29 / 120
全能の爆誕
029:摸擬戦。中編
しおりを挟む
次はシルヴィー姉さんとクレアさんの第二試合で、俺とノエルさんはシルヴィー姉さんとクレアさんと交替した。
「アーサー、すごかった」
交替する際にシルヴィー姉さんからそのお言葉をもらったが、独り言のような感じだった。
だってそうじゃないと俺に話しかけるなんてできないのだから。それはそれで進歩なのかは分からないが、進歩だと思っておこう。
「アーサーすごかった! あんなに強かったのね! お父さんやパスカルから強いとは聞いていたけど、戦っているところを見たことがなかったから初めて知ったわ」
「そうかな」
「私に勝ったんだからもっと自信を持ったら?」
「あんたは自信を持ち過ぎなのよ! もっと謙虚にしてなさいよ」
「強い人の特権だよね~」
こういうことをサラっと言っているからシルヴィー姉さんとルーシー姉さんにウザがられているのだろうな。でも仲がいい模様。
「アーサーって四歳なのにあんなに強いなんてすごいわね! 天才よ!」
「あ、ありがとう……」
ルーシー姉さんからすごい称賛を受けて少し照れてしまった。
「それにアーサーは魔力も魔法適正もすごいからとんでもないわね!」
「……ルーシーお姉ちゃん、もうやめて、恥ずかしいから」
「これくらいは誉め慣れとかないとやっていけないわよ?」
「ルーシーお姉ちゃんは誉め慣れているの?」
「まあ、私は社交界デビューしているからそれなりには慣れてるわよ」
あー、俺ってそういえば公爵家だったな。社交界デビューもあるとか、嫌だなぁ。
そうこう話しているうちにシルヴィー姉さんとクレアさんの試合が始まった。
クレアさんがシルヴィー姉さんに攻撃を仕掛けるが、それをシルヴィー姉さんは完璧に受けてみせた。
「あー、シルヴィーが相手だから仕方がないか」
「私でも勝てないんだから勝てるわけないわよ」
クレアさんがシルヴィー姉さんに勝てないことは本人がわかっているだろう。それでも諦めないその姿勢が美しいと感じてしまうのは、彼女の婚約者だからだろうか。
「ノエルさん、クレアさんは固有魔法を持っているのですか?」
さっきからクレアさんは魔法で身体能力を向上させているようだが、それ以外の魔法が見られなかった。だからノエルさんに聞いてみた。
「持ってる。でもクレアは固有魔法をそんなに鍛えてないから使わないわよ」
「そうですか……」
あの感じから見て、たぶんクレアさんは器用貧乏的な感じか? それにシルヴィー姉さんは普通に強いから、シルヴィー姉さんの余裕は崩せないでいた。
クレアさんが少し息が上がってきたところで。シルヴィー姉さんがクレアさんの木剣を弾き飛ばしてクレアさんの首元に木剣を近づけた。
「第二試合勝者、シルヴィー」
当たり前の結末だと思うが、それでも悔しそうにしているクレアさんはきっとこれからも努力するだろう。
「アーサー、次は私たちね」
「もう僕の番なんだね……」
ルーシー姉さんに言われてルーシー姉さんと一緒にシルヴィー姉さんとクレアさんと交替する。
その時にクレアさんに一言声をかける。
「クレアさん、良かったですよ」
「……どこも、よくありません」
「そうですか? クレアさんの諦めない姿勢、僕はとても素敵だと思いました」
俺の言葉にクレアさんはプイッと俺から顔を背けてノエルさんがいる場所に戻っていく。それをルーシー姉さんからジト目で見られていたことは気にしないようにする。
「アーサーって、クレアちゃんにあんなこと言うのね。婚約者だから?」
「る、ルーシーお姉ちゃん……?」
「いつもは四歳みたいに無邪気なことを言っているのに、アーサーがあんなこと言うなんて聞いたことなかったわよ」
うん? もしかしてルーシー姉さんは俺の新たな一面を自身以外に見せているから拗ねているのか?
