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第二ミッション
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アナスタシアさんたちが待つ屋敷の前には最初に神猿で連れ出したメイドさんが待っていた。
黒髪をショートカットにしたメガネをかけた真面目そうなメイドさんだった。
「お疲れ様です。こちらでお嬢様がお待ちです」
「はいって言いたいところなんですけど、村で捕まっていた人たちはどこにいるんですか?」
「御用ですか?」
「エイミーさんにしたように傷を治す約束をしていたんです。アナスタシアさんもそうですけど落ち着けそうなので治療がしたいです」
あれから濃厚な時間を過ごしてはいてあまり時間は経っていないがそれでも彼女たちの怪我を早めに治したいとは思っていた。
「なぜそこまでなさるのですか? お嬢様や他の女性の方々とは先ほど出会ったばかりのはずです」
「人助けをすることがそんなにおかしなことですか?」
こういうメイドさんは自己主張しないタイプな感じだったがそうではないらしい。
「そんな綺麗事で世の中は回っていません。何か裏があると思うのが普通かと。なのでお聞きしました」
まあそうかもしれない。だがそんな普通の枠組みに俺を入れないでほしい。
「俺は好きなんですよ、完全勝利が」
「完全勝利、ですか」
「はい。ですからやれることをすべてやって、気持ちよく事を終わらせる。そのために行動しているにすぎません。今回で言えばアナスタシアさんたちを助け、傷を治して初めて完全勝利なんですよ」
勝利というものは気持ちいいものだ。負けは好きではない。
誰だって勝ちは好きだし負けは嫌いだろう。だから俺はやるべきことをやっているに過ぎない。
まあ、前回の世界で俺と星宮さんしかこの世界に行けなかったのが完全勝利ではないと突っ込まれるかもしれない。
だがあくまでそれは彼らの選択。俺の完全勝利と彼らの完全勝利は全くの別物だからな。
「――理解しました。お引止めして申し訳ございませんでした」
「いえ、聞いてもらえてよかったですよ」
聞かれずにモヤモヤとされる方が面倒だからな。
「アナスタシア様含め、皆さまは広間でお待ちです。こちらへどうぞ」
メイドさんに案内されて広間へと向かえばアナスタシアさんのお父さんとお母さん以外の全員が揃っていた。
「ご苦労、よく働いたわ」
「これくらいは朝飯前ですよ」
この人たちがいるということは俺がやることも分かっているのだろうな。
「さ、早く私たちを治しなさい」
アナスタシアさんがそう言えば全員がボロボロになっている服を脱ぎ始めた。
まあどうせ着替えるだろうから今脱いで治した方がいいのか。それにしてもこれだけの全裸の女体が部屋にあるのは圧巻だな……まあ痛々しい傷ばかりだから早く治して極楽の光景に変えてしまおう。
☆
全員の傷を神龍の火で治療して全員が新しい服に着替えた。
「さぁ、新生マギア機関の第一回会議を始めるわよ」
アナスタシアさんは俺の隣に立ち、ここにいる全員の前でそう話し始める。
どういうわけか俺もアナスタシアさん陣営みたいになっている。でもおそらくアナスタシアさん陣営になることはロールでは間違いではないのだろう。
最初のスィオピ公爵家の一人娘であるアナスタシアさんを助けるから続くロールミッションはアナスタシアさんに指示されたことと変わらなかった。
『ロールミッション:囚われていた全員を連れてプネウマ王国に戻る』
『ロールミッション:スィオピ家の身内を全員プネウマ王国から連れ出す』
『ロールミッション:保護すべき対象を安全な場所に送り届ける』
これが今までにやったロールミッションだがまんまアナスタシアさんに言われたことをやればクリアできた。
そして次に言い渡されたロールミッションはこれだ。
『ロールミッション:アナスタシア・スィオピの要望を三つ応える 0/3』
これはこれで長そうだが、さらに追加されているロールミッションがある。
『ロールミッション:マギア機関の人々の士気を六十%以上維持 現在八十五%』
これはこれでえぐい。これを達成するためにはここにいる人たちに気をかけておかなければならないのだから。
てか新生マギア機関では今回のクリア条件にはならないよな。
それよりも魔神を復活させようとしている奴らがどういう奴らなのか教えてほしいところだ。さっきのが魔神アスタロトの眷属ってことは知っているけど。
「新生マギア機関になって私たちがすべきことは三つ。一つ目は新生マギア機関を立派な組織にすること。二つ目はプネウマ王国で行われている魔神召喚の儀式を止めること。三つ目はデーモンブラッドを殺すこと。この三つよ」
一つ目と二つ目は分かる。でもデーモンブラッドは分からない。
「そしてそれにあたって新生マギア機関の特別役職としてここにいる晴明を王子様に任命するわ!」
「えっ」
アナスタシアさんの発表に女性たちは納得の表情をしていた。
「王子様ってなんですか?」
俺の思う王子様とアナスタシアさんたちが思う王子様が違うのかもしれないと思って訊いてみる。
「そんなの決まっているじゃない、私たちの希望になってくれる人ってことよ。要するにいなくなれば私たちも死ぬしかないって思えるくらいの人があなたよ」
「リーダーとは違うんですよね?」
「それは私以外にあり得ないわ。この私が誰かの下にいるわけがないじゃない」
俺の懸念点はこの世界にいつまでもいるわけではないからリーダーではいけない、ということだったからまあ王子様ならいいか。
「それなら分かりました。全員俺についてきな」
「キャー! 付いて行きます!」
「一生付いて行きます!」
「私についてくるのよ!」
俺が調子がいいことを言えば女性たちは盛り上がるがアナスタシアさんに指摘を受ける。
「一つ聞いていいですか?」
「この寛容な私が答えてあげるわ」
「デーモンブラッドって何ですか?」
「あぁ、そう言えば説明をしていなかったわ、魔神の復活を企てている奴らについてね」
俺や表キャラが相手にするのがそいつらだろうから聞いておきたい。
「まず魔神が外界にいることは分かるわよね?」
「それはもちろん」
「ただ外界にいても魔神はこちらに干渉することができるのよ。干渉して魔神の力を欲している者に接触する。そうして力を与え、召喚の仕方を教えるのが魔神がこちら側に来る方法ね」
「力を与えられたものがデーモンブラッドってことですか?」
「そうよ。眷属とも呼ばれているわね」
あぁ、そうなのか。魔神アスタロトの眷属がデーモンブラッドで俺はそいつを一体倒しているのか。
「……もしかしたら、そのデーモンブラッドを一人倒したかもしれないです」
「……そう簡単に倒せるものじゃないのよ、デーモンブラッドは」
俺の言葉に疑惑の視線を向けてくるアナスタシアさん。まあ確かにそう簡単に倒せるものではないのだろう。でも俺はロールミッションで倒したことを知らされているんだよな。
「お姉様、晴明様が仰っていることは本当です」
エレナさんが俺のフォローに回ってくれたがどうしてそんなに断言できるのだろうか。
「あっ! 私も見ました!」
