はすれど連絡を取ることはなかった。

 しかしその後、偶然また出会う事になる。その時は仕事で少々怪我をした時だった。とはいえ切り傷程度である。一応、通常の装備に入っている応急処置用のパッチを取り出そうとしながら路地裏で座り混んでいると、ロスが現われた。
 突然のことに驚いたユーマに対して、ロスは自分の所に来て休憩していけばいいと言った。そんなことは許されないと分かっていたが、ユーマはその誘いを断れなかった。断りたくなかったのだ。
 そうしてロスの仕事部屋の一つへと転がり込んだ。ロスはユーマの行動をトラッキングしていたことを白状したが、一体どこでそんな種を仕込む事ができたのかとユーマは驚いた。曰く、連絡先の登録だという。そんなもので可能なものか、と言ったものの、可能なのだとロスは言ったし実際出会ったことが可能だと証明していた。
 ユーマがロスの部屋に居る間の行動は、全て偽造ログとして端末に残された。それもロスの提案であり、ユーマが細かく監視されている事を知った上での処置でもあった。
 このお陰でユーマは少しだけ仮初めの自由を手に入れた。

『んでぇ? キュリアについて調べたらいいの?』
「そうなんだけど。キュリアがフリーランスに仕事を頼んでいるはずだから、それが知りたいんだ」
『そのぐらいはすぐ出ると思うけど。あとは?』
「あとはそっち言ってから伝える」
『おけ。じゃー、準備しとくわ』
「よろしく。ありがとうな」

 感謝を伝えて通話を終えると、ユーマはアプリからすぐにログアウトした。
 ロスの元へ行き、キュリアについて調べる必要がある。だがそれ以上に重要なことがもう一つ。それがロスの手によって調べられるかは分からないが、彼ならば出来るのではないかと期待して席を立つことにした。
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