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-第一章-スプリングフィールド王国編-

-第一章十五節 サイクロプス戦と復活の宗玄と風の奇跡-

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誰にも気づかれる事無く空からは何者かがマサツグとサイクロプスの戦いを見詰め、

岩陰からはマサツグを心配した様子で眺めるハリットの姿が有った。今から

始まろうとしているサイクロプスとの死闘に各々が色々な不安や疑念…妄想に想像と

思考をグルグルと掻き乱し困惑を抱く中、そのサイクロプスと死闘を演じようとして

いる当本人には周りの目など知った由など無いと言った様子で、その場で暴れる

サイクロプスの攻撃を掻い潜ると反撃戦に出る。


__ブゥン!!!……ドゴオォォォ!!!…


「どんなに攻撃が強力でも当たらなければ如何って事は無い!!…

何処かの大尉も言ってた言葉だ!!!よぉく覚えておけ!?…

とは言っても…今からお前を叩き斬るがな!!!!」


__バッ!!!…コオォォ!…ボシュウウゥゥ!!!…


サイクロプスの攻撃を回避して懐に入ると何処かで聞き覚えの有るフレーズを口に

して剣を水平に構え、サイクロプスの腹部に狙いを定めると剣に炎を纏わせて

斬撃を放ち、サイクロプスの腹を焼き切ろうとする!しかしここでもその分厚い

皮膚が邪魔をしてか火傷を負わせる程度で終わってしまう。それでもサイクロプス

には十分脅威だったのか自分の腹部が焼かれた事に驚いては自身の腹部を押さえて

その場で慌て始め、地団太を踏む。


__グオォ!?…グオオアアアァァァァ!!!…ダン!…ダン!…ダン!…ダン!…


「チッ!!…やっぱ駄目か!!…

…となると冷静に考えてダメージが通りそうなのは……

やっぱ残るは頭だけか!!…っと!…」


サイクロプスが自身の腹部を押さえて地団太を踏んで暴れ回るその様子に

マサツグが巻き込まれるのは不味いと直ぐに判断すると、暴れ出す直前で

バックステップで距離を取りつつ、何処が一番効果的にダメージを

与えられそうかとサイクロプス全体を観察する。足は駄目…腕は駄目…体は駄目…と

マサツグが暴れるサイクロプスを見詰めて最終的に頭が残り、頭だと潰された

目に追撃…或いは首辺りに攻撃を当てれれば?と距離を取り終えた時点で色々な

考えがマサツグの頭に思い浮かばれる。そうして次に頭に攻撃する際如何やって

攻撃を繰り出すかでマサツグが悩み始めるのだが、サイクロプスはまるでマサツグの

位置が分かって居る様に腕を振り被ってはマサツグの頭上目掛けて拳を振り下ろす!


__グオオォォォ!!!…ブゥゥン!!!…


「ッ!?…拳!?…こっちを狙ってるのか!?……ッ!?…

でもチャンスかもしれない!!…」


__…グオォッ!…ドゴオォォン!!!……バッ!…


「さっきから好き勝手暴れやがって…!!

歯ぁ食い縛れ!!!」


サイクロプスは如何やらマサツグの気配を感じ取って狙いを澄ましているらしく、

マサツグの居る場所目掛けて拳を繰り出すと、マサツグがハッ!と察知しては

直ぐにバックステップで振り下ろされた拳を回避する!回避された拳は物凄い勢いで

地面に埋まる様にして突き刺さり…それを見たマサツグは更にハッ!と思い付いた

表情を見せるとそれ以上は何も考えず、ただサイクロプスの腕に向かって走っては

埋まった拳に飛び乗り、腕を足場にサイクロプスの顔目掛けてダッシュ斬りを

敢行する!