さらにエイミーさんもそう言ってくれるがどうして分かるのだろうか。
「それなら先に言いなさいよ……! ふぅ、体のどこかに紋章がなかったかしら? デーモンブラッドは魔神から力を受け入れる時にそれが刻まれるわ」
「あっ、手の甲にありました」
何か怪しく光っていたからよく覚えている。
「どんな紋章だった!?」
グイっとアナスタシアさんが聞いてくるから俺はメイドさんから紙とペンを受け取って星に棒やら〇が描かれている紋章を記した。
「これですね」
「魔神アスタロトの紋章! これが分かっただけでもいいのに倒せたのは僥倖ね……!」
「倒せていたのなら良かったです」
「これは……デーモンブラッド殺しに切り替えてもいいかもしれないわね……!」
「元々そういう作戦だったのでは?」
「必ずやらなければいけないことが一つ目と二つ目。三つ目はできるならやりたいという目標だったわ。でもデーモンブラッドを王子様が殺せるのならデーモンブラッドを殺しましょう」
「あの、危なくないですか?」
一人の女性がアナスタシアさんの作戦変更に異論を唱えた。
「どうなの?」
「あれくらいのデーモンブラッドなら余裕ですね」
デーモンブラッドは俺と戦えばどれだけ強くても弱くなる。それにあの二倍か三倍の強さになったとしても負ける気はしない。
「王子様なのだから当然ね」
「デーモンブラッドってあと何人いるんですか?」
デーモンブラッドは一人じゃないんだな。話の流れで一人じゃないというのは分かったが。
「魔神アスタロトのデーモンブラッドは残り五人よ」
「そもそもの話を聞いてもいいですか?」
「いいわよ」
「どうして残りのデーモンブラッドの数が分かるんですか? それにデーモンブラッドがプネウマ王国にいると分かっているのか。どうしてアナスタシアさんたちがそのデーモンブラッドたちに狙われているのか。それを聞きたいです」
「一斉に聞いてくれるわね。でもいいわ、教えるつもりだったから」
おそらく俺が聞きたいことは一つの答えで返ってくると思ったから一斉に聞いた。
「マギア機関が魔法が悪いように使われないようにできた組織ということは説明したわね。ならなぜスィオピ家がその管理を任されるようになったのか」
ただ公爵家だからというわけではないのか。
「私たちスィオピ家は魔神の相対する存在である天使の力を受けているのよ」
「……昔からスィオピ家は天使の力を受けていたんですか?」
「そう。だから魔神に関して言えば天使の力を受けているスィオピ家は適任だったわけね」
「今もスィオピ家の人たちは天使の力を受けているんですか?」
「いいえ、スィオピ家だけではないわ。ここにいる王子様とお父様以外の全員が天使の力を受けているわ」
「えっ……だから捕まっていたんですか?」
「やつらには天使の力が分かるのよ。だから天使の力を受けている人たちが分かった」
……あっ、女性たちの傷を治していた時に体のあちこちで見た紋章はそういうことだったのか。デーモンブラッドみたいに力を受けて紋章が刻まれていたのか。
「でもこちらもデーモンブラッドが分かる。プネウマ王国の、それも中枢に潜り込んでいるわ。スィオピ家の没落もデーモンブラッドが変な思想を煽ったせいではないかと思っているわ」
話を聞く感じ、思った以上にプネウマ王国が魔境になっている感じだなー。プネウマ王国にいるであろう星宮さんたちは大丈夫だろうか。
「聞きたいことは分かりました。とにかく今は力を蓄えるターンってことですよね」
「分かっているじゃない、さすが王子様。今のマギア機関は国を相手取らないにしても力が無さすぎるわ」
「具体的にはどうするんですか?」
「全員が天使の力を使いこなして戦えるようになるのが第一。プネウマ王国で少しでもマギア機関に協力してくれる人を探すのが第二。これが今私たちがやれることよ」
力を蓄えつつ、相手の戦力を削ぐということか。これまた長期になりそうだ。
「なら俺は第二の協力者を探すってことですか?」
「それもあるけれど晴明は天使の力を使いこなす手伝いをしなさい」
「天使の力なんて持ってないですよ?」
「天使の力は持っていない。でも神性を持っているでしょう? 私たちに魔力を送り続け、ならせば私たちも神性を得ることができるわ」
えっ、十二神獣だけじゃなくて俺の魔力も神性を帯びているのか? まあ鬼神は俺を示しているし神性か。
「了解です。でも今日は休みですよね?」
「言われなくてもそうするつもりよ。一旦落ち着きましょう」
☆
この場所に来てから自室にて休んだりしている人がいる中、俺は訪れる女性たちと話して落ち着けたのは夜だった。
俺のことを聞いたりデーモンブラッドはどうだったかとか些細なことを聞いてくるのがほとんどだったがそれぞれが不安を抱えていそうだったから誠心誠意応えた。
俺の体力は鬼神のおかげか、前回のステータスのおかげかは分からないがかなり多く、今もなお眠気は来ず元気いっぱいだ。
ロールミッションをそれなりにこなしたから今日一日でそれなりにレベルが上がったのをステータスを見て実感する。
『天日晴明
Lv36(36/150)
攻撃:D
防御:D
速度:D
魔力:D
P:10800
スキル
十二神獣・鬼神・神具武装・拳神・オメガの加護』
前回ならこれくらいの時間をかければ余裕でレベルは100になっていた。
もしかしたらクリアのための時間と経験値量が比例しているのかもしれないが、まだ世界は二個目だからな。
さて、ポイントが貯まっているわけだから割り振ろう。今回は十二神獣の時みたいに選択肢は多くない。
『拳神
拳力:岩を壊せる
拳域:一メートル
拳速:一秒間に二回』
それぞれ均等に割り振るみたいなことはしない。一万貯まれば一個に全部割り振る。
そして俺はどれに割り振るか最初から決めていた。拳力だ。
やっぱり一撃が重いのはいいことだ。それに拳の距離が長かろうが近づけば意味はない。一撃で沈めれるのなら速さは関係ない。
だからこの中でどれを先に割り振るかを考えれば拳力しかないってわけだ。
早速拳力にポイントを一万ポイント割り振って見れば途中でどんどんと拳力で壊せるものが大きくなり、一万ポイントを割り振った頃にはこうなった。
『拳力:星を砕ける』
星砕きまで来てしまった。もうこれは魔神が現れても最悪星ごと壊せるという選択肢が出てしまったわけだ。
いいねぇ……! デーモンブラッドが来てくれないかと思ってしまうぜ……! なんなら軍団でここに攻め込んできてくれても可。
あー、でもプネウマ王国の兵士を殺し尽くすのはダメなのかー。
「ん?」
俺が落ち着いたところを見計らったかのように思念が来た。
もちろん来た相手は王国に放ちっぱなしの神子の一体だ。
その個体は無事に星宮さんたちと遭遇したようで、そこからの出来事を俺に思念で送って来た。
☆
複数の神子は晴明の言う通りに星宮輝夜を探すために国中を走り回っていた。
そして神子の一体が冒険者ギルドの一角で発見した。星宮輝夜と女子二人と男子一人の集団を。
神子はそれを別個体の神子に思念で伝え、別個体は情報収集に走った。
思念を送り終えた神子はその集団に近づいて話を聞くことにした。
「これからどうします? 俺としては一先ず冒険者ギルドでお金を稼ぐのが安パイだと思います」
唯一の男子がそう提案する。
黒髪に普通な男子高生の雰囲気のある、戦士の恰好をした男子だ。
「そうだね。魔神のことがまだ分からない以上、お金を稼いでおくのに越したことはないかな」
男子に同調するのは星宮。
前回は二十歳以上なのに女子高生の恰好をしていたが今回は動きにくいローブの魔法使いの恰好をしていた。
「輝夜さんがそう言うならさんせー」
片方の女子が男子ではなく星宮に同調する。
染めた長い金髪をアップサイドテールにしたギャルっぽい雰囲気の女子は布面積が少ない盗賊の恰好をしていた。
「おめぇには言ってねぇよ……」
「は? なに? 聞こえるように言えば?」
「あ?」
「はぁ?」
「もー、こんなところでやめてよね」
男子と女子の今にも喧嘩しそうな雰囲気を仲裁するのはもう一人の女子。
肩くらいまである黒髪がゆるふわになっている男子受けが良さそうな女子は踊り子の恰好をしていた。
「心春ちゃんはつっかからないの!」
「……最初につっかかったのはあいつじゃんか」
「返事は?」
「はーい」
「言われてやんの」
「黒川くんもだよ! 心春ちゃんに変なこと言わないの!」
黒川と呼ばれた男子はプイッとゆるふわ女子から視線を逸らせばグイっとゆるふわ女子が黒川に近づいた。
「いい?」
「わ、分かった分かったから近い!」
「分かればいいんだよ」
仲裁できたことで満足そうな顔をするゆるふわ女子。
「冒険者をするってことでいいかな?」
「はい! やりましょー!」
星宮に応える時だけ元気がいい心春。
「ただ、僕の我儘をきいてくれないだろうか」
「なんですか?」
「もしかしたら、もう一人プレイヤーがいるかもしれないんだ」
「えっ、でもプレイヤーはここにいる四人で全員なんじゃ……」
星宮の言葉に他の三人は分からない顔をした。
「キミたちは前回の世界でクリアした後選択肢が出たかい?」
「あぁ、ありましたね。次の世界に行くか、やり直すかの選択肢ですよね?」
「その時の残りプレイヤーは三人だった?」
「……はい。そうだったよな?」
「うん、そうだったと思う。そうだよね? 心春ちゃん」
「あたしたち三人でいたからあまり意識してなかったけど、三人だった」
「僕が最後に見た残りプレイヤーは、二人だったよ」
「えっ、他のプレイヤーがいたんじゃないんですか?」
「いいや、ちゃんと残りプレイヤー一人だとシステムから言われていたから僕一人だと終わるまで思っていた。まあすごいネズミや大きな蛇みたいに味方の動物はいたけど」
「でも、最後のプレイヤー数が二人だったんですね?」
「そうだ。だから前回の世界で一緒だったメンバーが今回も一緒ということを聞いて、もしかしたらもう一人もこの世界にいるんじゃないかと思ったわけだね」
星宮の話を聞き、少し考えた素振りをした黒川が口を開く。
「それが本当なら、別ロールで動いているかもしれませんね」
「別ロール?」
「はい。俺たちとは別の目標を与えられているのかもしれません。それでこちら側に来ない可能性があります」
「いや、前回の世界に限って言えば目的は一緒だったはずだよ。僕たちが壊すべきものともう一人が壊したものは一緒だったからね」
「マジっすか。……あー、もう一人はこちら側とは別行動をすることで目標の効率化をしているのかもしれませんね」
「それは大いにあるね。もう一人を探すのが正解なのかは分からないけれど……僕はそのもう一人に会いたいんだ」
「探しましょー! 絶対にいますよ!」
星宮の想いに心春は賛同する。
「……俺としてはもう一人を探さない方向にしたいんですが」
だが黒川は乗り気ではなかった。
「は? もう一人がいるんなら探した方がいいじゃんか」
「いやいや、神がもう一人を別にしているのならそっちの方が効率はいいだろ。わざわざ目標を後回しにして探すことではない」
「うん、その意見は尤もだね。まず第一は目標をクリアすることにあるんだから黒川くんは間違っていないよ」
「でも輝夜さんはその人に会いたいんでしょ!? それなら会いに行こうよ!」
「おい空門。今はそんなことをやってる場合じゃないだろ。俺たちはまだ何も進んでいないんだぞ」
「それがなに? 何回でもやり直せばいい話じゃんか」
「それは最初だから言えるんだぞ。それに俺は何度もやり直したくはない」
「は? 意気地なし」
とことん合わない二人を仲裁するのはやはりゆるふわ女子。
「はいはい、また喧嘩しない! そんなことを言ってても話は進まないよ!」
ゆるふわ女子の言葉に顔を歪めながらお互いに顔をそらす黒川と空門。
「それよりも輝夜さん。その人を見つけるにあたって何か手がかりみたいなものはないんですか?」
「おそらくだがもう一人は動物を操るスキルを持っている。前回は強いネズミを使役していたね」
「どんなネズミですか?」
「黄金のネズミだね」
「おー、リッチだ」
星宮の言葉にその場にいる全員が何気に地面を見れば、四人を遠目から見ていた神子で視線がぶつかった。
「輝夜さん、あんな感じのネズミ?」
「うん、あんな感じのネズミだね……ちょっと近づいてみるよ」
「き、気を付けてくださいね……! ネズミって怖いですから……!」
星宮が近づこうとしているのをゆるふわ女子はネズミに怯えながら警告する。
「そんなことはないさ。キミは前回僕を助けてくれた子かい?」
星宮が神子に手を近づければ神子はその手に乗る。
「どうやら僕の求めていたネズミだったみたいだ。またキミと会えてうれしいよ」
神子も星宮の言葉に同意するように頷く。
「ね、ネズミですよ? き、汚いですよ……?」
どこまでもネズミが苦手なゆるふわ女子は星宮が連れて来た神子から距離を取り黒川の背中に隠れた。
「そんなことはないさ。……それに臭くないし、むしろいい匂いがするね」
神子に鼻を近づけてクンクンとする星宮はそう主張する。
「ぜっっっっったいに何か補正がかかってるってば!」
「そんなことはないさ。ほら、物は試しだ」
「ひぃぃぃぃぃっ!?」
「ご、ごめんね。そんなに怯えるとは思わなかったよ……」
異常な怯えように星宮はすぐに神子を差し出すのをやめた。
「キミにも嫌な思いをさせてしまったね」
星宮が指で神子の頭を撫でれば気にしていないと言った感じで首を横に振る。
「言葉が分かるんですか? そのネズミ」
「そうだ。そしてこの子がもう一人のプレイヤーから遣わされたこともこの子から教えてくれたんだ」
「へー、それなら動物を操るとかじゃなくてこのネズミと意識を連動させているんですかね?」
「そうなのかい?」
その質問に神子は否定する。
「独立しているのか?」
その質問に神子は肯定する。
「そうなのか。そんなスキルがあるなんてすげぇ……」
「そうだろうそうだろう」
星宮は自分が褒められているかのようにドヤ顔をする。
「じゃあさ、もう一人がこの世界にいるってことも確定?」
「そうだろうね。この子だけが来るわけがない」
「ま、そっか。スキルなんだから」
「……もう一人は今どこにいるんだ?」
黒川は神子にストレートに知りたいことを質問した。
神子は少し考えた後に首を横に振った。
神子は前回の世界で晴明に起こったことを理解していた。Sランクを貰い、新たなスキルを貰ったこと。さらにそれが裏チートキャラのロールだということも。
だからここで教えるのはナシだと思い首を横に振った。
「それは分からないのか?」
黒川の質問に神子は首を横に振る。
「教えたくない?」
空門の質問に神子は首を縦に振る。
「教えたくない? 教えたくないって何だ。……本当に俺たちの推理は合っていて、合流するのは良くないと思っているのか?」
黒川の質問に神子は首を縦に振る。
「やっぱり合っていたんだな……!」
「そんなこと言わずにさ! 教えてよー!」
黒川は納得したが空門は納得せずに粘る。ただ神子はそれでも頷こうとはしなかった。
「お前より利口みたいだな、このネズミは」
「は? どういう意味?」
「だってちゃんと主のことを分かって反応している。感情的じゃないだろ」
「そんなことを言えば僕もそうなるね」
「い、いやいや! そういうわけじゃなくて……!」
空門には強く言うが星宮には態度が違う黒川。
「でも、こうしてもう一人がこの世界にいると分かっただけ良かった。いずれ僕たちと道が交わり合うと信じている」
「……そっすね」
「こいつ絶対に交わらないって顔してますよ輝夜さん!」
「ふふっ、そうとは限らないよ。前回の世界では僕はもう一人がいるとは思っていなかった。でももう一人がいると分かって行動していれば出会っていたかもしれないんだよ。それが非効率だとしても、もしかしたら出会うかもしれないってことさ。僕ともう一人が運命で結ばれているのならね」
「絶対に出会えますよ! あたしも探します!」
「ありがとう」
神子が否定したにもかかわらず出会う気満々な星宮に、黒川と神子はもう何も反応しなかった。
「とにかく、まずは冒険者稼業に勤しみましょう。てかこのネズミは戦えるんですよね?」
「なんかそのネズミって言い方がきらーい。この子、名前ないんですかね?」
「どうだろう……こちらの言葉は分かるけどこの子は喋れないからね」
「……じゃあ紙に文字を書いてコックリさんみたいにすればいいのでは?」
面倒くさそうな顔をしながらも案を出す黒川。
「それいいじゃん! あんたたまにはいいこと言うね」
「たまには余計だ」
黒川の案により五十音の日本語が書かれた紙がテーブルに広げられる。
「キミの名前を教えてくれるかな?」
星宮の言葉に神子は紙の上を歩き始める。そして「か」と「み」と「ね」の上でジャンプをして名前を伝えた。
「かみね。それがキミの名前なんだね?」
星宮の問いに神子は頷いた。
「かみね……どういう感じなんだ? 神様のかみか?」
黒川の問いに神子は頷いた。
「本当にそうなのか……それなら「ね」は干支の子ってことか?」
さらに続いて黒川の問いにも神子は頷いた。
「神のネズミで神子か……御大層な名前だ」
「でもそれくらいの名前がつくくらいには、神子は強いよ」
「……それならこれから行くクエストで力を発揮してもらいましょう」
半分以上疑っているような顔をしている黒川は神子の強さを見るのとお金稼ぎの両方を行うことにした。
「あぁ、神子の力を見て驚くといいさ」
☆
神子は星宮の肩に器用に乗り四人が冒険者登録をしてクエストを受けるところを見ていた。
そしてそれぞれの名前が分かった。
男子が黒川真司、ギャル女子が空門心春。ゆるふわ女子が加納円香。
暇な時間に神子は何も聞けないが星宮が四人の設定を教えてくれ、四人は幼馴染で一緒に村から出てきたというロールだと教えられた。
「最初はゴブリンじゃなかったのか……」
黒川が選ぼうとしていたゴブリン討伐はDランクであったためFランクの黒川たちは受注することができなかったため黒川は少しだけ落ち込んでいた。
結局選ばされたのは冒険者の登竜門だと説明を受けた「サベージバード」であった。
「人型で知性もあるのだから最初は難しいだろうね」
「分かってますよ」
「分かってるなら言うなっての」
黒川が言うことすべてに悪態をついている空門はもはや慣れたもの。
四人と一匹は王都から出てサベージバードが繁殖している場所に向かう。
高い木を住処にしているサベージバードは普通の烏よりも二回りほど大きく、長い嘴に進化していた。
サベージバードはすぐさま四人のことを見つけ、それを神子はすぐに気が付いた。
「ここら辺ですよね」
「指示されている地図はここだし、サベージバードは高い木にいると説明がされている。上かな?」
星宮たち四人が一斉に見上げれば、夥しい数のサベージバードが目を光らせながら四人のことを見ていた。
「ッ! 気付かれているぞ!」
黒川が腰の剣を抜く前にサベージバードたちは一斉に四人に嘴を向け飛んできた。
四人全員が当たると思ったその時、サベージバードは四人のもとに到達する前に地面に叩きつけられた。
「神子、キミがやってくれたんだね?」
すぐさまその光景を理解した星宮が神子にそう聞けば神子は頷いた。
「……マジか。こんなことができるのかすげぇ……!」
「神子すごいじゃん! できるネズミですごっ!」
「神子ちゃんすごいねー!」
三人が大絶賛してドヤ顔風の態度をとっている神子。
「これ、どういう力なんですか?」
「あまりよく分からないけど、重力を操ることができるみたいだね」
「へー、ホントに俺たちよりも強いな……あれ、こいつら死んでない」
サベージバードが未だに地面に縫い付けられているだけのことに黒川は気が付いた。
「重力は操れても殺せないのか」
「いや、そんなはずはないよ。前回は悪霊たちを捻り潰していたからね」
「は? それならどうして……あっ、俺たちに殺させようとしているのか!」
黒川が即座に神子を見れば神子は大きく頷いた。
「な、なんてできるネズミなんだ!」
黒川が誰を対象として、どうしてそんなことを思ったのかは黒川しか知る由がない。
「今は神子の力を借りてレベルも上げましょう」
「レベルって上げる必要ある?」
黒川の声掛けに空門は疑問を呈する。
「そりゃあるだろ。この世界はファンタジーなんだからレベルが上がらないことには死ぬぞ」
「いやでも前回の世界じゃ対して能力が上がってなかったじゃん。それなのに上げる必要があるのかって言ってんの」
少し煽るように黒川に言い返す空門。
「前回何レベルで終わったんだい?」
「あたし13!」
「私は12かな」
「俺は15です。星宮さんはいくつですか?」
「僕は21だね。たぶんだけど、ステータス文字が変わるタイミングでかなりステータスが上がるんだと思うよ」
「Fから変わるんですか!? 何レベで!?」
「16だったかな。だからレベルは上げて行こう」
「はーい」
星宮の言葉なら納得する空門を見て少しイラっとしている黒川。
「まあ普通に考えれば――」
「はいダーメ。これ以上言ったらまた喧嘩になるよ?」
黒川の口に人差し指を当てて止めるゆるふわ女子。それをされたから黒川も顔を赤くしながら黙る。
「依頼をこなしつつレベルも上げる。今日はこれで行こうか」
星宮の言葉に全員が頷いた。
☆
「……なるほど、こういう感じだったのか」
神子から送られてきた思念で他プレイヤーがどんな行動をしていたのかが分かった。
向こうは向こうで頑張っている様子だが、何をやるのかを分かっていないってことは細かいロールミッションを与えられていないってことか?
まあそれは運命が交わり合った時にでも訊いてみることにしよう。
でも俺から会うことはないしどれくらい世界が続くのかは分からないがこれから全く会わない可能性だってある。
それよりも今はこの世界をクリアすることだな。それにこの村を快適にすることも俺のロールでもあるからな。
黒髪をショートカットにしたメガネをかけた真面目そうなメイドさんだった。
「お疲れ様です。こちらでお嬢様がお待ちです」
「はいって言いたいところなんですけど、村で捕まっていた人たちはどこにいるんですか?」
「御用ですか?」
「エイミーさんにしたように傷を治す約束をしていたんです。アナスタシアさんもそうですけど落ち着けそうなので治療がしたいです」
あれから濃厚な時間を過ごしてはいてあまり時間は経っていないがそれでも彼女たちの怪我を早めに治したいとは思っていた。
「なぜそこまでなさるのですか? お嬢様や他の女性の方々とは先ほど出会ったばかりのはずです」
「人助けをすることがそんなにおかしなことですか?」
こういうメイドさんは自己主張しないタイプな感じだったがそうではないらしい。
「そんな綺麗事で世の中は回っていません。何か裏があると思うのが普通かと。なのでお聞きしました」
まあそうかもしれない。だがそんな普通の枠組みに俺を入れないでほしい。
「俺は好きなんですよ、完全勝利が」
「完全勝利、ですか」
「はい。ですからやれることをすべてやって、気持ちよく事を終わらせる。そのために行動しているにすぎません。今回で言えばアナスタシアさんたちを助け、傷を治して初めて完全勝利なんですよ」
勝利というものは気持ちいいものだ。負けは好きではない。
誰だって勝ちは好きだし負けは嫌いだろう。だから俺はやるべきことをやっているに過ぎない。
まあ、前回の世界で俺と星宮さんしかこの世界に行けなかったのが完全勝利ではないと突っ込まれるかもしれない。
だがあくまでそれは彼らの選択。俺の完全勝利と彼らの完全勝利は全くの別物だからな。
「――理解しました。お引止めして申し訳ございませんでした」
「いえ、聞いてもらえてよかったですよ」
聞かれずにモヤモヤとされる方が面倒だからな。
「アナスタシア様含め、皆さまは広間でお待ちです。こちらへどうぞ」
メイドさんに案内されて広間へと向かえばアナスタシアさんのお父さんとお母さん以外の全員が揃っていた。
「ご苦労、よく働いたわ」
「これくらいは朝飯前ですよ」
この人たちがいるということは俺がやることも分かっているのだろうな。
「さ、早く私たちを治しなさい」
アナスタシアさんがそう言えば全員がボロボロになっている服を脱ぎ始めた。
まあどうせ着替えるだろうから今脱いで治した方がいいのか。それにしてもこれだけの全裸の女体が部屋にあるのは圧巻だな……まあ痛々しい傷ばかりだから早く治して極楽の光景に変えてしまおう。
☆
全員の傷を神龍の火で治療して全員が新しい服に着替えた。
「さぁ、新生マギア機関の第一回会議を始めるわよ」
アナスタシアさんは俺の隣に立ち、ここにいる全員の前でそう話し始める。
どういうわけか俺もアナスタシアさん陣営みたいになっている。でもおそらくアナスタシアさん陣営になることはロールでは間違いではないのだろう。
最初のスィオピ公爵家の一人娘であるアナスタシアさんを助けるから続くロールミッションはアナスタシアさんに指示されたことと変わらなかった。
『ロールミッション:囚われていた全員を連れてプネウマ王国に戻る』
『ロールミッション:スィオピ家の身内を全員プネウマ王国から連れ出す』
『ロールミッション:保護すべき対象を安全な場所に送り届ける』
これが今までにやったロールミッションだがまんまアナスタシアさんに言われたことをやればクリアできた。
そして次に言い渡されたロールミッションはこれだ。
『ロールミッション:アナスタシア・スィオピの要望を三つ応える 0/3』
これはこれで長そうだが、さらに追加されているロールミッションがある。
『ロールミッション:マギア機関の人々の士気を六十%以上維持 現在八十五%』
これはこれでえぐい。これを達成するためにはここにいる人たちに気をかけておかなければならないのだから。
てか新生マギア機関では今回のクリア条件にはならないよな。
それよりも魔神を復活させようとしている奴らがどういう奴らなのか教えてほしいところだ。さっきのが魔神アスタロトの眷属ってことは知っているけど。
「新生マギア機関になって私たちがすべきことは三つ。一つ目は新生マギア機関を立派な組織にすること。二つ目はプネウマ王国で行われている魔神召喚の儀式を止めること。三つ目はデーモンブラッドを殺すこと。この三つよ」
一つ目と二つ目は分かる。でもデーモンブラッドは分からない。
「そしてそれにあたって新生マギア機関の特別役職としてここにいる晴明を王子様に任命するわ!」
「えっ」
アナスタシアさんの発表に女性たちは納得の表情をしていた。
「王子様ってなんですか?」
俺の思う王子様とアナスタシアさんたちが思う王子様が違うのかもしれないと思って訊いてみる。
「そんなの決まっているじゃない、私たちの希望になってくれる人ってことよ。要するにいなくなれば私たちも死ぬしかないって思えるくらいの人があなたよ」
「リーダーとは違うんですよね?」
「それは私以外にあり得ないわ。この私が誰かの下にいるわけがないじゃない」
俺の懸念点はこの世界にいつまでもいるわけではないからリーダーではいけない、ということだったからまあ王子様ならいいか。
「それなら分かりました。全員俺についてきな」
「キャー! 付いて行きます!」
「一生付いて行きます!」
「私についてくるのよ!」
俺が調子がいいことを言えば女性たちは盛り上がるがアナスタシアさんに指摘を受ける。
「一つ聞いていいですか?」
「この寛容な私が答えてあげるわ」
「デーモンブラッドって何ですか?」
「あぁ、そう言えば説明をしていなかったわ、魔神の復活を企てている奴らについてね」
俺や表キャラが相手にするのがそいつらだろうから聞いておきたい。
「まず魔神が外界にいることは分かるわよね?」
「それはもちろん」
「ただ外界にいても魔神はこちらに干渉することができるのよ。干渉して魔神の力を欲している者に接触する。そうして力を与え、召喚の仕方を教えるのが魔神がこちら側に来る方法ね」
「力を与えられたものがデーモンブラッドってことですか?」
「そうよ。眷属とも呼ばれているわね」
あぁ、そうなのか。魔神アスタロトの眷属がデーモンブラッドで俺はそいつを一体倒しているのか。
「……もしかしたら、そのデーモンブラッドを一人倒したかもしれないです」
「……そう簡単に倒せるものじゃないのよ、デーモンブラッドは」
俺の言葉に疑惑の視線を向けてくるアナスタシアさん。まあ確かにそう簡単に倒せるものではないのだろう。でも俺はロールミッションで倒したことを知らされているんだよな。
「お姉様、晴明様が仰っていることは本当です」
エレナさんが俺のフォローに回ってくれたがどうしてそんなに断言できるのだろうか。
「あっ! 私も見ました!」
さらにエイミーさんもそう言ってくれるがどうして分かるのだろうか。
「それなら先に言いなさいよ……! ふぅ、体のどこかに紋章がなかったかしら? デーモンブラッドは魔神から力を受け入れる時にそれが刻まれるわ」
「あっ、手の甲にありました」
何か怪しく光っていたからよく覚えている。
「どんな紋章だった!?」
グイっとアナスタシアさんが聞いてくるから俺はメイドさんから紙とペンを受け取って星に棒やら〇が描かれている紋章を記した。
「これですね」
「魔神アスタロトの紋章! これが分かっただけでもいいのに倒せたのは僥倖ね……!」
「倒せていたのなら良かったです」
「これは……デーモンブラッド殺しに切り替えてもいいかもしれないわね……!」
「元々そういう作戦だったのでは?」
「必ずやらなければいけないことが一つ目と二つ目。三つ目はできるならやりたいという目標だったわ。でもデーモンブラッドを王子様が殺せるのならデーモンブラッドを殺しましょう」
「あの、危なくないですか?」
一人の女性がアナスタシアさんの作戦変更に異論を唱えた。
「どうなの?」
「あれくらいのデーモンブラッドなら余裕ですね」
デーモンブラッドは俺と戦えばどれだけ強くても弱くなる。それにあの二倍か三倍の強さになったとしても負ける気はしない。
「王子様なのだから当然ね」
「デーモンブラッドってあと何人いるんですか?」
デーモンブラッドは一人じゃないんだな。話の流れで一人じゃないというのは分かったが。
「魔神アスタロトのデーモンブラッドは残り五人よ」
「そもそもの話を聞いてもいいですか?」
「いいわよ」
「どうして残りのデーモンブラッドの数が分かるんですか? それにデーモンブラッドがプネウマ王国にいると分かっているのか。どうしてアナスタシアさんたちがそのデーモンブラッドたちに狙われているのか。それを聞きたいです」
「一斉に聞いてくれるわね。でもいいわ、教えるつもりだったから」
おそらく俺が聞きたいことは一つの答えで返ってくると思ったから一斉に聞いた。
「マギア機関が魔法が悪いように使われないようにできた組織ということは説明したわね。ならなぜスィオピ家がその管理を任されるようになったのか」
ただ公爵家だからというわけではないのか。
「私たちスィオピ家は魔神の相対する存在である天使の力を受けているのよ」
「……昔からスィオピ家は天使の力を受けていたんですか?」
「そう。だから魔神に関して言えば天使の力を受けているスィオピ家は適任だったわけね」
「今もスィオピ家の人たちは天使の力を受けているんですか?」
「いいえ、スィオピ家だけではないわ。ここにいる王子様とお父様以外の全員が天使の力を受けているわ」
「えっ……だから捕まっていたんですか?」
「やつらには天使の力が分かるのよ。だから天使の力を受けている人たちが分かった」
……あっ、女性たちの傷を治していた時に体のあちこちで見た紋章はそういうことだったのか。デーモンブラッドみたいに力を受けて紋章が刻まれていたのか。
「でもこちらもデーモンブラッドが分かる。プネウマ王国の、それも中枢に潜り込んでいるわ。スィオピ家の没落もデーモンブラッドが変な思想を煽ったせいではないかと思っているわ」
話を聞く感じ、思った以上にプネウマ王国が魔境になっている感じだなー。プネウマ王国にいるであろう星宮さんたちは大丈夫だろうか。
「聞きたいことは分かりました。とにかく今は力を蓄えるターンってことですよね」
「分かっているじゃない、さすが王子様。今のマギア機関は国を相手取らないにしても力が無さすぎるわ」
「具体的にはどうするんですか?」
「全員が天使の力を使いこなして戦えるようになるのが第一。プネウマ王国で少しでもマギア機関に協力してくれる人を探すのが第二。これが今私たちがやれることよ」
力を蓄えつつ、相手の戦力を削ぐということか。これまた長期になりそうだ。
「なら俺は第二の協力者を探すってことですか?」
「それもあるけれど晴明は天使の力を使いこなす手伝いをしなさい」
「天使の力なんて持ってないですよ?」
「天使の力は持っていない。でも神性を持っているでしょう? 私たちに魔力を送り続け、ならせば私たちも神性を得ることができるわ」
えっ、十二神獣だけじゃなくて俺の魔力も神性を帯びているのか? まあ鬼神は俺を示しているし神性か。
「了解です。でも今日は休みですよね?」
「言われなくてもそうするつもりよ。一旦落ち着きましょう」
☆
この場所に来てから自室にて休んだりしている人がいる中、俺は訪れる女性たちと話して落ち着けたのは夜だった。
俺のことを聞いたりデーモンブラッドはどうだったかとか些細なことを聞いてくるのがほとんどだったがそれぞれが不安を抱えていそうだったから誠心誠意応えた。
俺の体力は鬼神のおかげか、前回のステータスのおかげかは分からないがかなり多く、今もなお眠気は来ず元気いっぱいだ。
ロールミッションをそれなりにこなしたから今日一日でそれなりにレベルが上がったのをステータスを見て実感する。
『天日晴明
Lv36(36/150)
攻撃:D
防御:D
速度:D
魔力:D
P:10800
スキル
十二神獣・鬼神・神具武装・拳神・オメガの加護』
前回ならこれくらいの時間をかければ余裕でレベルは100になっていた。
もしかしたらクリアのための時間と経験値量が比例しているのかもしれないが、まだ世界は二個目だからな。
さて、ポイントが貯まっているわけだから割り振ろう。今回は十二神獣の時みたいに選択肢は多くない。
『拳神
拳力:岩を壊せる
拳域:一メートル
拳速:一秒間に二回』
それぞれ均等に割り振るみたいなことはしない。一万貯まれば一個に全部割り振る。
そして俺はどれに割り振るか最初から決めていた。拳力だ。
やっぱり一撃が重いのはいいことだ。それに拳の距離が長かろうが近づけば意味はない。一撃で沈めれるのなら速さは関係ない。
だからこの中でどれを先に割り振るかを考えれば拳力しかないってわけだ。
早速拳力にポイントを一万ポイント割り振って見れば途中でどんどんと拳力で壊せるものが大きくなり、一万ポイントを割り振った頃にはこうなった。
『拳力:星を砕ける』
星砕きまで来てしまった。もうこれは魔神が現れても最悪星ごと壊せるという選択肢が出てしまったわけだ。
いいねぇ……! デーモンブラッドが来てくれないかと思ってしまうぜ……! なんなら軍団でここに攻め込んできてくれても可。
あー、でもプネウマ王国の兵士を殺し尽くすのはダメなのかー。
「ん?」
俺が落ち着いたところを見計らったかのように思念が来た。
もちろん来た相手は王国に放ちっぱなしの神子の一体だ。
その個体は無事に星宮さんたちと遭遇したようで、そこからの出来事を俺に思念で送って来た。
☆
複数の神子は晴明の言う通りに星宮輝夜を探すために国中を走り回っていた。
そして神子の一体が冒険者ギルドの一角で発見した。星宮輝夜と女子二人と男子一人の集団を。
神子はそれを別個体の神子に思念で伝え、別個体は情報収集に走った。
思念を送り終えた神子はその集団に近づいて話を聞くことにした。
「これからどうします? 俺としては一先ず冒険者ギルドでお金を稼ぐのが安パイだと思います」
唯一の男子がそう提案する。
黒髪に普通な男子高生の雰囲気のある、戦士の恰好をした男子だ。
「そうだね。魔神のことがまだ分からない以上、お金を稼いでおくのに越したことはないかな」
男子に同調するのは星宮。
前回は二十歳以上なのに女子高生の恰好をしていたが今回は動きにくいローブの魔法使いの恰好をしていた。
「輝夜さんがそう言うならさんせー」
片方の女子が男子ではなく星宮に同調する。
染めた長い金髪をアップサイドテールにしたギャルっぽい雰囲気の女子は布面積が少ない盗賊の恰好をしていた。
「おめぇには言ってねぇよ……」
「は? なに? 聞こえるように言えば?」
「あ?」
「はぁ?」
「もー、こんなところでやめてよね」
男子と女子の今にも喧嘩しそうな雰囲気を仲裁するのはもう一人の女子。
肩くらいまである黒髪がゆるふわになっている男子受けが良さそうな女子は踊り子の恰好をしていた。
「心春ちゃんはつっかからないの!」
「……最初につっかかったのはあいつじゃんか」
「返事は?」
「はーい」
「言われてやんの」
「黒川くんもだよ! 心春ちゃんに変なこと言わないの!」
黒川と呼ばれた男子はプイッとゆるふわ女子から視線を逸らせばグイっとゆるふわ女子が黒川に近づいた。
「いい?」
「わ、分かった分かったから近い!」
「分かればいいんだよ」
仲裁できたことで満足そうな顔をするゆるふわ女子。
「冒険者をするってことでいいかな?」
「はい! やりましょー!」
星宮に応える時だけ元気がいい心春。
「ただ、僕の我儘をきいてくれないだろうか」
「なんですか?」
「もしかしたら、もう一人プレイヤーがいるかもしれないんだ」
「えっ、でもプレイヤーはここにいる四人で全員なんじゃ……」
星宮の言葉に他の三人は分からない顔をした。
「キミたちは前回の世界でクリアした後選択肢が出たかい?」
「あぁ、ありましたね。次の世界に行くか、やり直すかの選択肢ですよね?」
「その時の残りプレイヤーは三人だった?」
「……はい。そうだったよな?」
「うん、そうだったと思う。そうだよね? 心春ちゃん」
「あたしたち三人でいたからあまり意識してなかったけど、三人だった」
「僕が最後に見た残りプレイヤーは、二人だったよ」
「えっ、他のプレイヤーがいたんじゃないんですか?」
「いいや、ちゃんと残りプレイヤー一人だとシステムから言われていたから僕一人だと終わるまで思っていた。まあすごいネズミや大きな蛇みたいに味方の動物はいたけど」
「でも、最後のプレイヤー数が二人だったんですね?」
「そうだ。だから前回の世界で一緒だったメンバーが今回も一緒ということを聞いて、もしかしたらもう一人もこの世界にいるんじゃないかと思ったわけだね」
星宮の話を聞き、少し考えた素振りをした黒川が口を開く。
「それが本当なら、別ロールで動いているかもしれませんね」
「別ロール?」
「はい。俺たちとは別の目標を与えられているのかもしれません。それでこちら側に来ない可能性があります」
「いや、前回の世界に限って言えば目的は一緒だったはずだよ。僕たちが壊すべきものともう一人が壊したものは一緒だったからね」
「マジっすか。……あー、もう一人はこちら側とは別行動をすることで目標の効率化をしているのかもしれませんね」
「それは大いにあるね。もう一人を探すのが正解なのかは分からないけれど……僕はそのもう一人に会いたいんだ」
「探しましょー! 絶対にいますよ!」
星宮の想いに心春は賛同する。
「……俺としてはもう一人を探さない方向にしたいんですが」
だが黒川は乗り気ではなかった。
「は? もう一人がいるんなら探した方がいいじゃんか」
「いやいや、神がもう一人を別にしているのならそっちの方が効率はいいだろ。わざわざ目標を後回しにして探すことではない」
「うん、その意見は尤もだね。まず第一は目標をクリアすることにあるんだから黒川くんは間違っていないよ」
「でも輝夜さんはその人に会いたいんでしょ!? それなら会いに行こうよ!」
「おい空門。今はそんなことをやってる場合じゃないだろ。俺たちはまだ何も進んでいないんだぞ」
「それがなに? 何回でもやり直せばいい話じゃんか」
「それは最初だから言えるんだぞ。それに俺は何度もやり直したくはない」
「は? 意気地なし」
とことん合わない二人を仲裁するのはやはりゆるふわ女子。
「はいはい、また喧嘩しない! そんなことを言ってても話は進まないよ!」
ゆるふわ女子の言葉に顔を歪めながらお互いに顔をそらす黒川と空門。
「それよりも輝夜さん。その人を見つけるにあたって何か手がかりみたいなものはないんですか?」
「おそらくだがもう一人は動物を操るスキルを持っている。前回は強いネズミを使役していたね」
「どんなネズミですか?」
「黄金のネズミだね」
「おー、リッチだ」
星宮の言葉にその場にいる全員が何気に地面を見れば、四人を遠目から見ていた神子で視線がぶつかった。
「輝夜さん、あんな感じのネズミ?」
「うん、あんな感じのネズミだね……ちょっと近づいてみるよ」
「き、気を付けてくださいね……! ネズミって怖いですから……!」
星宮が近づこうとしているのをゆるふわ女子はネズミに怯えながら警告する。
「そんなことはないさ。キミは前回僕を助けてくれた子かい?」
星宮が神子に手を近づければ神子はその手に乗る。
「どうやら僕の求めていたネズミだったみたいだ。またキミと会えてうれしいよ」
神子も星宮の言葉に同意するように頷く。
「ね、ネズミですよ? き、汚いですよ……?」
どこまでもネズミが苦手なゆるふわ女子は星宮が連れて来た神子から距離を取り黒川の背中に隠れた。
「そんなことはないさ。……それに臭くないし、むしろいい匂いがするね」
神子に鼻を近づけてクンクンとする星宮はそう主張する。
「ぜっっっっったいに何か補正がかかってるってば!」
「そんなことはないさ。ほら、物は試しだ」
「ひぃぃぃぃぃっ!?」
「ご、ごめんね。そんなに怯えるとは思わなかったよ……」
異常な怯えように星宮はすぐに神子を差し出すのをやめた。
「キミにも嫌な思いをさせてしまったね」
星宮が指で神子の頭を撫でれば気にしていないと言った感じで首を横に振る。
「言葉が分かるんですか? そのネズミ」
「そうだ。そしてこの子がもう一人のプレイヤーから遣わされたこともこの子から教えてくれたんだ」
「へー、それなら動物を操るとかじゃなくてこのネズミと意識を連動させているんですかね?」
「そうなのかい?」
その質問に神子は否定する。
「独立しているのか?」
その質問に神子は肯定する。
「そうなのか。そんなスキルがあるなんてすげぇ……」
「そうだろうそうだろう」
星宮は自分が褒められているかのようにドヤ顔をする。
「じゃあさ、もう一人がこの世界にいるってことも確定?」
「そうだろうね。この子だけが来るわけがない」
「ま、そっか。スキルなんだから」
「……もう一人は今どこにいるんだ?」
黒川は神子にストレートに知りたいことを質問した。
神子は少し考えた後に首を横に振った。
神子は前回の世界で晴明に起こったことを理解していた。Sランクを貰い、新たなスキルを貰ったこと。さらにそれが裏チートキャラのロールだということも。
だからここで教えるのはナシだと思い首を横に振った。
「それは分からないのか?」
黒川の質問に神子は首を横に振る。
「教えたくない?」
空門の質問に神子は首を縦に振る。
「教えたくない? 教えたくないって何だ。……本当に俺たちの推理は合っていて、合流するのは良くないと思っているのか?」
黒川の質問に神子は首を縦に振る。
「やっぱり合っていたんだな……!」
「そんなこと言わずにさ! 教えてよー!」
黒川は納得したが空門は納得せずに粘る。ただ神子はそれでも頷こうとはしなかった。
「お前より利口みたいだな、このネズミは」
「は? どういう意味?」
「だってちゃんと主のことを分かって反応している。感情的じゃないだろ」
「そんなことを言えば僕もそうなるね」
「い、いやいや! そういうわけじゃなくて……!」
空門には強く言うが星宮には態度が違う黒川。
「でも、こうしてもう一人がこの世界にいると分かっただけ良かった。いずれ僕たちと道が交わり合うと信じている」
「……そっすね」
「こいつ絶対に交わらないって顔してますよ輝夜さん!」
「ふふっ、そうとは限らないよ。前回の世界では僕はもう一人がいるとは思っていなかった。でももう一人がいると分かって行動していれば出会っていたかもしれないんだよ。それが非効率だとしても、もしかしたら出会うかもしれないってことさ。僕ともう一人が運命で結ばれているのならね」
「絶対に出会えますよ! あたしも探します!」
「ありがとう」
神子が否定したにもかかわらず出会う気満々な星宮に、黒川と神子はもう何も反応しなかった。
「とにかく、まずは冒険者稼業に勤しみましょう。てかこのネズミは戦えるんですよね?」
「なんかそのネズミって言い方がきらーい。この子、名前ないんですかね?」
「どうだろう……こちらの言葉は分かるけどこの子は喋れないからね」
「……じゃあ紙に文字を書いてコックリさんみたいにすればいいのでは?」
面倒くさそうな顔をしながらも案を出す黒川。
「それいいじゃん! あんたたまにはいいこと言うね」
「たまには余計だ」
黒川の案により五十音の日本語が書かれた紙がテーブルに広げられる。
「キミの名前を教えてくれるかな?」
星宮の言葉に神子は紙の上を歩き始める。そして「か」と「み」と「ね」の上でジャンプをして名前を伝えた。
「かみね。それがキミの名前なんだね?」
星宮の問いに神子は頷いた。
「かみね……どういう感じなんだ? 神様のかみか?」
黒川の問いに神子は頷いた。
「本当にそうなのか……それなら「ね」は干支の子ってことか?」
さらに続いて黒川の問いにも神子は頷いた。
「神のネズミで神子か……御大層な名前だ」
「でもそれくらいの名前がつくくらいには、神子は強いよ」
「……それならこれから行くクエストで力を発揮してもらいましょう」
半分以上疑っているような顔をしている黒川は神子の強さを見るのとお金稼ぎの両方を行うことにした。
「あぁ、神子の力を見て驚くといいさ」
☆
神子は星宮の肩に器用に乗り四人が冒険者登録をしてクエストを受けるところを見ていた。
そしてそれぞれの名前が分かった。
男子が黒川真司、ギャル女子が空門心春。ゆるふわ女子が加納円香。
暇な時間に神子は何も聞けないが星宮が四人の設定を教えてくれ、四人は幼馴染で一緒に村から出てきたというロールだと教えられた。
「最初はゴブリンじゃなかったのか……」
黒川が選ぼうとしていたゴブリン討伐はDランクであったためFランクの黒川たちは受注することができなかったため黒川は少しだけ落ち込んでいた。
結局選ばされたのは冒険者の登竜門だと説明を受けた「サベージバード」であった。
「人型で知性もあるのだから最初は難しいだろうね」
「分かってますよ」
「分かってるなら言うなっての」
黒川が言うことすべてに悪態をついている空門はもはや慣れたもの。
四人と一匹は王都から出てサベージバードが繁殖している場所に向かう。
高い木を住処にしているサベージバードは普通の烏よりも二回りほど大きく、長い嘴に進化していた。
サベージバードはすぐさま四人のことを見つけ、それを神子はすぐに気が付いた。
「ここら辺ですよね」
「指示されている地図はここだし、サベージバードは高い木にいると説明がされている。上かな?」
星宮たち四人が一斉に見上げれば、夥しい数のサベージバードが目を光らせながら四人のことを見ていた。
「ッ! 気付かれているぞ!」
黒川が腰の剣を抜く前にサベージバードたちは一斉に四人に嘴を向け飛んできた。
四人全員が当たると思ったその時、サベージバードは四人のもとに到達する前に地面に叩きつけられた。
「神子、キミがやってくれたんだね?」
すぐさまその光景を理解した星宮が神子にそう聞けば神子は頷いた。
「……マジか。こんなことができるのかすげぇ……!」
「神子すごいじゃん! できるネズミですごっ!」
「神子ちゃんすごいねー!」
三人が大絶賛してドヤ顔風の態度をとっている神子。
「これ、どういう力なんですか?」
「あまりよく分からないけど、重力を操ることができるみたいだね」
「へー、ホントに俺たちよりも強いな……あれ、こいつら死んでない」
サベージバードが未だに地面に縫い付けられているだけのことに黒川は気が付いた。
「重力は操れても殺せないのか」
「いや、そんなはずはないよ。前回は悪霊たちを捻り潰していたからね」
「は? それならどうして……あっ、俺たちに殺させようとしているのか!」
黒川が即座に神子を見れば神子は大きく頷いた。
「な、なんてできるネズミなんだ!」
黒川が誰を対象として、どうしてそんなことを思ったのかは黒川しか知る由がない。
「今は神子の力を借りてレベルも上げましょう」
「レベルって上げる必要ある?」
黒川の声掛けに空門は疑問を呈する。
「そりゃあるだろ。この世界はファンタジーなんだからレベルが上がらないことには死ぬぞ」
「いやでも前回の世界じゃ対して能力が上がってなかったじゃん。それなのに上げる必要があるのかって言ってんの」
少し煽るように黒川に言い返す空門。
「前回何レベルで終わったんだい?」
「あたし13!」
「私は12かな」
「俺は15です。星宮さんはいくつですか?」
「僕は21だね。たぶんだけど、ステータス文字が変わるタイミングでかなりステータスが上がるんだと思うよ」
「Fから変わるんですか!? 何レベで!?」
「16だったかな。だからレベルは上げて行こう」
「はーい」
星宮の言葉なら納得する空門を見て少しイラっとしている黒川。
「まあ普通に考えれば――」
「はいダーメ。これ以上言ったらまた喧嘩になるよ?」
黒川の口に人差し指を当てて止めるゆるふわ女子。それをされたから黒川も顔を赤くしながら黙る。
「依頼をこなしつつレベルも上げる。今日はこれで行こうか」
星宮の言葉に全員が頷いた。
☆
「……なるほど、こういう感じだったのか」
神子から送られてきた思念で他プレイヤーがどんな行動をしていたのかが分かった。
向こうは向こうで頑張っている様子だが、何をやるのかを分かっていないってことは細かいロールミッションを与えられていないってことか?
まあそれは運命が交わり合った時にでも訊いてみることにしよう。
でも俺から会うことはないしどれくらい世界が続くのかは分からないがこれから全く会わない可能性だってある。
それよりも今はこの世界をクリアすることだな。それにこの村を快適にすることも俺のロールでもあるからな。
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それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
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