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三章:過去/自由
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シュンはミナトの右腕である。そしてユーマと同じように元々は殺し屋であり、ハチのように幼い頃から組織で育てられた生粋の殺し屋だ。
「よく知ってんの? そいつの事」
「知ってるといえば知ってるし、知らないといえば知らないし。俺もシュンも最初はミナトの見張りだったんだよ」
「見張り? 警護役じゃなく?」
少し身を起こしたハチに倣うと、ユーマも身体を起こした。前髪に掛った髪を掻き上げながら座り直した。ハチも座り直してから、興味深そうに話を聞く姿勢を見せる。
ユーマは頷いて記憶を巡らし話を続けた。
「そもそも、お前が組織に居た頃ってボスってミナトじゃないだろ?」
「まぁ、違うね」
「あの組織は裏でも表でもどんな世界でも渡り歩ける頭をもった人材がトップにいるからこそ、今の地位まで来て進めてる。ミナトはそれを知っていたから、最初から組織に目をつけられるように一人でネット犯罪に手をだしていた。といっても、合法のすれすれっていうか、上手く逃げ道を作った状態で金儲けしてて。それで大学の資金を捻出してた。その頃には組織からスカウトがいって、組織絡みの仕事を試験みたいにこなしてた。その時から見張りとして俺はミナトに近づいた」
出会った当初、ミナトはユーマのような人間を嫌っていた。学のない人間。殺ししかできない世界の底辺の人間。そういうふうに見下していたのをユーマはさほど気にも留めなかった。そういった人間は世の中にいくらだっている。だからこそ、一般人との接触の際にはそれなりに擬態できるように、話し方や身の回りの様々な物に気をつけて身なりを整える。それでもミナトはユーマが組織から送られてきた見張り役、ということと共に、組織内にあった資料へと接続してユーマという人を理解してそういう態度をとっていたのだ。
だがユーマはユーマで、ミナトという人間は面白いと認識していた。
彼は本来は中流階層の人間であり、別段金に困ることもなく暮らしは普通よりは少し楽で、大学の資金などは親が苦も泣く支払えるはずの人間だった。そしてミナト自身、一〇代の頃から成績はトップクラスの成績優秀者。それ故にネットでの立ち回りも上手く、様々なプログラム言語への対応もこなせていた。その技術を使い、バレないように少量ずつ金をくすねることが巧かったり、セキュリティの甘い情報を見つけては、それを種に金を稼いでいた。
「年齢は一緒なのに、生きてる世界が全く違うっていうか。だから向こうが俺を毛嫌いするのは分かるし、それをどうとも思わないし。俺としては仕事をちゃんとこなすだけだったし。ミナトは俺と必要以上には話さなかったし、俺も必要なこと以外は話さなかった。別に、それが苦じゃ無かったから」
「ある意味相性いいんじゃない?」
ハチが少し馬鹿にしたように笑ったが、ユーマは溜息と共にそれを否定出来なかった。
「ある意味その通りだよ。丁度俺達が二十歳の頃に、組織内の勢力争いが起こった。次のトップを決めるための、いわゆるお家騒動っていうやつ? 多分外にもそれは漏れてたから、お前も記憶にあればあるんじゃないか?」
「あるね。丁度……七年ぐらい前? ってなると、あれだ。どこの組織も問題抱えてたころ」
「そもそも国自体がやばかった頃だから、まぁそうだよ。俺達は国とか街とかそんなもんどうでもよくって、組織が全てだから、そこのゴタゴタで手一杯だったけど。まぁこれを巧く捌いて、更に世論にも目を向け、表でも裏でも存在感を出しながら一気に組織を立て直しまとめ直したのが」
「ミナトか……。で、そのシュンはその時どこに?」
「確かこのあたりで、シュンはミナトの見張りになったんだ」
ユーマは前後関係が少し曖昧だと前置きをして、記憶を手繰り寄せていく。
「立て直しの前に内部でかなりいろんな派閥で分かれた。俺は別にどうでもよかったし、それこそ、このときにはミナトのやり方とか考え方のほうが合理的だと思ったから、アイツの命令には従ってたし、それでミナトに着く人間も結構いたから問題はなかった。でも当時は内部なんて疑心暗鬼の塊だから、俺も……そのあたりでミナトと、まぁ色々契約を交わして。それで送り込まれてきたシュンは最初は敵のように見ていて。でもその内にシュンは味方だとミナトも判断して俺達は三人で行動するようになった」
言いながらユーマは少しだけ懐かしい気持ちがこみ上げていた。
今では去りたくて仕方が無いが、あの頃は組織という場所、ミナトの隣りというのはユーマにとって唯一の居場所だった。守りたい場所であり、誰にも触れさせたくない場所であった。
「そこからは俺達三人は一緒だったし、守りたい場所に他ならなかった。だからシュンも俺もミナトの命令には絶対だったし、歯向かう奴は片付けていく。そうやって地位を確固たるものにしていくころには、味方は大勢いたし、組織自体立て直しできていて、国の中枢に繋がる人脈さえ出来上がっていた。ミナトの側には今もシュンはいるし、ミナトの命令は絶対だし。アイツが今頃俺達を探してるよ」
「よく知ってんの? そいつの事」
「知ってるといえば知ってるし、知らないといえば知らないし。俺もシュンも最初はミナトの見張りだったんだよ」
「見張り? 警護役じゃなく?」
少し身を起こしたハチに倣うと、ユーマも身体を起こした。前髪に掛った髪を掻き上げながら座り直した。ハチも座り直してから、興味深そうに話を聞く姿勢を見せる。
ユーマは頷いて記憶を巡らし話を続けた。
「そもそも、お前が組織に居た頃ってボスってミナトじゃないだろ?」
「まぁ、違うね」
「あの組織は裏でも表でもどんな世界でも渡り歩ける頭をもった人材がトップにいるからこそ、今の地位まで来て進めてる。ミナトはそれを知っていたから、最初から組織に目をつけられるように一人でネット犯罪に手をだしていた。といっても、合法のすれすれっていうか、上手く逃げ道を作った状態で金儲けしてて。それで大学の資金を捻出してた。その頃には組織からスカウトがいって、組織絡みの仕事を試験みたいにこなしてた。その時から見張りとして俺はミナトに近づいた」
出会った当初、ミナトはユーマのような人間を嫌っていた。学のない人間。殺ししかできない世界の底辺の人間。そういうふうに見下していたのをユーマはさほど気にも留めなかった。そういった人間は世の中にいくらだっている。だからこそ、一般人との接触の際にはそれなりに擬態できるように、話し方や身の回りの様々な物に気をつけて身なりを整える。それでもミナトはユーマが組織から送られてきた見張り役、ということと共に、組織内にあった資料へと接続してユーマという人を理解してそういう態度をとっていたのだ。
だがユーマはユーマで、ミナトという人間は面白いと認識していた。
彼は本来は中流階層の人間であり、別段金に困ることもなく暮らしは普通よりは少し楽で、大学の資金などは親が苦も泣く支払えるはずの人間だった。そしてミナト自身、一〇代の頃から成績はトップクラスの成績優秀者。それ故にネットでの立ち回りも上手く、様々なプログラム言語への対応もこなせていた。その技術を使い、バレないように少量ずつ金をくすねることが巧かったり、セキュリティの甘い情報を見つけては、それを種に金を稼いでいた。
「年齢は一緒なのに、生きてる世界が全く違うっていうか。だから向こうが俺を毛嫌いするのは分かるし、それをどうとも思わないし。俺としては仕事をちゃんとこなすだけだったし。ミナトは俺と必要以上には話さなかったし、俺も必要なこと以外は話さなかった。別に、それが苦じゃ無かったから」
「ある意味相性いいんじゃない?」
ハチが少し馬鹿にしたように笑ったが、ユーマは溜息と共にそれを否定出来なかった。
「ある意味その通りだよ。丁度俺達が二十歳の頃に、組織内の勢力争いが起こった。次のトップを決めるための、いわゆるお家騒動っていうやつ? 多分外にもそれは漏れてたから、お前も記憶にあればあるんじゃないか?」
「あるね。丁度……七年ぐらい前? ってなると、あれだ。どこの組織も問題抱えてたころ」
「そもそも国自体がやばかった頃だから、まぁそうだよ。俺達は国とか街とかそんなもんどうでもよくって、組織が全てだから、そこのゴタゴタで手一杯だったけど。まぁこれを巧く捌いて、更に世論にも目を向け、表でも裏でも存在感を出しながら一気に組織を立て直しまとめ直したのが」
「ミナトか……。で、そのシュンはその時どこに?」
「確かこのあたりで、シュンはミナトの見張りになったんだ」
ユーマは前後関係が少し曖昧だと前置きをして、記憶を手繰り寄せていく。
「立て直しの前に内部でかなりいろんな派閥で分かれた。俺は別にどうでもよかったし、それこそ、このときにはミナトのやり方とか考え方のほうが合理的だと思ったから、アイツの命令には従ってたし、それでミナトに着く人間も結構いたから問題はなかった。でも当時は内部なんて疑心暗鬼の塊だから、俺も……そのあたりでミナトと、まぁ色々契約を交わして。それで送り込まれてきたシュンは最初は敵のように見ていて。でもその内にシュンは味方だとミナトも判断して俺達は三人で行動するようになった」
言いながらユーマは少しだけ懐かしい気持ちがこみ上げていた。
今では去りたくて仕方が無いが、あの頃は組織という場所、ミナトの隣りというのはユーマにとって唯一の居場所だった。守りたい場所であり、誰にも触れさせたくない場所であった。
「そこからは俺達三人は一緒だったし、守りたい場所に他ならなかった。だからシュンも俺もミナトの命令には絶対だったし、歯向かう奴は片付けていく。そうやって地位を確固たるものにしていくころには、味方は大勢いたし、組織自体立て直しできていて、国の中枢に繋がる人脈さえ出来上がっていた。ミナトの側には今もシュンはいるし、ミナトの命令は絶対だし。アイツが今頃俺達を探してるよ」
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