「ダッシュ斬りッ!!」


__タッタッタッタッタ!!……ッ!?…


マサツグがサイクロプスの腕をダッシュ斬りで一気に駆け抜け剣を構えると、

サイクロプスは自身の腕に感じる何かに気が付いてその何かを確かめようと、

マサツグの走って来る感触に向かい反対側の腕を伸ばし始める。しかしその感触を

確かめるより先にマサツグがサイクロプスの顔の前まで走って行くと剣を両手で

握っては水平に構え、サイクロプスの顎目掛けて思いっきり振り被るとバットを

振る要領で剣をフルスイングする!


「おおおりゃあああああぁぁぁぁ!!!!」


__フォン!!!…バキィィィ!!!!……ッ!?!?…グラアアァァ…


「よっしゃあぁぁ!!!…まずは一撃!!!…

……とは言え…こっから如何するよ?…俺?…」」


マサツグが振り抜いた剣は真っ直ぐにサイクロプスの顎を捕らえるとここで

「超幸運」のスキルが発動したのかクリティカル判定が表示され、サイクロプスの

首が後ろを振り返る様にして捻じれるとその巨体も徐々に後ろへ向かい倒れ始める。

さすがのサイクロプスもその一撃は効いたとばかりに呻き声らしき声を挙げ、

マサツグもまずは一撃!…と軽く笑みを浮かべて「やってやった!」と言う実感を

持ち始めるのだが、この一撃で漸く自分の持っている武器について有る事を

理解するとチラッとだけ剣を見詰めては直ぐに表情を曇らせる。それは何故かと

言うとこのトライアルソードは剣で在りながら斬属性寄りではなく、打属性寄りの

鈍らの剣である事が分かったからである。


{剣の癖に打属性寄りって!…

アイツの足を斬ってた時は気付かなかったけど…

さっきの顎への一撃!…

アイツが予想以上に効いている様子を目にして今理解した!!…

この剣は間違いなく鈍らだ!…先端部分だとまだ何とか斬れるけど…

刃や峰の部分となると押そうが引こうが斬れやしねぇ!?…

辛うじてさっき刃が通っていたのはまさに幸運の力が

有ったからとでも言うのか!?…}


倒れるサイクロプスを眼下に見詰め、マサツグが宙に放り出されるよう今更ながらの

剣の特性に気付いていると、サイクロプスは地面を揺らしてその場に倒れ込む。

勿論まだ倒した訳では無いので息は残っており、軽い脳震盪を起こした程度で

サイクロプスが倒れるとマサツグはサイクロプスの体をマット代わりに使って着地を

決めると直ぐに追撃を放たずサイクロプスから距離を取り直す。サイクロプスは

フラフラとしながらも直ぐに立ち上がり始め、そしてまるで人間の様に首に手を当て

「あぁ~…痛かったぁ~」と言った様子で軽く首を動かしては再度辺りの気配を

探る様にピタッと一度は動きを止め、マサツグの気配を感じ取ったのかピクっと

反応して見せてはマサツグの居る方を振り向き、激昂し始める。


__…ゴキ!ゴキ!……ッ!!…グオオアアアァァァァァ!!!…


「ッ!……一応効いたと…おぉおぉ…カンカンだねぇ~…

…さぁ~て、次は如何する?…」


__ダン!!ダン!!ダァン!!!…ググググ!!…


「ッ!?…中腰になった?…一体何を…」


激昂するサイクロプスを目の前にマサツグが若干の余裕を取り戻し始めると

剣を構え直し、改めてサイクロプスと如何やって対峙するかを考え直し始める。

相手は一応神話?生物であり刃が通り難いだけでやはり斬属性武器が有効の

モンスター…マサツグの持っているトライアルソードでは相性が悪く、倒すにも

かなりの長期戦を強いられる。次の手が浮かんで来ないマサツグが剣を構えたまま

サイクロプスと睨めっこをしていると、サイクロプスは突如地面を叩き付けては

更に激昂した様子を見せ始め、徐々に中腰に構え始める。それはまるで関取の

四股の様に見えマサツグが何をする気だ?と警戒を強めて見せ、その後の行動に

注目をしているとサイクロプスは何処かで見覚えの有る攻撃モーションでマサツグに

迫り始める!


__ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!…


「え?…ちょ!?…で…デンプシーロール!?…

それもどっかで見た事ある超低空のデンプシーだと!?…クソが!!!…」


__バッ!!…ブゥン!…ガッ!!…


「ッ!!…やっば!!!…」


某一狩り行こうぜのゲームに出て来るとあるモンスターの攻撃モーションで

マサツグに迫り、マサツグのその事に気が付き慌てて逃げ出し回避をしようとする

のだが、その回避をする際サイクロプスのデンプシーロールを避け切る事が出来ず

足を引っ掛けられると、マサツグはそのデンプシーロールの勢いそのままに

殴り飛ばされる!一応ながら当たる寸前にガードの体勢を整えるがその威力は

凄まじく、マサツグが縦に回転しながら殴り飛ばされHPの7割を持って行かれる!


__ブワアァ!!!…


「グッ!!!…オオオォォォ!!…

な…7割とか!…シャレにならねえよ!!!…」


__ドサァ!!…ゴロゴロ…バッ!!…ブゥン!ブゥン!ブゥン!…


「ッ!?…刹那!!」


__ヴウン!!……


マサツグが殴り飛ばされ地面に叩き付けられるよう着地するとそのまま転がり、

何とか受け身を取って体勢を立て直そうとするも目の前からはマサツグの気配を

追ってか、サイクロプスがデンプシーロールで迫って来る!その様子にマサツグが

慌てた様子で回復する事無く、まずスキル欄から刹那を発動するとサイクロプスの

動きに対応し始める。ハイドリヒ戦の時同様サイクロプスの動きは遅くなり回避も

容易になるのだが、マサツグは何を思ったのか逃げずにサイクロプスへ立ち向かい

走って行くと、デンプシーロールとサイクロプスの胸の間をすり抜ける様に飛び

込んでサイクロプスの脇腹に潜り込む!


__ダッ!!!…バッ!!!…


{…今逃げた所で回復も休憩も出来ない!!……ならやる事は一つ!!!…}


__コオォォ!…ボシュウウゥゥ!!!…グオォ!?…グオオアアアァァァ!!!…


「一度完全に相手の行動を断つしかない!!!!」


マサツグが飛び込む様にしてサイクロプスの脇腹に入ると飛び込んで来た体勢の

まま剣に炎を纏わせ、サイクロプスに火傷を負わせた場所を確認しては自分から

見て剣を水平に構え、他人が見たら斬り上げるよう地面スレスレで一度炙り直す様に

再度火炎斬りを放つ!その火炎斬りはサイクロプスの脇腹に命中すると最初の火傷を

レアからミディアムレアへ更に悪化させ、スローモーション状態のままマサツグの

目の前でデンプシーロールを中断しては横へ逸れてお腹を抱え、そして苦痛に

耐えるよう叫びながら転げ回り始める。


__グオオアアアアアァァァァァァァ!!!…


「ッ!!!!…ったくウルセェっての!!!…

こちとらまだテメェに殴り飛ばされた衝撃で妙にフラフラしてんだよ!!…

……ッ!……まだ終わってねぇ…ってか?…」


サイクロプスが転げ回りマサツグが火炎斬りを撃った後、地面を転がる様にして

マサツグが受け身を取ると構え直す暇さえない様子で耳を押さえ、サイクロプスの

絶叫に文句を言う。しかしこうしている間にもサイクロプスは火傷のダメージスリップダメージ

苦しんでいる様子を見せ、ただお腹を抱えて悶えているとその隙だらけの頭に自然とマサツグの目が

行き着き、マサツグが追撃を放てると判断するとそのサイクロプスの頭目掛けて

走り出し始める!


__ダッダッダッダッダ!!!…バッ!!…


「追加でもう一撃プレゼントだ!!!