そんなまさかぁ~。俺とルーシー姉さんは姉弟だし、いつかはお互いに家庭を持つことになるんだからそんなことで拗ねるわけがないだろ。
「いいわ、アーサーに勝ってアーサーの初めてをすべてもらうわ!」
「えっ?」
何でここに来て優しい姉がこんな感じになったんだ!? ていうか普通に聞いたらエロイ感じに聞こえてしまうが、ルーシー姉さんにその意図はないだろう。
「二人とも、何だか変なことになっているけど、準備は良さそうだね」
「いいわ、いつでも始めて」
「えっ、僕は別に大丈夫では……」
「第三試合、始めッ!」
俺の心の準備が整わないまま模擬戦が始まってしまった。
ルーシー姉さんは合図と共に、木剣を放り投げてルーシー姉さんの固有魔法である『創剣』で金色の剣を手に持ち、背後に複数の金色の剣を宙に浮かせながら創剣した。
「アーサー! 行くわよ!」
「あー、うん、どうぞいつでも」
これがルーシー姉さんの固有魔法かと感心しているとルーシー姉さんが浮いている剣を三本射出してきた。
それを強化した木剣ですべて打ち落とすと、今度は五本になって迫ってきていた。しかも続いてルーシー姉さんが向かってきている。
五本目の剣を打ち落とした次の瞬間、すでにルーシー姉さんが今にも俺に攻撃を仕掛けようとしていた。
そうなることは分かっていたから後ろに飛んでかわそうとする。
「甘いわよ!」
でもルーシー姉さんもそれを見越していたかのように手に持っていた剣を伸ばして俺を斬りつけようとする。
「そんなこともできるんだ」
これはかなり強い固有魔法だ。剣のリーチを変えれるのは相手の虚をつくことができる。
だがありがたいことに俺の全能はオートガード機能がついているから、虚を突こうとしても素早く剣を動かしてルーシー姉さんの剣を受け止める。
「ッ!? まだまだ!」
俺が剣を受け止めたことに驚きはしたが、攻撃の手を休めずに今度は上から五本の剣を落としてきた。
それもアクロバティックな動きで受け流したり打ち落として無傷で乗り越えた。
「ふふっ、これで倒したと思ったのに、やるわね」
「ルーシーお姉ちゃんもえげつないことをしてくるね」
「それを全部打ち落としたアーサーに言われたくないわよ! 次よ!」
俺から離れることなく今度は創剣の攻撃や援護なしに向かってくるルーシー姉さん。
さっきまでの小細工なしでも十分に強いが、それでもノエルさんよりも少し劣っていると言ったところだ。
「受けてばかりでいるつもり!?」
「お姉ちゃんが激しいからだよ……!」
「どこでそんないやらしい言葉を覚えたのよ!」
「えー……」
別にいやらしく言ったつもりはないのだが。
それにしても、本当にどうしよう。どうやって決着をつけようか。
別にこのまま一時間だろうが十時間だろうが俺は続けられる。でもルーシー姉さんはそうはいかないから姉さんの体力切れを狙うのが一番良さそうなんだが……このままだと一時間は軽く粘ってきそうだ。
創剣を使ってくれるのなら魔力切れがあるのだが、その手はもう使ってくれなさそうだ。
「やめっ!」
悩んでいても完璧に攻撃を受け流しているところでお父上様から中止の合図が入ったことで、俺とルーシー姉さんは止まった。
「どうして止めるのよお父さん!」
「これ以上時間をかけさせるわけにはいかない。勝者はアーサーだ」
「それこそどうしてよ! アーサーは受けてばかりだったじゃない!」
「ルーシー。自身とアーサーの状態をよく見てみるといい」
お父上様から言われてルーシー姉さんは俺の方を見る。
おそらくお父上様が言いたいのは、どちらが余裕があるかということなのだろう。もちろん息を切らさず汗一つ流していない俺の方が余裕があるだろう。
今回は下手に演技をして怪しまれるといかないと思って疲れている演技をしていなかった結果、俺の勝利となった。
「うっ……く、悔しいッ!」
「ま、まあ判定負けだからそこまで悔しがる必要はないよ……」
「弟に負けて悔しいのよ! もう一回するわよ!」
「そこは……また今度しようね」
悔しがるルーシー姉さんと戻り、今度はシルヴィー姉さんとノエルさんが入れ替わりで向かう。
「お疲れさまです、アーサーさま」
「ありがとう、ベラ」
ベラから水を貰って水分補給を行いつつ、チラッとルーシー姉さんの方を見る。
「うがぁ! 悔しい!」
「まだ言ってんすか? 何度も気にしたら負けっすよ」
「姉は弟よりも強くないといけないのよ!」
「へー」
ジャンヌから水を貰ってむしゃくしゃしながらがぶ飲みしているルーシー姉さんを他所に、クレアさんと並んでシルヴィー姉さんとノエルさんの試合を見る。
「クレアさんはどちらが勝つと思いますか?」
「……前に聞いた話だと、お姉さまはシルヴィーさまとルーシーさまに勝っているようですよ」
「へぇ、お姉ちゃんたちに」
俺が戦った感じ、それは本当だろうな。ノエルさんの強さは俺と比較すれば台無しになるが、異端であることは間違いない。
「第四試合、始めッ!」
お父上様の合図でシルヴィー姉さんは白銀の鎧を全身に身に纏い、ノエルさんは全身から炎を噴き出させている。
さっきの俺とルーシー姉さんみたいな構図になりそうだと思ったが、そうはならずにシルヴィー姉さんがノエルさんに殴りかかりに行く。
それにノエルさんが炎をシルヴィー姉さんに放出するが、シルヴィー姉さんはそれをものともせずにノエルさんの近くに来た。
相性的にはシルヴィー姉さんの方が有利な気がするが、あの鎧は熱耐性を持っているのか?
