全能で楽しく公爵家!!

山椒

文字の大きさ
11 / 120
全能の爆誕

011:全能の片鱗。

しおりを挟む
「ここだ。今はルーシーがいる時間か」
「ルーシーお姉ちゃんが?」

 そういえばこの家に来ている魔法の先生を見たことがなかったな。

 お父上様でもお母上様でも公爵家にふさわしい実力は持っているが、それ以上の先生だとパスカルから聞いた。

「失礼するよ」

 お父上様に続いて魔導室に入ると、机に向かって手を出して苦戦している表情を浮かべているルーシー姉さんが座っておりその前には一人の女性がいた。

 紫色の髪が腰まであり、今までに見たことがないほどのプロポーションでボンキュッボンなナイスボディで艶かしい女性だった。

「あら、アルノさま。どうされましたか?」
「あれ、アーサーじゃない」

 俺が来たことにいち早く魔法の先生が反応して、続いてルーシー姉さんが顔を上げる。

「突然すまないね。少しアーサーの魔力量と魔法適正を見てもらいたい」
「アーサーさまは四歳になられたばかりでは?」
「少し早いがアーサーにも鍛練をつけてほしい」
「それはまたどうしてですか?」
「アーサーのためだ。そのためには時間が惜しい」
「そうですか……」

 魔法の先生はお父上様の隣にいた俺に視線を合わせるようにしゃがんだ。

「お初にお目にかかります、アーサーさま。私は七聖法が一人、グリーテン・ルフェイと申します。以後お見知りおきを」
「うん、よろしくね!」

 ていうか七聖法? 七聖剣と七聖法が一人ずついるんだな、ここ。

 うん? 何だかルフェイがジッとこちらを見てきたかと思ったら、じりじりと寄ってくる。

 引き下がるという選択肢はあったが、めっちゃ美人な女性に寄られて悪い気はしないから俺もルフェイの目をジッと見る。

「……いい」
「えっ?」

 その〝いい〟はどっちのいいだ。良い方のいいなのか、悪い方のいいなのか⁉

「さいっっっっこう!」
「んっ⁉」

 ルフェイのお胸とお胸に俺の頭がサンドされてルフェイに包み込まれたぁ⁉

 いや最高だけれども、急にされたら驚いてしまう。それにどういうわけで俺は最高の心地を味わっているんだ?

「アルノさま、この子を私にください!」
「何を言っている、ダメに決まっているだろ」
「もうこの子は最高ですよ! とてつもない数の才能、とてつもない質の才能、これだけのものを持って生まれるのは過去現在未来においていないと言ってもいいほどです! もうアヴァロンに連れて帰りたいくらいです!」

 アヴァロン、話には聞いたことがあるな。

 神秘が満ち足りている場所で天国のような楽園だと。それが本当にあるのかは分からないと聞いた気がする。

 このルフェイはアヴァロンの出身なのか? ていうか俺のことほぼバレてね?

「アルノさまどうですか? アーサーさまをアヴァロンのリンゴと交換しませんか?」
「アーサーはものではない。どうしても連れていきたいのなら、アーサーが成人してから誘うことだ」
「……そうですね。それくらいの時間は待ちましょう」
「それよりも、アーサーはそれくらい才に愛されているのか?」
「それはもちろん。アヴァロンの九姉妹である私が保障しましょう」
「……そうか、それは何よりだ」

 何だかホッとしているお父上様の声だが、未だにルフェイのお胸さまに挟まれて視界が真っ暗なんだが。

 この真っ暗な空間は柔らかくていい匂いで、とても幸せな空間ですね。だけど周りが見えないのはあれだから周りが見えるようにした。

「ちょっとグリーテン! アーサーを放しなさいよ!」

 弟大好きなルーシー姉さんとこの状況を許すわけがなく、ルフェイから俺を引き剥がそうと動くが、ルフェイは立ち上がってひらりと避ける。

 ルフェイが立ちあがったから、俺の足はぷらーんとなって密着しているから余計にルフェイの体の柔らかさを感じてしまう。

「ルーシーさまはいつもアーサーさまと一緒なのですからこれくらい許してくださいよ」
「それとこれとは関係ないわよ! いいから放しなさいよ! 私がアーサーを抱きしめるわ!」

 あー、引っ張られるぅ。

 ルーシー姉さんから俺を取られまいとルフェイが少し力を入れて抱きしめているからマジでここがアヴァロンじゃん。

 それはお父上様が止めるまで続き、ようやく本題に入ることになった。

「この水晶に手を置けば魔力保有量と魔法適性が分かるようになっています」

 椅子に座っている俺の目の前に置かれたのは俺の頭くらいある大きな水晶だった。

 ちなみに今は隣にルーシー姉さんが陣取っていて、正面に水晶を置いたルフェイ、お父上様はルフェイの横に立っている。

「どうぞ手を」
「うん」

 ルフェイに促されて水晶に手を置く。

 俺の全能の性質上、ここで何か誤魔化そうとしても俺自身の能力を変えることはできない。

 何よりルフェイにすでにバレている様子だから何もしない、というか何もすることができない。

「これで、いいの……?」


 俺が手を置いてもうんともすんとも言わないからルフェイに問いかけた。

「もしかしてと思ったけど、この水晶でもダメなのね……。心配しないでください、これはアーサーさまの才をこの水晶では測れないだけですから」
「えっ、これって測定範囲がSランクの水晶でしょ?」
「それだけアーサーの力が大きいということだね」