よぉく噛み締めやがれ!!!…

渾身のぉ!!…兜割りいいぃぃぃぃぃぃ!!!!」


倒れるサイクロプスとの距離を残り1mまで縮めて大きく震脚すると、

サイクロプスの頭目掛けて大きく飛び上がり剣を上段に構える!そして落下する

勢いを付けてサイクロプスの頭を狙い定め、自身の間合いにそのサイクロプスの頭が

入った瞬間マサツグは更に勢いを付ける為か空中で一回転し、何の躊躇いも無く剣を

振り下ろし重い追撃の一撃を繰り出す!ただでさえ兜割りは斬撃より打撃武器で

やった方が威力が上がると言うのに、マサツグが更に勢いを付けてやった兜割りは

言わずもがな…ほぼ無抵抗のサイクロプスの頭にクリティカルヒットすると、

不気味で嫌な鈍い音を立てては初の大ダメージを与える!…


__バキイイィィィ!!!…メキメキメキメキ!!…


「ッ!?…この手応えは!!…」


__ッ!?…ゴアアアアアアアアアアァァァァァァァ!!!!!!…


「ッ!?…ウルッさぁ!!…ッ!!…」


__……スタッ!……ッ!?…


恐らくその音の正体はサイクロプスの頭蓋骨が割れた…もしくはヒビが入った音で

あり、その手応えもマサツグの手に伝わって来てマサツグを動揺させる。そして

致命的ダメージを負わされたサイクロプスはと言うと今度はマサツグに割られた

頭を両手で抱え、その場で大絶叫+大暴れし始め、その声にマサツグが吃驚して

再度耳を押さえる。そしてマサツグが地面に着地する際ある事に気が付いては若干の

焦りを覚え始める。


__……フラフラ…


「ッ!?…無理をし過ぎたか!?…何か若干フラ付きが有る様な?……ッ!?…

TPがほぼほぼ限界!?……クソッ!!…とにかく一旦距離を!!!…」


マサツグが地面に着地して一旦暴れるサイクロプスから距離を置こうとするのだが、

次の瞬間足に力が思う様に入らなくなって、覚束ない様子でフラフラとする。

その事にマサツグが戸惑い慌ててステータス画面を開くとそこには残りTPが二割を

切った状態のマサツグが表示されており、更に何もしていないのにそのTPが減って

いっている様子が映し出されていた。その事にマサツグが戸惑った様子を見せるも

今は距離を取った方が良いと判断しては無理やりにでも足を動かし、叫び暴れる

サイクロプスから距離を取る!


__ダッダッダッダッダッダ!!……ドサァ!!…


「はぁ!…はぁ!…クソッ!!!…ペース配分ミスった!…

…如何する?…多分後もう一つ決め手が有れば勝てる気はする!!…

でも今のHPにTPじゃそれも叶わない…アイテムはバラ撒いちまったし…

…万事休すか?…」


__グオオオアアアァァァ!!!…ダンダンダンダン!!!…


謎のTP消耗に悩まされながらもサイクロプスから距離を取る事に成功すると、

マサツグはその場に座り込んでは息を切らし、サイクロプスと戦う際の自身の

TP配分を間違えた事に戸惑いを覚える。TPを回復しようにも回復アイテムは

ばら撒いてしまい、攻撃して回復しようにもサイクロプスは暴れ倒している…

更に時間経過で待つにしても戦闘中は回復せず、逃げるにしても思う様に

動かない脚に絶望を覚える。そうしてここまで来て倒せないのかとマサツグが

考え、如何するかと必死に悩み座り尽くして居ると突如後ろから誰かが歩いて

来る足を都が聞こえてはその何者かはマサツグの肩を叩く。


__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ……ポン…


「ッ!?……え?…ア…アンタは!……宗玄!?…」


「マサツグ殿!…遅れて申し訳ない!!…さぁこれを!!…」


「え?…あ…あぁ…」


歩いて来た者に肩を叩かれたマサツグがビクッと神経質気味に慌てて振り返ると、

そこにはサイクロプスの攻撃で動けなくなっていた筈の宗玄が折れた薙刀を手に

申し訳なさそうな表情をして見せてはマサツグの肩を掴んでおり、宗玄が復帰して

居る事にマサツグが驚いて居ると宗玄はマサツグに謝りポーションを手渡す。

そして宗玄が復帰した事に驚いたのはマサツグだけではなく、空から様子を眺めて

いたもう一人の謎の人物も驚かせる。


「ッ!?…漸くマサツグ一人になって更に面白くなって来たと言うのに!!……

また邪魔な奴目が増えおった!!…ぬぬぬぬ!…ッ……まぁ良い…

まだまだこれから先…旅は長い…今一度は見逃してやるとするか……

くふふふ♪…」


上空で謎の者が一人宗玄の復活に戸惑っては若干の怒りを燃やすも、直ぐに

落ち着いた様子で諦め、戦闘の続きを楽しみ始める。まるでこの先もずっと

付いて来る様な事を一人呟いては妖しく笑みを浮かべ、ジッとマサツグの事を

見詰めているその頃…マサツグが戸惑いながらも手渡されたポーションに目を

やると、ポーションには若干土が付いており何処からか拾って来た物だと

言うのが分かるのだが、マサツグは宗玄からそのポーションを受け取ると宗玄が

マサツグに対して謝り始める。


「…拙僧が動けぬ間マサツグ殿の奮闘は見せて貰っていた!……

果敢に孤軍奮闘するマサツグ殿の姿…感服させて頂いた!…

本来なら拙僧もその戦いに交じっていなければならないものを!!…

如何やら休憩が過ぎた様だ…申し訳ない!!…」


「い、いや…それよりも宗玄!…アンタは大丈夫なのか!?…

アンタももサイクロプスの攻撃を受けて…動けなかったんじゃ!?…」


宗玄はマサツグが一人戦ってサイクロプスを追い込んでいる様子に興奮と関心を

示し、自分も戦って居なければなければならないとサイクロプスにやられた事を

マサツグに謝罪する。そして自身が動ける様になるまで傍観していた事に関しても

反省している様子を見せてはマサツグに頭を下げるのだが、それよりもと言った

様子でマサツグが宗玄の身を心配し声を掛けると、更に宗玄は申し訳なさそうに

しては謝り始める。


「……それについてもう一つ謝らないといけない事が有る…」


「え?…ッ!!…」


__キュウゥゥ…ポン!…ゴクッ!…ゴクッ!…ゴクッ!…ゴクッ!…


「…恐らくだがマサツグ殿がばら撒いたであろうポーションを

幾つか拝借してしまった!…

お主がサイクロプスと戦っている時に幾つかポーションが転がって居て!…

戦闘に参加する為に!!…申し訳ない!!…」


宗玄が謝らないといけない事がもう一つあると言うと、マサツグが困惑した表情で

