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第二ミッション
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前回の世界では眠ることができないほど短い期間でのゲームだったからこうして寝て起きることが久しぶりな感じがした。
最初に戻る感覚も眠りから起こされる感覚ではあるがあれは心臓に悪そうな目覚めだから、普通の目覚めの方が気持ちいい。
「……時間が分からないのか」
癖で壁を見渡したが掛け時計がなかったから今の時間が分からなかった。
壁を見渡せば自ずと俺の左右で俺の腕を枕にしている二人に目がいった。
「えへ……ハルさまぁ……」
片や気持ちのいい夢を見ているのかうっすら笑って俺の名前を呼ぶエイミー。
「すぅ……すぅ……」
片や俺の体にピッタリとくっついて寝ているエレナ。
エイミーとエレナは全裸で寝ているのは昨日の夜、二人で夜這いをかけに来たからだ。
まあそれを拒む理由はないし、神性の魔力を送るためには房中術をするしかないとエイミーとエレナに説得? されたため大人しく受け入れ二人を貪った。
今までも性欲が強い方だとは思っていたがどうやら鬼神のスキルのおかげかステータスのおかげか、色々とパワーアップしていて二人が気を失っても満足できなかった。
「うお」
むき出しの下半身を見れば夢精していた。精通してからは数日くらい夢精のことに悩んでいたがこれは本格的に二人に頑張ってもらわないといけないかもしれない。
まずは二人を起こさなければと思った矢先、三回のノックと共に声が聞こえてきた。
「おはようございます、晴明様。クセニアです」
「はい、どうぞ」
クセニアとは俺に質問をしてきた生真面目そうなメイドさんだ。
「失礼します」
クセニアさんが扉を開けこちらの様子を見てもなんともない顔をしていた。
別にセクハラみたいなことを企んでいたわけでもないし、メイドさんならいっかなと思った。
「昨日はお楽しみのようでしたね」
「はい、それはとても」
「……ですが、まだお掃除が済んでいないご様子で」
「そうなんですよ。水浴びでもしようかなと思っていたところです」
「いえ、それには及びません。私にお任せください」
☆
朝の身支度と朝食を済ませた俺はアナスタシアさんに呼び出される。
もしかしなくてもロールミッションである頼みを三つ聞くのあれだよな。
「晴明、これからあなたにはやらなければいけないことがあるわ」
「昨日言っていたこととは別ですか?」
「根本的な部分では一緒ね。でもそれを解決するための問題ね」
ここで解決すべきことはマギア機関を大きくすること。そして俺は女性たちに天使の力を使いこなしてもらうために神性の魔力を送ること。
「まずここを天使の力を強めるための聖地にしなさい」
「聖地? ……この地に神性の魔力を振り撒けばいいんですか?」
「それだと力がとどまらないわよ。ここが龍穴ならともかくここは何ともない場所ね」
そんな場所を聖地にしろと言っているのか、このお嬢様は。
……でも要はここを神性な力で満たせばいいわけだろ。それなら陰陽術の知識にある結界術でそれができるはずだ。
「了解です。やってみますね」
「早くやればやるほど私たちの力も早く身に付くわよ」
アナスタシアさんが言ってくることは前回の世界のスキルがなければできなかったことだ。
「上手くできればご褒美をあげるから頑張りなさい」
「期待してもいいんですか?」
「あなたでは想像がつかないほどのご褒美をあげるわ」
「それなら全力で頑張りますね」
アナスタシアさんがどんなご褒美をくれるのかは分からないが相当期待してよさそうだ。
俺はアナスタシアさんの執務室から出てどうするかを考えながら歩いていた。
結界を張るだけなら簡単だがそれを神性のある場所にするってことが厄介だ。でもそもそも俺が作り出す結界が神性を帯びているわけだから後はそれをどうやって増幅、拡張をしていくかってことになるか。
……どうせだから俺の十二神獣の力を織り混ぜて作るか。そうすればかなり便利なところになりそう。
想像しただけでワクワクしてきたな……!
「ハル様!」
「晴明様!」
エイミーさんとエレナさんが俺の方に駆け寄って来て俺にタックル紛いの突撃をしてきた。
アナスタシアさんに呼び出されるまで一緒にいたし、何なら起きてから水浴びする時も一緒にいたのにまるで久しぶりみたいな感じで来るから可愛らしいと思ってしまう。
「大袈裟だなぁ」
俺はそんな二人を優しく抱き止める。
「そんなことないですよ! ハル様とずっと一緒にいたいって思ってるんですから!」
「私もです……!」
そんなことを言われてもな……俺この世界にずっといるわけじゃないし、そもそもこの世界がゲームの世界なのかどうなのかすら分かっていないから何とも言えない。
「お姉様から何を言われたのですか?」
「ここを聖地にしろって言われたよ」
「聖地って、天使様がいるような場所だよね……?」
「うん、そう」
「それを……?」
エイミーはまるで想像がつかないといった表情をしていた。
「大丈夫そうですか……?」
「大丈夫、俺に任せておきなさい。なんたって王子様なんだから」
不安そうな顔をしていたエレナだが俺の自信満々な言葉にホッとしていた。
「でもそんな簡単に聖地ってできるものなんですか?」
「できないと思うぞ」
聖地のことについて記憶を手繰ればこの世界の俺は何度もそういうところに行ったことがある。
聖地もそうだが魔境にも入ったことがある。結局はそこで強烈な力を放ったことで聖や魔が強く残っている状態の土地のことを言う。そこがエネルギーの噴出場所であることも要因ではあるが。
「それをやるんですか!?」
すごく期待の眼差しで俺のことを見てくるエイミー。
「やってみなければ分からないけど、やるよ」
俺の知識ではできると思っているから何の心配もしていない。それにできなければまた考えればいいだけの話だ。
外に出れば女性たちが休んでいたり体を動かしていたりしていた。
「晴明様! おはようございます!」
「王子さまー! おはよー!」
「王子様私頑張ってる! 褒めて褒めてー!」
女性たちに声をかけられるから俺はそれに返しつつ村の端にたどり着いた。
「ここはこれよりも広げたらダメなのか?」
村の境界線は俺が定めたものだがこれで文句を言われていないからこれでいいのだと思っていた。
だがここをマギア機関が住まうところにするのならもう少し広げてもいいかと思っている。
「うーん……あまり広くても管理しきれないと思います」
「でも結界を張ればそれ以降は俺じゃないと変えれないからな。人が増えた時のことを考えておきたい」
「待ってください」
俺が何気なく言った言葉にエレナは待ったをかけてきた。
「どうした?」
「……その言い方は、まるで晴明様がいなくなるみたいな言い方ですよね……?」
あー、そうか。俺はクリアすればいなくなると思っているからそう言ってしまった。
「そ、そうなんですか!? わ、私はハル様とずっと一緒にいるつもりですよ!」
「私もそのつもりです……!」
「そうなるかもしれないってことだ。まだ未来のことまでは分からないからな」
本当に分からないからな。そもそもゲームの世界なら気にせずに言えるのだろうが、もし、異世界転移みたいな感じなら。ここに残された人たちは俺がいなくなった後でも生きている。
その時のことを考えてやっていないと無責任男になってしまう。……何より、この世界がゲームの世界だとは思えないから異世界転移みたいに思っている。
「ずっと一緒、ですよ……?」
えっ、何でエレナは昨日会ったばかりなのに陽菜美みたいな雰囲気を出しているんだろうか。
「エレナが望むのなら一緒にいろ」
「私はどうなんですか!?」
「エイミーもそうだぞ。俺から手放すことは絶対にない」
「キャー! ずっと一緒にって言われた!」
大きく嬉しさを表現するエイミーと静かに嬉しそうにしているエレナは対照的だなぁと思った。
ただなー、俺がここから離れるみたいな言い方はタブーみたいだからなー。この囲っている村はかなり余裕があるから王都にしない限りは大丈夫か。
「よし、今から結界の柱を建てていくぞ」
またしても頼りにするのは神鳥だ。
神鳥は幻を司る。そして最終段階で本来の力を発揮すれば幻は現実となる。
まあさすがに神とか魔神とか人智を越えた存在は時間制限があるが結界の柱くらいなら現実の物としてずっと存在し続けれる。それに俺の十二神獣の力を少しは組み込むわけだから問題はない。
十二神獣の力をどれくらい組み込めばいいかと考えたが分からないから百分の一ほどで柱を作ってみる。
まず最初に作り出した柱は神子の力が込められた柱だ。
何となくだが神兎あたりから像を作れと言われそうな予感がしたから、柱に力を込めた神獣を柱の上に象ることにした。
「これくらいの力で大丈夫か?」
後ろにいる二人にそう聞いてみれば口を開けながら神子の像を見上げていた。
「どうした?」
「すごー……」
「……これほどの神性……は、晴明様、無理をなさらないでくださいね……?」
「無理はしていないぞ。百分の一程度の力を込めただけだ」
「えっ!? ハル様これの百倍の力を持ってるの!? すごいですね!」
「俺じゃなくて十二神獣の力だな。でもそうか、これで十分そうだな」
「十分という言葉を通り越してますよ……!」
「いいじゃないか、それでエレナやエイミーたちに神性が馴染みやすいだろ」
マギア機関の復活が早まるだけの話だ。
「それに神性だけじゃないからな、この柱は」
「どういう意味ですか……?」
「それはあとのお楽しみ。次に行こう」
二人の肩を抱いて次の位置に向かう。
神子から時計回りに神牛、神虎、神兎、神龍、神蛇、神馬、神羊、神猿、神鳥、神犬、神猪と像つきの柱を建てた。
「すごいですね……もう神性がかなり満ちています……!」
「今までと比較にならないくらいに体が軽いです!」
エレナとエイミーは神性を実感しているようだが俺には全く分からない。
「全く分からん……」
「えぇ!? こんなにすごいのに!?」
「おそらく晴明様御自身の神性が高いのでそこまで感じないのでしょう」
まああまり分からないがここにいる人たちが実感しているのならそれでいいか。
最後の仕上げとして結界の中央にあたる屋敷に向かう。中央はもちろんアナスタシアさんの執務室だ。
「アナスタシアさーん。結界の完成をお届けにきましたよー」
「……入りなさい」
アナスタシアさんの執務室にはまだアナスタシアさんがおり何か事務作業をしている様子だった。
「もうかなり神性に満たされているけれど、何をしたの?」
「結界を作っている最中ですよ。ここに杭を置けば、なんと完成です」
「なるほど、結界で聖地を作っているのね。でももう完成しているんじゃない?」
「いやまだです。今はまだ結界の基を建てただけですから」
「いや、ちょっと待ちなさい」
「いきまぁす!」
フハハ! 何も聞こえないぜー!
と俺はこの部屋の中央に杭を差し込んだことで結界は完成した。そうすれば俺でも分かるくらいの神性がこの地に満たされていた。
「これで聖地完成ですね」
満足しながらも周りを見れば全員がボーッとしているのが分かった。
「……えっ、やり過ぎた……?」
神性って高ければ高いほどいいんじゃないのか? そもそもこの程度は俺の足元くらいの神性だと思うから大丈夫だと思っていたんだけどなぁ。
『やりすぎですよ、神の遣い』
アナスタシアさんから聞こえた声はアナスタシアさんの声なのだが全く違う存在が喋っていると分かった。
「……誰だ?」
『ふふっ、さすがに分かりますか。えぇ、私はアナスタシア・スィオピではありません』
『私はこの子たちに力を与えている存在』
『名を、ガブリエル』
アナスタシアさんだけではなく、エレナとエイミーからも声を出しているガブリエルとやら。
「天使様か」
『その通りです。まさかここまで短時間で力を取り戻せるに至るとは思いもしませんでした』
「俺をそんじゃそこらの男と一緒にしてもらっては困りますね」
『ふふっ、そうですね。ですが』
アナスタシアさんの体を使いガブリエルさんが俺に近づいてきた。
『やりすぎです。神性は人間の身で受ければ人間性を崩壊しかねないものなのですよ?』
「そんなにですか? ……あっ、アナスタシアさんのお父さんがヤバ!」
ヤバ。何も考えずにやってしまったがあの人は天使の力を受けていない。だからまずいか。
今すぐに何とかしないと殺人になってしまう!
『その必要はありません』
「どういう?」
『そもそもスィオピ家はアナスタシアとエレナしかいません』
「……どういうことですか?」
『あの二人は私が作り出した人形です。人形であり、アナスタシアとエレナを守る者として存在しています』
「どうしてそんなことになっているんですか? 本当のお父さんとお母さんは、今は生きているんですか?」
『いいえ、アナスタシアとエレナが幼い頃にブラッドデーモンによって殺されています』
おいおい、こんなとんでもないことをどうしてアナスタシアさんとエレナは言ってくれなかったんだよ。
……いや、知らないのか……?
「もしかして、二人はこのことを」
『はい。父親と母親を作り出したのは二人を支えるためです。身体的にも、精神的にも』
「……そうですか」
『二人を騙していることを軽蔑しますか? これは私のエゴで、ブラッドデーモンに対抗するためにしたことです。打算でやっていると指摘されれば何も言い返せません』
「まるで懺悔をしているみたいですね」
『ふふっ、天使である私が変ですか?』
「いえ、天使様でもそういうことはあるでしょうね」
この世界に完璧な存在などいないのだろう。だからこそ懺悔は誰だってするものだ。
「誰だって乗り越えないといけないことはある。でもそれは覚悟ができた時だ。幼い頃ならなおさら乗り越えれないかもしれない。だからありがとう、天使様。二人を守ってくれて」
『……まさか、お礼を言われるとは思いもしませんでした』
「俺が口悪く罵るとでも思ったんですか? でも残念ながら頑張っている人を強く言えるほど俺は偉くないんですよ。それがお望みなら他を当たってください」
『ふふっ、そうですか。それならばこれからも頑張り続けることにしましょう』
「頑張れない時は俺が連れて行きますから覚悟しておいてくださいね」
『その時はお願いしますね』
天使様にこんなことを言うのはどうかと思ったけどまあいいや。
「てかどうしてガブリエル様が現れたんですか? 俺を注意するためですか?」
『それもありますが晴明のおかげで私はこうして力を取り戻すことができました』
「結果オーライってやつですか」
『結果オーライです。私の力を授けた娘たちが人間性を失う前に、私がその力を引き受けこうしてあなたの前に現れることができました』
「今まではできなかったんですか?」
『はい。私たちは魔神と同様にこちら側に干渉することができても行くことができません。さらにこの娘たちに力を授けたことで私の力はほとんど残っていませんでした。そこにあなたの莫大な神性を受け、力を授けている娘たちの肉体を借りて顕現に至りました』
「天使様だから気軽に来れるものだと思ってた……」
『ふふっ、そうなる日も近いですよ』
「へ?」
『私はここにいる娘たちの人間性を失われないように術をかけました。余分な神性を私に送る術をね』
「あぁ、それで。でもそれってアナスタシアさんたちが天使の力を使いこなせるようにはならないんですか?」
『いいえ。この娘たちが望めば、人間性は緩やかに失われて行き天使の力を使いこなせるようになります』
何か人間性って言葉をずっと使われているけど人間性って何だ?
「一つ聞いてもいいですか?」
『はい、一つじゃなくても構いませんよ』
「人間性って何ですか?」
『言葉の通りです。人間性がなくなれば、人間の寿命ではなくなり永遠にも近い命を持つようになります。さらに人間の体ではなくなり天使の肉体に変わっていくことになるでしょう』
「……それは彼女たちは知っているんですか?」
『はい。天使の力を使いこなせるようになるほど人間として乖離していくと。ですが彼女たちはそれでも使おうとしたのですよね?』
「そうですね。だから俺から言うことは何もありませんよ。ただアナスタシアさんたちがしたいようにやるだけです」
『ふふっ、ありがとうございます。この娘たちのことをよろしくお願いしますね』
「言われなくても。それに来れるようになれば顔を出してくださいよ」
『……ぜひ』
はにかんだ顔をしながらガブリエル様の気配は消えた。
「あら、私は何を……」
「は、晴明様の前でボーっとして恥ずかしい……!」
「何かふわふわとしてたなぁ……」
三人の意識が戻ったのを確認できた。それに三人が何も覚えていないことも分かった。
「あっ、聞きそびれた」
そう言えばガブリエル様が俺のことを一番最初に神の遣いって言ってたのを聞くのを忘れていた。
本当に俺たちは神に呼ばれてこの世界に来たのかということを聞き忘れたが、まあまた会えるだろう。
「晴明、何があったのかしら?」
俺の目の前にいるアナスタシアさんがまるで尋問をするかのような声色でそう聞いてきた。
口止めされていないからガブリエル様のことは言ってもいいだろうが、父親と母親のことは言うつもりはない。
「さっき――」
俺はガブリエル様が三人の体に乗り移ってきたこと、そして俺の強い神性を受けても平気なことを伝えた。
「そう、天使が来たのね。……許可なく私の体を使うなんて何様のつもりかしら」
力を授けてくれた天使であろうともその言い草はさすがアナスタシアさん。
「それで私たちの体は緩やかに天使の力を使えるようになるわけね」
「そういうことですね」
「まあそれがいいのでしょうね。この段階で強く天使の力を使えるようになっても私たちは戦えないのだから妥当ね」
俺は天使の力がどんなものなのか、この村の女性たちがどれほど強いのかは分からないがどうやらそこは時間をかけないといけないみたいだ。
「そ・れ・か・ら」
アナスタシアさんは俺の頬に手を伸ばし、俺の頬をつねって引っ張ってきた。しかも両手で俺の両頬を引っ張ってくる。
「私、待ちなさいって言ったわよね? それなのにどうしてやったのかしら?」
すごい圧で俺のことをにらんでくるアナスタシアさん。やっぱり美人は怒っても美人だなと思いながら口を開く。
「上手くできたからすべてよしですね!」
「そんなわけないでしょ」
アナスタシアさんは切れながら俺の頬を思いっきり引っ張るが一切俺にダメージは入らない。
「お、お姉様!」
「なに?」
エレナがたまらずアナスタシアさんに話しかけるがギロリとエレナに視線を向ければエレナは一瞬怯むが言葉を紡ぐ。
「晴明様はちゃんとお姉様からのお仕事をこなしたと思います!」
「ふーん、そう」
意を決して俺を助けてくれたエレナだがアナスタシアさんにビクついている。
「そもそも私は怒っていないわ。どうして待たなかったのかって聞いているだけよ」
「あれは怒ってるよね」
「なに?」
「いえなにも!」
エイミーがこっそりとエレナに話しかければすぐにアナスタシアさんにバレた。
「いい? 次からは私の言うことを聞きなさい」
「時と場合によりますが、分かりました」
まあ今回のことで少し反省したしちゃんとどうなるかを聞いてから好き勝手しよう。
「それよりもアナスタシアさん」
俺の頬から手を放して席に着こうとするアナスタシアさんに声をかける。
「なに? 今日のところはお願いはないわよ」
「いやそうじゃなくて。ご褒美のことを忘れてませんよね?」
アナスタシアさんから解放された俺の頬をエレナとエイミーが左右から俺の頬を撫でていたわってくれながらそう問う。
「私が忘れるわけがないわよ。今日の夜に私の部屋に来なさい」
「了解です」
どんなご褒美をくれるのか楽しみにしておこうか。
「むー! 晴明様行きましょう!」
なんだか途中から俺の頬をつねり始めたエレナが俺の腕を組んで一緒に外に出ようとするがその前にアナスタシアさんにお願いがあったんだった。
「アナスタシアさん。西にある空いているスペースを使ってもいいですか?」
「なにに使うの?」
「建物を建てるんですよ」
「……いいわ。何を作るのか楽しみにしているわ」
「行きますよ……!」
「分かった分かった」
エレナに引かれて俺たちは部屋から出る。
「エレナ、もしかしてお姉さんに嫉妬してるの?」
「……してるかも」
エイミーは俺と手をつなぎながらエレナにそう聞けば素直にそう答えた。
「まだ、分からない……」
「新しい感情の芽吹きか。それはいいことだ」
「いいこと、ですか?」
「感情を知れば知るほど人生の深みが出るものだ。俺は楽しいがいっぱいあるから人生ちょー楽しいぞ」
「楽しいが……」
「存分に新しい感情を楽しむといいさ」
「ならハル様は最近どんな楽しいことがあったんですか?」
「エイミーとエレナと出会えたこと」
「キャー! 出会えたことが楽しいって言われた!」
出会いは一番いい刺激だからな。俺はこの世界に来て最高に楽しんでいる。
「それで何を建てるんですか?」
興奮している中でエイミーは俺が建てるものを聞いてきた。
「ん? ショッピングモール」
「しょっぴんぐもーる?」
俺がこれを作り出そうとした経緯はロールミッションのひとつ、士気を六十%以上を維持があったからだ。
モチベーションを保つにはそれに伴うご褒美が必要だし、娯楽があった方が断然やる気が出るだろうと思った。
だから俺は現代技術を神鳥で出せないかと思ったわけだ。
それに俺もスマホを触りたいし何ならゲームをしたいと思っている。だが、問題なのは神鳥ではスマホやゲーム機が作れてネットが作れるとする。でもゲームソフトを作ることができない。
そういう創作は別分野になるからなー。結局は俺の想像力次第になるわけで、俺は創作者ではないから作れないってわけだ。でもSNSやらスマホは作ることができるからそこは作ろうって魂胆だ。
「ショッピングモールって何ですか!?」
「まあ色々なものが置いてある場所だな。とにかく作れば分かる」
俺たち三人は空いている西のスペースに向かう。
「うわぁ!? 何かめっちゃ育ってる!?」
向かう道中、通りかかった家のところからそんな声が聞こえてきた。
「どうしたんですかね?」
「行ってみるか」
まあ想像はつくなと思いつつ声の方に向かえば作物を育てている場所で、すでに出来上がっておりさらに大きな実をつけていた。
「うわぁ……すごいですね……!」
「そうだね! すごいね!」
「あっ、王子様!」
エレナとエイミーは育っている作物を見て驚き、作物を担当していた女性が媚びるような笑みを浮かべながら俺に近寄って来た。
ちなみにこの担当は毎月ごとに交代することになっているらしい。それを昨日の夜にエイミーから聞いた。
「王子さまー、すごいことになってるんですよー」
「作物が大きくなっていることか?」
「はい!」
「あぁ、これは俺がやったことだから気にしなくていいぞ」
「はい?」
「晴明様、どういうことですか?」
「俺が作った結界はここの神性を高めることが目的ではあるが、それに加えて俺の十二神獣は円環を成している。つまり作物や木々が育ちやすくなっているということだな」
「よく分からないけど……さすが王子様です!」
「そんなことまでできるなんてハル様すごい!」
「さすが晴明様です……!」
うむ、この持ち上がり様が何だかキャバクラに来ているみたいだ。
作物担当の女性と分かれ、西の空きスペースにたどり着いた。
「神鳥」
ホントに何度もごめんね? でも他の奴みたいに文句を言わない社畜だからついつい頼ってしまうんですよ。
そして空きスペースにでかでかとショッピングモールが完成した。
「これがショッピングモールだ」
二人は口を開けてショッピングモールを見上げていた。
確かにこちらはこういう建物がないから不思議か。
「な、何だかワクワクしてくるね!」
「そ、そうかな……?」
楽しそうに建物を見るエイミーと困惑した様子のエレナとまた対照的だ。ただエレナはたぶん感情が分かってない感じがするな。
「見て回ろうか」
「はい!」
二人と一緒にショッピングモールの中に入る。
ここは俺が陽菜美とよく行くショッピングモールだから裏方以外は大体分かっている。裏方もまあ想像で作れば何とかなった。
俺は記憶力がいい方だがこういう時に役立つとは思わなかった。でも本屋とかゲームソフト販売店はどうしても無理だからな。そこは諦めてもらうか別でこの世界の本を入れるかだな。
「うわぁ……どこもかしこもキラキラしてる……!」
エイミーはすごくキョロキョロと周りを見て先へ先へと進んでいた。
「……不思議な、ところですね」
その一方でエレナは不安げに俺の腕をとって周りを見ていた。
「こういうところは苦手か?」
「……よく、分かりません。今まではずっとお屋敷にいたのでこういうところは新鮮に感じます」
あぁ、そう言えば昨日屋敷から連れ出した時でもキョロキョロとしていたな。
「よく分からないことはゆっくりと知っていけばいいさ」
「……私にできるでしょうか?」
「やろうと思えばできる。俺が一緒にいれば怖くないだろ?」
「……はい!」
エレナは少し表情を和らげ、俺の手を強く握りながら不安がない足取りになった。
「あれは何ですか!?」
「服屋」
「あれは何ですか!?」
「女性用の下着屋」
「あれは何ですか!?」
「エスカレーター」
「あれは何ですか!?」
「腕時計」
「あれは何ですか!?」
「雑貨屋」
興奮した様子のエイミーが次々と質問をしてくるから俺はすべてに返答する。
そう言えば雑貨とかそういう文明レベルは俺がいた世界の方が高いからここで選んで使えれば便利だし楽しくなるだろう。
でもな、どうしても俺の知識ではショッピングモールは限界が来る。俺は探求者であって創作者ではないからなー。
ただエイミーたちが満足するには時間がかなりかかるだろうからクリアするまでは大丈夫そう。
ホント、この世界がどういうことなのか未だに分かっていないから対処に困るんだよな。二度と来れない感じで本気は出しているんだけどな。
「うわ! このベッドフカフカですよ!?」
家具が置かれているお店のベッドコーナーに来て、エイミーがフカフカのベッドにダイブした。
「私これ欲しいです! お部屋に持って帰ってもいいですか!?」
「それなら持って帰らなくても神鳥が作るよ」
「神鳥様って何でもできるんですね……! 像にお祈りしないと」
それくらいのレベルだよな、本当に。
「ほらエレナも来て!」
「う、うん……」
エイミーに誘われてエレナはゆっくりとベッドの方に近寄ってエイミーの横に座る。
「うわぁ……すごい……!」
「寝てみたらもっとすごいよ!」
「うん!」
エイミーに言われるがままにベッドに横になったエレナは驚いた顔をしていたし次第に眠たそうにしていた。
「喜んでくれて何よりだ。全員から要望を聞いて揃えるのもアリだな」
幸いにしてここにいる女性たちは多いわけではない。
エレナの母親を除けばここにいる女性たちは十七人。全員から要望を聞ける人数だ。
「それはいい考えだと思います! それよりもハル様もこっちに来ませんか?」
「じゃあ遠慮なく」
エイミーから誘われるまでもなく俺は同じベッドに寝転がるつもりだった。
眠そうにしているエレナの隣で寝転がろうかと思えばエレナがジロッと視線を向けてきた。
「ここぉ……!」
示してきたのはエレナとエイミーの間だから素直に間に入ることにした。
枕があるのに俺の腕枕を使う二人に挟まれ、俺も一緒に寝ることにした。
どうせやるのなら生活回りも変えておくのがいいかな。
最初に戻る感覚も眠りから起こされる感覚ではあるがあれは心臓に悪そうな目覚めだから、普通の目覚めの方が気持ちいい。
「……時間が分からないのか」
癖で壁を見渡したが掛け時計がなかったから今の時間が分からなかった。
壁を見渡せば自ずと俺の左右で俺の腕を枕にしている二人に目がいった。
「えへ……ハルさまぁ……」
片や気持ちのいい夢を見ているのかうっすら笑って俺の名前を呼ぶエイミー。
「すぅ……すぅ……」
片や俺の体にピッタリとくっついて寝ているエレナ。
エイミーとエレナは全裸で寝ているのは昨日の夜、二人で夜這いをかけに来たからだ。
まあそれを拒む理由はないし、神性の魔力を送るためには房中術をするしかないとエイミーとエレナに説得? されたため大人しく受け入れ二人を貪った。
今までも性欲が強い方だとは思っていたがどうやら鬼神のスキルのおかげかステータスのおかげか、色々とパワーアップしていて二人が気を失っても満足できなかった。
「うお」
むき出しの下半身を見れば夢精していた。精通してからは数日くらい夢精のことに悩んでいたがこれは本格的に二人に頑張ってもらわないといけないかもしれない。
まずは二人を起こさなければと思った矢先、三回のノックと共に声が聞こえてきた。
「おはようございます、晴明様。クセニアです」
「はい、どうぞ」
クセニアとは俺に質問をしてきた生真面目そうなメイドさんだ。
「失礼します」
クセニアさんが扉を開けこちらの様子を見てもなんともない顔をしていた。
別にセクハラみたいなことを企んでいたわけでもないし、メイドさんならいっかなと思った。
「昨日はお楽しみのようでしたね」
「はい、それはとても」
「……ですが、まだお掃除が済んでいないご様子で」
「そうなんですよ。水浴びでもしようかなと思っていたところです」
「いえ、それには及びません。私にお任せください」
☆
朝の身支度と朝食を済ませた俺はアナスタシアさんに呼び出される。
もしかしなくてもロールミッションである頼みを三つ聞くのあれだよな。
「晴明、これからあなたにはやらなければいけないことがあるわ」
「昨日言っていたこととは別ですか?」
「根本的な部分では一緒ね。でもそれを解決するための問題ね」
ここで解決すべきことはマギア機関を大きくすること。そして俺は女性たちに天使の力を使いこなしてもらうために神性の魔力を送ること。
「まずここを天使の力を強めるための聖地にしなさい」
「聖地? ……この地に神性の魔力を振り撒けばいいんですか?」
「それだと力がとどまらないわよ。ここが龍穴ならともかくここは何ともない場所ね」
そんな場所を聖地にしろと言っているのか、このお嬢様は。
……でも要はここを神性な力で満たせばいいわけだろ。それなら陰陽術の知識にある結界術でそれができるはずだ。
「了解です。やってみますね」
「早くやればやるほど私たちの力も早く身に付くわよ」
アナスタシアさんが言ってくることは前回の世界のスキルがなければできなかったことだ。
「上手くできればご褒美をあげるから頑張りなさい」
「期待してもいいんですか?」
「あなたでは想像がつかないほどのご褒美をあげるわ」
「それなら全力で頑張りますね」
アナスタシアさんがどんなご褒美をくれるのかは分からないが相当期待してよさそうだ。
俺はアナスタシアさんの執務室から出てどうするかを考えながら歩いていた。
結界を張るだけなら簡単だがそれを神性のある場所にするってことが厄介だ。でもそもそも俺が作り出す結界が神性を帯びているわけだから後はそれをどうやって増幅、拡張をしていくかってことになるか。
……どうせだから俺の十二神獣の力を織り混ぜて作るか。そうすればかなり便利なところになりそう。
想像しただけでワクワクしてきたな……!
「ハル様!」
「晴明様!」
エイミーさんとエレナさんが俺の方に駆け寄って来て俺にタックル紛いの突撃をしてきた。
アナスタシアさんに呼び出されるまで一緒にいたし、何なら起きてから水浴びする時も一緒にいたのにまるで久しぶりみたいな感じで来るから可愛らしいと思ってしまう。
「大袈裟だなぁ」
俺はそんな二人を優しく抱き止める。
「そんなことないですよ! ハル様とずっと一緒にいたいって思ってるんですから!」
「私もです……!」
そんなことを言われてもな……俺この世界にずっといるわけじゃないし、そもそもこの世界がゲームの世界なのかどうなのかすら分かっていないから何とも言えない。
「お姉様から何を言われたのですか?」
「ここを聖地にしろって言われたよ」
「聖地って、天使様がいるような場所だよね……?」
「うん、そう」
「それを……?」
エイミーはまるで想像がつかないといった表情をしていた。
「大丈夫そうですか……?」
「大丈夫、俺に任せておきなさい。なんたって王子様なんだから」
不安そうな顔をしていたエレナだが俺の自信満々な言葉にホッとしていた。
「でもそんな簡単に聖地ってできるものなんですか?」
「できないと思うぞ」
聖地のことについて記憶を手繰ればこの世界の俺は何度もそういうところに行ったことがある。
聖地もそうだが魔境にも入ったことがある。結局はそこで強烈な力を放ったことで聖や魔が強く残っている状態の土地のことを言う。そこがエネルギーの噴出場所であることも要因ではあるが。
「それをやるんですか!?」
すごく期待の眼差しで俺のことを見てくるエイミー。
「やってみなければ分からないけど、やるよ」
俺の知識ではできると思っているから何の心配もしていない。それにできなければまた考えればいいだけの話だ。
外に出れば女性たちが休んでいたり体を動かしていたりしていた。
「晴明様! おはようございます!」
「王子さまー! おはよー!」
「王子様私頑張ってる! 褒めて褒めてー!」
女性たちに声をかけられるから俺はそれに返しつつ村の端にたどり着いた。
「ここはこれよりも広げたらダメなのか?」
村の境界線は俺が定めたものだがこれで文句を言われていないからこれでいいのだと思っていた。
だがここをマギア機関が住まうところにするのならもう少し広げてもいいかと思っている。
「うーん……あまり広くても管理しきれないと思います」
「でも結界を張ればそれ以降は俺じゃないと変えれないからな。人が増えた時のことを考えておきたい」
「待ってください」
俺が何気なく言った言葉にエレナは待ったをかけてきた。
「どうした?」
「……その言い方は、まるで晴明様がいなくなるみたいな言い方ですよね……?」
あー、そうか。俺はクリアすればいなくなると思っているからそう言ってしまった。
「そ、そうなんですか!? わ、私はハル様とずっと一緒にいるつもりですよ!」
「私もそのつもりです……!」
「そうなるかもしれないってことだ。まだ未来のことまでは分からないからな」
本当に分からないからな。そもそもゲームの世界なら気にせずに言えるのだろうが、もし、異世界転移みたいな感じなら。ここに残された人たちは俺がいなくなった後でも生きている。
その時のことを考えてやっていないと無責任男になってしまう。……何より、この世界がゲームの世界だとは思えないから異世界転移みたいに思っている。
「ずっと一緒、ですよ……?」
えっ、何でエレナは昨日会ったばかりなのに陽菜美みたいな雰囲気を出しているんだろうか。
「エレナが望むのなら一緒にいろ」
「私はどうなんですか!?」
「エイミーもそうだぞ。俺から手放すことは絶対にない」
「キャー! ずっと一緒にって言われた!」
大きく嬉しさを表現するエイミーと静かに嬉しそうにしているエレナは対照的だなぁと思った。
ただなー、俺がここから離れるみたいな言い方はタブーみたいだからなー。この囲っている村はかなり余裕があるから王都にしない限りは大丈夫か。
「よし、今から結界の柱を建てていくぞ」
またしても頼りにするのは神鳥だ。
神鳥は幻を司る。そして最終段階で本来の力を発揮すれば幻は現実となる。
まあさすがに神とか魔神とか人智を越えた存在は時間制限があるが結界の柱くらいなら現実の物としてずっと存在し続けれる。それに俺の十二神獣の力を少しは組み込むわけだから問題はない。
十二神獣の力をどれくらい組み込めばいいかと考えたが分からないから百分の一ほどで柱を作ってみる。
まず最初に作り出した柱は神子の力が込められた柱だ。
何となくだが神兎あたりから像を作れと言われそうな予感がしたから、柱に力を込めた神獣を柱の上に象ることにした。
「これくらいの力で大丈夫か?」
後ろにいる二人にそう聞いてみれば口を開けながら神子の像を見上げていた。
「どうした?」
「すごー……」
「……これほどの神性……は、晴明様、無理をなさらないでくださいね……?」
「無理はしていないぞ。百分の一程度の力を込めただけだ」
「えっ!? ハル様これの百倍の力を持ってるの!? すごいですね!」
「俺じゃなくて十二神獣の力だな。でもそうか、これで十分そうだな」
「十分という言葉を通り越してますよ……!」
「いいじゃないか、それでエレナやエイミーたちに神性が馴染みやすいだろ」
マギア機関の復活が早まるだけの話だ。
「それに神性だけじゃないからな、この柱は」
「どういう意味ですか……?」
「それはあとのお楽しみ。次に行こう」
二人の肩を抱いて次の位置に向かう。
神子から時計回りに神牛、神虎、神兎、神龍、神蛇、神馬、神羊、神猿、神鳥、神犬、神猪と像つきの柱を建てた。
「すごいですね……もう神性がかなり満ちています……!」
「今までと比較にならないくらいに体が軽いです!」
エレナとエイミーは神性を実感しているようだが俺には全く分からない。
「全く分からん……」
「えぇ!? こんなにすごいのに!?」
「おそらく晴明様御自身の神性が高いのでそこまで感じないのでしょう」
まああまり分からないがここにいる人たちが実感しているのならそれでいいか。
最後の仕上げとして結界の中央にあたる屋敷に向かう。中央はもちろんアナスタシアさんの執務室だ。
「アナスタシアさーん。結界の完成をお届けにきましたよー」
「……入りなさい」
アナスタシアさんの執務室にはまだアナスタシアさんがおり何か事務作業をしている様子だった。
「もうかなり神性に満たされているけれど、何をしたの?」
「結界を作っている最中ですよ。ここに杭を置けば、なんと完成です」
「なるほど、結界で聖地を作っているのね。でももう完成しているんじゃない?」
「いやまだです。今はまだ結界の基を建てただけですから」
「いや、ちょっと待ちなさい」
「いきまぁす!」
フハハ! 何も聞こえないぜー!
と俺はこの部屋の中央に杭を差し込んだことで結界は完成した。そうすれば俺でも分かるくらいの神性がこの地に満たされていた。
「これで聖地完成ですね」
満足しながらも周りを見れば全員がボーッとしているのが分かった。
「……えっ、やり過ぎた……?」
神性って高ければ高いほどいいんじゃないのか? そもそもこの程度は俺の足元くらいの神性だと思うから大丈夫だと思っていたんだけどなぁ。
『やりすぎですよ、神の遣い』
アナスタシアさんから聞こえた声はアナスタシアさんの声なのだが全く違う存在が喋っていると分かった。
「……誰だ?」
『ふふっ、さすがに分かりますか。えぇ、私はアナスタシア・スィオピではありません』
『私はこの子たちに力を与えている存在』
『名を、ガブリエル』
アナスタシアさんだけではなく、エレナとエイミーからも声を出しているガブリエルとやら。
「天使様か」
『その通りです。まさかここまで短時間で力を取り戻せるに至るとは思いもしませんでした』
「俺をそんじゃそこらの男と一緒にしてもらっては困りますね」
『ふふっ、そうですね。ですが』
アナスタシアさんの体を使いガブリエルさんが俺に近づいてきた。
『やりすぎです。神性は人間の身で受ければ人間性を崩壊しかねないものなのですよ?』
「そんなにですか? ……あっ、アナスタシアさんのお父さんがヤバ!」
ヤバ。何も考えずにやってしまったがあの人は天使の力を受けていない。だからまずいか。
今すぐに何とかしないと殺人になってしまう!
『その必要はありません』
「どういう?」
『そもそもスィオピ家はアナスタシアとエレナしかいません』
「……どういうことですか?」
『あの二人は私が作り出した人形です。人形であり、アナスタシアとエレナを守る者として存在しています』
「どうしてそんなことになっているんですか? 本当のお父さんとお母さんは、今は生きているんですか?」
『いいえ、アナスタシアとエレナが幼い頃にブラッドデーモンによって殺されています』
おいおい、こんなとんでもないことをどうしてアナスタシアさんとエレナは言ってくれなかったんだよ。
……いや、知らないのか……?
「もしかして、二人はこのことを」
『はい。父親と母親を作り出したのは二人を支えるためです。身体的にも、精神的にも』
「……そうですか」
『二人を騙していることを軽蔑しますか? これは私のエゴで、ブラッドデーモンに対抗するためにしたことです。打算でやっていると指摘されれば何も言い返せません』
「まるで懺悔をしているみたいですね」
『ふふっ、天使である私が変ですか?』
「いえ、天使様でもそういうことはあるでしょうね」
この世界に完璧な存在などいないのだろう。だからこそ懺悔は誰だってするものだ。
「誰だって乗り越えないといけないことはある。でもそれは覚悟ができた時だ。幼い頃ならなおさら乗り越えれないかもしれない。だからありがとう、天使様。二人を守ってくれて」
『……まさか、お礼を言われるとは思いもしませんでした』
「俺が口悪く罵るとでも思ったんですか? でも残念ながら頑張っている人を強く言えるほど俺は偉くないんですよ。それがお望みなら他を当たってください」
『ふふっ、そうですか。それならばこれからも頑張り続けることにしましょう』
「頑張れない時は俺が連れて行きますから覚悟しておいてくださいね」
『その時はお願いしますね』
天使様にこんなことを言うのはどうかと思ったけどまあいいや。
「てかどうしてガブリエル様が現れたんですか? 俺を注意するためですか?」
『それもありますが晴明のおかげで私はこうして力を取り戻すことができました』
「結果オーライってやつですか」
『結果オーライです。私の力を授けた娘たちが人間性を失う前に、私がその力を引き受けこうしてあなたの前に現れることができました』
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『はい。私たちは魔神と同様にこちら側に干渉することができても行くことができません。さらにこの娘たちに力を授けたことで私の力はほとんど残っていませんでした。そこにあなたの莫大な神性を受け、力を授けている娘たちの肉体を借りて顕現に至りました』
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「一つ聞いてもいいですか?」
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『言葉の通りです。人間性がなくなれば、人間の寿命ではなくなり永遠にも近い命を持つようになります。さらに人間の体ではなくなり天使の肉体に変わっていくことになるでしょう』
「……それは彼女たちは知っているんですか?」
『はい。天使の力を使いこなせるようになるほど人間として乖離していくと。ですが彼女たちはそれでも使おうとしたのですよね?』
「そうですね。だから俺から言うことは何もありませんよ。ただアナスタシアさんたちがしたいようにやるだけです」
『ふふっ、ありがとうございます。この娘たちのことをよろしくお願いしますね』
「言われなくても。それに来れるようになれば顔を出してくださいよ」
『……ぜひ』
はにかんだ顔をしながらガブリエル様の気配は消えた。
「あら、私は何を……」
「は、晴明様の前でボーっとして恥ずかしい……!」
「何かふわふわとしてたなぁ……」
三人の意識が戻ったのを確認できた。それに三人が何も覚えていないことも分かった。
「あっ、聞きそびれた」
そう言えばガブリエル様が俺のことを一番最初に神の遣いって言ってたのを聞くのを忘れていた。
本当に俺たちは神に呼ばれてこの世界に来たのかということを聞き忘れたが、まあまた会えるだろう。
「晴明、何があったのかしら?」
俺の目の前にいるアナスタシアさんがまるで尋問をするかのような声色でそう聞いてきた。
口止めされていないからガブリエル様のことは言ってもいいだろうが、父親と母親のことは言うつもりはない。
「さっき――」
俺はガブリエル様が三人の体に乗り移ってきたこと、そして俺の強い神性を受けても平気なことを伝えた。
「そう、天使が来たのね。……許可なく私の体を使うなんて何様のつもりかしら」
力を授けてくれた天使であろうともその言い草はさすがアナスタシアさん。
「それで私たちの体は緩やかに天使の力を使えるようになるわけね」
「そういうことですね」
「まあそれがいいのでしょうね。この段階で強く天使の力を使えるようになっても私たちは戦えないのだから妥当ね」
俺は天使の力がどんなものなのか、この村の女性たちがどれほど強いのかは分からないがどうやらそこは時間をかけないといけないみたいだ。
「そ・れ・か・ら」
アナスタシアさんは俺の頬に手を伸ばし、俺の頬をつねって引っ張ってきた。しかも両手で俺の両頬を引っ張ってくる。
「私、待ちなさいって言ったわよね? それなのにどうしてやったのかしら?」
すごい圧で俺のことをにらんでくるアナスタシアさん。やっぱり美人は怒っても美人だなと思いながら口を開く。
「上手くできたからすべてよしですね!」
「そんなわけないでしょ」
アナスタシアさんは切れながら俺の頬を思いっきり引っ張るが一切俺にダメージは入らない。
「お、お姉様!」
「なに?」
エレナがたまらずアナスタシアさんに話しかけるがギロリとエレナに視線を向ければエレナは一瞬怯むが言葉を紡ぐ。
「晴明様はちゃんとお姉様からのお仕事をこなしたと思います!」
「ふーん、そう」
意を決して俺を助けてくれたエレナだがアナスタシアさんにビクついている。
「そもそも私は怒っていないわ。どうして待たなかったのかって聞いているだけよ」
「あれは怒ってるよね」
「なに?」
「いえなにも!」
エイミーがこっそりとエレナに話しかければすぐにアナスタシアさんにバレた。
「いい? 次からは私の言うことを聞きなさい」
「時と場合によりますが、分かりました」
まあ今回のことで少し反省したしちゃんとどうなるかを聞いてから好き勝手しよう。
「それよりもアナスタシアさん」
俺の頬から手を放して席に着こうとするアナスタシアさんに声をかける。
「なに? 今日のところはお願いはないわよ」
「いやそうじゃなくて。ご褒美のことを忘れてませんよね?」
アナスタシアさんから解放された俺の頬をエレナとエイミーが左右から俺の頬を撫でていたわってくれながらそう問う。
「私が忘れるわけがないわよ。今日の夜に私の部屋に来なさい」
「了解です」
どんなご褒美をくれるのか楽しみにしておこうか。
「むー! 晴明様行きましょう!」
なんだか途中から俺の頬をつねり始めたエレナが俺の腕を組んで一緒に外に出ようとするがその前にアナスタシアさんにお願いがあったんだった。
「アナスタシアさん。西にある空いているスペースを使ってもいいですか?」
「なにに使うの?」
「建物を建てるんですよ」
「……いいわ。何を作るのか楽しみにしているわ」
「行きますよ……!」
「分かった分かった」
エレナに引かれて俺たちは部屋から出る。
「エレナ、もしかしてお姉さんに嫉妬してるの?」
「……してるかも」
エイミーは俺と手をつなぎながらエレナにそう聞けば素直にそう答えた。
「まだ、分からない……」
「新しい感情の芽吹きか。それはいいことだ」
「いいこと、ですか?」
「感情を知れば知るほど人生の深みが出るものだ。俺は楽しいがいっぱいあるから人生ちょー楽しいぞ」
「楽しいが……」
「存分に新しい感情を楽しむといいさ」
「ならハル様は最近どんな楽しいことがあったんですか?」
「エイミーとエレナと出会えたこと」
「キャー! 出会えたことが楽しいって言われた!」
出会いは一番いい刺激だからな。俺はこの世界に来て最高に楽しんでいる。
「それで何を建てるんですか?」
興奮している中でエイミーは俺が建てるものを聞いてきた。
「ん? ショッピングモール」
「しょっぴんぐもーる?」
俺がこれを作り出そうとした経緯はロールミッションのひとつ、士気を六十%以上を維持があったからだ。
モチベーションを保つにはそれに伴うご褒美が必要だし、娯楽があった方が断然やる気が出るだろうと思った。
だから俺は現代技術を神鳥で出せないかと思ったわけだ。
それに俺もスマホを触りたいし何ならゲームをしたいと思っている。だが、問題なのは神鳥ではスマホやゲーム機が作れてネットが作れるとする。でもゲームソフトを作ることができない。
そういう創作は別分野になるからなー。結局は俺の想像力次第になるわけで、俺は創作者ではないから作れないってわけだ。でもSNSやらスマホは作ることができるからそこは作ろうって魂胆だ。
「ショッピングモールって何ですか!?」
「まあ色々なものが置いてある場所だな。とにかく作れば分かる」
俺たち三人は空いている西のスペースに向かう。
「うわぁ!? 何かめっちゃ育ってる!?」
向かう道中、通りかかった家のところからそんな声が聞こえてきた。
「どうしたんですかね?」
「行ってみるか」
まあ想像はつくなと思いつつ声の方に向かえば作物を育てている場所で、すでに出来上がっておりさらに大きな実をつけていた。
「うわぁ……すごいですね……!」
「そうだね! すごいね!」
「あっ、王子様!」
エレナとエイミーは育っている作物を見て驚き、作物を担当していた女性が媚びるような笑みを浮かべながら俺に近寄って来た。
ちなみにこの担当は毎月ごとに交代することになっているらしい。それを昨日の夜にエイミーから聞いた。
「王子さまー、すごいことになってるんですよー」
「作物が大きくなっていることか?」
「はい!」
「あぁ、これは俺がやったことだから気にしなくていいぞ」
「はい?」
「晴明様、どういうことですか?」
「俺が作った結界はここの神性を高めることが目的ではあるが、それに加えて俺の十二神獣は円環を成している。つまり作物や木々が育ちやすくなっているということだな」
「よく分からないけど……さすが王子様です!」
「そんなことまでできるなんてハル様すごい!」
「さすが晴明様です……!」
うむ、この持ち上がり様が何だかキャバクラに来ているみたいだ。
作物担当の女性と分かれ、西の空きスペースにたどり着いた。
「神鳥」
ホントに何度もごめんね? でも他の奴みたいに文句を言わない社畜だからついつい頼ってしまうんですよ。
そして空きスペースにでかでかとショッピングモールが完成した。
「これがショッピングモールだ」
二人は口を開けてショッピングモールを見上げていた。
確かにこちらはこういう建物がないから不思議か。
「な、何だかワクワクしてくるね!」
「そ、そうかな……?」
楽しそうに建物を見るエイミーと困惑した様子のエレナとまた対照的だ。ただエレナはたぶん感情が分かってない感じがするな。
「見て回ろうか」
「はい!」
二人と一緒にショッピングモールの中に入る。
ここは俺が陽菜美とよく行くショッピングモールだから裏方以外は大体分かっている。裏方もまあ想像で作れば何とかなった。
俺は記憶力がいい方だがこういう時に役立つとは思わなかった。でも本屋とかゲームソフト販売店はどうしても無理だからな。そこは諦めてもらうか別でこの世界の本を入れるかだな。
「うわぁ……どこもかしこもキラキラしてる……!」
エイミーはすごくキョロキョロと周りを見て先へ先へと進んでいた。
「……不思議な、ところですね」
その一方でエレナは不安げに俺の腕をとって周りを見ていた。
「こういうところは苦手か?」
「……よく、分かりません。今まではずっとお屋敷にいたのでこういうところは新鮮に感じます」
あぁ、そう言えば昨日屋敷から連れ出した時でもキョロキョロとしていたな。
「よく分からないことはゆっくりと知っていけばいいさ」
「……私にできるでしょうか?」
「やろうと思えばできる。俺が一緒にいれば怖くないだろ?」
「……はい!」
エレナは少し表情を和らげ、俺の手を強く握りながら不安がない足取りになった。
「あれは何ですか!?」
「服屋」
「あれは何ですか!?」
「女性用の下着屋」
「あれは何ですか!?」
「エスカレーター」
「あれは何ですか!?」
「腕時計」
「あれは何ですか!?」
「雑貨屋」
興奮した様子のエイミーが次々と質問をしてくるから俺はすべてに返答する。
そう言えば雑貨とかそういう文明レベルは俺がいた世界の方が高いからここで選んで使えれば便利だし楽しくなるだろう。
でもな、どうしても俺の知識ではショッピングモールは限界が来る。俺は探求者であって創作者ではないからなー。
ただエイミーたちが満足するには時間がかなりかかるだろうからクリアするまでは大丈夫そう。
ホント、この世界がどういうことなのか未だに分かっていないから対処に困るんだよな。二度と来れない感じで本気は出しているんだけどな。
「うわ! このベッドフカフカですよ!?」
家具が置かれているお店のベッドコーナーに来て、エイミーがフカフカのベッドにダイブした。
「私これ欲しいです! お部屋に持って帰ってもいいですか!?」
「それなら持って帰らなくても神鳥が作るよ」
「神鳥様って何でもできるんですね……! 像にお祈りしないと」
それくらいのレベルだよな、本当に。
「ほらエレナも来て!」
「う、うん……」
エイミーに誘われてエレナはゆっくりとベッドの方に近寄ってエイミーの横に座る。
「うわぁ……すごい……!」
「寝てみたらもっとすごいよ!」
「うん!」
エイミーに言われるがままにベッドに横になったエレナは驚いた顔をしていたし次第に眠たそうにしていた。
「喜んでくれて何よりだ。全員から要望を聞いて揃えるのもアリだな」
幸いにしてここにいる女性たちは多いわけではない。
エレナの母親を除けばここにいる女性たちは十七人。全員から要望を聞ける人数だ。
「それはいい考えだと思います! それよりもハル様もこっちに来ませんか?」
「じゃあ遠慮なく」
エイミーから誘われるまでもなく俺は同じベッドに寝転がるつもりだった。
眠そうにしているエレナの隣で寝転がろうかと思えばエレナがジロッと視線を向けてきた。
「ここぉ……!」
示してきたのはエレナとエイミーの間だから素直に間に入ることにした。
枕があるのに俺の腕枕を使う二人に挟まれ、俺も一緒に寝ることにした。
どうせやるのなら生活回りも変えておくのがいいかな。
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