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全能の爆誕
028:摸擬戦。前編
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昨日、夕食が終わってから大人たちは晩酌やらお話やらでそれぞれ起きていたみたいだが、子供たちは子供たちで部屋が別々でもメッセージアプリで夜遅くまでやり取りをしていた。
一番盛り上がっていた話はやっぱり『叛逆の英雄』だったな。
こういう時、世界で一番有名な話は盛り上がりやすくて助かるな。しかも俺はそれを正確に知っているのだから、一番詳しくてどんな話題でも対応できた。
俺は特に大丈夫だが、ルーシー姉さんとノエルさんを寝かしつけるのに困った。
何とかメッセージアプリを途中で止めさせて朝になり、お父上様から動きやすい服装にして外の訓練所に来るように言われた。
それは俺だけではなく、朝食の時にランスロット家とサグラモール家の子供たち全員に言われた。
お客さんがいる時にやらなくてもいいのに。それにお客さんにもやらせるとか、さすがはブリテン王国の貴族たちだ。
俺の部屋に二人で来たシルヴィー姉さんとルーシー姉さんに連れられて外の訓練所に向かうと、すでにお父上様とエリオットさんがおり、クレアさんとノエルさんも動きやすい服装でいた。
少し離れた場所にはお母上様とゾーイさんが仲良く喋っていた。
「全員揃ったね。それじゃあこれからランスロット家とサグラモール家の合同模擬戦を行う」
えぇ~、そんなことしなくていいじゃん、お父上様。お客さんがいるときくらいお客さんに領地の案内とか積もる話とかすればいいのに。
だが、俺以外の四人はとてもやる気のある顔をしているし、ここで一番やる気を出さないといけないのはランスロット家の跡取りである俺だ。
でもパスカルならともかく、子供たちだったら下手したら大ケガさせてしまう可能性だって出てくるわけだからな……そこら辺の加減を覚えるとか考えればいいか。
ランスロット家の現時点で判明している強さは、強い順にお父上様、パスカル、お母上様、俺、シルヴィー姉さん、ルーシー姉さんとなっている。
ノエルさんは分からないが、この中で一番強いのは俺になる。
「はーい! 私はアーサーくんとやりたいでーす!」
そこで一番最初に手をあげて俺を指名してきたのはノエルさんだった。
「これから摸擬戦について説明するから少し待て」
エリオットさんがノエルさんを制して、お父上様が説明を始める。
「これから総当たり制で模擬戦をやっていくよ」
総当たりって、十試合行うってことか? いやいやいや、それはさすがにやりすぎでしょ、せめて姉弟と姉妹はやらなくていいようにしてくれません?
「第一試合はノエルとアーサー。第二試合はシルヴィーとクレア。第三試合はルーシーとアーサー。第四試合はシルヴィーとノエル。第五試合はルーシーとクレア。第六試合はシルヴィーとアーサー。第七試合はノエルとルーシー。第八試合はノエルとクレア。第九試合はシルヴィーとルーシー。第十試合はクレアとアーサーだ」
マジかよ、最初からノエルさんと相手だし、最後はクレアさんと相手だ。姉妹丼か。いやこの表現はあまりにも下品だからやめよ。
というか総当たりだからシルヴィー姉さんとルーシー姉さんとも戦うのか。姉さんたちと初めて戦うんじゃないのか?
「魔法の使用は許可するけど、危険だと判断すれば即座に俺とエリオットが止めに入るよ」
えー、模擬戦なんだから魔法の使用を禁止にしとかないと危なくないですか?
