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執着/愛着

9【※】

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「ッぁあ……あ……ぃ、あ」
 後ろから穿たれる感覚に悠人は声を上げて悶えた。
 手で身体を支えることは出来ず、枕を掴んでぐしゃぐしゃに濡らしながら、自らねだるように尻を高く上げている。
 濡れた後孔には熱く昂ぶった純一のペニスがねじ込まれ、内側から熱が侵食していく。
 背中を指先が滑ると、びくびくと身体が震えた。純一が触れるだけで気持ちが良い。
「や、あ……あ……ぁぁあ……ッ」
 ぐぃっと奥を叩くように突き上げられ、更に身体の奥が犯される。受け入れる為に身体は更に蜜を溢れさせ、襞が収縮を繰り返す。
 ぎゅっとキツく締めつけると、純一は深く低い吐息を漏らした。
「これ、気持ちいい?」
 身体を近づけ、耳元で囁くと、舌を滑らせ耳の穴を舐めた。じゅるりと音がして、身体がわななく。悠人は素直に頷いた。
 はげしい抽挿を繰り返さずとも、中をとんとんと叩くように刺激されるだけで、じんわりと身体の中に熱が広がる。
 達してしまいそうになるが、寸前のところで純一は動きを止める。
 その度に身体の中の熱が行き場をなくし、暴れ、涙が溢れる。
「ふ、ぁ……ぁあ、あ……ん」
 悠人は後ろを向こうとしたが、上手く身体は動かない。少しだけ頬を枕に押しつけるようにして純一を見ると、情欲に濡れた瞳と視線があう。
 目を細め、口元に笑みを浮かべる。
 いつもと同じ笑みなのに、それは捕食者のもので、自分は食われるのだとわかる。
 ぞくりと背筋に電流のように快感が走り、頭が真っ白になる。だがまだ絶頂を感じるほどの刺激が足りない。
 目元が熱くなり、視界が揺らぐ。じわじわと広がる熱があと少しのところで退いていく。
「ふああ……ッぁ……、あ」
「ああ……、イッちゃった? まだ大丈夫?」
「じゅん、……ち、あ、ぅう、これ、いや、だ……ぁッ」
「なんで? 気持ち良さそうに食いついて来てるし。気持ち良いでしょう?」
 そう言って勢い良く引き抜くと、一気に奥まで突き上げられた。
「ひぁあ、ああ……ッあ、あ……んッ」
 強い刺激に視界がチカチカとする。
 ぐじゅりと蜜が音を立て、奥をぐいぐいと刺激されると泡立つ音が響く。
「ふ……ぁ、ね、キ……ス、したい」
「だーめ」
「なんで……ッぁ」
「俺以外とキスしたことあるんでしょ? 最初に言ってくれなかったから、お仕置き」
「んあ……ッそ、なこと……ッ、聞かれて、ないッ! ぅああ……ァ」
 背中に舌を這わせる生暖かい感触が伝わる。続けて、硬いものが皮膚にふれ、鋭い痛みが走る。
「ぃ、あ……ッ、ああ」
 はぁっと吐息が項に注がれる。ぞくりと肌が粟立つ。
 期待するように濡れた襞がぎゅっと締めつけると、体内に沈められたペニスが脈打つ。
「まだ噛まないよ? それに、今は大分落ち着いてるでしょ?」
「あ……ぅ、う……ッ」
「時間はたっぷりあるんだから。まずは……そう、色々聞いとかないとねぇ」
 そう言って純一はずるりと一気に中からペニスを引き抜いた。襞が一気に引き抜かれる感触にキュッと締めつける。
 ぴくりと身体を震わせ、思わず漏れた声はそのままに、悠人は純一の手で仰向けにされた。
 殆どされるがままで、身体は殆ど言うことを聞かなかった。
 それでも力を込めて両手を伸すと、純一の首に回して抱きつこうとする。
 もっと体温を感じたかった。そして匂いが愛おしい。

「いろ、いろって……?」
「他にキスされたことある? 抱きつかれたとか、セックスとか」
 悠人は首を横に振った。
 記憶にある限り、キスだって一回だけだし思い出したくもない。
 そう言ったところで、どうやら純一にとってはソレが気に食わなかったらしい。
 ベッドまで運ばれて一度だけキスをした。舌を吸われただけで身体はすぐに純一を欲した。
 軽く身体に触れられるだけですぐに後孔は濡れ、思考も散漫になり、快楽に堕ちていく。そうして性急に押し広げ、ねじ込まれた熱に悠人はずっと身体を揺さぶられていた。
 だが何度達しそうになっても、ギリギリで純一は動きを止める。もしくは、感じる場所をずらして突き上げる。
 すでに、今、達しているのかいないのかもわからない。それぐらい、ぐずぐずに溶けていた。
 開いたまま、呼吸を繰り返す唇に純一の指が触れた。
 目を細めて笑う。
 いつも彼はそうやって笑う。でも、あれは、ずっとこんな感情を孕んでいたのだろうか。
「もっと早く俺が見つけてたら……そんなこともなかったのかなぁ」
「あ……ぁ」
 唇の端に指が押しつけられ、咥内へとねじ込まれる。舌の表面を指が撫でると、純一の味がしてじわりと熱くなる。そして舌で触られるのとは違う感覚に、口の中に涎が溢れてくる。
 舌を挟むように指が二本口の中に入れられて、何度も表面を撫でられた。ふいに上顎に指が触れ、びくりと身体が震えた。
「ここ、触られるのすきだよね。舌でも……。そういうところも、触られた?」
 悠人は首を横に振る。
 手首を掴もうとしたが、純一はその手を掴むとシーツに押しつけた。そして口づけをするぐらい顔を近づけて、でも触れる事なく笑う。
「ずっとさ、悠人がどうなってるか気になって、焦ってたんだよ俺も。誰かに襲われてないか、誰かを好きになってないか。でもあの時の悠人のことを考えたら、多分そんなことはないだろうって自信はあったけど」
 指が口の中の粘膜を擦っていく。その度にびくりと身体が震え、反り返って透明な蜜を吐き出し続けるペニスが純一のそれと当たる。
 はやくまた中に入れて欲しかった。だけどキスもしてほしい。
 唇を動かし、ソレを言葉にしたかったが思考がまとまらず、言葉もままならず悠人は母音だけを吐き出す。
「あ……ッ、ぅあ……ああ……ぅ」
「口の中だけでもこれだけ感じるんだし……キスされたら、それ以上もすぐできそうだけど」
「ッ! ひ、ひてはい」
 泣きそうになって、辛うじて口に出来た否定の言葉を吐き出した。それに満足げに目を細め、純一は指を引き抜いた。
「自信はあったけどあの時から、地元出る時のことも考えたらさ。悠人は簡単には一緒になってくれなさそうだし……。だから時間掛るけど、あったら絶対に離さないように準備はしてたんだけど。その間が、詰めが甘かったかなぁ」
 自分の失態をぼんやりと口にして、純一は悠人の唇を掠めるような口づけをしてすぐに離れた。
 あ、と吐息を漏らして悠人は首を伸そうとした。だが純一はそれでは届かないほどに距離を空けた。
「舌、出して」
 そう言われて素直に舌を覗かせる。羞恥で顔が熱くなるが、言われるがままにするのは、早くキスをしてほしいからだ。
 純一は満足そうに微笑み、同じように舌を覗かせた。そして悠人の舌の表面をゆっくりと舐めた。
「ぅぁ……あ……」
「気持ち良い?」
 こくりと頷くと、再び純一の舌がゆっくりと舐め上げる。少しだけ舌先を尖らせて、舌の中央をつつっと舐められると下腹部がずんと重くなった。
 身体を捩り、ねだるように首を伸す。近づいて来た舌に自ら舌を伸して絡めると、そのまま純一は舌を口の中に含んだ。
「んぁ……あ……、んぅ」
 じゅるっと音を立てて吸い上げ、そして軽く噛む。
 唇が合わさり、深く口づけると、後孔に再び熱が押し当てられる。
 先端の丸みを帯びた部分がつぷりと中に入り、そしてゆっくりと襞を抉り押し進んでくる。
「ふ、んんぅ……ぁん……ッん」
 びくびくと震える身体に純一の肌の熱が伝わってくる。ぴったりと身体を合せて繋がると、純一は身体を起こして髪を掻き上げた。
 体温がなくなってしまい、香りが少し遠のいて思わず手を伸した。

「気持ち良くしてあげるから、ね?」
 そう言うと純一は悠人に横向きになるように言って、肩を掴んだ。されるがままに横向きになると、片足だけを高く持ち上げられる。
「ぅ、ああ……、や、や、これ……ッ」
 びくびくと身体が震えた。結合部はぴったりと密着し、奥まで感じるのは脈打つ熱だ。余すところなく飲み込んでいて、更にこの体勢だと奥を突く。
 ぐいっと純一の腰が揺れ、奥をとんと叩かれた。身体の中から髪の先まで走るような刺激に、悠人は目を見開いて息を止めた。
「……ッ、あ」
「奥まで、入ってるでしょ?」
「あ……はい、てる……ッ、ぁ、や、やだ」
「なんで? 気持ち良いでしょ、ココ」
 そう言って純一が腰を揺らすと、身体が揺さぶられ、奥を突かれ声が漏れる。
 いや、と声が漏れるものの、襞はぎゅうぎゅうに締めつけている。
 身体の芯からじわじわと快感が広がって来て、今にもはじけそうなほどになりつつある。
 ぐちゅぐちゅと音が立つ。中でぐるりと回すように腰を使われると、襞が更に締めつけ、奥の方から絞り取るように収縮を繰り返す。
「あ、ああ……ッぁ、じゅ、いち……ぁ、むり、あ……ッぃ、きたい……ぃ」
「いいよ、いつでもイって」
「あ、ふあ……あぁ……ッ、ぅ」
「気持ちいいんだ? 凄い締めつけるし、凄い……甘い匂いがする」
 うっとりとした口調で純一は囁いた。その声は悠人の聴覚を嬲るように刺激していく。
 更に後孔から蜜がどぶりと漏れ、音が大きくなる。純一が何度も同じところを突き上げると、はげしいわけでもない刺激に、それでも限界がくる。視界が真っ白になると、襞ははげしく収縮を繰り返し、中を味わう純一のペニスを締めつけた。
「ッ――あ、あああ……ぅ、あ」
 全身がわななき、悠人のペニスからもどぷりと精液が漏れた。はげしく吹き出す勢いはなく、ただ輪郭にそって溢れていくだけだ。
 達しても純一の動きは止まらなかった。むしろ、更に先の快感を得られるように、奥を突き上げていく。
「あ、や、やだ……や、……むりぃ、……ぅ」
「無理じゃないでしょ? まだいくらでもイケるでしょ?」
 純一が微笑みながら言った。緩慢な抽挿だったが、中で更に大きくなる純一の熱を感じると、悠人は無理だと言いながらも、口角を上げて微笑んだ。

「あ……ぅ、だ、して……ッ、じゅん、いちの……ぉ、ッ」
「あれ、イヤじゃなかったの?」
 愉しげに弾む声に悠人は緩く首を横に振り、揺さぶられるがまま甘い声を漏らす。
「い、……ッ、じゅん、いちが……ッ、イク、なら……あ、いい、から……ぁ」
「かわいい。そういうの、言ったのは俺だけ? 他にもいる?」
「い、ない! おまえ……ッ、あッ、う、だけだからぁ」
「ホントに?」
「うそ、じゃ……ッない、って! ぁあ……ッ」
「悠人は気づいてた? 俺が店に行った時、店長さんαだなぁって気づいてさぁ。どうしようもない気分になったの」
「あ、……ッ、へ? あ、ああ……ッ」
 動きを止めると、純一は悠人の内腿を軽く噛むように口づけて続けた。
「懐いてるみたいだし。悪い人じゃないんだろうけど。もっとやっぱ早く……あの店で働く前に、見つければよかったって思った」
 柔らかい皮膚に痛みを感じ声を上げた。一瞬で魘されていた熱から醒めるほどの強烈な痛みだったが、すぐに表面を舐められて、ひりつく痛みと快感に蕩けていく。
「まぁでも、おかげで変な虫つかなかったみたいだから、今は感謝してるけど」
 小さく呟いた純一の言葉は悠人にはよく聞こえなかった。
 再び、今度は少しはげしく抽挿を繰り返され再び嬌声を漏らす。
 じっと見つめる純一の瞳は、満足げに細められ情欲に濡れていた。その瞳に捕らわれると、胸の奥からぎゅっと締めつけられるような感覚に陥り、更に深く快感を感じる。
 眉根を寄せて純一は口元を食いしばるようにした。瞬間、内側に広がる熱に悠人の身体はわななき、そして再び絶頂を迎える。
「ッぁあ……あ……」
「他に、誰かと何かしたことある?」
「ッ、ない……って」
「ホントに?」
「ない……ッ、ぁ、じゅん、いち、だけ……だから」
 甘ったるい声と匂いを漂わせて悠人は囁き、手を力なく伸した。
 純一は身体を繋げたまま悠人の手を掴むと身を屈めて唇に口づける。
 すでに一度達してはいたが、中に沈む熱はまだ硬く熱く感じる。ぶるりと身体を震わせて悠人は離れた唇に小さな笑みを浮かべて言った。
「だから、もっ、と……して」
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