S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
5 / 369
第2章   Frustrating Feeling

しおりを挟む
 「チッ……、雨かよ……」

 劇場を出るなり舌打ちをして、俺は激しく降り注ぐ雨の中駐車場に停めた車に乗り込むと、エンジンをかけ、真っ先に智樹のスマホを鳴らした。

 「出ないか……」

 何度コールしても一向に応答のないスマホを助手席のシートに放り、アクセルを踏み込むと、ハンドルを捌きながら、煙草に火を付けた。


 どこかで雨宿りでもしてくれてればいいんだが……


 フロントガラスに打ち付ける雨粒をワイパーで飛ばしながら願う。でもその願いは、マンションから程近い交差点に差し掛かった所で崩れ去った。

 「あのバカ……」

 俺は車を路肩に寄せ停めると、雨に濡れるのも構わず車外に飛び出した。

 「おい、智樹っ!」

 すっかり濡れ鼠になった智樹を抱き上げ、冷たくなった頬を叩く。するとゆっくり瞼が開いて、何度か瞬きを繰り返すと、俺を見て小さく笑い、

 「じゅ……んい……ち……? 迎えに来てくれたん……だ……?」

 掠れた声でそれだけを言うと、また意識の糸を手放した。

 「ったく、俺は《じゅんいち》じゃねぇっつーの……」

 一人ごちった俺の呟きは地面に打ち付ける雨音に掻き消され、おそらく智樹の耳には届いてはいない。

 俺は水を含んでズシリと思い智樹を抱き上げ、車の後部座席に乗せた。

 「世話掛けさせやがって……」

 ガタガタと身体を震わせる智樹にブランケットをかけ、俺は再び運転席に乗り込んだ。どうせ帰る場所は同じなんだ、雨だって分かってりゃ、一緒に帰ろうとも言えたのに……

 俺を頼らなかった智樹よりも、ちゃんと天気予報を確認しなかった自分自身に腹が立った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...