74 / 120
王都でも渦中
074:会見前日。
しおりを挟む
宿に戻るとカーラとベラが迎えてくれ、ベラの隣では疲れた表情をしているメルシエさんがいた。
「おかえりなさいませ、アルノさま、スザンヌさま、アーサーさま」
「お疲れさまです、ランスロット家のみなさま」
ベラがそう言いながらお辞儀してカーラも同じくお辞儀した。お疲れとこちらが言いたいくらいになっているメルシエさんが口を開く。
「お待たせしてしまいました、メルシエさん」
「いえいえ、カーラさんとベラさんにおもてなしされていたので全然平気ですよ」
社交界用の服から着替えるために俺たちは宿の中に戻って通常時の服に着替えた。
この宿には貴族のために用意された応接間があり、先に着替えを終えた俺が応接間に入るとメルシエさんがすでに入って紅茶を飲んでいた。
「アーサーさま、飲みますか?」
「いただきます」
メルシエさんに紅茶をいれてもらい、メルシエさんが自身の隣に紅茶を置いたことで俺はメルシエさんの隣に座った。
「ありがとうございます」
「いえいえ、これくらいはさせてください! とは言え、ベラさんみたいに美味しい紅茶はいれれないですけどね!」
いや、疲れた顔をしているメルシエさんに言われても。
「かなり美味しいですよ」
「ベラさんよりですか?」
「それはさすがに比べる相手が違い過ぎますよ」
「ははっ、そうですね。ベラさんは格別ですよね」
メルシエさんとたわいない会話をしていると、ピッタリとくっ付いてきたメルシエさん。
「どうしましたか?」
「いやぁ……ちょっと甘えたくなったかなぁ……なんて」
「いいですよ。でも僕とメルシエさんだと体の大きさが――」
「あの、メルシエじゃなくて、名前で呼んでくれま、せんか……?」
いつもは元気路線なメルシエさんが、可愛い路線で攻めてきたことに驚きながらも、頷いて口を開く。
「はい、イザベルさんと呼びますね」
「はい! ありがとうございます!」
感極まったのか、イザベルさんは俺に抱き着いてきた。五歳時だからすっぽりとイザベルさんの体に収まってしまうのは悲しいな……。
「この姿勢、辛くないですか?」
「いえいえ、これくらい全然平気です!」
「そうですか……あっ、どうせですから明日使う、僕が言っていた魔道具で変身しましょうか? それなら甘えられると思いますよ?」
ただイザベルさんが子供に甘えたいとかショタ好きだった場合、その提案はむしろ悪いと言える。
「ぜひお願いします! 僕、それを見てみたかったんですよ!」
「ヒルがお望みですか? それとも大人の僕がお望みですか?」
ヒルであろうと大人の俺であろうと、あまり大して変わらないが、ヒルだと面影があっても似てても完全に俺だと認識できないのが『狭間の指輪』だ。
「で、では、大人のアーサーさまで」
「了解です」
すぐに大人の俺と言ってきたイザベルさんは俺から放れてくれた。
そして『狭間の指輪』を作り出して俺がこのまま大人になった姿、二十歳くらいに変身した。
「どうですか? 俺の姿は?」
二十歳くらいだから自称を『俺』に変えてイザベルさんに問いかけた。
そんな俺の姿を見たイザベルさんは俺を見たまま固まり、数秒ほど待っても動かなかった。
「イザベルさん?」
イザベルさんの前に立って手を軽く降って再度問いかけてみる。
「……好き」
「えっ……?」
「アーサーさま、僕と結婚してください」
真面目な顔で俺にプロポーズしてくるイザベルさんに戸惑ってしまう。どう答えようかと悩んでいるところでイザベルさんが俺を押し倒してきた。
「イザベルさん!?」
「もう我慢できません! 五歳のアーサーさまも素敵ですが、今のアーサーさまももっと素敵です! その姿なら僕と結婚しても問題ないですよね!?」
「いや、少し落ち着いてください」
「いいえ僕は落ち着いています! 今まででいい人がいなかったのはきっとアーサーさまと出会うためだったんです!」
「いや、落ち着いてないと思いますよ?」
俺を押し倒してきて俺の服を剥ぎ取ろうとしているイザベルさんの手を優しく止めながらどうしようかと考えているところで、応接間の扉が開いた。
俺とイザベルさんがそちらに視線を向けると、お父上様とお母上様、ベラとカーラがそこにいた。
「あらあら~」
「……何をしておられるのですか?」
「こういうことは応接間でするべきではないかと」
お母上様は俺たちの方を見てニヤニヤとしており、ベラは冷たい視線を向けて、カーラは淡々と口を開くだけだった。
「アーサー? 説明てくれるかな?」
いや、この状況はどう見てもイザベルさんに聞くべき状況だろうよお父上様。
「おかえりなさいませ、アルノさま、スザンヌさま、アーサーさま」
「お疲れさまです、ランスロット家のみなさま」
ベラがそう言いながらお辞儀してカーラも同じくお辞儀した。お疲れとこちらが言いたいくらいになっているメルシエさんが口を開く。
「お待たせしてしまいました、メルシエさん」
「いえいえ、カーラさんとベラさんにおもてなしされていたので全然平気ですよ」
社交界用の服から着替えるために俺たちは宿の中に戻って通常時の服に着替えた。
この宿には貴族のために用意された応接間があり、先に着替えを終えた俺が応接間に入るとメルシエさんがすでに入って紅茶を飲んでいた。
「アーサーさま、飲みますか?」
「いただきます」
メルシエさんに紅茶をいれてもらい、メルシエさんが自身の隣に紅茶を置いたことで俺はメルシエさんの隣に座った。
「ありがとうございます」
「いえいえ、これくらいはさせてください! とは言え、ベラさんみたいに美味しい紅茶はいれれないですけどね!」
いや、疲れた顔をしているメルシエさんに言われても。
「かなり美味しいですよ」
「ベラさんよりですか?」
「それはさすがに比べる相手が違い過ぎますよ」
「ははっ、そうですね。ベラさんは格別ですよね」
メルシエさんとたわいない会話をしていると、ピッタリとくっ付いてきたメルシエさん。
「どうしましたか?」
「いやぁ……ちょっと甘えたくなったかなぁ……なんて」
「いいですよ。でも僕とメルシエさんだと体の大きさが――」
「あの、メルシエじゃなくて、名前で呼んでくれま、せんか……?」
いつもは元気路線なメルシエさんが、可愛い路線で攻めてきたことに驚きながらも、頷いて口を開く。
「はい、イザベルさんと呼びますね」
「はい! ありがとうございます!」
感極まったのか、イザベルさんは俺に抱き着いてきた。五歳時だからすっぽりとイザベルさんの体に収まってしまうのは悲しいな……。
「この姿勢、辛くないですか?」
「いえいえ、これくらい全然平気です!」
「そうですか……あっ、どうせですから明日使う、僕が言っていた魔道具で変身しましょうか? それなら甘えられると思いますよ?」
ただイザベルさんが子供に甘えたいとかショタ好きだった場合、その提案はむしろ悪いと言える。
「ぜひお願いします! 僕、それを見てみたかったんですよ!」
「ヒルがお望みですか? それとも大人の僕がお望みですか?」
ヒルであろうと大人の俺であろうと、あまり大して変わらないが、ヒルだと面影があっても似てても完全に俺だと認識できないのが『狭間の指輪』だ。
「で、では、大人のアーサーさまで」
「了解です」
すぐに大人の俺と言ってきたイザベルさんは俺から放れてくれた。
そして『狭間の指輪』を作り出して俺がこのまま大人になった姿、二十歳くらいに変身した。
「どうですか? 俺の姿は?」
二十歳くらいだから自称を『俺』に変えてイザベルさんに問いかけた。
そんな俺の姿を見たイザベルさんは俺を見たまま固まり、数秒ほど待っても動かなかった。
「イザベルさん?」
イザベルさんの前に立って手を軽く降って再度問いかけてみる。
「……好き」
「えっ……?」
「アーサーさま、僕と結婚してください」
真面目な顔で俺にプロポーズしてくるイザベルさんに戸惑ってしまう。どう答えようかと悩んでいるところでイザベルさんが俺を押し倒してきた。
「イザベルさん!?」
「もう我慢できません! 五歳のアーサーさまも素敵ですが、今のアーサーさまももっと素敵です! その姿なら僕と結婚しても問題ないですよね!?」
「いや、少し落ち着いてください」
「いいえ僕は落ち着いています! 今まででいい人がいなかったのはきっとアーサーさまと出会うためだったんです!」
「いや、落ち着いてないと思いますよ?」
俺を押し倒してきて俺の服を剥ぎ取ろうとしているイザベルさんの手を優しく止めながらどうしようかと考えているところで、応接間の扉が開いた。
俺とイザベルさんがそちらに視線を向けると、お父上様とお母上様、ベラとカーラがそこにいた。
「あらあら~」
「……何をしておられるのですか?」
「こういうことは応接間でするべきではないかと」
お母上様は俺たちの方を見てニヤニヤとしており、ベラは冷たい視線を向けて、カーラは淡々と口を開くだけだった。
「アーサー? 説明てくれるかな?」
いや、この状況はどう見てもイザベルさんに聞くべき状況だろうよお父上様。
133
あなたにおすすめの小説
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる