全能で楽しく公爵家!!

山椒

文字の大きさ
65 / 120
王都でも渦中

065:豪運なディンドランさん。

しおりを挟む
「メイドを全裸にして遊んでいるとはどういうことだ!? そんな性根の腐った男だったのか!? 昨日は見直したというのに、こんなことをするとは見損なったぞ!」
「そういうことではないですよ!」

 ディンドランさんが詰め寄ってくるのだが、あながち間違ってはいないのがあれだな。

「ベラ~? もしかして邪魔をしたかしら~?」
「やましいことをしていたわけではありません。アーサーさまとゲームをしていただけです」
「ゲーム~?」

 瞬息でメイド服を着直したベラの言葉を聞いて首をかしげるお母上様。

「あら~? これはぁ、何かしら~……?」

 お母上様はテーブルの上に置いてあるトランプカードとチップを見てから俺の方を見た。

 俺が作ったことはお母上様の中では確定なのだろう。それは当たっているし今までのことを考えたら当然だけど。

「ディンドランさん、僕はゲームをしていたんですよ」
「ゲームでメイドを全裸にするのか!?」
「全裸になったのは成り行きというか……ベラの弱さが原因と言うか」
「うっ……」

 すべてを説明したらベラがおバカであることは公開されてしまう。

「アーサー、これの説明をしてくれる~?」
「うん、分かった」

 それは少し可哀想だから、お母上様にトランプとブラックジャックについて説明する。

「へぇ~、面白そうねぇ」
「よくこんなことを考えられるものだ」
「物は試しだから、全員でやってみる? 僕がディーラーをするね」
「いいわね~! やりましょ~」

 面白そうなものをお母上様が見逃すわけもなく、俺がディーラーのお母上様とベラとディンドランさんがプレイヤーでブラックジャックをすることになった。

 俺がカードを二枚ずつ配り、俺の手の一枚はアップカードになっているAで、一枚はホールカードの状態で置かれているわけだが。

「おっ、これは一番強いんじゃないのか?」
「そうですね。ブラックジャックですね」

 初手でディンドランさんがAとクイーンでナチュラルブラックジャックになっていた。

「あら~、ディンドランちゃんは強いのね~」
「……すごいですね」

 10と4のお母上様はいつもの感じで驚いていて、キングとクイーンのベラは少しだけ羨んだ様子をディンドランさんを見ていた。

「あまり嬉しくはないな。こんなことで強くても何も感じない」

 うわっ、それはベラを煽っているんですか? いつもと変わらない感じがするが、分かる人ならすっごい目でディンドランさんを見ているベラだと分かる。

「じゃあ次はお母さんだね。どうする? 引く?」
「う~ん……引くわぁ」
「はいどうぞ」
「5ね~。これでスタンドするわ~」

 19になれば普通はスタンドする。

「ベラはどうする? スタンドするよね?」
「いえ、ヒットします」

 ベラの発言にお母上様もディンドランさんも困惑した表情でベラを見ていた。

 ベラの手は20で、19でもスタンドするのにヒットを要求してくるベラ。

 これがベラの意味が分からない点だ。いや、別に百%失敗するわけではないけど、20なら失敗する確率の方が高いのは分かることだ。

「べ、ベラ~? あなたはぁ、20よ~……?」
「はい、Aを引けばいいだけの話です」
「そうねぇ……」

 確固たる意志を持つベラにお母上様はすぐに引いた。

 そしてベラがカードを引くとジャック。30になった。

「バストだね」
「……そうですね」

 本当に行けると思っていたけど行けなかったみたいな顔をしているが、その根拠が本当に分からない。

「じゃあ次はディーラーの僕の番」

 ホールカードを開くと、Aであった。つまりは20。

「ディンドランさんは元々勝ちで、お母さんとは引き分け、ベラは負け。こういうゲームだよ、分かった?」
「分かったわぁ。もう一回してみたいわね~」
「いいけど……ディンドランさんはいいんですか?」
「こういうゲームをしたことはなかったからな。少しは気分転換にはなる」

 ディンドランさんも少なからず乗り気のようだ。

「どうせだからこうしようか。チップを今から百枚渡すから、チップを稼いだ分だけ僕から何か豪華賞品が贈られる。僕にできる範囲なら何でもいいよ」
「それならぁ、私がお願いしていたことをしてもらってもいいかしら~?」
「お父さんに内緒で?」
「そうよ~」

 直近でお母上様にお願いされていたことはスマホを大量に作ること。

 まあお母上様なら何とかしてくれるだろう。でもお父上様は周りの大人、お母上様とグリーテンとは全く意見が合っていないような気がするなぁ。

「いいよ」
「アーサーさま、よろしいのですか?」
「お母さんも考えなしじゃないんだからいいと思ってるよ」
「……はい」

 ベラもそこは納得してくれたようだ。

「ディンドランさんも僕にできることがあればしますよ?」
「それならばアーサーと鍛錬をする権利だな。ここに来た理由はそれだからな」

 あぁ、やっぱりそう言う理由で来たのかディンドランさん。

「分かりました。で……一応ベラも聞いとくよ」
「何ですかその負けるのは当たり前みたいな言葉は」
「ベラはどうせ勝てないよ」
「先ほど最後の一回は勝てました。勝てたチップの分だけ一日を頂きます」
「うん、分かったよ」

 カジノとか作ったら普通に儲けられると思うんだよなぁ。

 まあそれで貧乏人がいっぱい出てきたみたいなことにならないように、産業革命は起こしておきたい。

 カジノで人生が終わらないようにはしたいからな。カジノは一番金がかかる娯楽だから後回しだ。

「カードを配ります」

 百枚のチップを三人に配り終え、ゲームをスタートさせた。

 ☆

 数十回のゲームを終わらせた結果。

「……また、できませんでした」

 全戦全敗で持ち金ゼロのベラはまさに幸運の女神に見放されている。ベラの考え方、運がすべて噛み合ってベラをギャンブルの全敗の女に変えた。

 負けようとしているのではないかと錯覚してしまうのだが、それは違うのだろうな。

「まあまあね~」

 さすがはお母上様と言ったところで、負けるところもあったけれど勝ちがかなり多かった。

 お母上様の戦い方が普通で、かなり頭が切れる人の戦い方をしていたところを見ると、お母上様はこんな雰囲気をしながらやっぱりやるなと感じた。

「な、何だかすごく多くなった……!」

 そしてベラとは対照的に全戦全勝を見せてくれたディンドランさんの手持ちはチップが大量にあった。

 これはもう凄まじいとしか言いようがない。

「ディンドランさん、ギャンブルの才能がありますよ」
「ぎゃんぶる? 何だそれは?」
「こういう賭け事のことですよ」
「そうなのか? あまりよく分からず勝ったからな……」

 ディンドランさんは何も考えずにやったのにもかかわらず、すべてのゲームにおいてブラックジャックを出している。

 ナチュラルブラックジャックの時はあったし、そうじゃなくても三枚目ではブラックジャックになるような数字だった。

 しかもそれを数十回とやってすべて出しているのだから、これを才能と言わずして何と言うのだろうか。

 幸運だけを見れば、ギネヴィアさまを超えている。まあ本人はそれを持っていたとしても嬉しそうではないのだが。

 ただ一人だけ、その才能を羨んでいる人はいるけどね。

「……はぁ」

 小さなため息をこぼすベラに、何と声をかけたらいいのか分からない。

 まあ、それ以外は完璧なんだし、プラスの方が強いだろ。こうして賭け事をしていなければマイナスを知らなくてよかったけどね。

「ベラって、僕に会えたことで幸運を使い果たしたのかな?」

 ベラの近くに行ってそう問いかけてみる。

「……そう考えれば、何だか気にならなくなりました」
「そう? それなら良かった!」

 そんなことで幸運を使い果たしていたら他のみんなはどうなるんだって思うのだが、ベラが納得しているのなら良かった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!

月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、 花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。 姻族全員大騒ぎとなった

処理中です...