返事をしては宗玄から受け取ったポーションをチラッと確認する。するとその

ポーションはTP回復(小)のポーションで、マサツグがグッドタイミングと言った

様子で封を切ってはポーションを飲み始めると、そのポーションが謝罪の原因と

言った様子で宗玄がマサツグのポーションを飲んだ事を頭を下げて謝る。その際

後ろから来た事を思い出し、マサツグが後ろを振り向くとそこには幾つかの

HP回復(大)のポーションの空き瓶が転がっており、それを聞いてマサツグが

納得しているとポーションを飲み切り、TPを少しだけ回復させた様子で立ち上る。


__ゴクッ!…ゴクッ!……パァ!!…ガサッ…


「…あ~……今は緊急事態だし…別に気にしちゃいないよ…

それよりも…だ…あの馬鹿デカい化け物を仕留めてしまおうと

考えているんだけど……動ける?…」


「ッ!!…忝いかたじけない!…

では、その命を助けて貰ったお礼はあの化け物退治の戦力として

返させて頂こう!…」


「ッ!…グレートですよ!…こいつは!…」


マサツグがポーションを飲み切って立ち上がると宗玄に対して気にするなと苦笑い

しながら答えて見せ、そして静かに剣を構え直しサイクロプスを倒す事について

宗玄に協力を求めると、宗玄は頭を上げてマサツグにお礼を言い、協力する事を

誓って見せてはマサツグの隣に立って、折れた薙刀をまるで剣の様に握って構え

始める。宗玄が一緒に戦ってくれる事にマサツグが感謝をし、そうして二人が

戦闘準備を整えているとサイクロプスの方も動ける様になったのか倒れていた

体を起こし、立って見せるとまた気配を感じてかマサツグ達の方を振り向き怒りの

大咆哮を上げる!


__グオオオオアアアアアアアアァァァァァァァ!!!!…


「ッ!!!……これまた一段と怒ってらっしゃる?…」


「フフッ!…そうであろうな?…

…とまぁ何はともあれ…ここからは拙僧も全力で戦わせて頂く次第!!…

玄安寺流槍術・玄安宗玄!!……推して参る!!!」


__ブワアアァァッ!!…


サイクロプスの怒りも最高潮に達したのか、まるでゴリラの様に胸を叩いて

ドラミングすると空に向かって吠えに吠え倒し始め、その様子にマサツグが

耳を押さえて表情を歪ませるとサイクロプスが怒っている事を煽る様な一言を

呟く。その一言を聞いて宗玄が軽く笑みを浮かべては返事をし、改めて

決意した様子で戦うと豪語すると名乗りを上げ始める!宗玄が名乗りを上げた後、

宗玄の体に青い湯気の様なオーラが現れ、そのオーラがまるで世紀末救世主の

某主人公の様に体中を流れ始めるとその様子にマサツグが驚いてしまう。


「え?…なにそれ?…ケン〇ロウ?…」


__グオオアアアァァァァ!!!…ダン!…ダン!…


「ッ!!…行くぞ!マサツグ殿!!」


「えッ!?…あ、あぁ…いつでもどうぞ!!」


マサツグが宗玄の様子に驚いて居ると、サイクロプスはまるで自身の苛立ちを

地面にぶつけるよう拳で地面を叩き揺らしながらマサツグ達の方へと前進し始め、

その様子に宗玄が動くようマサツグに同意を求めるとマサツグは別の事に

夢中状態から引き剥がされた様子で慌てて返事をする。そうしてマサツグと宗玄の

共闘戦が始まると二人は迷わず向かって来るサイクロプス目掛けて武器を構えて

走り出し、サイクロプスも気配を掴む事に慣れて来たのか一気に拳を

振り上げ構えて見せると、マサツグ達目掛けて拳を振り下ろす!


__グオオオアアアアァァァ!!!!…ブォン!!!…


「ッ!!…二度目は喰らわぬぞ!?」


__ドゴオォォン!!!…


「ッ!!…もう一回その頭を揺らしてやる!!!」


マサツグ達に向けて振り下ろされた拳は最初の一撃を入れる時同様…

今度は二人揃ってバックステップで回避するとサイクロプスの拳は地面に刺さり、

それを確認した二人が振り下ろされた腕を足場にまたサイクロプスの頭目掛けて

一気に走り出して行く!そしてマサツグと宗玄がもう少しでサイクロプスの頭に

到達すると行った所で、サイクロプスは学習をしたのか残ったもう一方の腕で

詰めて来るマサツグと宗玄を振り払おうとする!


__ッ!?…グオオオアアアアァァァ!!!!…ブォン!!!…


「ッ!…まっず!!…」


「任されよ!!…」


__バッ!!…


「ハアアァァ!!!…渾身撃!!!」


振り払おうとしてくるサイクロプスの腕にマサツグと宗玄が気付くと、マサツグが

その迫って来る腕に慌て始めるのだが、宗玄が任せるようマサツグに声を掛けると

突如その迫って来る手に向かって踏み込み、大きく飛び出して行く!そして空中

ながらに正拳突きの構えを見せてはその迫って来る腕に向かい勢い良く正拳突きを

繰り出し、迫って来る腕に当てると見事に腕を弾き飛ばして見せる!…しかし…


__バキイィィィ!!……ッ!?…ダン!!ダン!!ダァン!!!…ググググ!!…


「すげぇ!?…って、宗玄!?…」


「行けぇ!!!…拙僧の事は構うな!!!…追撃を!!…」


「ッ!!…了解!!!…」


宗玄がサイクロプスの腕を弾き飛ばすとその正拳突きにはノックバックの威力が

有ったのか、腕は勢い良く反対側に吹き飛ばされてはそのままサイクロプスを

後ろへ仰け反らせるよう回り込み、大きく体勢を崩させる。だがサイクロプスも

そのまま倒れる訳には行かないと踏ん張り、何とか倒れずに済ませるのだが

正拳突きを撃った宗玄はと言うとそのままサイクロプスの足元に向かって落下して

行く。思わずマサツグが足を止めその様子に感心すると同時に宗玄の心配を

するのだが、宗玄は落下しながらもマサツグに追撃を放つ様に言ってはそのまま

地面に叩き付けられてしまう。その様子を最後まで確認した訳では無いマサツグで

あったが何となく察すると宗玄に返事をしてはサイクロプスの首元まで移動し、

一撃目同様にサイクロプスの顎目掛けて思いっきり振り被るとバットを振る要領で

剣をフルスイングする!


「はぁ!…はぁ!…ふぅ…

気分はぁ~♪…四番バッタ~♪ってか!?

オラアァ!!!…歯ぁ食い縛れぇぇ!!!」


__フォン!!!…バキィィィ!!!!……ッ!?!?!?!?…グラァ!!…


マサツグが思いっきり本日二回目のホームランを打ち上げるとサイクロプスの頭は

最初の時とは違い左斜め上に思いっきり跳ね上がり、そして意識も刈り取る事に

成功したのか数秒間のスタンも同時に与える事に成功する!そして先ほどの様に

耐える事の出来ないサイクロプスはそのまま後ろに倒れ始めるのだが、そこには

既に宗玄が待っていたと言わんばかりに右手に折れた薙刀を持って、左手で

片合掌をして念仏を唱えていた。


「南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏…

これより行いますは魔を滅する浄化の一技!…

拙僧が出来まする唯一無二の大技にて!…

あの魔を見事!…散らせて見せましょう!!!…」


__ゴゴゴゴゴ!!!……チャキッ!!…


「……魔滅!…驟雨しゅうう突き!!!

いぃやあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!…」


__ズドドドドドドドドドドド!!!!…グオオオアアアァァァ!!!…


宗玄が念仏を唱えて次に意味深な言葉を口にし始めると、右手に持っている

折れた薙刀をスッと短く持っては腰を深く落とし、突きの構えを見せる。その際

左手は片合掌のままで保持し倒れて来るサイクロプスの背中に狙いを付け続け、

丁度宗玄の間合いに倒れて来るサイクロプスが入って来ると次の瞬間、宗玄の

糸目がカッと見開いてはとんでもない勢いで突きの連打が飛び始める!宗玄が

掛け声と共に突きの猛襲をサイクロプスの背中目掛けて放ち始めては驚く事に、

あまりの技の威力に宗玄の足元に軽いクレーターが出来ると同時にその宗玄の

突きだけで倒れ掛けていたサイクロプスの巨体が徐々に起き上がる!そして遂には

直立にまで持って行くと技の繰り出すのに限界が来たのか宗玄の手から折れた

薙刀が落ち、最後の止めはマサツグに任せたと息を切らしながら叫ぶ!


__ズドドドドド!!……カランカランッ!……


「グッ!!!…ウゥ!!…やはり完全でない故持たぬか!!…

ッ!!…マサツグ殿!!!…最後は頼みましたぞ!!!!…」


「…ははは……最後って…もう虫の息じゃん!……

…とは言えこのまま放置する訳にも行かないし!…」


__チャキッ!!!…


「ここまでお膳立てして貰って倒せませんでしたじゃ格好が悪いし!!…

…いっちょ!…やりますか!!!」


宗玄がマサツグに最後の一撃を求めるのだが既にサイクロプスは意識を失っている

のか棒立ち状態、風に煽られてかフラフラと体を揺らしアンバランスな状態で立って

居るのだが、その様子を見てもう倒した様なモノなのじゃないのかとマサツグが

疑問を感じる。しかしサイクロプスは今だその場に立ち尽くしてはその姿を光りに

消さずに鎮座し、まだHPが残って居る事を理解するとマサツグが徐に剣を

構え始める。最後の最後で出番が回って来た事にマサツグが戸惑うもここまでやって

貰ったのなら倒さねばと意気込み、軽く走り始めると全神経を集中させる!


「…ふぅ~!!……」


__タッ…タッ…タッタッタッタタタタタタタ…


「……ッ!!!…行くぞ!!!

うおおおおおあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


__バシュンッ!!!…


「ッ!?…な、あれは!?…」


マサツグが走り始め徐々に加速し勢いを付けると剣を下段に構えてダッシュ斬りを

敢行する!マサツグが真っ直ぐにサイクロプスを見詰め叫んでは絶対にこれで

終わらせる!と意気込み、更に走る速度が上がった瞬間!…

宗玄の目からはマサツグが全身に風を纏って居る様に見え、その風を剣に纏わせ、

ただのトライアルソードが一本の鋭い刃の付いた別物剣に見えて来る!それを目に

した宗玄が本能的に危ないと感じると、思う様に動かない体に鞭を撃っては急いで

サイクロプスから離れ始め、そしてマサツグがその剣を手にサイクロプスへ向かって

走って行っては勢い良く下から斬り上げ、サイクロプスに斬り掛かる!


「うおおおおぉぉぉぉぉらい!!!!」


__ゴオオオォォォォ!!!…ズバァァン!!!!……


「………。」


__…overkill!……グラァ!……ズズゥゥゥンン!!!!…


マサツグが掛け声と共に完全に無抵抗のサイクロプスに斬り掛かると、その剣は

他の風を巻き込む様に轟音を立てては縦に真っ直ぐ刃が入り、そしてマサツグが

完全に剣を振り終えて数秒経つと後から追って来る様に突風がいきなり吹き荒ぶ!

まるで居合斬りをした様子に剣を振ったマサツグに宗玄が驚き、何も言わずに

その場で膝を着き固まっていると、同じ様にマサツグが剣を振り終えた状態で

固まる。そして次に変化が有ったとするならマサツグの目の前でoverkillの表示が

現れ、斬られたサイクロプスが縦に真っ二つに裂けて後ろに倒れ始め、その二つに

分断された巨体が地面に倒れると大きな地鳴りが起きては静かに風が吹き流れる。

そしてそんな駆け出しの冒険者に出来る筈も無い芸当をやったマサツグに宗玄が

動揺を隠せないで呆然としていると恐る恐るマサツグに声を掛ける。


「ま…マサツグ殿?…」


「……い…」


「…?……い?…」


「……ッ!!…ぃよっしゃああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


宗玄が恐る恐るマサツグに声を掛け、マサツグが剣を振り上げた状態で固まって

いるとマサツグがフルフルと小刻みに震え始めては聞き取り辛い声で何かを囁く。

その何かを言って居る事に宗玄が気付き、若干の不安を覚えつつもマサツグの

言葉で唯一聞き取れた一言を復唱しマサツグを見詰めていると、マサツグがいきなり

バッ!と動き出してはその場でガッツポーズを取り始める。周りに響く勢いで

叫んで渾身のガッツポーズを決め、その様子に宗玄が思わずポカ~ンと気を

取られていると、サイクロプスは無事に光に包まれてアイテムをドロップ…

姿を消して行くのであった。

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