シルヴィー姉さんはノエルさんに殴りかかるが、ノエルさんは紙一重で避けて炎を放出するが、どうにもあの鎧は何か仕掛けがあるようだ。
「その鎧、水魔法が組み合わされているのね」
「元々纏創鎧剣はただ鎧と剣を作り出すものじゃなく、得意魔法と組み合わせることで攻撃力や防御力を飛躍的に上げるもの。私の得意魔法は水、相性はいい」
「なるほどねぇ、確かに炎は効きづらそうだね」
ということはルーシー姉さんは炎魔法を創剣に組み合わせることができるのか。
「今日は、勝つ!」
「うーん、それじゃあその上からねじ伏せる炎を出しちゃお」
いつにもなく声を上げるシルヴィー姉さんに、ノエルさんは先ほどの炎とは比べ物にならないくらいの火力の炎を全身から勢いよく出した。
「きゃっ!」
熱風や炎がこちらにまで来てクレアさんが危なかったから魔法障壁で防いだ。
「大丈夫ですか?」
「は、はい、大丈夫です。ありがとうございます」
こちらよりも近くにいたお父上様とエリオットさんは難なく無事だが、すでに二人は一歩踏み出していた。
「それまでだ」
「これ以上の戦いは試合ではない」
シルヴィー姉さんの前にお父上様、ノエルさんの前にエリオットさんが立ったことで試合は強制的に中断させられた。
「えぇ~、これからなのに~」
「まだやれる」
「ダメだ。この試合は引き分けで終わりだ」
どうして中断させられるようなことをするのだろうかと俺は思ってしまった。普通に危ないだろうに。
「アーサー、すごかった」
交替する際にシルヴィー姉さんからそのお言葉をもらったが、独り言のような感じだった。
だってそうじゃないと俺に話しかけるなんてできないのだから。それはそれで進歩なのかは分からないが、進歩だと思っておこう。
「アーサーすごかった! あんなに強かったのね! お父さんやパスカルから強いとは聞いていたけど、戦っているところを見たことがなかったから初めて知ったわ」
「そうかな」
「私に勝ったんだからもっと自信を持ったら?」
「あんたは自信を持ち過ぎなのよ! もっと謙虚にしてなさいよ」
「強い人の特権だよね~」
こういうことをサラっと言っているからシルヴィー姉さんとルーシー姉さんにウザがられているのだろうな。でも仲がいい模様。
「アーサーって四歳なのにあんなに強いなんてすごいわね! 天才よ!」
「あ、ありがとう……」
ルーシー姉さんからすごい称賛を受けて少し照れてしまった。
「それにアーサーは魔力も魔法適正もすごいからとんでもないわね!」
「……ルーシーお姉ちゃん、もうやめて、恥ずかしいから」
「これくらいは誉め慣れとかないとやっていけないわよ?」
「ルーシーお姉ちゃんは誉め慣れているの?」
「まあ、私は社交界デビューしているからそれなりには慣れてるわよ」
あー、俺ってそういえば公爵家だったな。社交界デビューもあるとか、嫌だなぁ。
そうこう話しているうちにシルヴィー姉さんとクレアさんの試合が始まった。
クレアさんがシルヴィー姉さんに攻撃を仕掛けるが、それをシルヴィー姉さんは完璧に受けてみせた。
「あー、シルヴィーが相手だから仕方がないか」
「私でも勝てないんだから勝てるわけないわよ」
クレアさんがシルヴィー姉さんに勝てないことは本人がわかっているだろう。それでも諦めないその姿勢が美しいと感じてしまうのは、彼女の婚約者だからだろうか。
「ノエルさん、クレアさんは固有魔法を持っているのですか?」
さっきからクレアさんは魔法で身体能力を向上させているようだが、それ以外の魔法が見られなかった。だからノエルさんに聞いてみた。
「持ってる。でもクレアは固有魔法をそんなに鍛えてないから使わないわよ」
「そうですか……」
あの感じから見て、たぶんクレアさんは器用貧乏的な感じか? それにシルヴィー姉さんは普通に強いから、シルヴィー姉さんの余裕は崩せないでいた。
クレアさんが少し息が上がってきたところで。シルヴィー姉さんがクレアさんの木剣を弾き飛ばしてクレアさんの首元に木剣を近づけた。
「第二試合勝者、シルヴィー」
当たり前の結末だと思うが、それでも悔しそうにしているクレアさんはきっとこれからも努力するだろう。
「アーサー、次は私たちね」
「もう僕の番なんだね……」
ルーシー姉さんに言われてルーシー姉さんと一緒にシルヴィー姉さんとクレアさんと交替する。
その時にクレアさんに一言声をかける。
「クレアさん、良かったですよ」
「……どこも、よくありません」
「そうですか? クレアさんの諦めない姿勢、僕はとても素敵だと思いました」
俺の言葉にクレアさんはプイッと俺から顔を背けてノエルさんがいる場所に戻っていく。それをルーシー姉さんからジト目で見られていたことは気にしないようにする。
「アーサーって、クレアちゃんにあんなこと言うのね。婚約者だから?」
「る、ルーシーお姉ちゃん……?」
「いつもは四歳みたいに無邪気なことを言っているのに、アーサーがあんなこと言うなんて聞いたことなかったわよ」
うん? もしかしてルーシー姉さんは俺の新たな一面を自身以外に見せているから拗ねているのか?
そんなまさかぁ~。俺とルーシー姉さんは姉弟だし、いつかはお互いに家庭を持つことになるんだからそんなことで拗ねるわけがないだろ。
「いいわ、アーサーに勝ってアーサーの初めてをすべてもらうわ!」
「えっ?」
何でここに来て優しい姉がこんな感じになったんだ!? ていうか普通に聞いたらエロイ感じに聞こえてしまうが、ルーシー姉さんにその意図はないだろう。
「二人とも、何だか変なことになっているけど、準備は良さそうだね」
「いいわ、いつでも始めて」
「えっ、僕は別に大丈夫では……」
「第三試合、始めッ!」
俺の心の準備が整わないまま模擬戦が始まってしまった。
ルーシー姉さんは合図と共に、木剣を放り投げてルーシー姉さんの固有魔法である『創剣』で金色の剣を手に持ち、背後に複数の金色の剣を宙に浮かせながら創剣した。
「アーサー! 行くわよ!」
「あー、うん、どうぞいつでも」
これがルーシー姉さんの固有魔法かと感心しているとルーシー姉さんが浮いている剣を三本射出してきた。
それを強化した木剣ですべて打ち落とすと、今度は五本になって迫ってきていた。しかも続いてルーシー姉さんが向かってきている。
五本目の剣を打ち落とした次の瞬間、すでにルーシー姉さんが今にも俺に攻撃を仕掛けようとしていた。
そうなることは分かっていたから後ろに飛んでかわそうとする。
「甘いわよ!」
でもルーシー姉さんもそれを見越していたかのように手に持っていた剣を伸ばして俺を斬りつけようとする。
「そんなこともできるんだ」
これはかなり強い固有魔法だ。剣のリーチを変えれるのは相手の虚をつくことができる。
だがありがたいことに俺の全能はオートガード機能がついているから、虚を突こうとしても素早く剣を動かしてルーシー姉さんの剣を受け止める。
「ッ!? まだまだ!」
俺が剣を受け止めたことに驚きはしたが、攻撃の手を休めずに今度は上から五本の剣を落としてきた。
それもアクロバティックな動きで受け流したり打ち落として無傷で乗り越えた。
「ふふっ、これで倒したと思ったのに、やるわね」
「ルーシーお姉ちゃんもえげつないことをしてくるね」
「それを全部打ち落としたアーサーに言われたくないわよ! 次よ!」
俺から離れることなく今度は創剣の攻撃や援護なしに向かってくるルーシー姉さん。
さっきまでの小細工なしでも十分に強いが、それでもノエルさんよりも少し劣っていると言ったところだ。
「受けてばかりでいるつもり!?」
「お姉ちゃんが激しいからだよ……!」
「どこでそんないやらしい言葉を覚えたのよ!」
「えー……」
別にいやらしく言ったつもりはないのだが。
それにしても、本当にどうしよう。どうやって決着をつけようか。
別にこのまま一時間だろうが十時間だろうが俺は続けられる。でもルーシー姉さんはそうはいかないから姉さんの体力切れを狙うのが一番良さそうなんだが……このままだと一時間は軽く粘ってきそうだ。
創剣を使ってくれるのなら魔力切れがあるのだが、その手はもう使ってくれなさそうだ。
「やめっ!」
悩んでいても完璧に攻撃を受け流しているところでお父上様から中止の合図が入ったことで、俺とルーシー姉さんは止まった。
「どうして止めるのよお父さん!」
「これ以上時間をかけさせるわけにはいかない。勝者はアーサーだ」
「それこそどうしてよ! アーサーは受けてばかりだったじゃない!」
「ルーシー。自身とアーサーの状態をよく見てみるといい」
お父上様から言われてルーシー姉さんは俺の方を見る。
おそらくお父上様が言いたいのは、どちらが余裕があるかということなのだろう。もちろん息を切らさず汗一つ流していない俺の方が余裕があるだろう。
今回は下手に演技をして怪しまれるといかないと思って疲れている演技をしていなかった結果、俺の勝利となった。
「うっ……く、悔しいッ!」
「ま、まあ判定負けだからそこまで悔しがる必要はないよ……」
「弟に負けて悔しいのよ! もう一回するわよ!」
「そこは……また今度しようね」
悔しがるルーシー姉さんと戻り、今度はシルヴィー姉さんとノエルさんが入れ替わりで向かう。
「お疲れさまです、アーサーさま」
「ありがとう、ベラ」
ベラから水を貰って水分補給を行いつつ、チラッとルーシー姉さんの方を見る。
「うがぁ! 悔しい!」
「まだ言ってんすか? 何度も気にしたら負けっすよ」
「姉は弟よりも強くないといけないのよ!」
「へー」
ジャンヌから水を貰ってむしゃくしゃしながらがぶ飲みしているルーシー姉さんを他所に、クレアさんと並んでシルヴィー姉さんとノエルさんの試合を見る。
「クレアさんはどちらが勝つと思いますか?」
「……前に聞いた話だと、お姉さまはシルヴィーさまとルーシーさまに勝っているようですよ」
「へぇ、お姉ちゃんたちに」
俺が戦った感じ、それは本当だろうな。ノエルさんの強さは俺と比較すれば台無しになるが、異端であることは間違いない。
「第四試合、始めッ!」
お父上様の合図でシルヴィー姉さんは白銀の鎧を全身に身に纏い、ノエルさんは全身から炎を噴き出させている。
さっきの俺とルーシー姉さんみたいな構図になりそうだと思ったが、そうはならずにシルヴィー姉さんがノエルさんに殴りかかりに行く。
それにノエルさんが炎をシルヴィー姉さんに放出するが、シルヴィー姉さんはそれをものともせずにノエルさんの近くに来た。
相性的にはシルヴィー姉さんの方が有利な気がするが、あの鎧は熱耐性を持っているのか?
シルヴィー姉さんはノエルさんに殴りかかるが、ノエルさんは紙一重で避けて炎を放出するが、どうにもあの鎧は何か仕掛けがあるようだ。
「その鎧、水魔法が組み合わされているのね」
「元々纏創鎧剣はただ鎧と剣を作り出すものじゃなく、得意魔法と組み合わせることで攻撃力や防御力を飛躍的に上げるもの。私の得意魔法は水、相性はいい」
「なるほどねぇ、確かに炎は効きづらそうだね」
ということはルーシー姉さんは炎魔法を創剣に組み合わせることができるのか。
「今日は、勝つ!」
「うーん、それじゃあその上からねじ伏せる炎を出しちゃお」
いつにもなく声を上げるシルヴィー姉さんに、ノエルさんは先ほどの炎とは比べ物にならないくらいの火力の炎を全身から勢いよく出した。
「きゃっ!」
熱風や炎がこちらにまで来てクレアさんが危なかったから魔法障壁で防いだ。
「大丈夫ですか?」
「は、はい、大丈夫です。ありがとうございます」
こちらよりも近くにいたお父上様とエリオットさんは難なく無事だが、すでに二人は一歩踏み出していた。
「それまでだ」
「これ以上の戦いは試合ではない」
シルヴィー姉さんの前にお父上様、ノエルさんの前にエリオットさんが立ったことで試合は強制的に中断させられた。
「えぇ~、これからなのに~」
「まだやれる」
「ダメだ。この試合は引き分けで終わりだ」
どうして中断させられるようなことをするのだろうかと俺は思ってしまった。普通に危ないだろうに。
131
あなたにおすすめの小説
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる