88 / 369
第9章 For You
4
しおりを挟む
ラメを散りばめた素肌の上に小袖を纏い、緋色の長袴を履く。
この時点で足が出ない分、かなり動きが制限されるのに、その上に何枚かの着物を重ねられたら、足先一つ動かすのも一苦労で……
「重っ……。つか、これでまだウィッグも……なんだよな?」
自分でオーダーしておいてなんだけど、すげぇ不安になってきた……
尤も、大変なのは俺だけじゃなくて、着付けをしてくれている健太も汗だくになっている。
「聞いた話だと、総重量って言うんですか? 20キロくらいになるらしいっすよ?」
「マジか……」
やべ……、目眩しそ……
「ふぅ……、これでよし、と。後ウィッグ乗せたら完成ですから」
健太が額の汗を拭い、長く垂らした黒髪のウィッグを俺の頭に乗せる。ウィッグ自体にも相当な重量があるらしく、重みで頭が後ろに引っ張られそうになる。
しまったな、こんなことなら事前に衣装着てリハやっとくんだった。 ……って、今更後悔したところで本番までの時間は残り少ないし、どの道全部脱いじまうんだから、少々のことなら耐えられるか……
俺は深い溜め息を一つ落とすと、健太が用意してくれた姿見に自分の姿を映した。その時、荒々しく階段を駆け上がってくる足音が聞こえて、俺は視線を姿見から楽屋のドアへと移した。
翔真の足音だ。これまで何十回、何百回と聞いてきた足音だ、俺が聞き違える筈がない。
軽いノックの後、暫くしてゆっくりと開いたドアの隙間から覗いた顔は、俺が予想した通り翔真で……
翔真は俺を見るなり、驚いたように目を丸くして、健太がいるにも関わらず俺を抱き締めると、赤い口紅を塗った唇に、まるで貪るようなキスをして、それから俺の耳元に唇を寄せた。
「見てるから……。一番良い席に座って、見てるから……」
囁く様に言って、そのまま楽屋を飛び出して行く翔真。
後を追うことも出来ない俺は、ただ呆然とその場に立ち尽くし、翔真の唇が触れた場所を指の先でなぞった。
つか、あんなキスしやがって……、メイク崩れるっつーの……
俺は顔が……いや、身体全体が熱くなるのを感じていた。
この時点で足が出ない分、かなり動きが制限されるのに、その上に何枚かの着物を重ねられたら、足先一つ動かすのも一苦労で……
「重っ……。つか、これでまだウィッグも……なんだよな?」
自分でオーダーしておいてなんだけど、すげぇ不安になってきた……
尤も、大変なのは俺だけじゃなくて、着付けをしてくれている健太も汗だくになっている。
「聞いた話だと、総重量って言うんですか? 20キロくらいになるらしいっすよ?」
「マジか……」
やべ……、目眩しそ……
「ふぅ……、これでよし、と。後ウィッグ乗せたら完成ですから」
健太が額の汗を拭い、長く垂らした黒髪のウィッグを俺の頭に乗せる。ウィッグ自体にも相当な重量があるらしく、重みで頭が後ろに引っ張られそうになる。
しまったな、こんなことなら事前に衣装着てリハやっとくんだった。 ……って、今更後悔したところで本番までの時間は残り少ないし、どの道全部脱いじまうんだから、少々のことなら耐えられるか……
俺は深い溜め息を一つ落とすと、健太が用意してくれた姿見に自分の姿を映した。その時、荒々しく階段を駆け上がってくる足音が聞こえて、俺は視線を姿見から楽屋のドアへと移した。
翔真の足音だ。これまで何十回、何百回と聞いてきた足音だ、俺が聞き違える筈がない。
軽いノックの後、暫くしてゆっくりと開いたドアの隙間から覗いた顔は、俺が予想した通り翔真で……
翔真は俺を見るなり、驚いたように目を丸くして、健太がいるにも関わらず俺を抱き締めると、赤い口紅を塗った唇に、まるで貪るようなキスをして、それから俺の耳元に唇を寄せた。
「見てるから……。一番良い席に座って、見てるから……」
囁く様に言って、そのまま楽屋を飛び出して行く翔真。
後を追うことも出来ない俺は、ただ呆然とその場に立ち尽くし、翔真の唇が触れた場所を指の先でなぞった。
つか、あんなキスしやがって……、メイク崩れるっつーの……
俺は顔が……いや、身体全体が熱くなるのを感じていた。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる