S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

第５章 Time

４

　仕方ねぇ、柄にもないことだが、ここは一つ、恋のキューピット役でもしてやるか……

　「お前さぁ、来週の金曜日開けとけるか？」
　「来週？　今のとこ、何も予定ないけど、なんで？」


　全く、疎い男だぜ……


　「実はその日、近所の神社で祭りがあってな、智樹が和人と行く約束してるらしくて……」

　って、真っ赤な嘘だけど。
　でも実際、その日が智樹の今月最後の公演になることもあって、飲む約束はしているらしい。

　「お前も一緒にどうかな、と思ってな？　まあ、無理にとは言わないが……」


　さあ、どうする？


　これ以上、告白の場に相応しいシチュエーションは、そう滅多に転がってるもんじゃない。このチャンスを生かすも殺すも、雅也次第ってことだ。

　「行く！ 行く行く！」


　くくっ……、そうこなくっちゃな。


　「そっかそっか、じゃあ楽しみにしてるぜ。っつーことで、さっさと済ませちまおうぜ？　智樹をあんま長く待たせとけねぇしな」

　俺は雅也をステージ上に残し、客席へと飛び降りると、シートの一つ一つをチェックして回った。
　とは言っても、キャパ自体そう大きくないから、その作業だって二人で手分けすれば、ものの五分もかからずに終わる。

　「よし、問題はなさそうだな。後は音響ルームだけど……」
　「あ、それなら問題ないよ。さっき英明が細かくチェック入れてたから」
　「英明が？　なら、安心だな」

　腕も立って、信頼もおけるスタッフに恵まれたことに感謝しないとな。

　「よし、じゃあ……帰るか。戸締りは俺しとくから」
　「うん、じゃあ俺先に上がらせて貰うね！」
　「おう、お疲れ」

　満面の極上スマイルに鼻歌混じりで、スキップをしながら雅也が客入れ用のドアから出て行く。

　「一先ず作戦成功、ってとこか……」

　後は智樹をどうやって説き伏せるか、だな。


　アイツ、祭りなんて興味無さそうだし……