「はい! 一番になった人にご褒美はないんですか?」
突然ノエルさんが手をあげてお父上様にそう聞いた。
「ご褒美か、やる気につながるのならいいか。……何か案がいる人はいるかな?」
「はい! アーサーくんがいいです!」
「アーサーと一ヶ月二人きりの生活がしたいわ!」
「私は特に」
「僕もないかな……」
お父上様の言葉にノエルさんとルーシー姉さんは俺を選んできた。クレアさんと俺は特に望んでいないという、これが上の子と下の子の違いか。
なおシルヴィー姉さんはすごく悩んでいらっしゃる。俺が視線を向けなければシルヴィー姉さんは俺を見れるわけで、俺を凝視している。
「それなら僕が叶えられる願いをひとつ叶えるということにしよう」
うんうん、それならお父上様でも俺に言うことを聞かせられなかったと言えるな。それにしてもノエルさんは本当にすごいな。アウェイでもここまで自身を押し出せるとは。
「ノエルとアーサーの試合を始めるよ」
「よろしくね、アーサーくん!」
「うん!」
元気よく返事をしたが、正直マジでやりたくない。
サグラモール家のご令嬢に傷をつけたらどうしようかということだけしか考えていないけど……いや、ノエルさんならもしかしたら。
「準備はいいかな?」
「私は大丈夫です!」
「僕も大丈夫!」
第一試合は俺とノエルさんの試合。他の人は離れた場所に移動してこちらを見ている。
相手は十一歳だろ? そんなもん普通に考えれば勝てるわけがないが、俺の実力は普通ではないしお父上様に手を抜いているとバレてしまう。
これがまだお父上様やパスカルなら手加減とか気にしなくていいのだがな。
「始めッ!」
始めの合図がお父上様から言われても、俺とノエルさんは動かなかった。
攻めなら手加減が超難しいから受けなら手加減なしでもうまくできるからノエルさんから来るのを待つが、ノエルさんは初手で攻めてこなかった。
「ねぇ、アーサーくん」
「どうしました?」
模擬戦を始めずに話しかけてきたノエルさん。
「手加減とかしなくていいよ」
「何ですかいきなり」
「とぼけなくていいのに。だってアーサーくんは私と同じにおいがするから」
最初から変なことを言う人だなとは思ったが、俺の力の全貌を理解していないけどその一端を瞬時に理解するくらいには、ノエルさんは異端なのだろう。
「たぶんだけど、私以上の力を持ってるよね? 昨日はアーサーくんのことを太陽って言ったけど、前言撤回。太陽じゃなくてそれさえも包み込んでいる空。あなたのことを見極めさせて」
空っていうか宇宙のことか? それまた随分と俺のことを評価してくれているんだな。
ノエルさんが子供とは思えない速度でこちらに向かって鋭い剣で攻撃してくるが、完璧に受け流していく。
ここで変に立ち回ってしまえば、パスカルの鍛錬が増えそうだ。少し遠くから数人の騎士団と一緒に見ているんだから下手なことはできない。
「すごい! クレアならすぐにやられるのに!」
「あんまり僕の婚約者をいじめないでください……!」
「それならアーサーくんが犠牲になるしかないね!」
嬉々として俺に攻撃してくるノエルさんを見て、クレアさんが本当にかわいそうになってきた。
こんなのと一緒に住んでるとかマジでしんどそう。欠陥全能である俺なら普通に対処できるが。
ノエルさんが何十、何百と攻撃して、俺はその攻撃をすべて受け流してしのぐ。
まさかここまで実力があるとは思わなかった。シルヴィー姉さんよりも強いんじゃないのか?
「すごいね! もうこんなに戦えて、面白いものが作れるなんて、アーサーくんは最高だよ!」
ノエルさんは戦闘狂ではないのだろう。でも俺という異端を認識したことで、同じ異端として楽しくなってきたのだろう。
こういう人なら、グリーテンと同じように何かをする時でも信用できるかもしれないな。
「アーサーくんなら大丈夫だと思うから、本気出すね」
笑みを浮かべたノエルさんは全身から炎を噴き出し、こちらに熱が伝わってくる。
「おいノエル! アーサーくんを殺す気か!?」
炎をまとっているノエルさんに厳しい声をあげるエリオットさんだが、ノエルさんは止まる気はないらしい。
「お父さま、止めないでください。私は、アーサーくんを知りたいのです」
「知りたいって……!」
「エリオット、僕も少し見てみたいから、本当に危なくなったら止めよ」
ノエルさんの言葉に困惑するエリオットさんだが、お父上様が止める気はないようだった。
お父上様に見せた、パスカルと一緒に鍛錬した俺の実力なら、この程度なら大丈夫だという認識なのだろう。実際、今見せている俺の実力なら余裕だ。
「じゃ、行くね」
「どうぞ」
生き生きとしているノエルさんに、好き勝手しやがってという気持ちは失せた。今までつまらなさそうにしていたのだろうと感じた。
炎が来たとしても、完璧に炎を斬るのが俺の全能であり、俺の全能の欠点。
俺が一番全能を出してしまう状況というのは俺の身に危険が及んでしまう時で、それは俺が認識していても認識していなくても勝手に全能が発揮される。
今回は受けだからあまり実力を抑えなくていいからいいか。
「炎龍!」
ノエルさんの全身から出ていた炎が木剣に集中して、剣を俺に向けて振り下ろすと炎の龍が俺を食らおうと迫ってきていた。
かなりの熱量を秘めているのがわかるし、普通にこれを食らえば普通なら死ぬ。でも俺が食らっても絶対的な熱耐性を持ってしまっているから死ぬことはない。
それでもそれを見せることはなく、剣を両手であげて眼前まで迫ってきている炎の龍に向けて振り下ろす。
「はっ!」
炎の龍は俺の剣で真っ二つになり、消し飛んだ。
次に何かしかけてくるかと思ってノエルさんの方を見るが、特に仕掛けてくることはなく頬を赤らませているノエルさん。
「ふふっ」
たったそれだけの笑いだけで、俺に対しての執着が俺に押し寄せてきてきた。
見つからないと思っていたものが、見つかってしまった、そんな感じだ。全く、そういう脳筋なことは勘弁してほしいんだが。俺は家でゴロゴロしたいと思っている人なんだから。
「いいね、アーサーくん」
十一歳が出せるとは思えない色気のある声で俺の名を呼んだことに少し恐怖を覚えてしまった。
「降参します」
次に何かしてくると思ったが、ノエルさんは呆気なく降参宣言をした。そのことに身構えていたお父上様とエリオットさんが拍子抜けな表情をする。
「そ、そうか、ノエルがそう言うのならそれでいいんだが……」
「第一試合勝者、アーサー」
エリオットさんは困惑しており、お父上様が俺の勝利宣言をしてくれた。
一番盛り上がっていた話はやっぱり『叛逆の英雄』だったな。
こういう時、世界で一番有名な話は盛り上がりやすくて助かるな。しかも俺はそれを正確に知っているのだから、一番詳しくてどんな話題でも対応できた。
俺は特に大丈夫だが、ルーシー姉さんとノエルさんを寝かしつけるのに困った。
何とかメッセージアプリを途中で止めさせて朝になり、お父上様から動きやすい服装にして外の訓練所に来るように言われた。
それは俺だけではなく、朝食の時にランスロット家とサグラモール家の子供たち全員に言われた。
お客さんがいる時にやらなくてもいいのに。それにお客さんにもやらせるとか、さすがはブリテン王国の貴族たちだ。
俺の部屋に二人で来たシルヴィー姉さんとルーシー姉さんに連れられて外の訓練所に向かうと、すでにお父上様とエリオットさんがおり、クレアさんとノエルさんも動きやすい服装でいた。
少し離れた場所にはお母上様とゾーイさんが仲良く喋っていた。
「全員揃ったね。それじゃあこれからランスロット家とサグラモール家の合同模擬戦を行う」
えぇ~、そんなことしなくていいじゃん、お父上様。お客さんがいるときくらいお客さんに領地の案内とか積もる話とかすればいいのに。
だが、俺以外の四人はとてもやる気のある顔をしているし、ここで一番やる気を出さないといけないのはランスロット家の跡取りである俺だ。
でもパスカルならともかく、子供たちだったら下手したら大ケガさせてしまう可能性だって出てくるわけだからな……そこら辺の加減を覚えるとか考えればいいか。
ランスロット家の現時点で判明している強さは、強い順にお父上様、パスカル、お母上様、俺、シルヴィー姉さん、ルーシー姉さんとなっている。
ノエルさんは分からないが、この中で一番強いのは俺になる。
「はーい! 私はアーサーくんとやりたいでーす!」
そこで一番最初に手をあげて俺を指名してきたのはノエルさんだった。
「これから摸擬戦について説明するから少し待て」
エリオットさんがノエルさんを制して、お父上様が説明を始める。
「これから総当たり制で模擬戦をやっていくよ」
総当たりって、十試合行うってことか? いやいやいや、それはさすがにやりすぎでしょ、せめて姉弟と姉妹はやらなくていいようにしてくれません?
