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07:討伐
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一番近いところだがよくよく考えれば歩きで行けばかなり時間がかかるな。
「マヤ様、これから走りますがよろしいですか?」
「遠慮していたのなら大丈夫よ。私ってこれでも動ける方だから」
「では参ります」
レコード魔法『強化魔法』を使い俺は走り始める。
マヤ様もしっかりとついてこれており強化魔法を使用しているのが分かった。
アストラル・アニムスによりマヤ様にとってちょうどいい速度を見極めて速度をあげる。
マヤ様もついてこれている様子で一気に蛾のモンスターがいる領地まで進んだ。
「おぉ……こんなことになっているのか」
蛾のモンスターがいる地域に近づけばそこだと分かるほどに変化している場所があった。
そこはまさに大森林とも言える場所だった。しかも巨木以外にも見覚えのある品種が巨大化している植物もあった。
それを視ればこの世代だけで進化した植物であることが分かった。まあ蛾のモンスターの鱗粉によってこうなったのは分かっていることだけど。
「ここにいるわ。大きいからすぐに分かるけど、あいつは他の生物をその鱗粉で使役することができる」
「人にもそれが可能なのですか?」
「いえ、それは無理。たぶん脳の構造が難しいからだと思う」
それならそこは心配しなくてもいいようだな。それに結局のところ鱗粉は有害であることに変わりないんだから気にすることは変わらない。
「早速来ましたね」
一直線に向かってくる複数の生命反応が視えた。
「マヤ様はいかがされますか?」
「もちろん戦うわ。こんなところまで来て後ろに隠れないわ」
「そうですか。では存分に」
だからと言ってマヤ様を放置するわけではないからマヤ様には自由にやってもらう。
マヤ様が杖を構えたところで大量のモンスターやら動物がこちらに押し寄せてきていた。
「グラビティ」
マヤ様はレコード魔法『重力魔法』を使って集団を一気に押し潰す。
レコード魔法を使う際の構築速度、魔力のロスなどを視ればかなり洗練されていることが分かった。
「自分が前衛で進みます」
「手加減してくださいね。私は優秀じゃありませんから」
「承知しました」
神剣を鞘から抜き俺は蛾のモンスターがいる中央地にて進み始める。
第二陣がこちらに向かってきているため今度は俺がやることにした。
籠手に刻まれているユニーク魔法『増加魔法』を使い、振るった剣から斬撃を増加させ飛ばし、その斬撃の数を増加させて一撃で第二陣を突破した。
「私いる?」
「ぜひマヤ様の勇姿を拝見させていただきたいですね」
「……セオ様よりも先に倒せって? 無茶を言うわ」
でもその声色はやる気に満ち溢れているから問題ないか。
第三陣、第四陣と来るがそれらを俺とマヤ様のコンビネーションで切り抜けていく。
基本的にマヤ様の重力魔法で倒すがそれで漏れたモンスターを俺が切り刻む。
強化魔法も切れることなく動き続けても大丈夫な様子だから並行魔法も使いこなしている。二つの魔法を使うには集中力が必要だからマヤ様はかなり修練を行ってきたんだろう。
マヤ様に感心しつつ進めば前方から広範囲の鱗粉攻撃が来た。
「ようやく来たか」
すぐに鱗粉攻撃が来るのかと思ったが使役モンスターたちしか来なかったからようやくかという気持ちがあった。
一番いい手である鱗粉攻撃をすぐにしなかったということは、何かしらの制限があるのではないかと予想する。
「どうするの?」
「ご心配なく」
そらすとか飛ばすとかそういう不確定なことはしない。すべてを消す、それが確実な方法だ。
俺が使おうとしているのはレコード魔法『切断魔法』。この切断魔法は正確に把握している場所じゃなければ魔法を使うことができない魔法だ。
単純な物質なら使うことができる魔法だが人体みたいな構造が複雑なものや他の魔法は普通の人は理解することができない。
ただ俺のアストラル・アニムスはアカシックレコードの情報を読み取ることができるためすべての情報を把握できる。だからこの切断魔法はアストラル・アニムスと相性が抜群にいい。
これほど使いづらいのにレコード魔法になっているのは戦闘じゃなければまあ使えるということだ。
対して今来ている鱗粉は普通の粉とは違って人体に有害で複雑な構造をしているから本来ならば切断魔法は使えない。
鱗粉をアストラル・アニムスを使い構造を把握。そして鱗粉を構築するすべてに対して切断魔法を使った。
すると鱗粉は綺麗サッパリそこから消えた。
すぐに消したことで俺とマヤ様は速度を落とさずに進む。
「すごいわね、一瞬で。私なんて結界魔法を張ってやり過ごすのが精一杯だったのに」
「あぁ、そのやり方で防いでいたんですね」
「でも鱗粉はそこに留まろうとするから苦労したわ……」
「それならもうその生活からはおさらばです」
ここで一際大きな大木が見えたと共にそこに引っ付いている巨大な蛾がいた。
白い羽を持ちその羽には鬼のような顔を持つ蛾のモンスターだった。
「まさか、オーガモスだったとは」
俺はそのモンスターのことを知っていた。
「知っているの?」
「はい。あれはSランクモンスターのオーガモス。個体ごとに違う性質の鱗粉を出すモンスターです」
「え、Sランクモンスター!? そんなのがいたのね……」
「しかも、ヤバイですね。卵がある」
葉にはびっしりと卵がついている。
「あれが孵化する前にこれて良かったです」
「……想像しただけでゾッとするわ」
ようやく分かったが鱗粉を出し渋っていたのは卵を産んだからか。
とにもかくにもこいつらを駆除しない限りはフロスト家が安心して暮らせないということだ。
「やります」
「お願いします、セオ様」
さすがにオーガモスには手を出すつもりはなくマヤ様は身を守ることに専念している。
そういうところは本当にありがたい。無駄に前に出られても時間がかかるだけだが、それはそれでご要望に応えるだけだ。
俺がある程度まで近づけばオーガモスは羽を少し動かしたのが分かった。
ただ俺は何もやらせるつもりはない。それで周りに影響を与えるのはスタイリッシュではない。
ルミナススターを使うつもりはないからここは力業で倒すとしよう。
「悪いな」
ここに来たことも人によって仕組まれたものだからオーガモスには少し同情する。
だがそれはそれ、これはこれ。ここは食物連鎖、弱肉強食が唯一のルールだとここで頂点を張っているこいつなら分かっているだろう。
アストラル・アニムスにてオーガモスの構造を把握。それと同時に神剣を振るって切断魔法を放った。
オーガモスは鱗粉を撒き散らすこともなく真っ二つになった。鱗粉すらも切ったからもうこの死体に何も害はない。
「さすが最高の騎士。あっという間ね」
「ありがとうございます」
「あれもやるのよね?」
マヤ様が見ているのは大量の卵だ。
「はい。オーガモスは卵からでもなつくことはありませんから」
「そう。お願い」
マヤ様の言葉で俺はオーガモスの卵をすべて殺した。
他にオーガモスの卵やら別個体がいないか視て確認したがここにいたのですべてだった。
……オーガモスはこいつ一体だった。それなのにどうして産卵できたんだ?
そう疑問に思ってアカシックレコードにて情報を巻き戻していく。
そうすればちゃんと答えは見えてきた。が、これは少し予想外な展開だ。俺にとってはな。
「セオ様? どうしたの?」
少し木の方を見ていればマヤ様に声をかけられた。
「マヤ様、少しお話よろしいですか?」
「……いいわよ」
俺の真剣な表情にマヤ様は頷いてくれた。
「まず自分がアカシックレコードを視る眼があります」
「へぇ、そんなことが。ということは、ここで何かを視たということね?」
随分とあっさり受け入れられることはさておき俺は話を進める。
「オーガモスが一体しかいないにもかかわらず産卵していることが不思議でした。なのでアカシックレコードを遡り産卵に至るまでの経緯を視ました」
「言われてみれば確かにそうね。それでどうだったの?」
「もう一体がどこかに行ったとかではなく、オーガモスに魔法で孕ませていた者がいました」
「……そんなことができるの?」
「モンスター調教師とかならやれる人はいます。ただその魔法を使っていた者が、獣人でした」
マヤ様は大きく目を見開いて驚いた。だがその後に少し心当たりのある顔をした。
「……そう。てっきり人間がやっているのかと思ったわ」
「自分もそうですね。それでマヤ様は犯人もしくはこれをする集団に心当たりはありませんか?」
「……ある。こっちに逃げてきた獣人って二種類いるの。こちらに友好的な獣人とこちらを支配しようとする獣人。たぶん後者がやっているんだと思う」
「どこもかしこも思惑だらけですね」
「ハァ、どこからも狙われているんだからいい迷惑よ。どう警戒すればいいのよ」
「いえ、そうとは限りませんよ。その支配しようとする獣人たちが、ディナトス王国の貴族と繋がっている可能性があります」
「……どうしてそんなことを? 獣人と手を組んでも意味ないわよ」
「もしかしたら、そういう獣人たちにフロスト家が抑えきれなくなり助けを求めてくるのを待っているのかもしれませんね」
「……それは厄介ね」
これ以上はこの場所で知ることはできない。
せめて現実で視ることができればそいつの過去を遡ることができるが、場所の指定だからこれが精一杯だ。
「ジェイダン様とフレヤ様はそういう獣人がいる場合、どういう対処をするおつもりか分かりますか?」
「……あの二人はかなり獣人に寛容だからある程度は見逃すかも」
「それはいけませんね。善悪の区別はきちんとしてもらわなければ」
「しかも獣人同士のいざこざがあった時、完全に悪い方を庇ったり窃盗をしたら家のなけなしの食材を渡して解決するわ。ふざけんな!」
あぁ、これはまずいな。
「それは騎士として主に進言しなければいけませんね」
「獣人が今まで蔑まれた分優しくするって、私たち関係ないじゃんか! なんで私たちが苦労するんだよ!」
愚痴をこぼした後に「あっ」といった表情をするマヤ様。
「ご、ごめんなさい! こんなことをセオ様に言っても八つ当たりなのに!」
「いえ、そう言いたい気持ちは分かります。それにその通りだと思います」
マヤ様の獣人や両親へのヘイトを甘く見ていたな。でもこれは思っても仕方がない。
「獣人を助けることと獣人の罪を見逃すことは違います。そこを混同しているジェイダン様がもし次同じことをすれば自分が注意します」
「……いいのですか?」
「忠義と盲信は違うってことですよ。間違っていれば正そうとするのが忠義です。それで自分が被害を受けるのはいいですが、それで他への被害や主が恥をかくのを防ぐのが騎士です」
「……ありがとうございます。やっぱりセオ様はすごいです」
「そんなことはないですよ」
まさかフロスト家がここまで酷いとは思っていなかった。
「マヤ様、これから走りますがよろしいですか?」
「遠慮していたのなら大丈夫よ。私ってこれでも動ける方だから」
「では参ります」
レコード魔法『強化魔法』を使い俺は走り始める。
マヤ様もしっかりとついてこれており強化魔法を使用しているのが分かった。
アストラル・アニムスによりマヤ様にとってちょうどいい速度を見極めて速度をあげる。
マヤ様もついてこれている様子で一気に蛾のモンスターがいる領地まで進んだ。
「おぉ……こんなことになっているのか」
蛾のモンスターがいる地域に近づけばそこだと分かるほどに変化している場所があった。
そこはまさに大森林とも言える場所だった。しかも巨木以外にも見覚えのある品種が巨大化している植物もあった。
それを視ればこの世代だけで進化した植物であることが分かった。まあ蛾のモンスターの鱗粉によってこうなったのは分かっていることだけど。
「ここにいるわ。大きいからすぐに分かるけど、あいつは他の生物をその鱗粉で使役することができる」
「人にもそれが可能なのですか?」
「いえ、それは無理。たぶん脳の構造が難しいからだと思う」
それならそこは心配しなくてもいいようだな。それに結局のところ鱗粉は有害であることに変わりないんだから気にすることは変わらない。
「早速来ましたね」
一直線に向かってくる複数の生命反応が視えた。
「マヤ様はいかがされますか?」
「もちろん戦うわ。こんなところまで来て後ろに隠れないわ」
「そうですか。では存分に」
だからと言ってマヤ様を放置するわけではないからマヤ様には自由にやってもらう。
マヤ様が杖を構えたところで大量のモンスターやら動物がこちらに押し寄せてきていた。
「グラビティ」
マヤ様はレコード魔法『重力魔法』を使って集団を一気に押し潰す。
レコード魔法を使う際の構築速度、魔力のロスなどを視ればかなり洗練されていることが分かった。
「自分が前衛で進みます」
「手加減してくださいね。私は優秀じゃありませんから」
「承知しました」
神剣を鞘から抜き俺は蛾のモンスターがいる中央地にて進み始める。
第二陣がこちらに向かってきているため今度は俺がやることにした。
籠手に刻まれているユニーク魔法『増加魔法』を使い、振るった剣から斬撃を増加させ飛ばし、その斬撃の数を増加させて一撃で第二陣を突破した。
「私いる?」
「ぜひマヤ様の勇姿を拝見させていただきたいですね」
「……セオ様よりも先に倒せって? 無茶を言うわ」
でもその声色はやる気に満ち溢れているから問題ないか。
第三陣、第四陣と来るがそれらを俺とマヤ様のコンビネーションで切り抜けていく。
基本的にマヤ様の重力魔法で倒すがそれで漏れたモンスターを俺が切り刻む。
強化魔法も切れることなく動き続けても大丈夫な様子だから並行魔法も使いこなしている。二つの魔法を使うには集中力が必要だからマヤ様はかなり修練を行ってきたんだろう。
マヤ様に感心しつつ進めば前方から広範囲の鱗粉攻撃が来た。
「ようやく来たか」
すぐに鱗粉攻撃が来るのかと思ったが使役モンスターたちしか来なかったからようやくかという気持ちがあった。
一番いい手である鱗粉攻撃をすぐにしなかったということは、何かしらの制限があるのではないかと予想する。
「どうするの?」
「ご心配なく」
そらすとか飛ばすとかそういう不確定なことはしない。すべてを消す、それが確実な方法だ。
俺が使おうとしているのはレコード魔法『切断魔法』。この切断魔法は正確に把握している場所じゃなければ魔法を使うことができない魔法だ。
単純な物質なら使うことができる魔法だが人体みたいな構造が複雑なものや他の魔法は普通の人は理解することができない。
ただ俺のアストラル・アニムスはアカシックレコードの情報を読み取ることができるためすべての情報を把握できる。だからこの切断魔法はアストラル・アニムスと相性が抜群にいい。
これほど使いづらいのにレコード魔法になっているのは戦闘じゃなければまあ使えるということだ。
対して今来ている鱗粉は普通の粉とは違って人体に有害で複雑な構造をしているから本来ならば切断魔法は使えない。
鱗粉をアストラル・アニムスを使い構造を把握。そして鱗粉を構築するすべてに対して切断魔法を使った。
すると鱗粉は綺麗サッパリそこから消えた。
すぐに消したことで俺とマヤ様は速度を落とさずに進む。
「すごいわね、一瞬で。私なんて結界魔法を張ってやり過ごすのが精一杯だったのに」
「あぁ、そのやり方で防いでいたんですね」
「でも鱗粉はそこに留まろうとするから苦労したわ……」
「それならもうその生活からはおさらばです」
ここで一際大きな大木が見えたと共にそこに引っ付いている巨大な蛾がいた。
白い羽を持ちその羽には鬼のような顔を持つ蛾のモンスターだった。
「まさか、オーガモスだったとは」
俺はそのモンスターのことを知っていた。
「知っているの?」
「はい。あれはSランクモンスターのオーガモス。個体ごとに違う性質の鱗粉を出すモンスターです」
「え、Sランクモンスター!? そんなのがいたのね……」
「しかも、ヤバイですね。卵がある」
葉にはびっしりと卵がついている。
「あれが孵化する前にこれて良かったです」
「……想像しただけでゾッとするわ」
ようやく分かったが鱗粉を出し渋っていたのは卵を産んだからか。
とにもかくにもこいつらを駆除しない限りはフロスト家が安心して暮らせないということだ。
「やります」
「お願いします、セオ様」
さすがにオーガモスには手を出すつもりはなくマヤ様は身を守ることに専念している。
そういうところは本当にありがたい。無駄に前に出られても時間がかかるだけだが、それはそれでご要望に応えるだけだ。
俺がある程度まで近づけばオーガモスは羽を少し動かしたのが分かった。
ただ俺は何もやらせるつもりはない。それで周りに影響を与えるのはスタイリッシュではない。
ルミナススターを使うつもりはないからここは力業で倒すとしよう。
「悪いな」
ここに来たことも人によって仕組まれたものだからオーガモスには少し同情する。
だがそれはそれ、これはこれ。ここは食物連鎖、弱肉強食が唯一のルールだとここで頂点を張っているこいつなら分かっているだろう。
アストラル・アニムスにてオーガモスの構造を把握。それと同時に神剣を振るって切断魔法を放った。
オーガモスは鱗粉を撒き散らすこともなく真っ二つになった。鱗粉すらも切ったからもうこの死体に何も害はない。
「さすが最高の騎士。あっという間ね」
「ありがとうございます」
「あれもやるのよね?」
マヤ様が見ているのは大量の卵だ。
「はい。オーガモスは卵からでもなつくことはありませんから」
「そう。お願い」
マヤ様の言葉で俺はオーガモスの卵をすべて殺した。
他にオーガモスの卵やら別個体がいないか視て確認したがここにいたのですべてだった。
……オーガモスはこいつ一体だった。それなのにどうして産卵できたんだ?
そう疑問に思ってアカシックレコードにて情報を巻き戻していく。
そうすればちゃんと答えは見えてきた。が、これは少し予想外な展開だ。俺にとってはな。
「セオ様? どうしたの?」
少し木の方を見ていればマヤ様に声をかけられた。
「マヤ様、少しお話よろしいですか?」
「……いいわよ」
俺の真剣な表情にマヤ様は頷いてくれた。
「まず自分がアカシックレコードを視る眼があります」
「へぇ、そんなことが。ということは、ここで何かを視たということね?」
随分とあっさり受け入れられることはさておき俺は話を進める。
「オーガモスが一体しかいないにもかかわらず産卵していることが不思議でした。なのでアカシックレコードを遡り産卵に至るまでの経緯を視ました」
「言われてみれば確かにそうね。それでどうだったの?」
「もう一体がどこかに行ったとかではなく、オーガモスに魔法で孕ませていた者がいました」
「……そんなことができるの?」
「モンスター調教師とかならやれる人はいます。ただその魔法を使っていた者が、獣人でした」
マヤ様は大きく目を見開いて驚いた。だがその後に少し心当たりのある顔をした。
「……そう。てっきり人間がやっているのかと思ったわ」
「自分もそうですね。それでマヤ様は犯人もしくはこれをする集団に心当たりはありませんか?」
「……ある。こっちに逃げてきた獣人って二種類いるの。こちらに友好的な獣人とこちらを支配しようとする獣人。たぶん後者がやっているんだと思う」
「どこもかしこも思惑だらけですね」
「ハァ、どこからも狙われているんだからいい迷惑よ。どう警戒すればいいのよ」
「いえ、そうとは限りませんよ。その支配しようとする獣人たちが、ディナトス王国の貴族と繋がっている可能性があります」
「……どうしてそんなことを? 獣人と手を組んでも意味ないわよ」
「もしかしたら、そういう獣人たちにフロスト家が抑えきれなくなり助けを求めてくるのを待っているのかもしれませんね」
「……それは厄介ね」
これ以上はこの場所で知ることはできない。
せめて現実で視ることができればそいつの過去を遡ることができるが、場所の指定だからこれが精一杯だ。
「ジェイダン様とフレヤ様はそういう獣人がいる場合、どういう対処をするおつもりか分かりますか?」
「……あの二人はかなり獣人に寛容だからある程度は見逃すかも」
「それはいけませんね。善悪の区別はきちんとしてもらわなければ」
「しかも獣人同士のいざこざがあった時、完全に悪い方を庇ったり窃盗をしたら家のなけなしの食材を渡して解決するわ。ふざけんな!」
あぁ、これはまずいな。
「それは騎士として主に進言しなければいけませんね」
「獣人が今まで蔑まれた分優しくするって、私たち関係ないじゃんか! なんで私たちが苦労するんだよ!」
愚痴をこぼした後に「あっ」といった表情をするマヤ様。
「ご、ごめんなさい! こんなことをセオ様に言っても八つ当たりなのに!」
「いえ、そう言いたい気持ちは分かります。それにその通りだと思います」
マヤ様の獣人や両親へのヘイトを甘く見ていたな。でもこれは思っても仕方がない。
「獣人を助けることと獣人の罪を見逃すことは違います。そこを混同しているジェイダン様がもし次同じことをすれば自分が注意します」
「……いいのですか?」
「忠義と盲信は違うってことですよ。間違っていれば正そうとするのが忠義です。それで自分が被害を受けるのはいいですが、それで他への被害や主が恥をかくのを防ぐのが騎士です」
「……ありがとうございます。やっぱりセオ様はすごいです」
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