S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
72 / 369
第8章   To embrace

しおりを挟む
 俺はマンションの管理人に解約の連絡だけを入れると、クローゼットに私物が残っていないかの確認を済ませ、ベッドの端に座ったままの智樹を振り返った。

 「行くぞ?」
 「ああ、うん。あの、さ……、悪ぃんだけど、手ぇ貸してくんね?」

 人に甘えることを極端に嫌う智樹が、俺に向かって手を貸してくれと言う……。それが何を意味するのか、俺はその時になって漸く気が付いた。


 自分の足で立って歩けない程、乱暴に扱われた……、ってことなのか、智樹?


 俺は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。智樹が話さない以上、俺がその言葉を口にすることは出来ない。それは俺と智樹との間に、いつの間にか出来た暗黙のルールで……


 そのルールを破る時……、それは俺達の関係が終わる時だ。
 尤も、智樹は俺がそんな風に思ってるなんて、夢にも思っちゃいないだろうがな……


 「仕方ねぇなぁ……」

 わざと面倒臭そうに呟き、智樹に向かって手を伸ばすと、智樹は躊躇うことなく俺の手を取り、ゆっくりベッドから両足を下ろすと、俺に凭れかかるように抱き付いた。

 「ったく、ほらよ……」

 ともすれば倒れてしまいそうになる身体を両手で抱き上げると、住人のいなくなった部屋を後にした。

 「どうする? 買物でもして帰るか?」

 車に乗り込んですぐ、俺は今の智樹が到底出来そうもないことを口にした。忘れた頃に湧き上がって来る怒りを鎮めるには、平然を装うことしか出来なかった。

 「……いい。あんま腹減ってねぇし……」
 「そっか……。でもな、お前は腹減ってなくても、俺は超絶腹減ってんだよ」
 「あ、そっか朝飯……。悪ぃ……」

 思い出したように顔を向けた智樹の額に、俺は一つだけキスをすると、視線を車窓へと向けた。

 「いいよ、途中で何か買えば……。それにお前も何か腹入れとかないとな?」


 お前の顔色見ただけで、何も食ってねぇことくらい、俺には分かるから……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

処理中です...