 ふむ、この魔道具のことを俺だけが知らされていないようだ。

「ではアーサーさま、私と手を合わせてもらえますか?」
「こう?」
「はい、大丈夫です」

 ルフェイと手のひらを合わせ、ルフェイは指を絡めてきたから、俺も絡めて手を繋ぐ。

 ルーシー姉さんがその手をジッと見ているが、スルーすることが一番いいと思ってスルーした。

「ちょっと体が怠い感じがするかもしれませんが、我慢してください」
「うん」

 何をするのかと思えば、俺の魔力がルフェイに吸い取られていた。

 俺の意思で止められることはできるし、何なら俺が吸い取ることも可能だが、今は吸われ続けよう。

「平気ですか?」
「平気だよ」
「これでも?」
「平気だよ」
「……ふぅ」

 吸われ続けている俺が平気でも、延々と魔力を吸い取っているルフェイの方は大丈夫ではなさそうだ。

「んふっ……んっ……アーサーさま、すごい……」

 ほんのりと顔を赤らめて色っぽい声を出しているルフェイ。

 何だかいけないことをしているようでたまりませんね。

「ぐ、グリーテン? 何してるの……?」
「グリーテン? 大丈夫か?」

 ルーシー姉さんは引いており、お父上様は少し引きながら心配していた。

 ただ普通に考えれば急にこんな状況になっていればエロくても分からないという感情がまず最初に来るだろう。

「ごめんなさい、もう少しだけこのままで……んっ」

 どんどんと魔力を吸い取っているルフェイだが、これくらいで俺の魔力の底が見えるわけがないからルフェイの色っぽい顔をジッと見て待つことにした。

「アーサーさまはぁ……平気、ですかぁ……?」
「僕は平気だよ。ルフェイは……大丈夫そうじゃないけど……」
「ちょっと……アーサーさまのがすごくて、体がビックリしているだけですぅ……アーサーさまのが私の中でいっぱいになってぇ……たまりませんっ……」

 この人、絶対にわざとこう言っているだろ。四歳にそういうことをしても、しかも保護者の前でそれをする度胸、図太さを称賛せざるを得ない。

「グリーテン、やめろ」
「えぇ? どうしてですか?」
「それ以上するのなら金輪際アーサーには近づかせないよ」
「それはイヤですからやめておきますね。はい、終わりましたよアーサーさま。ありがとうございます」

 お父上様から注意されたルフェイは色っぽい態度をやめて俺の手を放した。

「アーサー怖かったわよね。こんなババアに手を繋がれて色っぽい声を出しているとか地獄だったのは分かるわよ」
「誰がババアですか~?」
「いったぁ!?」

 横から抱き着きながらもルフェイから俺を守ろうとしているルーシー姉さんはルフェイにゲンコツされていた。

「それで? 何をしていたんだい?」

 ルーシー姉さんが痛みに耐えながらもルフェイを牽制している中、お父上様が話を切り出した。

「魔力と魔法適性を測っていました」
「あれで?」
「あれはアーサーさまの魔力を限界まで吸い取り。そこから魔力の質から魔法適性を測ろうとしていました」
「結果は?」
「そうですね……先ほど吸い取ったのが、数値で表すのならば大体三千くらいです」
「三千⁉」

 驚きの声を上げたのはルーシー姉さんだった。

 数値化した魔力がどれほどの物か、聞いておくべきだろう。

「三千って、すごいの?」
「すごいってものじゃないわよ! そんな数値聞いたことがないわ!」
「そうなの?」
「今の私が300くらいなんだからその十倍って異常よ」
「僕は950。平均くらいだね」
「私は1800くらいですから、三千という数値はとてつもなくすごいことです。それにその三千という量を吸ってもなお、アーサーさまは疲れた素振りを見せていないということは、三千すらも軽く上回っていることになります」
「へぇ……そうなんだね……」

 誰もが俺に視線を向けているから少しむずかゆくなる。

「魔法適性の結果ですが、すべて適性アリです。しかもすべての適性において、過去見たことがないくらいに一つ一つの適性が高いです。ランク付けするのなら……いえ、ランク付けできませんね。七聖法の私の適性を百倍しても足りないくらいですね」

 ……あの魔神、普通にやり過ぎだろ。

 ルフェイの言葉を整理するなら、測定不能の魔力、ランク付けできない魔法適性ということになるな。アホだろ。

 ルーシー姉さんは俺にいいところを見せたいお姉ちゃんだが、俺が凄いとなってもさすがは私の弟みたいな感じで褒め殺してきた。

 その中でお父上様が何やら考えているのが少し不気味に感じたけど。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...