「第一試合はノエルとアーサー。第二試合はシルヴィーとクレア。第三試合はルーシーとアーサー。第四試合はシルヴィーとノエル。第五試合はルーシーとクレア。第六試合はシルヴィーとアーサー。第七試合はノエルとルーシー。第八試合はノエルとクレア。第九試合はシルヴィーとルーシー。第十試合はクレアとアーサーだ」
マジかよ、最初からノエルさんと相手だし、最後はクレアさんと相手だ。姉妹丼か。いやこの表現はあまりにも下品だからやめよ。
というか総当たりだからシルヴィー姉さんとルーシー姉さんとも戦うのか。姉さんたちと初めて戦うんじゃないのか?
「魔法の使用は許可するけど、危険だと判断すれば即座に俺とエリオットが止めに入るよ」
えー、模擬戦なんだから魔法の使用を禁止にしとかないと危なくないですか?
「はい! 一番になった人にご褒美はないんですか?」
突然ノエルさんが手をあげてお父上様にそう聞いた。
「ご褒美か、やる気につながるのならいいか。……何か案がいる人はいるかな?」
「はい! アーサーくんがいいです!」
「アーサーと一ヶ月二人きりの生活がしたいわ!」
「私は特に」
「僕もないかな……」
お父上様の言葉にノエルさんとルーシー姉さんは俺を選んできた。クレアさんと俺は特に望んでいないという、これが上の子と下の子の違いか。
なおシルヴィー姉さんはすごく悩んでいらっしゃる。俺が視線を向けなければシルヴィー姉さんは俺を見れるわけで、俺を凝視している。
「それなら僕が叶えられる願いをひとつ叶えるということにしよう」
うんうん、それならお父上様でも俺に言うことを聞かせられなかったと言えるな。それにしてもノエルさんは本当にすごいな。アウェイでもここまで自身を押し出せるとは。
「ノエルとアーサーの試合を始めるよ」
「よろしくね、アーサーくん!」
「うん!」
元気よく返事をしたが、正直マジでやりたくない。
サグラモール家のご令嬢に傷をつけたらどうしようかということだけしか考えていないけど……いや、ノエルさんならもしかしたら。
「準備はいいかな?」
「私は大丈夫です!」
「僕も大丈夫!」
第一試合は俺とノエルさんの試合。他の人は離れた場所に移動してこちらを見ている。
相手は十一歳だろ? そんなもん普通に考えれば勝てるわけがないが、俺の実力は普通ではないしお父上様に手を抜いているとバレてしまう。
これがまだお父上様やパスカルなら手加減とか気にしなくていいのだがな。
「始めッ!」
始めの合図がお父上様から言われても、俺とノエルさんは動かなかった。
攻めなら手加減が超難しいから受けなら手加減なしでもうまくできるからノエルさんから来るのを待つが、ノエルさんは初手で攻めてこなかった。
「ねぇ、アーサーくん」
「どうしました?」
模擬戦を始めずに話しかけてきたノエルさん。
「手加減とかしなくていいよ」
「何ですかいきなり」
「とぼけなくていいのに。だってアーサーくんは私と同じにおいがするから」
最初から変なことを言う人だなとは思ったが、俺の力の全貌を理解していないけどその一端を瞬時に理解するくらいには、ノエルさんは異端なのだろう。
「たぶんだけど、私以上の力を持ってるよね? 昨日はアーサーくんのことを太陽って言ったけど、前言撤回。太陽じゃなくてそれさえも包み込んでいる空。あなたのことを見極めさせて」
空っていうか宇宙のことか? それまた随分と俺のことを評価してくれているんだな。
ノエルさんが子供とは思えない速度でこちらに向かって鋭い剣で攻撃してくるが、完璧に受け流していく。
ここで変に立ち回ってしまえば、パスカルの鍛錬が増えそうだ。少し遠くから数人の騎士団と一緒に見ているんだから下手なことはできない。
「すごい! クレアならすぐにやられるのに!」
「あんまり僕の婚約者をいじめないでください……!」
「それならアーサーくんが犠牲になるしかないね!」
嬉々として俺に攻撃してくるノエルさんを見て、クレアさんが本当にかわいそうになってきた。
こんなのと一緒に住んでるとかマジでしんどそう。欠陥全能である俺なら普通に対処できるが。
ノエルさんが何十、何百と攻撃して、俺はその攻撃をすべて受け流してしのぐ。
まさかここまで実力があるとは思わなかった。シルヴィー姉さんよりも強いんじゃないのか?
「すごいね! もうこんなに戦えて、面白いものが作れるなんて、アーサーくんは最高だよ!」
ノエルさんは戦闘狂ではないのだろう。でも俺という異端を認識したことで、同じ異端として楽しくなってきたのだろう。
こういう人なら、グリーテンと同じように何かをする時でも信用できるかもしれないな。
「アーサーくんなら大丈夫だと思うから、本気出すね」
笑みを浮かべたノエルさんは全身から炎を噴き出し、こちらに熱が伝わってくる。
「おいノエル! アーサーくんを殺す気か!?」
炎をまとっているノエルさんに厳しい声をあげるエリオットさんだが、ノエルさんは止まる気はないらしい。
「お父さま、止めないでください。私は、アーサーくんを知りたいのです」
「知りたいって……!」
「エリオット、僕も少し見てみたいから、本当に危なくなったら止めよ」
ノエルさんの言葉に困惑するエリオットさんだが、お父上様が止める気はないようだった。
お父上様に見せた、パスカルと一緒に鍛錬した俺の実力なら、この程度なら大丈夫だという認識なのだろう。実際、今見せている俺の実力なら余裕だ。
「じゃ、行くね」
「どうぞ」
生き生きとしているノエルさんに、好き勝手しやがってという気持ちは失せた。今までつまらなさそうにしていたのだろうと感じた。
炎が来たとしても、完璧に炎を斬るのが俺の全能であり、俺の全能の欠点。
俺が一番全能を出してしまう状況というのは俺の身に危険が及んでしまう時で、それは俺が認識していても認識していなくても勝手に全能が発揮される。
今回は受けだからあまり実力を抑えなくていいからいいか。
「炎龍!」
ノエルさんの全身から出ていた炎が木剣に集中して、剣を俺に向けて振り下ろすと炎の龍が俺を食らおうと迫ってきていた。
かなりの熱量を秘めているのがわかるし、普通にこれを食らえば普通なら死ぬ。でも俺が食らっても絶対的な熱耐性を持ってしまっているから死ぬことはない。
それでもそれを見せることはなく、剣を両手であげて眼前まで迫ってきている炎の龍に向けて振り下ろす。
「はっ!」
炎の龍は俺の剣で真っ二つになり、消し飛んだ。
次に何かしかけてくるかと思ってノエルさんの方を見るが、特に仕掛けてくることはなく頬を赤らませているノエルさん。
「ふふっ」
たったそれだけの笑いだけで、俺に対しての執着が俺に押し寄せてきてきた。
見つからないと思っていたものが、見つかってしまった、そんな感じだ。全く、そういう脳筋なことは勘弁してほしいんだが。俺は家でゴロゴロしたいと思っている人なんだから。
「いいね、アーサーくん」
十一歳が出せるとは思えない色気のある声で俺の名を呼んだことに少し恐怖を覚えてしまった。
「降参します」
次に何かしてくると思ったが、ノエルさんは呆気なく降参宣言をした。そのことに身構えていたお父上様とエリオットさんが拍子抜けな表情をする。
「そ、そうか、ノエルがそう言うのならそれでいいんだが……」
「第一試合勝者、アーサー」
エリオットさんは困惑しており、お父上様が俺の勝利宣言をしてくれた。
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